表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/148

75 新生闇ギルド

時は少し遡り、ここはアルタ王国のとある貴族の館。


「クソ、まだ闇ギルドとは連絡が付かないのか。」


その男はこの国の貴族の一人で闇ギルドに拠点を貸し出していた人物である。

そしてその貴族の前には執事服を着た若い男が顔に恐怖を張り付かせて立っていた。

この執事は闇ギルドとの仲介を担当する者であり、不要になればすぐに始末される。

その事を本人も薄々は気付いているが家族のために逃げ出すわけにもいかず、ここで主からの罵声を浴びていた。


「申し訳ありません。数日前までは問題はなかったのですが、突然全員が姿を消してしまいまして。他の支部にも確認に赴きましたが一人もおらず・・・。」


すると主の貴族は机を強く叩きつけた。


「言い訳はいい。とにかく探し出せ。次の取引までに時間がない。あと1カ月で準備できなければ私は破滅だ!」

「畏まりました。全力で捜索します。」


そう言って若い執事は部屋を出て行った。


「こうなったら仕方ない。他の奴らを使って集めるか。」


そして男はベルを鳴らす。

すると新たに一人の男が現れた。

その者は一般的な私服を着た男でこの館には相応しくない身なりをしている。

しかし、貴族の元には稀に指名依頼として冒険者が訪れる事もあるため怪しむ者は誰もいなかった。

入って来た男は薄く笑うと貴族に話しかける。


「ライル様。お呼びでしょうか。」


男は目の前の貴族に一礼し、隠れた口元を一瞬吊り上げる。

この男は闇ギルドとは関係ない犯罪ギルドから来た者で、何処から洩れたのかライルが闇ギルドと繋がりがある事を突き止めた。

そして、自分の所属するギルドをライルに売り込みに来ているのだ。


「貴様らにも少し仕事をしてもらう。それ次第で今後の対応を検討しよう。」


すると男は顔を上げて問いかけた。


「それで仕事とは?」

「女と子供を攫いバレない様に連れてこい。」

「それだけですか?」

「ああ、お前たちに期待はしていない。ただ攫うのは孤児や身内のいない者だ。それ以外はすぐにバレて足が付くからな。」


すると男は再び一礼して下がって行った。

そして扉から出ると声を殺して笑い出した。


(ククク、思った通り上手くいった。こちらの調べでこの町の闇ギルドが壊滅した事は分かっていたんだ。このままこいつを後ろ盾にしてこの王都で伸し上がってやるぜ!)


そして、次の日から町で孤児や若い女性が消え始めた。

しかし、その者は孤児であったり身寄りがない者ばかり。

気にする者はいても訴える者は現れない。

また孤児院の子供が消えても手を差し伸べる者は少なく、国王にこの事が伝わる事もなかった。

もし伝わっていればこの事件はもっと別な方法で解決されていただろう。

そしてしばらくするとノエルたちは町へと戻り新生闇ギルドを始動した。


すると闇ギルドのメンバーの元にある情報がもたらされた。

そして情報を得たメンバーはすぐにリーダーであるエドガーの元へと向かう。


「リーダー、孤児院で最近消えた子供が何人もいるそうです!こりゃ俺たちのしていた仕事を誰かが代わりに請け負ったと考えるべきででは!?」


するとリーダーは顔を歪ませ過去の自分を思い出した。


(俺達はどうしてあんな事をしてしまったんだ。悔やんでも過去は変わらないが今救いを求める子供たちは助けられるかもしれん。)


