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第六話「真実の太陽」

第五話からの続きになります。

まだ読んでいない方は、そちらを先に読むことを御奨めいたします。

「どうした?鏡でも見ている気分なのか?」

 金色の瞳の黒猫がボーっとしていた私を見つめる。

「私は・・・。いや、お前は何者だ?」

 いつだったか金色の瞳を持つ猫が私を探しているという情報を聞いたことがあった。

「俺か?そうか、そうだったな・・・。俺はクラウド。お前とは兄妹みたいなものだ」

 私に兄妹?そんな記憶は存在しない。

「知らない。私に兄妹なんていない」

「そっか。まぁ、なんでもいいや。サン、お前を迎えに来た」

 クラウドは私の名前を知っていた。私は訳がわからなかったが、私を認識してくれる存在が目の前にいることで、どこか安心していた。

「わ、私は主人を探さなければならない」

「主人?・・・あぁ、主人な。ククク・・・。わかっているよ。じゃあ、その主人の情報も教えてやるからついて来い」

 私はクラウドに馬鹿にされているんじゃないかと思った。しかし、クラウドはくるりと向きを変え、さっさと歩いていってしまった。

 私はクラウドの後を歩いた。クラウドは私の行こうとしていた所に行くようだ。

 始まりの屋敷。

 主人の家。

 そして、何かが終わろうとしているのを私はどこかで感じていた。



 クラウドの後を追っていた私は驚いた。

「さぁ、サン。まずは俺のご主人に会ってくれよ」

 屋敷の客間には人間が・・・いや、一人の外見の若い魔法使いが座っていた。

「おかえり、サン。元気だったか?」

 魔法使いが私を見る。

「相変わらず綺麗な瞳だ」

 ふと魔法使いが一つの手鏡を取り出し、私の前へ突き出す。

「見てみろ。今この手鏡には何が映ってる?」

 そこには私が映っていた。当然のことである。

 魔法使いはその手鏡を持ち、私に背を向けて数歩歩いていく。

「サン、今俺を見ているだろう?」

 言っている意味がわからなかった。私は言い当てられたのが癪にさわったので、クラウドを見た。

「今はクラウドを見ているね」

 この魔法使いには背中にも目がついているのだろうか。

「サン、この手鏡にはサンの見ている光景が映っているんだ」

 そんな馬鹿な話があるはずがない。

「本当さ。サン、旅は楽しかったかい?」

 私は黙って魔法使いの顔を見ていた。

「おいおい、喋ってくれないと何もわからないぞ?」

「主人・・・」

「ん?」

「私の主人は・・・どこだ?」

 私は力強く魔法使いに訊いた。

「主人?あぁ・・・くくく、あっはっはっはっは」

 急に魔法使いは堪えきれずに笑いだした。

「主人な。主人か」

 馬鹿にした言い方。


「お前の主人はいない」


 唐突な魔法使いの言葉を私は聞き逃す所だった。

「え?」

「お前に主人なんていない」

 私には主人が・・・いない?

「お前は魔女なんだよ」

 私が・・・魔女?


「俺が呪いをかけたんだ。忘れたのか?」


 呪い?


 記憶?


 手鏡?


「わ、私は・・・」


 主人?


 エメラルドの瞳?


 魔女?


「私は何者なのだ?!」


 魔法使いの顔から笑みが消えた。

「俺の名前はグルーヴ・スノウ・ラミレミア。呪術を研究する魔法使いだ」

 今の私に魔法使いの名前や目的なんてどうでもよかった。

「れ・・・サン、旅は楽しかったか?」

 旅?旅。旅をした。長いこと。私は旅をしてきた。

「旅・・・。色々な人を見てきた。色々な人の感情を見てきた。喜び、怒り、哀しみ、楽しみ。全ての感情を見てきた。人間は哀れな生き物だったけど、それと同時に素晴らしい生き物だった」

 私は無意識に言葉を発していた。

「そうか。それはよかった」

 スノウが私の目の前まで来てしゃがんだ。


「望みは叶ったか?レイン」


 私の瞳を見て優しく言う。そして、クシャクシャと私の頭を撫でた。

「レ・・・イン?ぁ、ぁあ、ぅぅううぅ」

 酷く頭が痛くなってきた。

 スノウは相変わらず私の頭を撫でている。

 次の瞬間、私の体の中が熱くなり、おびただしいほどの光が部屋を包んだ。



 私は魔女。魔女の姿に戻った。

 全ての記憶がよみがえってくる。

「おかえり、レイン」

 スノウが私を強く抱きしめる。

「・・・ただいま、スノウ」

 そして、ただ唇を重ねるだけの浅いキスをすませる。

 そう、私は魔女だった。

 私はブルーム・レイン・クレセント。伝説の魔女ラフィスの血を引く魔女。

「スノウ、ありがとう。私の我侭を聞いてくれて」

「いいや、レインがそうしたかったのに、反対する意味がないだろ?」

 クラウドが私の足元へやってきた。

「レイン。よかった、思い出したんだね?」

「クラウド、ずっと私を見ていてくれたのね?ありがとう」

 私はクラウドの頭を優しく撫でた。

「クラウド、妹がいなくなっちゃって残念だったな」

 スノウが意地悪そうにクラウドに言う。

「ぅ、うるさい。俺は無愛想なサンよりもレインの方が好きだからいいんだ」

 私は微笑む。

「楽しい旅だったわ。今日は存分に旅の話をしてあげるわね」

 私は笑顔でスノウとクラウドをこのエメラルドの瞳で見つめた。

「楽しみにしているよ」

 スノウは爽やかに清ました笑みで私の瞳を見つめていた。

 

 寒空の太陽が屋敷を暖かく照らしていた。

 雲ひとつない空。

 どこまでも澄んでいる青が私には眩しかった。

題名に真実と書いておきながら、特に予想通りの真実しかまだ語られていないので、もっと深い真実は次話で語られる予定です。

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