65 蒼士たちは彼らを信じ学校生活を堪能する
現在アリス達は町の裏手に隠れスキルの確認を行っていた。
しかし、確認しているのは主にノエルとロックである。
アリスと百合子は既にステータスを定期的に確認していたため必要ないが、先に述べた2人はステータスを見るのは初めてであった。
そのためアリスが確認方法を教えて確認中である。
そしてノエルたちがステータスを確認するとそこには大量の職業とスキルが書き込まれていた。
職業だけでも
剣士、銃士、格闘家、暗殺者、科学者、教師、料理人、調教師、大工、スパイ、水夫、ライダー、影使いなど
そしてスキルは
剣術、槍術、斧術、棒術、暗器術、影操術、銃術、投擲術、暗殺術、縮地、料理、騎乗、指導、調教、拷問、尋問など
それ以外にも多くの職業やスキルを取得している。
そのため職業とスキルに強化された二人の強さはこの世界に置いて広く深くと何とも途轍もない状態になっていた。
なので2人の今の強さは2重に加護を受けたアリスを凌ぐほどである。
そして、実際に今のこのメンバーならこのバストル聖王国を滅ぼす事も可能であるが、それは計画上でハーデスが神罰を下す事になっている。
そしてこれはどうしても必要な事であり変更はできない。
そのためアリスと百合子は当初の計画通り一旦アルタ王国へ逃亡する事に決めた。
そして素早く町からも脱出した一行は冬花たちが現れるその日まで辛い?逃亡生活を開始するのだった。
その頃の蒼士たちは百合子たちを信じ夏を満喫していた。
俺はあれから冬花だけでなくカグツチとも親睦を深め3人は今、屋外プールに遊びに来ていた。
そして、今は更衣室の出口で俺は二人を待ち胸の高鳴りを必死に抑えている。
すると通路の先から二人の美少女が現れた。
二人とも着ている水着は背中の空いたワンピースだがその姿は周りの男を釘付けにしている。
そしてそれは俺も同じだ。
未来の俺は冬花以外には枯れているとしか思えないほどの塩対応だった。
それは最愛の者を17年探し続けた事が大きな原因になっている。
しかし今の俺はそれを知っていても心も体も思春期真っ盛りの少年。
そのためカグツチに純粋な思いを向けられるうちに彼女の事を意識するようになっていた。
「蒼君お待たせ~。」
通路から出ると冬花は手を振って俺の許に走り、その右腕に体を寄せる。
俺はその瞬間、鼓動が大きく跳ねるのを感じるが平静を装って冬花に笑顔を向けた。
ちなみに体が本能的に一点へと血を集めようとするので以前に教わった血流操作で散らしている。
そうしなければ俺は中腰となり歩行も困難になっていただろう。
「冬花、今日もよく似合ってて可愛いよ。」
その姿に周りの男は一斉に俺へと視線を集めた。
しかし、俺を見た途端「なんでこんな奴が」とこぼす者が何人もいた事が冬花の耳に届く。
そして、カグツチは初めて着る水着の前を隠しながらとても恥ずかしそうに俺に歩み寄ると上目遣いに見上げてくる。
「そ、その。こんな格好初めてなんだ。だから・・・。」
俺の前でカグツチは頬を赤く染めながらモジモジしている。
そこにいつもの勇ましさは微塵も無く、その可愛らしさに俺は一瞬言葉を失ってしまう。
しかし冬花に肘で突かれるとカグツチへと言葉を送った。
「カグツチ、その水着可愛くてよく似合ってるぞ。」
俺はカグツチの事を褒めたが咄嗟の事でいいセリフが出てこず、ありきたりな言葉をかけた。
しかし、カグツチにとってはこれでも効果抜群だったようだ。
カグツチは頬だけではなく耳まで顔を真っ赤にして俯くと無言で俺の左に移動し腕を取った。
俺はここでも鼓動が強く跳ね、それは当然、横にいる冬花にも伝わってしまった。
しかし、冬花は怒る事なくその様子に笑顔を深めると3人並んで歩いて行った。
その後ろでは俺を睨む者が複数いる事に気付いていたが俺たちは一般人だとそれらを放置した。
ちなみにカグツチは今、そこまでの心の余裕がないので気付いていない。
彼女の心の中では
(可愛い・・・。蒼士が、あの蒼士が私を可愛いって。初めて褒めてくれた。)
凄く浮かれてそれどころではなくなっていた。
そらが一つの涙に繋がるがその事には誰も気付いていない。
いや、過去の経験から冬花は気付いていた。
しかし、それでも冬花は今の状況を結果的に放置する事を選んだ。
3人は空いているパラソルを見つけるとそこへと移動して行く。
