銃士と剣士 p.10
『開戦だぁ!』
「アゲハ、下がってて!」
楽しげなルーズを無視し、メリッサも鬼に向かって走る。
鬼はメリッサに接敵するとその剛腕を勢いよく振り落とす。
すぐさまそれを横っ飛びで交わすが、鬼の腕は地面をたたき割り、石つぶてが飛び散る。
メリッサは地面に着地した瞬間、さらなる攻撃が襲う。
メリッサのすぐ後ろの地面が割れ、槍の形をした岩が飛び出た。
「っ!」
長年の戦闘経験で研ぎ澄まされた勘を頼りに、メリッサはその場でしゃがみ込む。
頭の上を岩の槍が通過するが、攻撃はそれで終わらない。
メリッサの周りから矢継ぎ早に岩が飛び出し、範囲攻撃が放たれる。
だが、いずれの奇襲もメリッサの身体へは届かなかった。
八方から襲ってくる岩の軌道に合わせ、銃を振って全て撃ち落とした。
「地形操作の邪術、ね」
メリッサは敵の攻撃を冷静に分析して呟く。
『やっぱ深化した獣は邪術を使ってきて厄介だな!』
マガジンを排出したルーズが呟くも、メリッサはそれをすぐに再装填して鬼と契約者から視線を外さない。
「あの契約者が邪魔してこないだけ楽よ」
どうやら向こうは高みの見物を決め込むつもりらしく、鬼の後方でじっとメリッサを観察してきている。
鬼はメリッサが無傷であることに地団駄を踏み、再び突進を始める。
「バカの一つ覚えかしら」
一直線に走ってくる鬼へ銃が乱発される。
だが鬼は地面から再び岩の槍を作り出し、それを掴むと地面ごと引き抜き、その大きなハンマーでメリッサの銃弾全てをはたき落とす。
メリッサは構わず次弾を装填しながら鬼へと接近。
距離を縮めるながらメリッサは弾丸を雨あられと撃ち込み、鬼はハンマーを振り回して銃弾を落としていく。
だが、ハンマーは銃弾の衝撃でみるみるうちに小さく削れていき、最後は棒ごと折れた。
同時に弾丸の再装填を強いられるが、その隙をついて鬼が地面を叩く。
鬼とメリッサの間に岩の壁が出現し、メリッサの接近を拒んだ。
『どうすんだメリッサ!』
「押し通る」
メリッサは足を止めずに壁に向かって飛んだ。
空いた拳を振りかぶると、メリッサの手の甲に五芒星の模様が出現。
瞬間、辺りを照らす激しい炎がメリッサの腕を覆いつくすように吹き出し、紅蓮の炎をまとった拳が岩に叩きつけられる。
炎は岩と激突すると爆発し、頑丈な岩をいともたやすく吹き飛ばす。
岩の壁ごと鬼へと吹き飛び、メリッサは岩に激突した鬼の額に着地。
メリッサと鬼の視線が交差し、鬼の大きな一つ目に銃口が合わさる。
「さよなら」
ルーズから雷のような激しい光が溢れ、落雷のような銃撃音と共に弾丸が鬼の目玉を貫通し、頭を吹き飛ばす。
鬼はびくりと身体を硬直し、仰向けに倒れた。
メリッサは鬼から飛びのき、アゲハの元へと戻る。
鬼を挟むようにフードを被った男とメリッサは対峙する。
「それで、どうするのかしら?」
フードの男は苛立っているのか、歯噛みし、指を鳴らす。
鬼の亡骸が風船のように膨らむと破裂し、あたりに血の霧が広がった。
「きゃ!」
アゲハはしゃがみ込み、メリッサは霧からアゲハを守るように立つ。
血の霧は辺りを覆って視界を阻害するが、風が吹くと掻き消える。
さきほどまで立っていた契約者の姿は失せ、メリッサはルーズを腰裏のホルスターに戻す。
「逃げたわね」
すると、空間を覆っていた紫色の空がまるでガラスが割れるようにヒビ割れ始め、ゆっくりと青空と日の光が隙間から差し込まれていく。
『お、異界も解かれたみてぇだな』
本物の日光がひび割れた 空間から差し込み、メリッサを照らす。
アゲハは一連の騒動が終わりを告げるのを目の当たりにし、改めてメリッサに問う。
「メリッサさん、貴方は一体……」
乱れた髪を振り払い、メリッサはアゲハへ振り向く。
「スリンガー、獣を狩る復讐者よ」




