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〜出逢い〜

その日私は、ステージの照明や、出演者の立ち位置など、ひたすらに考えていた。


梅雨の中休み、陽が当たる窓際。

老舗の喫茶店で、薄まったアイスココアを放置したまま、机に向かっていた。


私、成瀬ななは、とある無名のダンススクールインストラクター。

スクールの発表会が近い為、ステージの構成を考えていた。

家ではなかなか出来ないこの作業。いつもこの喫茶店にお邪魔している。もう常連…なのかな。


ふと、窓の外が騒がしいことに気づき、重い頭を上げ、窓の外をみる。


どうやら、芸能人が、CM撮影をしているらしい。

誰が来ているのか……ここからは見えない。

特に気にせず、また頭をかかえペンを動かす。


どれくらい時間がたったのだろう。


ふと気がつくと、テーブルの隣に誰かが立っている。脚しかみえなかったが、店員さんではなさそうだ。

顔をあげると、そこにはよく見る顔が。

私の携帯を片手に、笑顔で立っている。


男「やっと聞こえました?笑 携帯、落ちましたよ。はい。」

なな「あ、、、ありがとうございます。すみません、ちょっと集中しすぎてましたかね…あはは…(苦笑)」


ちょっと待って。この人、俳優の瀧本真司。なんでここに……


真司「何回も声かけたんですけど、なかなか気づいてもらえなくて、無視されてるのかと思いましたよ(笑)。そんなに一生懸命なにをなさってるんですか?」

なな「もうほんとにすいませんでした!!えぇーと…ステージの構成を考えていました。」

真司「ステージの構成?」

なな「はい。私、ダンススクールのインストラクターやってまして…生徒さんの発表会が近くて、それで…」

真司「そうだったんですね。裏方のお仕事、すごく大変だと思います。無理しないで、頑張ってくださいね。」

なな「ありがとうございます!」

真司「じゃぁ、失礼します。」



瀧本真司。CM撮影をしていたのは、彼だったのか。

奥の席で、マネージャーさんらしき人が手招きしている。

小走りで駆け寄る瀧本真司。


可愛かったなぁ……顔も小さいし、背も高い。しかも、一般人の私に対しても、凄く優しい。好青年って感じ。



少し、浮かれ気分に浸ってから、自らのほっぺたを叩き、仕事に戻る。


それから少したって、また、テーブルの隣に脚がみえた。

慌てて顔を上げると、はやり彼、瀧本真司。


真司「あのー、ダンスって、僕も習えたりしますか?仕事とかじゃなくて、前から興味あったんですけど、なかなかチャンスが無くて。」

なな「あ、はい。もちろん大丈夫です。でも…もっと名の知れた方から教わった方がいいのではないかと……」

真司「いや、なんて言うか……公表したくないんですよね。僕がダンス習ってるとか。。。多分、キャラが違うって、皆に言われそうで(笑)でも、ダンスって凄くかっこいいなって思ってて、、、お願い出来ませんか?」


