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笑顔でいれば  作者: 安芸 晃次
第一章 転落
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第二話 とりあえず

 盆休み明けの会社は朝から騒然としていた。


「俺らに何の相談も無くいきなり決めるか?」


「会社の将来に見込みが無いからカネがあるうちに身売りしやがった。役員たちは貯め込んでるからいいよな」


「オクダなんかに入ったら奴隷みたいに働かされんだろ」


 みんなの気持ちは分かるが、今さら愚痴を言っても仕方がない。



 そんな中で西村兄弟四男の常務、労務士先生との個人面談が始まった。


 退職金の金額は勤続年数によって決まるらしく、自分は五十万円だった。少ないと思ったが廃業する会社から出るだけマシかもしれない。


 オクダで働かずに無職になると会社都合の退職になるので、自分の勤続年数の場合は失業手当が八ヶ月近くも支給されるらしい。これには驚いた。


 オクダで働く場合は今までよりも年収は少し下がるが営業車が一人に一台割り当てられ、その車での通勤も今まで通り許される。この条件は非常に大きなメリットだ。

 当初はオクダの子会社「株式会社西村オクダ」として会社を発足させ、数年後にオクダの営業所とする予定らしい。


 余っていた有給を消化しつつ考えた。周りの人たちに意見も聞いてみた。



 三十八歳という年齢から考えれば良い条件下での転職はラストチャンスとも思えたし、失業手当が八ヶ月支給されることも就職活動期間を考えたら魅力的だ。

 だが、必ず良い会社が見つかるとも限らず、会社というのは入社してからでないと本当の事は分からないというリスクもある。自分が持っている資格は自動車免許とフォークリフトの運転免許くらいで特に転職に有利なものではない。



「ある程度の貯金はあるから好きなようにしていいよ」


 盆休みに美香はそう言ってくれたが、家族がある身としては安易に失業するのもどうかと思う。



 肩身は狭くなりそうだが、とりあえず西村印刷と同業でスキルが活かせる西村オクダの営業をしばらくやってみよう。あとの事は会社の様子を見てから考えようと思った。


 ()()()()()そうすれば今までとほとんど変わらない生活が送れるのだ。



 正直に言えば転職なんて考えるのは面倒だった。


 それまでだって()()()()()頑張って何とかしてきたではないか。


 将来への不安を感じても一瞬で振り払える自信と若さがあった、懐かしい時代。


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