74 アルタ王国 闇ギルド壊滅
アリス達がこの町に来て数日の時が過ぎた。
その間にアリスと百合子はギルドへ通い、ノエルとロックは情報収集に明け暮れた。
しかし、互いに必ず夜には一度帰り夕飯を一緒に食べている。
ちなみにユノは家の門を護る番犬をしていた。
冥界の門を護っていた彼はそれが天職であるように(天職ではあるが)家を護っている。
傍から見ればただ寝ているだけに見えようとも守っているのだ。
そして彼は近所の子供たちに大人気である。
子供たちに乞われれば芸を披露しオヤツを貰う。
そして、時に不審者がいればそれを退治し住民を護っている。
そして今日も一日が終わり全員揃っての夕食を取っていた。
「パパ、ママ。そっちはどんな感じ?」
アリスはあえて内容を暈して問いかける。
彼らが調べている事はある意味この世界の裏の事実。
そしてそれはその辺に転がっているような情報ではないのだ。
「そうね、確証はないけど概ね輪郭は見えて来たわ。ただ、私が思った通りならこの世界はきっと長くないわね。」
そして溜息を付くと視線をロックに向ける
「それでそちらは?」
「こちらは既にこの町の、いやこの国で最大の拠点を掴んでいる。いつでも制圧可能だけどどうする?」
するとノエルは笑顔を浮かべて「今夜にしましょう。」と告げた。
これは即ち、この国にある闇ギルドの本拠地を見つけたと言う事でもある。
そして、ノエル達は裏を支配するための大きな一歩を踏み出すのであった。
夕飯が終わるとユノに家での留守番をませて4人は夜の闇を高速で進んで行った。
しかし彼らはゴロツキの多い外円部ではなく、貴族たちが多く住む中央部へと向かう。
そしてロックの足が止まるとそこは巡回の兵士が定期的に周る、犯罪とはかけ離れた城のすぐ傍の屋敷だった。
「パパ、ホントにこんな所に悪党が居るの?」
「ああ、ここは表向き貴族の屋敷になっているが、その貴族は闇ギルドの支援者でここを提供している。そしてこの中には闇ギルドの構成員が私兵として雇われいるんだ。だから手加減はいらないよ。」
すると今度はロックの指示に対して百合子が疑問をぶつける。
「殲滅でもいいんですか?使用人やその貴族も?」
「この屋敷を調査して分かたけど、ここには貴族も使用人もいない。それらは別の屋敷で貴族らしい生活をしているよ。まあ、ここのボスには私とノエルが先に挨拶しに行くから大丈夫だよ。そいつだけはまだ利用価値があるからね。」
そう言って微笑むと二人を交互に見てもう質問が無いかを確かめた。
「それじゃ、行こうか。」
そしてロックはまるでドライブにでも行く気楽さで声を掛ける。
しかし、アリスと百合子の動きは待ち望んで車に乗り込む子供のそれではない。
その速度はまさに車の如き速さであり、門の前に立つ門番二人を声を上げる暇も与えず命を刈り取った。
そして鉄の格子扉を切り裂いて二人は競う様に中へと突撃して行く。
すると二人の気配を感じ取った者がいたようで屋敷内が途端に騒がしくなり何人もの男たちが屋敷の扉を開けて現れた。
中には階段を使わず2階、3階から庭に飛び降りて来る者もいる。
そしてその様子を眺めながらアリスと百合子は足を止めていた。
すると男たちの中から一人の男が進み出ると二人の容姿を確認して口元を厭らしく歪めて見せる。
「こりゃ驚れーた。殺気に気付いて出て来てみりゃあ、こんな旨そうな奴等だとはな。お前らはもう俺達の仲間に手え出してんだ。タダで帰れると思うなよ!」
そう言ってその男が剣を抜いて構えると周りの者たちも一斉に手にある得物を構える。
そして男たちは次第に二人を囲むように動き始めた。
二人はその動きを興味なさげに見つめ包囲が完成した時、先ほど話しかけて来た男が剣を振り下ろし攻撃の合図を送る。
すると数人の男が突然手を突き出して雷魔法を放った。
どうやら剣を構えていたのはブラフで本命はこちらだったようだ。
そして男たちの魔法は目にも止まらぬ速度で進み、狙いを逸らして全て百合子へと殺到した。
男たちはその軌道を見て驚きの表情を浮かべる。
「あ、あり得ねえ。魔法が曲げられたのもそうだが何であれだけの電撃を受けて顔色一つ変えずに立ってるんだ。」
「それに焦げ目すら付いてねえぞ。」
そして、次第にその目は恐怖に染まり始める。
すると先ほどの男が声を張り上げアリス達へと剣を向ける。
「貴様ら焦るんじゃねえ。魔法を曲げた仕組みは分からねえが電撃が利かねえのは強力な耐性を備えてるからにちげえねー。もう生け捕ろうと思うな。殺す気で行け。」