名の知れたスクールだと、確かに業界にバレてしまう。その点、私なら極秘でできる…


なな「そうゆうことでしたら……はい。あ、でも、ほんとに私でいいんですか?」

真司「もちろんです!ありがとうございます!嬉しいです!」



彼の弾けんばかりの笑顔。困惑、緊張でひきつる私の笑顔……

なんだか凄く信じられない状態だったが、彼とLINEを交換し、その日はフワフワした気持ちで、家に帰った。




家に帰り、ソファに沈みこんで、携帯を眺める。しばらくぼーっとしていた。まだ夢なんじゃないかと、半信半疑な自分。

その時、急に彼の…瀧本真司の声がして、思わず飛び起き携帯を落としてしまった。


そうだった…テレビつけてたんだった…


テレビでは、彼がドラマの番宣のために出演している、クイズバラエティ番組が流れ始めていた。


携帯を拾い、改めて1度深呼吸。


すると、今度は手にしていた携帯が鳴る。



……また携帯を落としてしまった。



携帯を拾い画面を見ると、彼からのLINEだった。


まさか、本当に連絡してくるとは思わなかった。驚きと嬉しさと緊張で、頭の中がパニックの状態だが、なんとか平常心を装う。

もちろん、家には私一人しか居ないのだから、この平常心の意味はない。。。



真司「今日は、初めてお会いしたのに、しかも、お仕事中に変なお願いをしてすみませんでした。ダンスの件、ななさんと僕の予定の会う日に、宜しくお願い致します。」



芸能人て…売れてるのにこんなに丁寧な人って居るんだ。。。



なな「はい。こちらこそ、今日は携帯を拾っていただきましてありがとうございます。ダンスの件は、また日程を合わせて行いましょう。どうぞ宜しくお願い致します。」


真司「ありがとうございます!では、また連絡致します。おやすみなさい。」


なな「はい。お待ちしております。おやすみなさい。」



こんな感じで、初めてのLINEは終了した。








あの、夢みたいな、おとぎ話みたいな出会いをした日から、1ヶ月がたった。


未だダンスのレッスンは出来ていない。


私はスクールの発表会、彼はドラマの撮影中で、忙しい。


ただ……


LINEでのやり取りは、続いている。

たわいもない、なんの中身もないような、どうでもいい話をしている。

時には、彼の愚痴、私の愚痴を話し合うこともあったりした。


「芸能人だ」と、最初は警戒したり、彼との間に壁を作っていた私だが、、、

人懐っこい彼の性格や、誠実な一面をのぞかせる文章で、今では彼とのLINEが、毎日の楽しい日課になっていた。




梅雨明け宣言もそろそろな、蒸し暑い日、私は渋谷のスタジオに来ていた。

そう。彼とのダンスレッスン。

やっとお互いの都合が合い、レッスンできる。


スタジオの前にたっていると、1台のタクシーが私の目の前で止まった。


真司「お待たせしました!今日から、宜しくお願いします。」

なな「はい!こちらこそ宜しくお願い致します。……じゃぁ、行きましょうか。」


地下のスタジオで、ダンスの基礎からゆっくりとレッスンをした。

俳優の瀧本真司との2人きりの空間…

凄く不思議で、緊張していたが、1時間半のレッスンの最後には、2人で楽しく笑顔でスタジオを出られた。


真司「やっぱり思ってた通りでした。」

なな「?何がですか?」

真司「ダンスが楽しいってことと、ななさんが教えるの上手だなってことです(笑)」

なな「いやいや!!ダンスは楽しんでいただけてよかったですが!私は別にたいしたことしてないんで。。。瀧本さんの感性が、凄いなと、、、私は思いました。」

真司「そんなことないです!…………ぷッ…笑」

なな「え?」

真司「いや、なんか、褒めあってて……ウケますね(笑)」

なな「あ、、、ホントですね……笑」



次のレッスン日は、またLINEで決めることになり、その日はそのまま家へ帰った。


彼との日課のLINEの中で、次のレッスン日を決めた。

それは考えていたよりも早く、次の日曜日。

何故か、わくわくウキウキしていた。。。

それは、芸能人とのレッスンだから?

それとも瀧本真司とのレッスンだから?





