表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/130

十七ページ目

 手に握った剣をよく見るために、腕を上げて目の高さまで持ち上げる。剣は片手でもなんとか扱えそうな重量で、重さの割には幅広の刀身をしている。その分刀身の長さは短く、総合的に見るとそれほど武器の心得がなくても扱えそうな武器だ。護身用としても使えそうで大変興味深いが、その剣は一旦元々置いてあった棚に戻し、店内の籠や壁に掛けられた武器の数々に目を移す。

 ここ、ガイネベリアに到着したのが昨日。そして今日は、朝から街を巡り、昨日は訪れることができなかった店を冷やかしながら回っている。街の住人たちが喋る言葉も大分聞きなれ、竜飼いによる通訳も利用すれば会話は問題なく行えるようになった。

 身振り手振りも交えて店主たちとコミュニケーションを取りながら、買い物を続ける。


――――――――――

【ガイネスクブロードソード】を収集しました

【ガイネスクコルセスカ】を収集しました

【ガイネスクバトルアックス】を収集しました

【ガイネスクバトルハンマー】を収集しました

【ガイネスクヘルム】を収集しました

【ガイネスクアーマー】を収集しました

――――――――――


 何店舗か確認をしたが、どの武器屋でも似たような武器や防具が置いているようだ。どれも共通した、鳴き声を上げる白蛇を象った紋章が刻まれていることから、武器の製造は街ぐるみで管理されているのだろう。そのせいか、どの店でも商品の値段はほとんど変わらず、しかもかなり高めに設定されている。できればあるだけ買いたいところだが、考えなしに買ってしまえば残金がすぐなくなるのは目に見えているので、ここはぐっと我慢して店を出ることにした。


 街の住民の話を聞く限り、この街では外の人間が金を稼ぐ方法はあまり多くないらしい。それこそ、素材なり持ち込んだ商品を売るくらいのようだ。治安について街の住人達に尋ねると、彼らは口々に”騎士”なる人間のことを語ってくれた。騎士というのは街を守る自警団の延長のようなもので、騎士たちのおかげで治安もそれほど悪くないという。

 さて、これからどうしたものかと店の前で考えていると、会ったこともない男女に声をかけられた。身なりの良いその二人の話を聞いたところ、どうやら先日素材屋に売った素材のことを聞きつけて、自分を探していたらしい。一日でよく調べたな、と思わないこともないが、こんな街ならば外の人間は珍しいだろうし、なにより隻腕というのは目立つものだ。竜飼いには昨日購入した【紐麻のロングローブ】を着せているので昨日よりは目を引かないと思っていたが、少し考えが甘かったといえる。


 当初の予定では街の構造を確認がてら、一日歩き回る予定だったのだが、話をすれば相応の礼もするということなのでついていってみることにした。

 了承の返事をすると、男女は笑顔を浮かべて歩きはじめる。目的地に向かうまで間に聞いた話によると、彼らはこの街で活動する卸売業者なのだそうだ。商売のために別の街に行くこともあるというので詳しく話を聞いてみると、この街の北には”コレスゲト”という別の街があるらしい。ただ、ガイネベリアとコレスゲトの間には、【轟く鉄滝】という名の”魔境”が広がっているという。

 聞きなれない”魔境”について聞いてみるが、それの特徴を聞いて思い当たる節があった。特有な素材があるほか、魔境のみに生息する凶暴な生物、”魔物”が跋扈し、さらに一定の期間が経てば地形が変わるほどの変化があっても元通りの状態に戻るというそれらの特徴は、まさしくこれまで訪れていた【揺らぐ時森】や【揺蕩う澱窪】に共通するものだった。どうやら気づかぬうちに、これまでの探索によって”魔境”とやらを踏破していたらしい。


 思わぬ事実に気づいたころ、どうやら目的地に着いたようで先を歩いていた男女が足を止めた。だが、案内された場所は聞いていた雰囲気と大分異なる。案内された先は俗にいうスラムのような、貧民層が住んでいる地区の更に奥まった路地のような場所だった。こんなところで一体何を聞こうというのかと尋ねようとしたが、目の前の男女はこちらから距離をとり、どこからか短剣を取り出す。それと同時に、路地の角や建物の中から武装した人相の悪い男たちが湧き出てきた。


 どうやら話をすれば礼をする、というのは嘘っぱちで、こちらが持っている素材を脅して奪ってしまおう、という魂胆だったらしい。まだ全書の存在は隠せているはずなので、大方どこかに他の素材を隠しているとでも考えているのだろう。街に入る際には、異国から旅をしてきたということにしていたので、それもあって手ごろな獲物に見えたのかもしれない。