そしてリーダーはすぐにノエルたちへと情報を伝えるために伝令を走らせた。

伝令の男は急ぎノエルの元へと向かい、その事を伝え指示を仰ぐ。


「そう、あなた達の仕事をね~。」


そう言った彼女はとても穏やかな表情をしている。

しかし、体から滲み出る闘気がそれを否定していた。

どうやらかなりお怒りのようだ。


「それで調べはついてるの?」

「いえ、まだです。しかし、同じ貴族なら取引相手も日時も既に決まっています。最悪そこに行けば一網打尽に出来ます。」


するとノエルは笑みを浮かべ頷いた。


「それじゃ、その日までにこちらでも調べをしておくわ。あなた達はそれまで自由に動きなさい。」

「分かりました。リーダーにもそう伝えておきます。」


そう言うと伝令の男は走り去っていった。

そして彼女は家に入るとロックに今の事を伝え家から出て行く。

しかし、彼らの背中には鬼の姿が浮かび、ユノはこっそりとその視線から隠れたのは言うまでもない。

もはや地獄の番犬の誇りは何処へ消えてしまったのか。


そして、数日後の夜。

犯罪ギルドのメンバーは拠点に集まり話し合いをしていた。


「この仕事が終わればアイツを後ろ盾にして一気にこの町の裏を牛耳る。そうすればここは俺達の天下だ。」

「しかし、そんな上手くいきますかね?」

「心配するな。もしもの時はあいつを力ずくで従わせればいいだけだ。」


そう言って男は高笑いを始め、それに合わせて周りからも笑い声が広がる。


「おもしろいお話をしてるのね。」


すると男の後ろから突然声が聞こえ振り向く事も出来ずに首が切り落とされた。


「き、貴様。いつの間に!」

「ボス!」


そして男の死体は血を吹きながら倒れ、その横に立つ女を明かりが映し出した。


「こんばんわ皆さん。そして、さようなら。」


その途端彼女の向かいに居た男が倒れて音を立てた。

そして視線が逸れた一瞬をついて虐殺が始まる。

狭い部屋の中、集まっていたこの犯罪ギルドのメンバーは首が飛び体を切り裂かれる。

時に影に縛られ最後まで抵抗すら出来ず屍を晒す事になった。


「ロックこれで全員かしら。」

「ああ、ノエル。人数も間違いない。」


そう言って始末を終えた彼女たちは再び闇に消えていった。

その後、家は燃やされるが周りの家には被害はなく。

身元不明の殺人死体が多く出たが、この世界ではよくある事だとそれを気に止める者はいなかった。


そして、数日が過ぎ取引の日が訪れる。

場所は町の外にある森の中。

そこまで人間を運ぶのは大変だが、これは既に貴族のライルによって手配済みであった。

運ぶ際はクスリで眠らせ荷物の様に箱に詰めて運び、起きて騒がれても大丈夫なように魔導士が荷馬車に防音の結界を張っている。

そして門にはライルが買収した兵が門番をしているため形だけの検査をした後に素通りである。

そのため、いまだにライルの犯行は見つかっておらず、町からは人知れず子供や女性が消え続けていた。


そして、約束の時刻が訪れる。

ここは森の中の為月明かりも届かず、発見されるのを防ぐために最低限の灯しかない状態である。

そんな状態で数人の男がライルの前に現れた。


「約束通りの時間ですね。いつも感心しますよ。それで、今回も問題ありませんでしたか?」

「当然だ。それに時間を守るのは貴族のたしなみ。それで、報酬は?」


すると男の後ろで控えていた者が大きな箱をアイテムボックスから取り出した。

そしてその箱の蓋を開けるとそこには幾つものアクセサリーが並んでいる。


「この通り強化のアクセサリーです。これだけ集めるには骨が折れましたよ。まあ、最近は質の良い物が出回り始めましたからね。もしかすると誰か優秀な製作者が売り捌いているのかもしれませんけどね。」


するとライルの目が途端に鋭くなった。

恐らくは捕らえれば大きな金儲けに繋がると考えたのだろう。


「そいつの居所は分からないのか?」


すると目の前の男は溜息を付いて首を横に振った。

しかし男は今も笑みを絶やさず、互いに信用してはいないために嘘の可能性もある。

そして、それが分かっている男は再び溜息を吐くとライルに釘を刺した。


「もしもの話ですからそんなに本気にしないでください。それにまだ売っている人物の特定すら出来ていませんよ。」


しかし、ライルは男を不振の目で見つめ続ける。


(もしかしてこいつら、その制作者を既に捉えているんじゃないのか?)


