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59 過去に向けて②

店を出た後、隆二の先導により次々と店を回って行く百合子とアリス。

中には隆二も知らなかった店もあったが土地勘のある隆二により迷わず回ることが出来ていた。

お店のおすすめもケーキだけではなくクレープ、パフェ、パンケーキとさまざまであった。

時にはアリスが無理を言ってバケツパフェなる物を注文した時は隆二は焦ったものだが、それをアリスが一人で完食した時は店中から拍手が鳴り響いたほどである。


そんな事をしながら街中を周り楽しい時間を過ごしていた3人だがアリスが不意に周りに視線を巡らした。

その変化に百合子は即座に気付いたが隆二は何も気付かずに次の店へと二人を案内して行く。

するとアリスは突然隆二の腕を腋に挟んで裏路地へと入って行った。


(だからそれは胸が当たるからやめてくれ。)


隆二の心の叫びも虚しくアリスは裏路地を進みその後ろを百合子がついて行く。

そしてしばらく進んで人気が無くなった所でアリスは足を止めて立ち止まった。


「どうしたんだアリス?こんな所に店は無いぞ。」


隆二の言う通りそこはビルとビルとの間にある幅2メートルほどの狭い通路である。

見通しも悪くこんな場所で何かあっても口さえ塞いでおけば誰も気付かないだろう。

しかも時刻は夕方となりビルの間にあるこの場所は既にかなり暗くなっていた。


そしてアリスが立ち止まってしばらくすると3人を挟むように複数の人間の足音がこちらへと向かってきた。

そして最初に現れたの前方の通路から黒服の大人の男が5人と最初の店で声おかけて来たスカウトの女性であった。

すると目の前の女性は突然顔を歪めてアリスへと指を刺した。


「このガキが。言う事聞いてりゃもっと丁寧に扱ってやろうと思ったのに。よくもあんな手品で私を馬鹿にしてくれたわね。」


そして暗い笑みを浮かべ周りの男たちを指さした。


「此奴らは私と付き合いのある組みの男達よ。今からあんたらを連行して泣いても許されないデスマーチなショーを撮影してあげる。」


そして、そんな事を言い出した女性は次の瞬間、コンクリートの地面に沈んだ。

ちなみにそれを行ったのはその顔を怒りに染めたアリスである。

彼女は今の女性の言葉にガイアスと同じ匂いを感じ取った。

そして怒りに任せて条件反射的に女性を殴り付けたのだ。

それにより女性は頬骨を骨折し、地面に叩きつけられる事で更に鼻を骨折し前歯を全損する大怪我を負った。

しかし、先程の女性のセリフを聞いていた3人に彼女を心配する者はいない。

隆二はアリスの動きに驚いているがそれだけである。

そして、目の前で自分たちを呼んだ女性が一撃で倒されるのを見て男達も戦闘態勢を取る。

しかし、男達も攫う相手が子供の女二人に男一人と言う事で碌な武装をして来ていなかった。

彼らは彼女からの依頼を美味しい楽な物と考え、見せられた写真の相手を侮り煩悩に突き動かされるままにここにやって来ているのだ。

そのため持っている武器もスタンガン、警防、ナイフ程度である。

しかし、武器を持つアドバンテージは大きい。

男たちはそれを手にアリスに襲い掛かった。

するとアリスは無手のままファイティングポーズをとると攻撃を素早くかわし相手の腹と顎を正確に打つ抜いて行く。

しかし、その威力は凄まじく腹を殴られれば内臓が破裂し血を吐き出す。

顎を殴られれば下顎骨が砕かれ意識を失うと同時に追撃の一撃により顔面の骨を更に砕かれ地面に沈んだ。

そして1分もしない内にそこには血まみれの男達と一人の女が今にも死にそうな状態で転がっていた。


それにはさすがに隆二も顔を歪め一歩下がる。

それに気付いた百合子は苦笑を浮かべるがその直後に後ろから現れた者達に気付き向きを変えた。

そこには隆二と同じ位か少し年上であろう少年7人と一人の少女が道を塞いでいた。

しかも少女は男達の一人の腕を取り、自分の胸に挟むように抱きしめている。

そしてその目は何故か隆二を睨みつけていた。


「よう隆二。お前がいい女を連れて街中を歩いてるって聞いて様子を見に来てやったぜ。」


そう言ったのは少女に腕を抱かれている少年で、その目は厭らしくアリスと百合子を見ている。

そして周りの少年たちも同じであり、どうやら彼らは隆二のいいお友達ではなさそうだ。

アリスは足元の瀕死の者達を死なない程度に癒すとそれらを放置して隆二の前に出ようとした。

しかしその前に隆二が前に一歩出て彼らと話し出した。


「石垣先輩、こんな所で合うとは奇遇ですね。それにそこにいる小鳩は俺の彼女のはずなんですがこれはどういう事ですか?」


すると石垣は周りの少年たちを見回し一斉に笑い始めた。


「お前この状況でまだ分からねえのかよ。こいつはずっと前から俺の女なんだよ。」


そう言って石垣は小鳩の肩を抱いた。

そして小鳩も笑顔で石垣に体を預ける。

しかし、それを見ても隆二は信じられず小鳩へと問いかけた。


「ホントなのか小鳩。お前は俺を騙していたのか?それじゃあ。もしかして今日も・・・」

「当然だろ。お前が一人でどれくらいその場で待ち続けるかみんなで賭けに使ったんだよ。あの姿は傑作だったぜ。」


そう言って再び全員で笑い出した。

しかし、小鳩は笑うのではなく隆二を睨みつけている。

すると今度は小鳩が隆二へと話しかけた。


「でもまさかこの私が先にこいつから裏切られるとは思ってなかったわ。しかもこんな女共なんかに。今回石垣たちにあんたの事を話したのも私なの。私を裏切った事をしっかり後悔してね。」


