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91 今後の行動

俺は移動しながら追憶の腕輪で見た記憶を思い出していた。

そこにはこの世界で冬花を襲う人間たちの情報が多分に含まれている。

俺は冬花を、そしてカグツチを狙う相手に容赦するつもりは一切ない。

その行動の苛烈さはどちらの世界でも異常であると認識はしているが俺はそれを分かっていながら変える気は無かった。

そして、それらを確認するために俺はアリスの母であると言うノエルに更に詳しく話を聞くため声を掛けた。


「ノエルさんでいいのか?ちょっと話があるんだが。」


するとノエルも分っているのか俺に近づきアイテムボックスから紙束を取り出してそれを渡してきた。


「私の事はノエルでいいわ。それと君が知りたいのはこれでしょ。この紙には始末した相手の情報が記載されているわ。確認した後に情報は頭に叩き込んで紙は始末して頂戴。」


ノエルは小声で説明すると何食わぬ顔でその場を離れて行った。


(何者なのか知らないが用意周到な事だ。)


そして先ほどの部屋にいったん戻ると先ほどの試合の話をした後に解散となった。

その際にダートの斧を俺が修復し周りの者の度肝を抜いた事もあったが俺達は気にする事無くいつもの通りの平常運転だ。

しかし解散後、俺たち3人とノエルたち4人は部屋に残り話を続けていた。

まず先ほど資料を凄い勢いで読むとその資料を窓から放り投げ魔法で焼き尽くし灰にする。


「想像以上だな。俺が知っている人間は商人から貴族迄殆ど始末されている。しかし、ディエルの名前がないのは何故だ。ノエルたちなら確実に始末していると思ったが。」


するとノエルは苦笑を浮かべ、それに続く様にアリス達も互いに顔を見合わせて苦笑を浮かべた。

どうやらここにも俺の知らない何かがあったらしい。


「ああ、あの子ならそこから見える庭で野菜を栽培しているわ。ほらあそこにいるのがディエルよ。」


そう言ってノエルが示した場所に視線を向けるとそこには体つきのいい男とメイドと思われる少女が一人。

それと農作業服を着た少女と気配からかなりの腕前と思われる女性が1人、畑で作業をしていた。


「ディエルは国王を殺そうとしたけど王位継承権を剥奪して今はああやって畑で働かせてるわ。当然野菜は城のみんなで美味しくいただいてるから無駄にはしてないわよ。」

「いや、そこは良いんだがそこまでやってよく国王は許したな。」


するとノエルはその疑問に答える様にアリスに優しい笑顔を向け蒼士に告げた。


「子供が可愛くない親なんて普通はいないのよ。特にこの世界の様にいつ死ぬかもしれない所だとね。あちらの世界では子を殺す親もいるけどそれは何も無い者かまたは持ちすぎてる者が行う愚行ね。まあ、あなたも子供が出来れば分かるわ。」


そう言って後ろにいる冬花とカグツチを見てニマニマ笑う。


「それにこれを使って人格が変わるまで再教育したからね。」


そしてノエルは気付薬Jと書かれた小瓶を取り出し俺に渡してきた。


「これは・・・気付け薬J?」

「ええ、死にそうになる程キツイ気付け薬なの百合子の自信作なんだけど嗅いでみたいなら言ってね私達は逃げるから。」


そう笑顔で告げるノエルだが目は本気である。

それを見て俺も開栓するのを思い止まり瓶をノエルへと返した。


「そんなにキツイのか?」

「ええ、今の所これに耐えた者はいないわ。資料見てみる?」


するとノエルは使用時に集めた資料を俺に差し出して来る。

そしてそれを受け取りページをめくり始めた。

するとそこには悪魔の研究結果が書き込まれており俺ですら軽く顔が引き攣るのを感じる。


そこには動物から人間にいたるまでの実験結果があり、鼻のいい動物は匂いを嗅いだ直後に暴れ狂い失神あるいは死亡したと書いてある。

しかも魔物で獣型は全滅のようだ。

そして人間いは人格が崩壊するほどの苦しみを与えたと書いてある。

その主な人物はディエルであり、これを見た限りでは死よりも辛い地獄を味わったようだ。

そしてそれ以外の者達は殆どが聖王国のスパイに使われている。


俺は資料を閉じるとそれを作ったであろう百合子に視線を移した。


「これ、百合子が作ったんだよな。」

「そうですよ。でもおかしいです。人を救うための薬が人を苦しめるなんて。まあ、ここにいるメンバーなら死ぬことは無いので大丈夫ですよ。戦場でもしもの事があったら使用しますね。」