 まあ、相手がどう思っているのかは置いておくとして、向こうの数はおよそ十二、三というところだろうか。こうしている間にもその包囲網を狭めながらこっちに迫ってきているので、穏便にここを切り抜けるのは無理そうだ。


 分析が終わったころ、リーダー格らしきひときわ大柄な男が進み出てきた。男は下卑た笑みを浮かべて、脅しの言葉を叫んでいるようだ。だが、そんなことよりも気になるのは、男が担いでいる大きな戦鎚だ。柄を含めれば大の大人一人分ほどはありそうな大きさのその戦鎚は、施された意匠などを見るになかなかの逸品なように見える。

 あれが欲しい、ぜひ欲しいと考えていると、無意識に手が全書へと伸びる。訝しげにその動きを眺める周囲のならず者たちの目の前で、全書を開いた。さて、街の中とはいえ、やることは”魔境”でやっていたことと一緒だ。幸い、近くに無関係の街の住人はいないようなので、誰かが来る前にさっさと終わらせてしまおう


――――――――――

【這う野狼団の赤バンダナ】を収集しました

【這う野狼団の黒バンダナ】を収集しました

【這う野狼団の耳飾り】を収集しました

【錆びた粗銅のショートソード】を収集しました

【粗銅のショートソード】を収集しました

【紫銅の毒短剣】を収集しました

【粗鉛の投げナイフ】を収集しました

【眠毒玉】を収集しました

【痺れ毒壺】を収集しました

【なめし皮の金袋】を収集しました

【震血鉄槌】を収集しました

――――――――――


――――――――――

【震血鉄槌】

分類:魔具・戦鎚

等級:D+

権能:【震血】

詳細:衝抗鉄を主な素材として作られた戦闘鎚。ヘッドに刻まれたルーンにより、攻撃した生物の体液を振動させ、内部から損傷を与える。

――――――――――


 当然といえば当然だが、彼らの耐久力はこれまで相手にしてきた魔物たちとは比べるべくもなく、適当な自動人形に相手をさせたらすぐにケリがついてしまった。最後の二、三人になったころには逃げ出そうとする者もいたのだが、【時森の怪奇兵】に無慈悲にその後頭部を射抜かれることとなる。

 戦利品は残らず回収したので、さきほどならず者たちが出てきた建物の中を確認してみることにしたところ、建物はならず者たちのアジトになっていたらしく、手入れがされていない武器や盗品と思われるいくつかの物品が置いてあった。

 外出しているのか、はたまた先ほど相手にしたので全部だったのか、アジトにはもう誰も残っていないようなので、今のうちにめぼしい物を回収しておくとする。


――――――――――

【這う野狼団の刺青型】を収集しました

【這う野狼団の帳簿】を収集しました

【黒鉄の金庫】を収集しました

【這う野狼団団長の指名手配票】を収集しました

【ギジャの腐れ毒】を収集しました

【ガイネ印の火酒】を収集しました

【絵画・臆する男】を収集しました

【絵画・鼓舞する女】を収集しました

【絵画・とある日の大屋敷】を収集しました

【ガイネスクショートボウ】を収集しました

【ガイネスクアロー】を収集しました

【なめし皮の軽鎧】を収集しました

――――――――――


 手に入った物品の質としてはあまり高いものではなかったが、ユニーク品とでもいうべきいくつかの物品が手に入った。さらにならず者たちがため込んでいた金銭も手に入れることができたので、戦果は上々といえる。

 アジトの壁に貼られていた指名手配票を見る限り、【震血鉄槌】を持っていた先ほどの大男は、このアジトの持ち主だった”這う野狼団”の団長だったらしく、けっこうな金額の懸賞金がかけられていたようだ。幸い指名手配票には生死問わずと書かれているため、奴の生首をしかるべきところに持っていけば相応の報酬を得ることができるだろう。


 これほどの収穫があったならば、わざわざ予定を変えてまで来た甲斐もあったというものだ。不安だった所持金の少なさについても解消できそうなので、声をかけてくれたあの男女には感謝しなければなるまい。手に入れた物品を大事にすることで、供養と思うことにする。

 さて、まだ今日は日が落ちるまでまだまだ時間がある。街の探索と買い物もしなければならないし、時間があればたった今討伐した男の懸賞金も受け取れるだろう。やるべきことは数あれども、時間は有限だ。のんびりしている暇はないので、すぐに行動に移ることにしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