02
のんびりとしたティータイムは流石に諦めたものの、麺を湯がくためにヤカンから鍋にぬるま湯を移し換え、水を足し、再びコンロに火をつけ温め直す。
しっかし…久々に見たなぁ、学ラン。
住んでた近所には進学校やら私立の学校か大学ばっかりでまず見なかった。
地方からの修学旅行生が地図持ってウロウロしているところに遭遇でもしなきゃまず見れない服装だ。
こっちに定住した今は、ますます見る機会は無いし…好き好んで森の中に住んでる今は人と会う機会も殆どありはしない。
「野菜、洗ったんすけど…」
扉がノックされたのでギィっと開ける。
勝手に開ければいいのに、うちの野菜たちのように育ちはいいようだ。
「うん、ちゃんと泥も虫も落ちてるね、あとは貴方も土ぼこりだけ落として入ってきて」
野菜の入ったザルを受け取ってキッチンへと戻る。
しばらくして家の中に自分以外の足音と気配がする。
「ラーメンもどきとヤキソバもどき、どっちがいいー?」
どっちを選んでも野菜たっぷりになっちゃうけど。
少し声を張り上げて聞いていく。
「えっと…じゃあヤキソバ、お願いします」
「おっけーおっけー、味は期待しないでねー!あっちみたいに調味料の種類無いからー」
「あっちって…」
「貴方、地球の子でしょうー?ちきゅうー、あーす、にっぽーん、じゃぱーん?」
ぐつぐつと煮えた鍋に麺を投入し、その隙に野菜を刻んでフライパンで焼いていく。
そこそこ手数があって忙しいので、受け答えも雑になる。
「そうっすけど…」
「こっちに飛ばされる時、誰かと会ったー?」
「会い、ました」
「…じゃあ転生者かぁ」
麺を湯がき始めてあまりキッチンを離れることもできないので、おしぼりと果実水、今日のティータイムで堪能しようと思っていた苺ゼリーをダイニングテーブルに用意して座って待つように促した。
「先にデザートっていうのも辺かもしれないけれど…お疲れ様」
座らせた肩をぽんぽんっと叩いてようやく震え出した背中を見届けて、キッチンへと戻る。
運悪く次元を越えてしまう転移者と違い、病気や事故でこちらに落とされてくる人は「あ、これ死んだ」という実感の後わりとすぐに神さまから説明をされ、耳から聞いただけ、頭で理解すらしていない状態でやってくる。
神さまは心が納得するまでなんて待ってくれないし、ケアまでしてくれるような優しいやつじゃない。
何故それを知っているかと言えば、私も会ってこっちに来たから。
まぁ私の場合ただの老衰だけど。
何故、大人しく死んだままにさせてくれないのか。
生きていても死んでいても世界は不条理なことで溢れている。
次もし会ったら、あの神さまを殴るのが目標だ。