小鳩はそう言って隆二へと笑顔を向ける。

しかし、最初から騙していた小鳩の言い分は完全な言いがかりであった。

そしてその逆恨みから良からぬ事を企んでこうした行動を即座に取るあたり、おそらく初めてではないのだろう。

あちらの世界で辛酸を舐めて来たアリスと百合子にはそれがハッキリ分かった。


すると隆二は大きく息を吸って一気に吐き出した。


「そうかやっぱりお前は本気じゃなかったんだな。今日この二人と町を周ってて思ったんだよ。本気で楽しもうとしてる奴とお前とじゃ全然楽しさが違うってな。」


そして隆二はスッキリした顔で小鳩たちを見ると今の気持ちを一言で表した。


「ちってぇえな~~。」


その目には確実に少年たちを見下すような色が含まれていた。

そしてそれは石垣や小鳩にも向けられている。


そしてこんな事で悩んでいた自分自身にも向けられているがそれが分かるのは本人だけである。

すると石垣たちは途端にキレたように怒り出し石垣は6人に「痛めつけろ」と命令を下した。


「俺は前からお前の事が気に食わなかったんだよ。死ねやーーー!」

「俺も善人顔してる貴様をボコボコにしたかくて堪らなかったんだッYo。」


なんて言いながら6人は恨み言にもなっていない言葉を叫び突っ込んできた。

しかし、その手にはナイフや鉄パイプなどが握られている。

どう見ても一般人からすれば本気で殺しに来ている武器であった。


しかし隆二は落ち着いて手袋をはめるとそのナイフを手の甲で弾き一人目の顔を力の限りぶん殴った。

すると殴られた少年は顔に拳の痕をしっかり刻み鼻血と数本の歯を飛び散らせながらその場で倒れこんだ。

しかし流石に一撃では気絶まではいかなかったようで蹲る少年は立ち上がろうと地面に手を付いた。

しかし隆二はその腕を踏み抜き腕を完全に圧し折ると遠慮する事無く膝も踏み抜いて破壊した。


「ぎゃああーーーー俺の、俺のーーーー」


やられた少年は痛みに悶え地面でもがき苦しむ。

しかし、因果応報。

人を殺そうとする者は同時に殺される覚悟を持たなければならない。

さらにこのような中途半端な覚悟の者は自分は痛めつけても自分が痛めつけられるとは考えていない者が多い。

そのため目の前で仲間がやられると心がくじけ、こちらに飛び込んでくることを躊躇するようになる。

それを示す様に目の前の残りの5人は隆二のあまりに鬼気迫る攻撃に恐れを感じ距離をつめる事をせずに遠巻きに見ているだけである。

また、その顔には先ほどまでの余裕は無く何かの切っ掛けさえあれば仲間を見捨てて逃げて行きそうな感じであった。


そして隆二はここで一歩前に踏み出した。

すると当然隆二に恐れを感じている5人は一歩下がる。

その様子に後ろで見ていた石垣は小鳩を振り払って前に出た。


「お前らじゃ埒があかねえ。俺がやるから下がってろ。」


すると5人の少年は助かったと安堵した顔で石垣の指示通り下がって行く。

そして石垣は上着を脱ぐと足元に捨てて腕を上げ、ファイティングポーズをとった。

石垣はまだ初心者に毛が生えた程度だがボクシングジムに通い始めて1年になる。

そしてそこで叩き込まれた技術を喧嘩に使い周りの者たちを従えていた。

普通はそういう事をすればジムを追い出されても仕方がないが、石垣は己の欲を満たす為に遠慮する事無くその技術を喧嘩に使用している。


すると、隆二も同じように上着を脱いで地面に落とした。

しかし、それは通常の音ではなく手を離した瞬間に鉄球が落ちるような音が聞こえた。

そして両手につけたリストバンドを外し地面に落とすと同じように構えを取る。