そして冬花はカグツチに買ってもらっていた日焼け止めオイルを受け取るとそれを手や足に塗り始めた。
「それは何なのだ?」
カグツチは日焼け止めオイルを始めて見たのか、それが何かわからないようだ。
そのため冬花はオイルを塗りながら説明を行う。
「これを塗らないと肌が焼けて皮が剥けたり荒れたりするの。それにこれにはとっても大きな特典があるのよ。」
「特典?」
「そうよ。」
そう言って冬花はオイルを手足に塗り終わるとオイルを俺に渡して背中を向ける。
すると目の前にその綺麗で健康的な背中が晒された。
そして当たり前の様にオイルを受け取ると冬花の背中に優しく塗り始めた。
現在、蒼士には冬花の背中が向けられ彼女の顔は彼から見えない。
しかし冬花の顔が見れるカグツチからはその表情が鮮明に見る事が出来た。
冬花はオイルを渡した時から頬を赤らめ、その顔は幸せそうな表情になる。
そしてカグツチへと目を向けると手招きをしてカグツチを傍に呼んだ。
すると冬花は蒼士に聞こえない様に彼女の耳元で小声で告げる。
「次はカグツチだからね。」
するとカグツチは顔を真っ赤に染めて冬花と蒼士の顔を行ったり来たりしワタワタし始めた。
「カグツチ、このイベントは今を逃したら次は来年かもしれないのよ。勇気を出しなさい。」
するとカグツチは悩んだ末に小さく頷いて決意を固めた。
そして俺はオイルを塗り終わったため位置を冬花の前に移動する。
彼からすればオイルを塗り終わったため二人の前に移動したつもりだった。
しかし、それはカグツチから見れば自分の順番が回って来たと言う事である。
そして今度はカグツチは恥ずかしながらも蒼士に背中を向けた。
「そ、蒼士・・・。次は私も頼む。」
そう言ってカグツチは艶のある黒髪を持ち上げて蒼士へと背中とうなじを見せる。
すると蒼士はその雪の様な背中を目の前にして再び心臓が跳た。
彼は冬花にオイルを塗るのは既に当たり前の事だと心も体も判断している。
しかし、カグツチは違う。
そのため彼女のこういう不意の行動は俺の感情を強く刺激した。
俺は隣に座る冬花に一応の了承を取るために視線を向ける。
すると冬花は「塗ってあげて」と笑顔で頷いた。
そして俺はオイルを手にカグツチへと近づくと声を掛けた。
「本当に良いんだな?」
俺は最後の確認を彼女に取った。
その際、冬花に頼むという提案は一切しない。
既に冬花に確認が済んでいるのもあるが何より自分もカグツチに触れたいと本心から思う様になっていた。
「あ、その、男に背中を触られるのは初めてなのだ。だから・・・その・・・。優しく頼む。」
そう言って顔を俯かせたカグツチの背中は少し震えていた。
それを見て俺は頷くとオイルを手に垂らし、手で温めると優しく肩から塗って行った。
すると触れた途端にカグツチの肩が跳ね次第に震えが止まって行く。
しかし、代わりに何かに耐えるような艶めかしい声が聞こえ始めた。
「ん・・・、んう。はあう・・・。んんん~~~。」
声を噛み殺していても聞こえてくるその声は俺の心を擽るが、彼はその誘惑に打ち勝ちオイルを塗るのに全力を尽くした。
そして塗り終わって手を離した時、カグツチは「あっ」と名残惜しそうに上気した顔を向けてくるが横に座る冬花と目が合い気持ちを切り替えた。
しかし、カグツチはすぐに冬花の横に行くと耳元に手を当てて小声で話しかける。
「ありがとう冬花。凄く気持ちよかった。今までで一番胸がポカポカした。」
「どういたしまして。」
そして互いに笑いあうと俺の手を取ってプールへと突撃して行った。
ちなみに今日の水着を選んだのは冬花である。
彼女はこのイベントの為にワザと背中の空いているワンピースを選んだのだ。
そして、3人はプールに飛び込むと泳いだり追いかけっこをしたりして楽しく過ごした。
すると時刻は昼前になり冬花は俺とカグツチを連れてある場所に向かった。
「これは何なのだ冬花。滑り台みたいだが。」
そう、冬花は3人でウォータースライダーへとやって来ていた。
そして昼前ですいていた事もあり順番はすぐに回ってくる。
「それじゃ滑ろうか。カグツチは前ね。」
そう言って冬花はカグツチを先頭に順番を決めて行った。
そして当然二番目は。
「そして蒼君はここ。カグツチをしっかり支えてあげてね。」
そして二番目に付かされたのは俺である。