それにライルには大きな目的があり、この男との取引は必要不可欠であった。

その目的には兵を強化するアイテムが大量に要る。

だが、表立ってこの手のアイテムを買い漁れば不振に思われるのは確実であった。

それはライルの目的、いや彼が受けている命令の妨げになる。

そして考え事をしていると男は手を叩いてライルの意識を自分に向けさせた。


「それでは約束通り荷物は持って行きます。次の取引の日は後日こちらから連絡をいたします。それでは・・・・。」


その時、男は突然言葉を止めて周りを見回し「チッ」と舌打ちをすると大きく一歩飛び下がった。


「裏切りましたね。これはどういう事ですか?」


するとライルは首を傾げ周りを見回した。


「何を言っている?私が裏切るとはどういう事だ。」

(どういう事だ。これはこの男の仕業ではないのか?)


その表情と声音に嘘が無いと感じるが男は剣を抜き構える。

そしてライルから目を逸らすと誰もいない筈の森へと向きを変えた。


「そこにいるのは分かっています。出てきてください。さもなければ魔法で焼き尽くしますよ。」


すると、男の視線を向ける木の裏から一人の男が現た。

しかしその姿にライルだけでなく、男の方にも見覚えがあるようだ。


「あなたでしたか。しかし、なぜあなたがここに?」


その木の裏から現れたのは闇ギルドのリーダー、エドガーである。

彼は当然取引の場に来た事もありライルや男とも顔見知りである。

そして男達が何処から来たのかも知っている。

しかし、その体に纏う気配から男は剣を下ろす事もなく警戒を続けた。


「ああ、実は今日ここに来たのは目的があってな。」


そう言ってリーダーも剣を抜いた。

すると周りから何人も仲間が現れ、ライル達に剣を向ける。

その途端にライルは激昂し声を荒げた。


「貴様、裏切ったな!」


ここしばらく連絡が取れず、こうして剣を向けて来る事でライルはそう判断した。

しかし、エドガーは鼻で笑うとライルへと視線を向ける。


「裏切ったのではない。改心したんだ。」


そう言ってエドガーはライルへと飛び込み剣を振り下ろした。

すると先程の男が横から剣を突き入れその攻撃を寸前で防ぐ。


「何!?」


だが、男の剣はエドガーの攻撃を防ぎきれず、驚きの声と同時に大きく弾かれた。

しかしエドガーの剣も軌道を外れライルの腕を浅く切るだけに終わる。

男は予想以上の衝撃が手に伝わり頭に疑問が沸き起こった。


(おかしいですね。こちらはかなり良質なアイテムで強化しているはずなのに簡単に競り負けてしまいました。もしかしてこの程度の組織が私達よりもいいアイテムを装備している?)