その瞬間、ここに居る誰もが背中に冷や汗を流し、絶対にそんな事にはならない様にしようと強く心に誓った。

そしてこの時、目だけで語り合った彼らにはある意味では異様な連帯感が生まれ、上手く打ち解ける事が出来たのであった。


すると、話も終わったころでノエルたちとは解散と言う事になった。

しかし俺たちは自分たちの住む所をどうするかを決めてはいない事に気付く。

するとノエルたちも思い出したのかこちらへと声を掛けてくれた。


「そう言えば言って無かったわね。あなた達の拠点はこちらで準備済みよ。私達の家にも近いからついでに案内するわ。」


俺たちは安心して胸を撫で下ろしノエルたちに連れられて案内されていく。

そして家の前に到着すると、そこには少し大きめで2階建ての立派な家が建っていた。


「ここが俺達の拠点なのか?」


俺ははそこにある小さな庭のある一軒屋を見ながらノエルに問いかける。


「そうよ。ちなみに私達の家はこの隣。でもここに拠点があってもそんなに長くは居られないでしょ。魔王を倒す旅に出ないといけないのだし。」


しかし、俺は笑顔を浮かべ「大丈夫だ」と答えた。

そして、彼らの知らない情報をここで伝える事にする。


「俺達には転移がある。しかし、この転移は何処でも行ける訳じゃない。実際に見た事のある場所にしか行けないから旅は必要だ。でも、必要な時にはいつでも帰って来れるし毎日ここに寝に帰ってもいい。」


するとノエルたちは驚愕した顔を向けてくる。

なにせ、転移があれば毎日を日帰り旅行感覚で終わらせられるからな。


「そ、それじゃもしかして私達も同行しても大丈夫なの?」

「ああ、問題ない。こちらとしてもその方が助かる。出来れば1ヶ月後の魔物の侵攻は未然に防ぎたい。これについては明日以降、国王に相談だな。」


そして、ノエルたちも色々な情報を得るためにその日は一緒に食事を取る事となった。

その結果、現在ノエルの家の台所では冬花とカグツチを含めた3人が料理を作り、そこからは明るい声が聞こえてくる。


そして俺とロックは当然キッチンからは追い出され静かに椅子に座らされていた。

どうやらこの家でも男性はキッチンに立ち入り禁止のようだ。

だが、ここはロックの名誉のために言っておくが彼は料理が出来る。

それもノエルに負けない程の料理上手だ。

これは単にノエルがロックをキッチンに立たせてくれないだけであった。


そして、俺の目の前には残りの二人。

即ち百合子とアリスが座っていた。

しかし、この二人にはキッチンに立たせてもらえないのには理由がある。

それはアリスは俺程ではないが料理音痴であった。

そのためこの世界に来て早々にノエルから出入り禁止をくらったらしい。

そして百合子は加護の力もあり普通に料理が出来る。

しかし、気付け薬Jを作った製作者として料理を作らせるのに嫌な予感を感じたノエルは、百合子もアリスと一緒に出入り禁止にした。

ちなみに料理はレシピが分かりその通りに作ればまともな味になる・・・はずだ。

しかし、料理が失敗する大きな原因は小さな手抜きの積み重ねや、奇抜な発想からもたらされる。

アリスの場合は前者が当てはまり、百合子の場合は後者が当てはまった。


そして、追い出された者同士、少し落ち込んだ心境で静かに待っていると料理が完成したのかキッチンから3人が戻って来る。

その手には湯気を立てる鍋やフライパンが握られ美味しそうな香りを部屋中に漂わせていた。


「それじゃあご飯にしましょうか。実は冬花ちゃんが百合子ちゃんの為にあちらからお米と漬物を持ってきてくれたの。それに味噌や醤油といった調味料に私が欲しかったスパイスもよ。これで料理のバリエーションも沢山増えるわよ。」


すると冬花は鍋をテーブルに置くと、そこには百合子の為に作られた味噌汁が入っていた。

しかも今日はスタンダードに豆腐とワカメである。


すると百合子は久しぶりの日本食を見て子供の様に大はしゃぎした。


「ありがとうございます。実は調べてもらった所この世界には日本食を作る為の基本的な調味料が無いようなのです。前回来た時はそれ所ではなかったので我慢出来ましたが、今回は色々余裕があり過ぎて日本料理が恋しくなっていたんです。」