いよいよ迎えた2回目のレッスン日。

渋谷のスタジオが取れず、下北沢の小さいスタジオがやっと取れて、昼過ぎからのレッスンが開始された。


何となく……なんとなくだが…今日はレッスンに集中できていない彼。きっと、仕事の疲れが溜まっているんだろう。


1時間のレッスンを終え、2人でスタジオを出る。



なな「瀧本さん、もしかして、凄く疲れてますか?」

真司「え?いや、全然ですよ?今日ちゃんと踊れてませんでしたか?すいません!」

なな「いや、そう言うことではなくて…仕事が忙しい中、わざわざお時間作っていただいてて…瀧本さんの体調が心配だなと思いまして。」

真司「あ、いや、すいません。俺全然元気なんです。今日は、ちょっとその。。。なんて言うか、緊張してて。」


え?2回目に緊張??私のレッスンて、そんなに厳しいかな…いや、そんなことは無いはず。


真司「あの、ななさん、この後って、何も予定ないって言ってましたよね?良かったら、俺の買い物に、付き合って貰えませんか?」

なな「お買い物のお付き合いですか?私、センスないですし、、、しかも、こんな真昼間から、私なんかと歩いてたらヤバくないですか?」

真司「それは大丈夫です!ほら、こうして、、こうして。。。これでOKです!」


彼は、サングラスをかけ、深めのキャップを被り、マスクを。私にもサングラスをかけさせて、マスクを貸してくれた。


真司「さあ、行きましょうか」


もう、こうなったら乗り掛かった船!どうにでもなれ!と言う気持ちで、彼の隣を歩き始めた。


どんどん歩いていく彼。

真司「下北沢は、よく買い物にくるんで!色んなお店知ってるんですよ!」


楽しそうな彼と歩いていたら、なんだか私も楽しくなってきた。


彼は、可愛い古着屋さんに連れてきてくれた。

常連なんだろうか。店員さんと仲良く話している。


真司「ななさん、ちょっと店内見ててくださいね!」


えぇー…急に放置。。。


でも、お店の洋服は、憧れるけど、いつも自分が買わないような服で、とても可愛かった。


そして、急に店員さんが、洋服1式を持ってきた。


なな「え?!これを私が着るんですか?試着って、、、待って下さい、サンダルまで?」


店員さんは、グイグイと私を試着室に押し込んだ。


瀧本さんはどこに行ったんだろ…このまま押し売りでもされたら、私の財布じゃ無理だよ…涙


不安だらけのまま、とりあえず、着てみた。

試着室からひょっこり顔を出して、店員さんを探した。


なな「あのー、着れました。」


店員さんに手を引かれ、サンダルを履いて、試着室からでる。


真司「うん!思った通り!ななさん、こんな感じの服、絶対似合うと思ってたんですよ!」

なな「瀧本さん!どこ行ってたんですか?」

真司「じゃぁ、このまま、タグを取ってもらって下さい。着てきた服は、袋に入れてもらいましょう。」

なな「あ、ちょっと待って下さい!」


そのまま彼は、レジに向かい、私は店員さんになされるがまま、、、タグを取ってもらっていた。




真司「よし!じゃぁまた来ますね!」

店長さんと挨拶を軽く交わす彼。

真司「ななさん、どこか行きたいところありますか?無ければ…俺が行きたい店、もう1件いいですか?」


最初から決めてたんですよね…?笑


なな「は、はい。笑」

真司「え?なんか俺、なんか面白かったですか?」

なな「いえ、全然!笑ってないです。笑」


2人で笑い合いながら、彼のお気に入りのパンケーキ屋さんへ向かった。




席に着くと、慣れた感じで注文をしていく。

パンケーキを待ちながら、洋服の話へ…


なな「あのー。今日は、この洋服、ありがとうございます。こんな感じの服、憧れてたんですけど……自分には合わないと思って買ったこと無かったです。あの店員さんのコーディネートも、さすがプロって感じですね。」

真司「すっごい似合ってますよ。あの……実はそのコーデ、店員さんじゃないんです。実は、俺がコーデした服です」

なな「えぇーーーー!?」


彼は、恥ずかしそうに、キャップを深くかぶりながら


真司「こんな感じの服、ななさん似合うだろうなって思ってて。。。急にレッスンのお願いして、快く受けてくれたななさんに、何かお礼がしたくて……」


いつも堂々としている彼。なんだか可愛らしく見えた。


なな「ありがとうございます!本当に嬉しいです!パンケーキも大好きなんで、今から楽しみです!」

真司「良かった……あ、そろそろパンケーキ来ますね!食べる前に写メ撮りましょう。俺、よくやっちゃうんですよね。食べ始めてから、写メ撮ってなかったぁーーーって(笑)」



パンケーキは、彩りよくフルーツが飾られていて、ホイップクリームもたっぷり。食べるのがもったいないくらいくらいだった。



2人で美味しくパンケーキを頂いた。

その日は彼が、夜からラジオの仕事。

パンケーキ屋さんからでて、そのまま帰宅になった。


新しい、憧れていたお洋服に身を包み、ショップのウィンドーに映る自分の姿を見て、ドキドキと嬉しさと恥ずかしさと…色んな気持ちで胸が熱くなりつつ、少し頬を赤らめながら、私は家へと帰った。



夜、彼のラジオが始まった。


女性ファンが多い彼。質問コーナーも、恋愛系が多いようだ。


真司「ペンネーム、青いソラさん。ご質問ありがとうございます。僕が好きなデートはどんなデート? という事ですが…うーん。僕は子役からこの業界に居るので、本当に理想ですが。。。行きつけの古着屋さん行ったり、パンケーキ食べに行ったり…ですかね。ま、一緒に居られれば、場所はどこでもいいんですけどね(笑)」


ん?



んん?


それって、今日の私たちのこと??!




続きは、また書きます!

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