冬花は無理やりカグツチを俺の股に挟ませ肩を掴ませる。
こういう時の冬花は俺が言っても意見を聞いてくれずかなり強引な行動を取る。
今回はそれにカグツチも巻き込まれた形だ。
しかし、最近はこうして3人で行動する事が多いので今みたいな事も増えていくかもしれない。
そして三番目に冬花が当然の様に俺の背中に抱き着いた。
すると前にはカグツチの柔らかさが伝わり、後ろからは冬花の胸が当たりと幸せだがとても精神を擦り減らす体制へとなる。
そうなれば当然、俺も男であるため、如何なる強者でもこの状態で反応しないと言う事はあり得ない。
そのため俺の精神力と技の限界を超えたそれがカグツチの腰に当たり俺は顔を赤くした。
そしてカグツチ自身もそれに気付き顔を真っ赤に染めて少しだけ俺の顔を見る。
すると同じように顔を赤らめており、彼女はその顔がとても可愛く感じた。
それと同時にカグツチの中に暖かい物が湧きだし幸せな気持ちで胸を満たしてくれる。
そして彼女は肩に置かれた俺の手を取りその位置を自分のお腹へと持って行き手を重ねた。
「カグツチ?」
俺はその突然の行動に驚くがカグツチは振り向いて柔らかい笑顔を向ける。
そして、その瞬間冬花は後ろから二人を押して一気にスライダーを滑り出した。
3人にとっては公園の小さな滑り台と変わらない感覚であるが体に伝わる暖かさを互いに感じながら滑って行く。
そして下まで到着すると互いに手を放して水へと飛び込んでいった。
そして水から顔を出すと全員で子供のように笑い昼食を取るためにプールから上がって売店へと向かって行く。
すると、それを陰から見ていた者たちは3人の後をつける様に動き始める。
そして売店に到着すると店の上の看板を見て何を食べるかを話し合った。
「ねえ、蒼君は何を食べるの?」
「そうだな。俺はこういう時は焼きそばが食いたいかな。」
「私はらーめんがいい。最近のまいぶーむというやつだな。」
「それじゃ私はあのハンバーガーにしようかな。買ったらみんなでシェアして食べようね。」
3人はそれぞれ違うメニューを決め、違う売店に散って行く。
するとそれを待っていたかのように周りで見ていた男たちが冬花とカグツチの元へと向かって行った。
「ねえ君一人?」
そして男たちのグループの一つは冬花を囲み話しかけた。
彼らは当然蒼士といる所を見ているため冬花が一人でない事は分かっている。
しかし、こうして複数の男で囲む事で冬花に無言の脅しを掛け、強制的に連れ出そうとしているのだ。
この状況なら騒がれそうになっても外の者をブラインドにして連れ去る事も出来る。
かなり悪質な手段ではあるが目の前の美少女に目がくらんだ男たちは、その事に気付きながらも誰も咎めようとはしなかった。
しかし、そんな状況だというのに冬花は表情を変えず言い放った。
「あなた達、それ以上近づかないでくれますか。私はあなた達に塵ほどの興味もないので。」
すると目の前で言われた男は一瞬冬花の後ろに視線を向け指示を飛ばした。
それはすなわち、ここから連れ出すためにこいつの口を塞げと言う物である。
目の前の男と冬花の後ろにいる男の一人は手慣れた感じで位置に着くと、息を合わせて冬花に襲い掛かった。
周りは既に複数人の男で囲み声さえ押さえてしまえば冬花にあらがう術はない。
そう男達は思っていた。
しかし次の瞬間、飛び掛かった二人の男は地面に盛大に叩きつけられた。
だが、周りで見ている者はなぜそうなったのかが理解できない。
ただ地面に倒れている男の顔には一つの小さな拳の痕が付いていた。
それにより目の前に倒れている仲間が何時の間にか殴られ、そのまま気絶したと理解できた。
しかし、それがいつ行われたのか。
それが理解できない周りの男たちは倒れている男から冬花に視線を戻す。
するとそこには男達を無価値なものと蔑むような、とても冷たい目が周りを見回していた。
「聞こえなかったのですか。私は興味が無いと言ったのですよ。」
そして冬花の体からは次第に闘気が溢れ周りを威圧して行く。
これにより冬花の周りの男たちは金縛りにあったように体の自由が利かなくなった。
しかし、ここで異常に気付いた蒼士が包囲を飛び越えて彼らの前に降り立った。
「大丈夫か?」
蒼士は周りの男を無視して冬花の無事だけを確認する。
「うん、大丈夫だったよ。ただちょっと飛び掛かってきた人がいて手が出ちゃったけど。」