いま、隆二が外した重りの重量は40キロに達する。

隆二はあのボディービルダーの様な兄、和人によって日夜鍛えられていたのだ。

そのため隆二はこの重たい服を24時間着用し種類も制服から私服にパジャマ迄様々である。

そしてこれを取る時はいつもその和人とガチでスパーリングをする時だけであった。

それもグローブではなく素手で。

彼の兄は昔、タイでムエタイの選手をしていたため弟に教える時も容赦が無かった。


そして、その研がれた牙が石垣を倒すために放たれる。

隆二は石垣の懐に一瞬で飛び込むとその横腹を殴りくけた。

その動きに石垣は反応できず、筋肉を締めていても内臓へと突き刺さる拳を受け石垣の頭が下がる。

そして隆二は下がった頭を掴みそこに膝を喰らわせた。

隆二はそこでいったん攻撃を止めて手を離し後ろに下がる。

すると石垣も一旦後ろに下がり互いにファイティングポーズをとるが石垣は頭の位置は定まらず息も荒い。

しかし、これまで積み上げたプライドからその目にはいまだに戦意が漲っていた。


「どうする。まだやるか。」


隆二はここで引き下がればまだ決着を有耶無耶にでき、石垣のプライドも守られるだろうと考えた。

しかし、石垣はその肥大したプライドと後ろで仲間が、何より自分の女が見ている事から選択を誤った。


石垣は痛む頭とふらつく足で隆二に特攻を仕掛ける。

左腕で顔面をかばい右手を大きく引く。

そして渾身の一撃を隆二へと放った。

その一撃は隆二の顔にクリーンヒットし、体ごと大きく回す。

しかし勝利を確信した石垣は次の瞬間、後頭部に強烈な一撃を喰らいその場に倒れこむ。

石垣は最後の瞬間まで何が起きたのか分からなかったようで一切反応できなかった。


隆二は石垣のパンチを受けると同時にムエタイにより鍛えられた首でパンチを受け流していた。

そしてその勢いのまま左足を軸に周り右足による遠心力を付けた踵落しを石垣の後頭部に放ったのである。

ボクサーは前からの攻撃には鍛えられているためめっぽう強いが意外と後ろからの攻撃には弱い。

ルール上意識が向きにくいのもあるが、もし来ると警戒していれば気絶まではいかなかった程度の攻撃である。

隆二は石垣を見下ろした後、その後ろで静観している小鳩たちへと視線を向けた。

すると小鳩を含む5人は背中を見せて逃げ出してしまった。

どうやら救急車も隆二が呼ばなければならないようである。

目の前の石垣はともかく横で痛みで気を失った少年は確実に後遺症が残るだろう。

そして携帯を取り出して119を押そうとした瞬間、隆二の肩をアリスが掴んで待ったを掛けた。


「ここは私がどうにかするから任せなさい。」


そう言ってアリスは横で怪我をしている少年に近寄り手をかざした。

すると目に見えて変な方向に向いていた腕も横を向いていた膝も元の位置に戻り顔も綺麗に回復した。

そしてそれは石垣にも行われたがこちらは後頭部の一撃以外は大したケガではなかったので見た目には変化はない。


アリスは隆二に「この事は秘密ね。」と告げると百合子の許へと歩いて行った。


「それじゃ私たちそろそろ帰るから。今日はありがとね。」


そう言ってアリスと百合子は二人夕方の街へと消えていった。

だが隆二は瀕死の黒服たちの事を思い出して一応119を行い救急車を呼ぶと服を着て隊員に誘導を行った。


アリスと百合子はそのまま家に帰ると今日の事を撫子に話ながら楽しい時間を過ごす。

そして次の日に備えお風呂に入り眠りについたのだった。

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