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84 闇ギルドの後継者②

その部屋では今からある話し合いが行われようとしていた。

そのメンバーはエルフが5人。

ノエルたち4人。

国王一人である。

そしてその中で最初に口を開いたのはパメラであった。


「この手紙を送ってくれたのはそこのお嬢さんかね?」


そう言って手紙を取り出すとそれをノエルへと見せる。


「ええ。私がその手紙を送ったノエルです。ただ人間の年齢ではもうお嬢さんと言う歳ではありませんが。」


そう言ってノエルは簡単に自分たちの自己紹介をした。

そして、それに合わせる様にパメラも、もう一度自己紹介を行う。


「それで、あなた達が異世界人であるのは本当かね?この手紙にはアンタ達の事やもう少しで魔王が現れることまで書いてあるけど。」


するとノエルは頷いて肯定を示す。

そしてアリスと百合子に視線を向けた。


「ちなみにこの子達は私の娘とその友人ですが彼女たちは今から少し先の未来から神の力によりこの時間に送られたそうです。結果として今回は私達がこの世界に多分に干渉したため、歴史に違いが出ていますが魔王の出現は神の意志が関わっているので必ず起きるそうです。そして私達はその時に現れる勇者たちを護るために現在活動しています。」


そう言ってノエルはここで闇ギルドの役割と自分たちがあと少しであちらの世界に帰らなければならない事をパメラに伝えた。


「そうかい、それじゃ仕方ないね。それにアンタの判断も正しいよ。他の種族は短命だから世代を重ねれば記憶が薄れて同じ過ちを繰り返す。それを監視するにはエルフはうってつけさね。ただ、その場合の人選は難しいね~。」


しかしパメラはそう言いながらもミストをチラチラ見て視線を飛ばしている。

そのあからさまな行動にミストも気付いたのか、凄く嫌そうな顔をすると視線を逸らした。

するととうとうパメラはミストに視線を固定して見る、と言うより睨み始めた。


「ジーーーー」


しかも口にまで出し始めたその態度に、次第にミストも耐えられなくなり視線をパメラに戻した。


「嫌です。」

「まだ何も言って無いよ。」


するとパメラは頬を膨らませてはぶてて見せるが見た目が少女だけによく似合う。

しかし、中身は5000歳を超える怪物である。

そのため、それを知るミストに引く気配は無い。


「どうせ私にこの話を押し付けようと考えているんでしょう。嫌ですよ。私にはアリシアと言う可愛い盛りの娘がいるんですから。それにこういう闇の裏ボスはまさにパメラ様のキャラでしょう。」


すると横で聞いているマルクスとローゼはクスクス笑い肯定する様に声に出さずに頷きで返す。


「そうかい。理解のある部下を持つと助かるよ。ならば私は議長としてお前に命令する。今後100年、闇ギルドを束ね監視しな。議会の方は私が根回ししとくから安心おし。」


するとミストはムンクの叫びの様な顔をパメラに向けそのまま机に倒れた。

そんな彼を見てノエルは少しだけ手助けをしてあげる事にする。

彼女も一児の母として彼がこのまま娘と会えなくなるのは可哀そうに感じたのだ。


「ミストさん。別に一人で全部やらなくてもいいんですよ。殆どの事は各支部で判断できるようになってますし、闇ギルドの本部をエルフの国に置けばいいんですから。それにエルフには特殊な情報伝達手段があるのでしょ。それを使えば娘さんの傍にいても仕事は出来ますよ。」


するとミストは何も無かったかのようにむくりと体を起こしてノエルへと視線を向けた。


「ありがとうございます。最近娘が言うんですよ。お母さんこの人誰って。妻も護衛で留守にしがちな私に対して「誰でしょうね~」って返す始末。これ以上家を空けると家庭が崩壊する所なんです。」