そして蒼士が現れた事で威圧がゆるに冬花に笑顔が戻る。
しかし次の瞬間、先ほどとは比べ物にならない闘気、いや殺気が溢れ出して周りの男を威圧した。
蒼士は冬花の事になると異常に沸点が低い。
彼らは確実に蒼士の怒りをかっていた。
そのためそれを向けられた周囲の男たちは例外なく呼吸困難になり顔を青くしながら次第に倒れて行く。
そして全員が失神した時、そこには冬花と蒼士だけが立っていた。
それを更に周りの野次馬が見ていたが蒼士たちが手を出したところを一切目撃していないため救急車は呼ばれたが警察を呼ぶ者はいなかった。
しかしこの時、もう一人の美少女、カグツチにも危険が迫っていた。
「ねえ君可愛いね。これからここを出て何処かに行かない?」
その男も冬花同様、複数の男でカグツチを包囲して声を掛けていた。
「なんだお前たちは私はらーめんを買うのに忙しいのだ。道を開けてくれないか。」
この時カグツチは折角並んでいた列を男達に遮られ少し不機嫌になっていた。
しかし、ここで彼女は大きな油断が生まれる。
それは、今は蒼士たちと出かけるために依り代に入っているため体の性能が著しく低下しているのだ。
そのため普通の女子高生並みに落ちているため体の反応が遅く相手の行動に体の反応が遅れた。
「いいじゃねえか。あんな男と遊ぶよりもいい思いをさせてやるからよ。」
そう言って男はカグツチの手を掴み、それと同時に後ろからも手と肩を掴まれる。
そして男たちはワザと体を寄せてカグツチのむき出しの足や背中に触れた。
すると彼女の中にとても嫌な気持ちが沸き上がってくる。
(なんだこの気持ちは。さっき蒼士に触れられた時はこんな事なかったのに。)
そして拘束を振り解こうと暴れるたびに背中や足に男たちの腕や足が当たり更に不快な気持ちが膨らんでいく。
そしてカグツチの声を出そうとした瞬間、後ろの男が彼女の口を塞いだ。
「ん!んんーーー。」
そして次第に興奮する男たちはカグツチを押さえたまま移動を開始しする。
そして次第に売店から離れて行くのを感じてカグツチは心の中で蒼士を思った。
(た、助けて蒼士!)
それは彼女が生まれて初めて沸き起こる思いだった。
そしてその時カグツチの頬を一筋の涙が流れ落ちる。
するとその時彼らの頭上から一人の男が飛来した。
そしてカグツチを掴んだ男たちの手首を容赦なく握り潰すと彼女を開放しその胸に抱きしめた。
「すまないカグツチ少し遅くなった。」
カグツチは顔を上げてその男を確認すると背に手を回して泣きながら抱き付いた。
「蒼士、すまない。わ、私・・・他の男に・・・体を、ううぅ・・・。」
その姿に俺の中で何かが崩れる音が聞こえた。
すると、カグツチに対する沸点も冬花並みに急低下して行き、心に怒りが湧き起り鬼の形相で周りの男たちに視線を向けた。
「お前ら、こいつに何をした。」
俺の姿にビビった周りの男たちは声も出せないままその場で立ちすくむ。
しかし、今はあえて殺気を押さえているため全員がまだ動ける状態を保っている。
そのため数人の男たち前に出ると声を荒げてくってかかってきた。
「いいじゃねえか少しぐらい。お前もどうせもう一人の女とそいつで存分に楽しんでるんだろ。俺達にもちいたあ回せよ。」
「そうだそうだ。お前ばかりこんな子二人も独占しやがって。」
その言葉に俺は溜息を付き、カグツチの頭に手を置いて優しく声を掛ける。
「カグツチ、少し離れるがすぐに戻る。目の前のゴミをすこし掃除してくるからな。」
そう言った次の瞬間には手に闘気を纏い周りの男どもを撫で切りにしていった。
すると男たちは傷もないのにその部分を強く握りしめて倒れて行く。
そして死ぬことも気を失う事もなく苦しみもがき始めた。
「なんだこの痛みは。があああ痛てえええーーー。」
「お前、何しやがった。この痛みは何だ!」
すると俺は男達の言葉を無視して再びカグツチの元に戻り、震える肩をそっと抱き寄せるとその場を歩き去って行った。
そして彼らはその後も痛みが引かず、発狂するように苦しみ続けた。
酷い者はその痛みに耐え切れず数日後に自殺する者まで現れたが外傷は見当たらず原因不明であった。
ちなみにこの時蒼士が攻撃したのは体ではなく彼らの精神である。
そして精神を傷つけられた彼らはそれを修復する術を持たないため一生その痛みに苦しみ終わる事のない後悔を味わった。