その様子を見て全員が百合子に優しい目を向けて微笑んだ。

実は彼女は前回の時の記憶から子供らしくない事が多い。

そんな百合子が笑顔を浮かべて大喜びする姿はノエルたちから見ても珍しい事であった。

そしてこの日、百合子はお米と味噌汁と漬物だけでお腹を膨らませて食事を終えてしまう。

しかし、その顔には満足そうな笑みが浮かんでおり、今日に限ってはノエルも栄養バランスなどの事は口にしなかった。


そして、今後の予定を決めるため話し合いが行われた。


「私はそろそろカレーを作るべきだと思うの。」


突然そう言ったのは何を隠そうカレー大好きなアリスであった。

それは各国を飛び交い、仕事をこなしている両親が不在の際、彼女の食事がレトルト系に偏るためである。

そしてその時、彼女はカレーという最強の料理に出会った。

それは肉やパンに合い、野菜とも相性抜群。


そして、それは当然ノエルも知る所であり、あちらの世界ではアリスの為にカレーを自作する事もあった。

しかし、今はスパイスには限りがあるため大事に使わなければならない。

その事をノエルはアリスへと伝えた。


「アリスちゃん。今は限りある材料で作るにはカレーはスパイスを使いすぎちゃうわ。だから今は我慢して。」


すると途端にアリスはがっかりした顔になり机へと視線を落とす。

しかし、ここで冬花が助け舟を出す様に一つの箱を取り出した。


「大丈夫よアリスちゃん。日本でもカレーが大人気だからこんな物を用意したわ。さすがにノエルさんの味には届かないかもしれないけど今はこれで我慢してね。」


そして取り出された箱に視線を移したアリスは先ほどまでの暗い顔が吹き飛び、目を輝かせて冬花の腕に飛び付いた。


「カレー、カレーだわママ。これで明日はホームランね。」


アリスは興奮のあまり、何処かのCMの様な事を叫ぶとカレーを抱きしめて席に戻った。

その際、冬花とカグツチはノエルに近寄り小声で耳打ちをする。


「ここだけの話ですが、カグツチは神様だからあちらの世界に自由に帰れるんです。」


するとさすがのノエルも思いもよらなかった事実に驚きの表情が顔に浮かぶ。


「それでだ。もし必要な物資があったらあちらで手に入れて来よう。日用品程度なら問題なく持ってこれる。」


するとノエルは少し悩むと「分かったわ」と答えるがこの事は後回しにした。

ちなみにケルベロスのユノもあちらに帰れる事をノエルは知っているが見た目が犬の為、今までは諦めていた。

それに頼むにしても食っちゃ寝が仕事の様に過ごしていたユノに頼むと確実に間違えた物を買って来る。

なので本当はこの提案にノエルは心の中で踊り出したい程に喜んでいた。


「それで、それは何処までの人間に話してもいいの?」

「このメンバーなら問題は無い。知らないのは彼方のロックとアリスだけだ。百合子は既に知っているから伝えなくても大丈夫だ。」


そしていったん話を終えて2人は席に戻る。


「それでは話を続けます。それでは明日の夕飯はカレーにします。冬花ちゃんたちもよければ明日また来てね。」


そしてノエルは笑顔で3人に伝えると旅の話に入った。


「蒼士君たちのおかげで旅は我々が同行しても問題ないとなりました。それに転移があるので毎日家でご飯が食べられます。しかし、もしもの時は野営する事もあるのでその事は各自考慮してください。」


しかし、それもそれほど問題になる事は無さそうである。

例えば俺と冬花のアイテムボックスは無限に入るため家ですら入れる事が出来た。

そのためアリス達と出会った家をそのまま地面ごと切り取り持って行けば突然の雨が降ろうと困ることは無い。

それに、作ったばかりの家をあのまま放置するのは勿体ない。

俺はその事をノエルへと提案してみる。


「そうね。それじゃお願いしようかしら。荒らされたくないから明日にでも回収をお願い。」

「ああ、分かった。しかし、倒壊していようが俺の建築スキルと修復スキルを使えば元に戻せる。その場合、中でなくなっている物は買い直さないといけないがそこはすまないが任せる。」

「ええ大丈夫よ。もともと大したものは置いてなかったから。取られそうな物はアイテムボックスで持ち運んでるわ。」


そして俺は明日、あの家を取りに行く事が決まった。

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