そして男は周りを見回し戦況を確認する。

見ればどの者も押されておりこちらに勝機はない。

そしてライルを見れば切られた腕を押さえ何かをわめき散らしている。

それらを確認した男は即座に判断を下した。


「全員撤退。この場から離脱します。」


その声にライルは目を見張り叫んだ。


「貴様、私を見捨てるのか?そうなれば今後どうなるか分かっているんだろうな?」


しかし男はライルに冷たい視線を浴びせるだけで何も言わず背中を向けた。

すると今度はエドガーが男に話しかける。


「おいおい、つれないなー。バストル聖王国の使者さんよー。もしかして自分たちの身元がバレてないと思ってるのか?」


すると男は勢いよくエドガーに顔を向け間抜な顔を晒す。

その反応だけで目の前の男が何処から来たのかが確定であった。


「本気でバレてないと思ってたのか。そう言う裏の事情や情報は闇ギルドに必ず入るんだよ。俺達を舐めるなよ。」


そう言ってエドガーは口元を吊り上げて笑みを浮かべる。

しかし、その直後男は再び背中を向け走り出した。

そして他の男達も別々の方向へと分散して走り出す。


しかし、先ほどの男以外はエドガーの部下たちに止められ結局抜け出せたのはその男一人だけである。

だが、彼は気付いていなかった。

男の背中には既に死神が張り付いている事を。


エドガーは男を放置して取り残されたライルに声を掛ける。


「それじゃ一緒に来てもらおうか。」

「私をどうするつもりだ!このまま城にでも突き出すつもりか?そんな事をしても無駄だ。私はある御方の命で動いている。例え捕まろうとすぐに解放されるだけだ。」


しかしエドガーは関係ないと顔に黒い笑みを浮かべてライルを生け捕りにした。


「クソ、離せ!こんな事をしてタダで済むと思ってるのか?貴様らは全員死刑台に行く事になるぞ。」


しかし、エドガーは手を止める事はなく縛り上げると死なない程度にその顔を殴り付けた。

するとライルはその一撃で気を失い馬車へと運ばれていく。

そして荷台に乗せられるとそのまま王都へと戻って行った。

門に着くと兵士が近寄って来てエドガーへと話しかける。


「お前か。今日は行きは一緒ではなかったな。ライル様はどうした?」

「少し手違いがあったようでな。あちらが現れずにいったん戻る事になった。ライル様は怒って後ろで寝ている。起こすと首が飛ぶぞ。」


「それはおっかないな。よし、通っていいぞ。」


ライルと繋がりを持つエドガーはそれを利用して門番を騙し、平然と中へと入って行った。

そしてエドガーはライルの屋敷には向かわず自分たちの元拠点である屋敷へと進んで行く。

屋敷はあの日から手入れもされず放置されている事は自分たちの調べで判明している。

そのため屋敷に着くと攫われた人々を下ろし部屋へと運んで行った。

しかし、中は自分たちが散らかしたとは言え色々な物が散乱している。

救いなのは最低限の掃除がされ食べ残しなどがない事であった。

しかし、ベットは荒れており食料もなくなっている。

しかも攫われた人数が一人二人ならともかく20人はいるのだ。

今の自分たちの拠点では入りきらない。


そして仕方なくここに来たが半数の者でベットを整え、もう半数で攫われた人たちを運び込み何とか寝かせることが出来た。

すると丁度その時、入り口から2人の少女が入って来た。


「ああ百合子ちゃんにアリスちゃんか。丁度いい所に来てくれた。ちょうど全員を部屋に運び込んだ所なんだ。いつもと同じなら薬で眠ってるだけなんだがどうすれば良いかな?」


エドガーは二人の少女に近寄り優しく話しかけた。

すると百合子がアイテムボックスから一つの薬瓶を取り出しエドガーへと渡す。


「この気付薬Sを使うといいよ。これは揮発性が高いから顔に近づけるだけで薬を吸い込んで薬を中和してくれるはずだから。」


すると横で見ていたアリスが何やら思い出して百合子の肩を掴んだ。

その顔には汗が流れ、引き攣った笑みが浮かんでいる。


「それ本当に大丈夫。もしあの時のだったら普通の人はショック死するんじゃない。」


すると百合子は瓶に書いてある気付薬SのSを指さした。


「このSはソフトのS。だから大丈夫。前に使ったのはのは気付薬J。」

「そのJは何を意味してるの。」


すると無意識にアリスの手に力が入り顔に引き攣った笑顔が痙攣する。

しかし、百合子は気にする事無くその質問に答えた。


「このJは地獄のJ。最強の気付け薬。」


それを聞いた途端アリスは固まり百合子はエドガーへと薬を渡す。

そして、一緒に部屋を周って人々を起こして回った。

当然起きると最初は警戒されたが横にいる百合子を見て警戒を解き静かに布団に戻って行く。

その様子に昔の自分を幻視した百合子は聖王国への怒りが再び巻き起こった。

それは途中から合流したアリスも一緒である。

そして、二人はそのままこの館に留まりノエルとロックの帰りを待つのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