そう言ってミストはノエルに対して深く頭を下げて感謝の気持ちを伝えた。


「まあ、人員の獲得は任命したパメラ様がしっかりやってくれますよ。」


そしてノエルは最後に最も大変な仕事を言い出しパメラに押し付けて話を終えた。

するとパメラも風向きが悪くなってきたのを確認して話を変える。


「そ、それは良いとして後は魔王だね。これについては何処まで知ってるんだい。」

「実はそっちに関してはあまり分かってる事がありません。ただもう一人の家の子なら何か知ってるかもしれませんね。アリスちゃんちょっと呼んでくれる。」

「分かったわママ。ユノ、ちょっとここまで来てくれる。」


アリスがそう言った瞬間、彼女の横の足元が光りそこから一匹の犬が現れる。

するとユノを見て5人のエルフは即座に立ち上がり警戒した目でユノを見つめた。


「なんだいその犬は!?普通の犬?いや、召喚獣かい。途轍もない力と死の気配を感じるよ。」


すると大人しくお座りをしていたユノは口元を歪めニヤリと笑う。

そして部屋に合わせたギリギリのサイズまで巨大化すると3つの首を表しそれぞれが言葉を発した。


「我はケルベロスのユノ。冥界の門の番犬にして神ハーデス様に仕える者だ。」

「しかし、伊達に長くは生きていないと言う事か。この世界で我の事を見破ったのはお前たちが初めてだ。」

「まあ、恐れる必要はない我らは敵対関係では無いのだからな。」


しかし、そんなユノにアリスとノエルからお叱りが飛んでくる。


「こらユノ。こんな所で大きくならないの。床が抜けたらどうするのよ。」

「それに気配をこんな簡単に悟られるなんて。今夜はユノのご飯にお肉は抜きかしらね。」


すると、途端にユノの体が子犬サイズまで小さくなり、気配も普通の犬の様に感じ取れなくなる。

そしてその体でユノはキュンキュン言いながらノエルの足へと擦り寄った。

それはまさに何処から見ても普通の子犬。

だが、その真の姿を見た後ではその余りなあざとさに呆れるしかなかった。

しかし、ノエルはそんな事はお構いなしにその場にしゃがみ込んでユノの頭を撫でる。


「やればできるじゃない。お客様の前では今後気を付けなさいよ。」


そして、ユノは子犬の姿でアリスの膝の上に乗せられその威厳を全て失った。

その姿にパメラたちは呆気に取られ再び席へと戻る。

するとそれを見たユノは今日の夕食の為に再び話し始めた。


「我はこの世界に来てからも時々ハーデス様の元に戻り情報を得ていた。」


するとそれを聞いてアリスと百合子は驚きの視線をユノへと向ける。


「え、あんたハーデスの所と行き来できるの!?」

「当然だ。我は門の番人だぞ。我一人ならゲートを開けば容易い事だ。特にこの世界は召喚士の為に世界中に空間の緩い所が沢山あるからな。我らの世界に比べれば簡単な事だ。」


すると、アリスは自分の両親が驚いてない事に気付きそちらへと視線を移す。


「二人は驚いてないけど知ってたの?」

「ええ、何処に行ってたかは知らなかったけど時々転移して何処かに言ってたのは知っていたわ。」

「まあ、俺達が寝てる間に行ってたみたいだけどな。あれだけ気配が乱れれば目を覚ますさ。

「う~む。極力気配を押さえてゲートを開いていたのだがな。やはり二人には気付かれていたか。」


そう言って溜息を吐くと再び前を向いて話し始めた。


「それで魔王だがこれは元神であるようだ。我らの世界では邪神と言うがな。しかも邪神になって滅びた神は信仰を失った者達ばかりと聞く。そのため再び蘇ることは無いようだ。それでお前たちに問うがこの世界はこのままで大丈夫なのか?我らの世界の神々も少し心配していたぞ。このまま神が減り続ければこの世界はいつか滅びると。」


すると、パメラは口に手を当てて昔との変化を思い出しながら比較し始めた。

そしてそこには今思えば少しずつが今となっては大きな違いが生まれている事に気が付いた。


スキルの習得が困難になった事。

作物や薬草が昔の様に育たなくなってきている事。

出生率の減少に自分達以外の種族で寿命が短くなってきている事。


上げればきりがないがそれらを昔から見て来たパメラには何故今まで気づく事が出来なかったのかと疑問が生まれる。

そして、パメラは額に汗を浮かべてユノに話しかけた。


「思い当たる事がある。と言うよりあり過ぎるね。しかし、なぜ今までその事に気付かなかったのかが分からないよ。言われるまでは何も感じなかったからね。」


するとその言葉にユノは頷いて仮説を告げる。


「もしかしたら今の主神が世界に対して思考誘導を行っていたのかもしれん。我らの世界でもあるが都合の悪い事を人々の目から隠すために用要られる。しかし、言われてすぐに思い当たる事があると言う事はかなり危ういかもしれんな。これは何か手を打たねば魔王を倒しても世界の滅びを加速させるだけかもしれん。」