すると周りからは突然非難の声が上がり近くの者は男に詰め寄った。
「そんな勿体ねえ。あの金髪の女を見てくなせえ。あんな上玉は滅多に居ませんぜ。」
「そうだぜ。それにその横のもまだ体は小さいが外見は上物だ。遊ばねえと損だぜ。」
そして更に周りの男達が意見しようとした時、男の剣は一切の躊躇なく目の前の男達を切り捨てた。
「がはーー。な、なにしやがるん・・・・!」
「・・・ゴフ!」
男の強行を見た周りの者達は口を閉ざし言葉を飲み込んだ。
そして、血糊の付いた剣を頭上に掲げ声を荒げて命令を叫ぶ。
「うるせえぞ、おめえら。そんな甘いこと言う奴はここにはいらねえ。それに手加減して勝てるならあの瞬間にケリはついてる。出来ねえことほざく暇があったらこいつらを始末しねえか。」
男の言葉を聞いて周りの者たちも納得し、再びアリス達に剣を構えた。
そして逆に先ほどから偉そうに指揮を執っている男は少しづつ下がり始める。
そしてここに来て戦闘らしい戦闘が始まった。
しかし男たちは連携をまるで無視したように個別に攻撃を仕掛けてくる。
それをアリスは危なげなく躱すと相手の胴を絶ち、首を飛ばす。
その姿はまるでダンスのステップを踏むように華麗に血の華を咲かせる彼女の姿に次第に見入る者まで出始めた。
そしてそんな中、百合子は雷を纏い戦場を駆け抜ける。
その蹴りは相手を切り裂き、その拳は相手を穿つ。
そしてその姿を捉えきれる者は誰も居らず、気付いた時には致命傷をくらいその場に倒れていた。
そして1分もかからず半数以上の敵を葬った時、先ほどの男は一気に駆けだした。
しかしそれはアリス達とは逆の方向であり、誰が見ても敵前逃亡である。
男は館に逃げ込むと他人には教えていない秘密の通路を開いて飛び込み更に走り出した。
しかし、それを後ろから追い掛けて行く存在がいる。
そして男はその者に後ろから一撃を受け、意識を失い地面に倒れた。
その頃には外にいた全ての男達は切り裂かれ例外なく死に絶えていた。
そこに先ほどまで離れていたノエルが現れる。
「アリスも強くなったのね。敵を容赦なく倒せるようになった様でママは安心したわ。」
そう言ってノエルは笑顔を浮かべアリスへと歩み寄る。
ちなみに周りには屍が散乱し、血や臓物を撒き散らしているがそれらを気にする素振りはない。
そして、アリスの傍まで行くとそっと頭に手を置いて優しく撫でた。
それによりアリスはくすぐったそうに目を細めてノエルに顔を向けて笑う。
するとしばらくして館からロックが先ほど逃げた男の襟を掴み、引き摺りながら現れた。
「アリス、百合子、お疲れ様。君たちのおかげでここのボスを簡単に捕らえる事が出来たよ。」
「此奴がボスだったのね。」
「そうだよ。最低限、君たち二人の実力を見破り逃げ出すぐらいには利口な男だ。此奴を頭に新しい闇ギルドを作る。まあ、頭にすると言っても俺達の完全な傀儡だけどね。でもこの男は今日君たちの実力を知った。逆らう事はないだろう。」
すると百合子は微妙な顔をして男に視線を向けた。
「大丈夫でしょうか?こういう男を使うのは危険なのでは?」
するとロックは凄く得意そうな顔を百合子へ向けると親指を立てた。
「大丈夫だよ。しっかり再教育はするから。そこは俺に任せなさい。」
そして男はロックにより調教・・・。
再教育を施され新生闇ギルドの頭目として新たなスタートを切る事になる。
しかし、その頃にはこの男の精神は別人となりはて、ある人物たちと共に勇者をサポートするがそれはまだ先の話である。
そして家に帰ると玄関でユノが暇そうに腹を出して寝ていた。
するとアリスも百合子も気配を消して近づき、一気にそのお腹を擽りに出る。
「ギャギョグケラクハハハハハ。」
すると寝ぼけた頭で何かよく分からない声を出して笑うと飛び起きて立ち上がった。
「我に気配を悟らせないとは何者・・・(汗)」
そしてアリス達と目が合うと途端にお座りをした。
更に器用に前足を額に当てて敬礼した。
「お帰りなさいませ。何も異常はありません。」
その姿は凛々しく、とてもついさっきまで腹を出して寝ていたとは思えない姿であった。
しかし、先ほどの姿を見ている4人はユノにジト目を向ける。
そして全員がそれを全てをスルーして家の中へと入って行った。
「さあ皆。仕事も一つ終わったから夜食にしましょう。」
そう言ったのはノエルだがその声はワザとらしく声のボリュームを上げ、ユノに届く様に伝える。
