Do you like widow?
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Do you like widow ?
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その日もひどく暑かった。
セブ島のリゾートの門を出て村の中心へ歩いて行くと、昼食の用意だろうか匂いもなつかしい柴を焼く煙が立ち昇ってる。
日差しはテッテ的に強い。
帽子をかぶってても地面の照り返しが強烈で、まるでフライパンの上を歩いているようだぜ。
40度は軽くイってそうだ。
ぬかるんだ道端にヤシ材で建てたアバラ屋の店がある。
「サリサリ・ストア」といって、昔の日本のヨロズ屋に当たるかな。
駄菓子から日用雑貨・食料品・穀物や衣料まで何でも並べて売ってる。
乾パンの出来損ないのようなのが軒先に吊るしてある。
たぶん、アリが来ないようにしてあるんだろ。
万引きを防ぐためだろう、ガラスの代わりにフェンスを張ってある。
おもてに粗末な長椅子が出してあって、おばさんが坐っている。
還暦ぐらいか。色が浅黒く顔の刻まれた皺が深い。
外人が珍しいのかジロジロ俺の顔を見ている。
喉が乾いたのでコーラを頼んだ。
この村の店では冷やしたコーラは5ペソ(約12円) 、冷やしてないのは1ペソ安い。
だがこの暑さじゃ冷やしてねぇのはヌルくて飲めないだろう。
コーラはペ○シで、妙に薬くさい味がする。
オバサンの横に坐って飲んでいると、オバサンはためらいながら聞いた。
「 ハポン?(日本人?) 」
「 Yeah. 」
「 Have a wife ? 」
「 Yeah. 」
すると彼女、言おうか言うまいか迷った挙句、思い切ったように言った。
「 Do you like a widow ? 」
はて・・ 「 うぃどう 」とは何ぞや?
ああ・・、そういえば昔、誰やらの歌で「ロックンロール ウィドウ」ってのがあったな。
未亡人のことか・・。
えっ?、なんだ? ナンパか?
俺はギョッとして聞いた。
「 You ? 」
するとオバサンは吹き出して「 No No. 」と言いながら奥を指差した。
見ると、店の奥では若い女が鼻をたらした子供を抱いている。
「 Your daughter ? 」と聞くとそうだという。
けっ、このババア、てめぇの娘に客引いてやがる。
一瞬怒鳴りつけてやろうかとも思ったが、これも貧しきがゆえかも知れないな。
日本人はみんな大金持ちとでも思ってるのかも知んない。
たしかに、娘が日本人と結婚すると家族全体が潤うそうだ。
この国の家庭は一般的に大家族制。
親子兄弟はもちろん、従姉弟ハトコ 親戚も同居してる場合が多い。
一家10人、15人なんてのはザラ。
そして、お互い経済的に助け合う。
当然、金持ちの婿さんは全ての家族に援助するべき。
子供達は高等教育も受けられるし、家族の食卓も途端に豪華になる。
だから、フィリピンでは日本人はやたらモテる。
それをバカな日本の男は自分がモテたと勘違いをする。
云っとくが、それはアンタがモテたんじゃなくて、アンタのフトコロの財布がモテたのヨ。
残念〜!!
ジパングの野郎ども、心すべし。
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