そしてその予測にこの世界のメンバーは目を見開いて驚愕する。

しかし、この世界の神々は自分たちの仕組みの事を秘匿している。

そのためどうすればいいのかが分からずただ茫然とするだけであった。

するとユノは両世界の神々のシステムを比較し類似点を告げた。


「我らの世界もこちらの世界も信仰によって神は力を得るのだろう。我らの世界では一度滅ぼうとも何らかの手段で人々がその存在を知り、信仰が復活すれば、自然と神も復活する。時間はかかるが試してみてはどうだ。」


すると横で聞いていたノエルはそれを肯定する様に提案を国王たちに伝える。


「城の書庫に昔の神の事が書かれた本が挿絵付きで幾つかあったわよ。それをもとに施設を作ってみたら。最初は何も利益は無いだろうけど神が復活すればそれで得られる物があるはずよ。」


しかし、ノエルの提案を聞いて国王は彼女へとジト目を向ける。


「どうしてお主がそれを知っているのだ?」


するとノエルはテヘっと舌を出して笑い、国王に「忍び込んじゃった。」と告げた。

国王はその返答に溜息をついて頭を左右に振った。


「まあ、わが国にはお前を止められる者はいないのだから仕方ないが次からは話は通しておくから許可を取ってくれ。」


そして国王は脱線した話を戻すためにパメラに視線を向けた。


「それなら我らはまず、この国に無い教会を作り祈る事から始める。」

「こちらもそうするしか無いだろうね。私はともかく孫たちにもこの世界を引き継いでもらいたいからねえ。」


すると、ユノは伝える事は伝えたのでアリスの膝から下り光りに包まれ消えていった。

どうやら再び番犬として先に家へと帰ってしまったようだ。

アリスはそんなユノを目で追い、手の中から消えたモフモフを名残惜しく思う。


そして、ノエルたちも用件は済んだため席から立ち上がった。


「それじゃ私達もそろそろ帰るわね。ミストさんも仕事の伝達があるから必ず家に来て。エルフの国は遠いからそんなに頻繁には来れないでしょ。」

「分かった。明日には行かせてもらう。」


ミストと約束を交わしたノエルたちはそのまま部屋を出て帰路についた。

すると横で静かに聞いていたローゼはマルクスとクレアに視線を向ける。

そして立ち上がると同じ様に部屋の出口へと歩き出した。

それを見てパメラは首を傾げローゼに声を掛けた。


「お前たち、何処に行くんだい。」


するとローゼは「え」っと声を出して笑顔で振り向いた。


「ちょっと娘のララに会いに行こうと思って。折角ここまで来たのですから娘の顔くらい見ておきたいわ。」


その途端、パメラはローゼたちに叫び声を上げる。


「お、お前たちだけ狡いぞ。私だって孫に会いたいのを我慢して仕事をしているというのに!」


しかし、その訴えはローゼたちには届かず彼らは笑顔で「フフフ」「ハハハ」と手を振るだけであった。

そして3人はパメラとミストを置いて部屋を出て行ってしまう。

そのやり取りを見て国王は苦笑を浮かべ溜息を吐く。


「どうやら何年生きても我々とあなた達であまり違いは無いようですね。」


するとパメラは国王に顔を向け鼻息荒く「何を当り前を」と言った。


「我らの違いなど生きる長さが違うぐらいしかないんだよ。それに何年生きても子や孫は可愛いもんだしね。」

 

そしてパメラは苦笑を浮かべ、国王もディエルの事を思い苦笑を深めた。

しかし、彼女は再び真面目な顔になり国王を見つめる。


「あんたの息子の事も聞いたよ。今回は偶然こちらの被害者が無く、多くの同胞を救ってくれたから何も言わないつもりだったけどねえ。もし悩んでいるなら王としてではなく1人の親として考えてやりな。失った後じゃ後悔しかできないんだよ。」


すると国王は自分より遥かに長く生きているエルフの言葉に耳を傾け力強く頷きを返す。

そして彼はこの時ディエルを本気で更生させる決意を固めた。

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