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二ページ目

 上質な【黒羊の毛長椅子】に座り、新鮮な【リーンの実】をかじりながら、全書をぺらぺらと捲る。


――――――――――

【エスカ軍式長剣】

分類:武器・長剣

等級:D-

詳細:エスカ軍の基本支給装備。扱いやすいよう軽量になっている。

――――――――――


――――――――――

【エスカ軍式長槍】

分類:武器・長槍

等級:D-

詳細:エスカ軍の基本支給装備。集団戦を想定して作られている。

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――――――――――

【エスカ軍式軽鎧】

分類:防具・鎧

等級:D-

詳細:エスカ軍の基本支給装備。身体の要所を守る構造になっている。

――――――――――


――――――――――

【黒羊の毛長椅子】

分類:家具・長椅子

等級:D

詳細:木製の骨組みに黒羊の毛で作られたクッションがはめ込まれている。一度座るとなかなか離れられない快適さ。

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――――――――――

【リーンの実】

分類:植物・果実

詳細:リーンに生る食用の実。広い地域で食用として親しまれている。

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――――――――――

【清浄な水】

分類:液体・水

詳細:飲用に適した清浄な水。

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――――――――――

【エンゴの淡灯火】

分類:魔具・照明

等級:D

権能:【淡光】

詳細:魔具職人エンゴによって作られた安価なランタン。手に入りやすい素材で作られており、安価で寿命も長いが、光量は低い。

――――――――――


 全書にはつい数時間前に目を覚ました廃墟の街、”古都”での探索で手に入れたものと、それらを使って全書により”生成”されたものが記されている。

 上から三つは生成により手に入れたもので、下の四つは探索で見つけたもの・・・・・・・・・だ。


 こんな廃墟の中だ。食料を探すのも一苦労と思っていたが、その考えはいい意味で裏切られた。探索を始めて少し経った頃に、他の家屋より幾分造りがしっかりした倉庫のような建物に入ったところ、中には新鮮な食料が山のように積まれていたのだ。あまりにも種類が多すぎるので、今は必要なものだけを全書に入れている状態だが、短く見積もっても二、三か月はここにある食糧で食い扶持を凌げるだろう。

 外観の劣化具合は周囲と変わらなかったため、建物の中だけ劣化が起きないような仕組みでもあるのだろうか。自分の中にある根拠のない常識からは考えられないような現象なのだが、あれこれ考えても時間の無駄だろう。

 とにかく今は偶然見つけた食料をありがたく頂戴し、ここを仮の拠点とすることに決めたのだ。


 そうしてここを見つけてからも日が暮れるまで探索を続け、今こうして仮拠点に戻ってきたわけである。


 全書に記された今日の戦果に思わず口の端が上がってしまう。コレクションが増えていくに従って確かに物欲は満たされていくのだが、集めた物品を眺めているとまた物欲が掻き立てられるから不思議なものだ。だが、今は街を回ったことによる心地よい疲労感と達成感により、【黒羊の毛長椅子】から離れる気にはなれない。腹を満たしてしまえば他にやることもないので、試しに【エスカ軍式長剣】を全書から取り出してみる。

 全書に記された【エスカ軍式長剣】という文字に軽く触れると、目の前に探索の間に生成した【エスカ軍式長剣】が現れた。


 両刃部分は八十センチほど、柄は二十五センチほどだろうか。長剣というだけあってなかなか重量もあり、思うままに振り回すには訓練が必要だろう。倉庫にあった【エンゴの淡灯火】というランタンで照らしてさらに観察してみると、柄の根元に大樹の紋章が刻印されていることに気づいた。

 その後に確認した【エスカ軍式長槍】と【エスカ軍式軽鎧】にも同じ紋章が刻まれていたことから、これはかつてここにあった国(おそらくはエスカという名前の国)の紋章なのだろう。

 ちなみに、探索中に色々と試してみたのだが、全書で収集した物品は今のように文字に触れる他に、取り出したい物品を頭の中でイメージするだけでも取り出せるらしい。


 そんなことを考えていると、不意に睡魔が襲ってきた。

 全書の説明にある通り、今腰かけているこの長椅子は座りごこちが素晴らしい。大きさも人一人なら十分に寝そべることができるほどなので、今日はこのまま寝てしまうとしよう。

 全書を胸の上にのせて目をつぶる。過去のこともこの先どうなるかも全く分からない。だが、そのことに対しての不安は全くなかった。きっと明日もその先も、自分はこの物欲に従って歩みを進めていくのだと確信しながら、心地よい眠りに身を委ねるのだった。


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