するとユノはそれを聞いて垂れていた尻尾を振りながらアリス達の後に続こうとするが、家に入ろうとした瞬間に扉が締められた。
「・・・・・。」
「ユノ、あなたは夜食は抜き。仕事しないで寝てる悪い子にはお仕置が必要だものね。今日は反省して外で寝なさい。」
その瞬間、ユノの尻尾は再び垂れ下がり扉の前でグルグル回りながら「キュンキュン」とせつない声を上げる。
それにユノはいつもは室内犬の様に夜は家の中で生活している。
そのため外には犬小屋も毛布も何もない。
あるのは冷たい地面と草むらだけである。
そして、そんなユノの鼻に中から漂ういい匂いが届き更に哀愁を誘った。
しかし、普通の犬ではない(元々犬ではない)ユノは素直に諦め、その場で丸くなった。
その目には若干涙が浮かんでいるがそれを見る者は誰もいない。
しかしその時、扉が開き中からアリスが顔を出した。
「反省してるみたいね。」
そしてアリスは扉を大きく開けて中に入る様に促した。
それを見たユニは目を輝かせるとアリスに飛び付き顔を舐めまくった後に中へと入って行った。
その尻尾は大きく振られ喜びを振りまいている。
そしてノエルの前に行くと再びお座りをした。
「ユノ、許すのは今回だけよ。」
そう言われてユノはコクリと頷く。
そしてユノの前にもノエルの作った夜食が配られた。
「私達は別に寝るなとは言って無いわ。でも時と場所を考えてね。何か不測の事態が起きた時、アリスに呼ばれるかもしれないのよ。その事をしっかり理解しておくように。」
ノエルの注意を受けている間、ユノは涎を押さえて真面目に聞いている。
その姿は待てをする犬であるがその姿に疑問を感じる者はここにはいない。
そして、ノエルも席に着くと全員で夜食を食べて部屋へと戻って行った。
当然、ユノも家の中の温かい自分のベットに入り眠る。
そして次の日からノエルとロックは町中を走り回った。
それは旧闇ギルドの本部は潰したがいまだに街中には支部が残っているからだ。
それらを周り一味を捕縛、又は粛清するためである。
当然皆殺しにしては今後の活動に差し障るため再教育が出来る者は残している。
しかし、始末した者は多く、特に幹部クラスはほとんど残らなかった。
そのため2人は一旦活動を休止させ彼らの再教育に入る事にした。
そしてある日、二人に連れられ多くの犯罪者が町を出て森へと入って行った。
それを見た者は不審に思ったがその外見ゆえに声を掛ける者はいない。
そして森の深くまで入ると二人は教育を開始した。
ちなみに再教育を受ける者たちは既に心を折られている。
そのため2人を恐怖し、言われた事は素直に従う様になっていた。
「あなた達にはしばらく訓練を兼ねてここで過ごしてもらいます。」
すると一人の男が手を上げてノエルへと質問した。
それはまるで日本に住まう学生の様でとても規律正しい様に見える。
「武器は無いのですか?それに魔物は?」
「そんなのは自分たちでどうにかしなさい。それと逃げたら殺すのでそのつもりで。死んだら魔物寄の餌として放置する様に。」
すると全員の顔が青くなり口を閉ざした。
男たちは全員分かっているのだ。
この二人ならば絶体にやると。
「それではサバイバル開始です。ちなみに私達も一緒に居るので心配はいりません。」
しかし、その言葉に彼らは更に顔色を悪くするだけであった。
ハッキリ言っていない方が精神的には楽だからだ。
そして、その日から厳しい訓練と更なる精神の追い込みが始まった。
ノエルとロックからは常に罵声を浴びせられ、頻繁に魔物を連れて襲撃が掛けられる。
そして魔物が減れば移動を行い命がけの訓練を続けた。
しかし、そんな彼らにも時に心の救いがもたらされた。
それは稀に彼らの元に訪れる百合子と数人の子供たちである。
彼らはここにいる者たちの子供で差し入れや純粋な話し相手になってくれる。
そして、彼らの心は次第に改心(調整)され訓練が終わったころには強面の真人間になっていた。
彼らは町に帰ると大量の魔石を換金する。
そしてそれで炊き出しを行い孤児院を助け仕事のない子供たちに生きる術を与える事に生きがいを感じる様になっていった。
そして、そんな彼らでも元は闇ギルドの構成員。
運営はノエルとロックの指示のもと何とか軌道に乗り活動を再開した。
しかし、彼らが森に籠っていた1ヶ月の間に町には新たな荒くれ共が集まり彼らの活動を妨げていた。
そんな状態の中で新生闇ギルドは本格的に活動を開始しする。




