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Slinger - スリンガー -  作者: 速水ニキ
第一章 蝶ガ墜散ル刻
32/87

失墜の蝶 p.11

 体育館を出たメリッサはアゲハの家に向かって住宅街の屋上を走る。


『おいメリッサ、何か来てるぞ』


 警戒の色を込めた音色でルーズがメリッサへ忠告する。

 メリッサは飛んだ先の屋根に着地すると、辺りを見渡す。


 そこへ囲むように、刀を装備した男が三人、周りの建物に現れる。

 刀使いの契約者達であることは明白。

 メリッサはホルスターに納めた銃を取り出す。


「あきらめろ、お前が俺達を倒して玄寺先生の元へ辿り着くころには儀式は完了している」


 契約者の一人が刀を抜く。


『どうすんだメリッサ、時間がねぇぞ』


 メリッサを囲むも相手側から攻撃を仕掛けてこないことから、時間稼ぎなのは明らかだ。

 戦闘を引き延ばす立ち回りを想定しているとすると、この場を突破する方法は一つしかない。


「全力で玄寺の元へ向かって全てを終わらせる」


 メリッサは両手でルーズを握り、瞳を閉じでふぅと息を吐く。

 途端、ルーズから稲妻のような光が溢れ、衝撃が契約者達を襲う。


「な、何だ!」


 警戒する契約者達をよそに、メリッサはルーズへ渦を込める。


転生開始(リバース・オープン)――」


 短い詠唱と共に、突如出現した何重もの五芒星がルーズを覆う。

 ルーズから放たれる光が激しさを増し、辺り一面を光が覆う。


「――私の弾丸は悔恨(バレットセット)


 同時に、光の塊となったルーズをメリッサは両手で引きちぎるように銃を二つに分ける。

 光の塊は形態を変化させ、新たな銃へと形成されていく。


 左手に持った銃は小ぶりの白いハンドガン、白の女王(ヴァイス)

 右手に持った銃は大型の赤いハンドガン、赤の女王(ロート)


 二丁共に銃身に刃が装備され、大小の銃をメリッサは構える。


「銃が変形するなど聞いたことがないぞ」


 刀使いの契約者達がそれぞれメリッサへと飛ぶ。

 メリッサは白の女王の引き金を引き、横一文字にそれを振るう。

 途端、銃から数えきれないほどの弾丸が射出され、メリッサの腕の軌道に合わせて弾丸の鞭が飛ぶ。


 三人のうち二人の刀使いは地面へと回避したが、跳躍中だった一人はその餌食となり、無数の弾により文字通り、身体を引きちぎられた。

 銃弾の鞭は止まることを知らず、引きちぎった契約者の後方に建つ家すらも両断した。


 メリッサは残りの二人を逃がすまいと地上に降りると、刀使いの一人が地面に手を付けて邪術を発動した。

 すると、地面に五芒星が浮き上がり、中から人型の獣が溢れ出る。


「圧殺しろ!」


 刀使いが叫び、およそ五十体以上の獣がメリッサめがけて走る。

 メリッサは白の女王で応戦し、一秒間で数十発以上の弾丸をリロードなしで連射する。


 獣達が次々と撃ち落とされるが、その度に契約者が邪術によって獣の召喚を続ける。

 獣の大群がメリッサへ接近している順に仕留められていくが、その勢いは徐々に増し、じわじわとメリッサとの距離を詰めてくる。


 激しい銃弾の雨を撃ち続けるが、突然ハンドガンのスライドが引かれ、白の女王の発砲が止む。


『クールダウン入ったぞ!』

「良い具合に集まってきたわ」


 メリッサへ塊となって駆ける獣の大群に、メリッサは赤の女王を向け、引き金を引く。

 空間を揺るがすほどの衝撃、鼓膜を破ると錯覚するほどの轟音、大地を震わせるほどの振動と共に、巨大な炎に包まれた銃弾が飛翔する。


 砲撃以上の威力と共に弾丸は獣を貫き、直撃を避けた獣すら衝撃と炎によって薙ぎ払われる。

 炎の弾丸は獣を召喚し続ける契約者に直撃し、建物一つ吹き飛ばすほどの爆炎が巻き起こる。


 メリッサの右腕はそのあまりの威力に大きく後ろへ跳ね上がるが、なんとか踏ん張ってその場に留まる。


「ちくしょうが!」


 残り一人となった刀使いの契約者は獣の死骸を退けながらメリッサへと駆ける。

 メリッサはすぐに赤の女王の照準を契約者に当てて発砲し、隕石のような炎弾が飛ぶ。


 しかし、敵は蝶流剣術の歩法を使い、攻撃を交わして瞬時にメリッサの頭上へ現れる。

 刀がメリッサを襲うが、メリッサは二丁の銃についた刃で応じる。


 神速の剣術に対し二丁の銃で捌くが、流石に相手は剣術の達人。

 剣速がメリッサの銃捌きを上回り始める。


「せあ!」


 気合の雄叫びと共に刀が振り上がり、メリッサは二丁の銃で防ごうとするも力任せに防御姿勢が崩される。

 無防備となったメリッサの胴体へ、刀が振り下ろされる。


「もらった――がっ!」


 契約者が刀を振り下ろす直前、炎をまとったメリッサの蹴りがこめかみに直撃した。

 契約者は路上の壁へと吹き飛ばされ、背中を強打した。


 追い打ちをかけるようにメリッサは赤の女王を放ち、炎弾が契約者を包んで爆ぜた。

 メリッサは辺りを見渡し、敵が残っていないことを確認して走り出す。


『ち、奥の手をここで使っちまうとはな』


 ルーズの愚痴を聞きながら、メリッサは駆ける。


「仕方ないわ。このまま時間いっぱいまで、邪魔する獣を討伐しながらアゲハの家に向かう」


 言い終わると同時、進行方向上に人型の獣と上位種の獣が数体現れる。

 クールタイムに入っていた白の女王のスライドが自動で戻り、再装填の完了を知らせる。


「いくわよルーズ!」

『ほいきたぁ!』


 メリッサは二丁の銃を構えて獣の大群へと突撃する。

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