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41 バストル聖王国

バストル聖王国。

その国の玉座に、今一人の王が座っていた。

彼は聖王と呼ばれ、この国では主神であるカティスエナの次に尊い存在とされている。

そのため見た目をよくするために体は鍛えられ、身長は190程もある。

そしてこの世界では珍しい事に目も髪も日本人の様に黒い。

その姿から勇者の子孫と言われても問題ない程に顔立ちも日本人に似ていた。

しかし、それには理由がある。

それは彼らは本当に勇者の子孫であるからだ。

この世界の常識に勇者は子供を作れないと言う物があり、それが神の呪いによる物だと知る人間は少ない。

しかし、彼らは長い研究の末その事に辿り着き、さらに解呪まで成功させるに至っている。

だが、それには多くの犠牲があった。

それは、当然勇者の犠牲も含まれる。

彼らは奴隷にした勇者を人体実験に使い長い時間死なない様に解剖を含む研究を続けた。

また、この世界には魔法による回復があるためその苦しみはここが地上の地獄と言っても過言ではなかっただろう。

彼らは生きたまま腹を裂かれ各部位の臓器を採取される。

そしてそれが済めば高位の神官による回復魔法により回復させられそれが死ぬまで続くのである。

そして解呪にも多大な犠牲を払う。

それには当然自分たちがその時々に召喚した者の命や数百人にも及ぶ人々の犠牲の上に実行さえる。

そのため、この国では勇者を救うために命を捨てるのは素晴らしい事とされ、国民にはそのように教育が施されている。

そして、狂信者となった国民は喜んで解呪の為に命を差し出した。


そんな国の王が現在、部下からある報告を聞いていた。


「現在、詳細は確認中ですがどうやらアルタ王国に現れた女は本物の勇者である可能性が高いと思われます。」


その報告に聖王は笑みを浮かべ厭らしく唇を舐める。

聖王は報告にあった女と言う部分に反応したようだ。

歴代の勇者で性別が女の者は基本美しい容姿をしている者が多い。

そのため、今回もその期待に胸を膨らませているようだ。


「それで、その者はどのような者だ。」

「容姿は美しく陛下と同じ黒髪に黒い瞳をしております。性格もとても純真であると報告が来ております。しかしそれ故に周りの男達から狙われている節があるようです。」


すると聖王は激昂し声を上げた。


「何だと。なぜそれを早く言わん!すぐに馬を走らせ親書を送れ。それと召喚者を使いあの国より勇者を連れてくるのだ!」


すると広間は急に慌ただしくなり多くの者が走り去って行った。

そして聖王は一人の男を呼ぶように伝える。


「今すぐガイアスを呼べ!」


その言葉に兵士が1人、外へと走って行った。

そしてしばらくすると一人の男と少女が現れ聖王の前に跪いた。

しかし、二人の表情は真逆と言ってもいい顔をしている。


男は優越感を浮かべ口の端を吊り上げておりニヤついた表情を浮かべている。

それに比べ、少女は逆に悔しそうな表情を浮かべ、隙があれば今にも切り掛かりそうである。

しかし、少女はその場で膝を付いたまま動かない。

そして少女の発育の良い胸を注意深く見れば、そこには百合子と同じ奴隷の刻印がある事に気付くことが出来る。

彼女の容姿は薄い金髪に青い瞳。

手足はスラリと伸びて美しく身長は170といった所だろう。

年齢は16だが胸の発育が良く、服を大きく突き上げている。

彼女はある事情から奴隷でありながらいまだに男を知らない。

しかし、彼女はそれが何の救いにもなっていない事を知っているため反抗の意思はありながらも既に心が折れかけていた。


「ガイアス、ただいま参りました。」


その言葉に聖王は頷いて答えその横の少女へと視線を移した。


「よく来た。当然アリスには一切手を出していないだろうな。」


聖王の声は何処か非難めいており厳しさを感じる。


「当然です。勇者の呪いを解くためには生贄に処女である異世界人を捧げなければなりません。それは十分心得ております。」

「それならばよい。出来れば予備の生贄もほしかったが仕方あるまい。一応各国には秘密裏に捜索の手をのばしておる。もしかすれば発見できるかもしれん。」


するとガイアスは額が地面に当たりそうな程跪いた。

彼は聖王から異世界人の管理を任されていたのだ。

しかし、どのような手段を用いたのか、いつの間にかその姿を消しており、いまだに発見できていない。

通常ならば逃走すれば奴隷紋が場所を知らせるはずなのだがそれもなく、それ以前に一定以上主人から離れれば奴隷紋の効果により強烈な痛みがはしり動く事も出来なくなるはずなのだ。


しかし、それでも逃走を許してしまったのは自分の責任である。

そして、ガイアスはあまりの悔しさに顔を伏せたまま唇を噛み歯を食いしばった。

実のところ、勇者の封印を解くための生贄には最初に百合子が使われる事になっていた。

それで無事に解除できればアリスは自分の好きにしていい事になっていたのだ。

ガイアスは悔しい思いを胸にアリスの体を嘗め回す様に見つめる。

そして、諦めきれないガイアスは絶対に百合子を見つけてみせると欲望にまみれた心で誓うのだった。

そして聖王はガイアスへと命令を下す。


「ガイアスよ。隣国アルタ王国で我が花嫁になる勇者が確認された。先に親書を送るが準備が出来次第お前も直ちに出陣せよ。」

「畏まりました。兵の準備が出来次第出発いたします。女神の神託から1月ほどですので問題なく連れてこれるでしょう。吉報をお待ちください。」


聖王はその言葉に頷くとガイアスの退出を許した。

そしてガイアスはアリスを従えて準備が完了するまで2日ほど休息を取り出陣して行った。




その頃、蒼士たちと出会う前の百合子は夢を見ていた。

毎日奴隷紋により無理やり働かされ、手は豆だらけである。

その豆も裂け、血を流しながら作業をしても横からガイアスは遠慮なく鞭を振り下ろした。


「遅い。本当のお前は使えないな。あまり遅いとお前もアリスと一緒に魔物の前に放り出すぞ。」


すると百合子は1年以上前の事を思い出した。

この男は実際に今言った事を行ったのだ。

その時に百合子は腕を潰され足を千切られ片目もつぶれる程の重傷を負った。

しかし、近くにいた神官が回復魔法を使うと体中の傷が回復し再び魔物の前に投げ込まれた。


その時の痛みとトラウマを思い出し、百合子はその場で嘔吐して机を汚した。

するとガイアスは目を吊り上げて背中に鞭を振り下ろした。

それにより服は破け皮膚は裂ける。

そしてさらに肉をも削り取って激痛を与えた。

しかし、魔物の前に投げつけられるよりもましと百合子は涙を流し、口を吐瀉物で汚しながらもアイテムを作り続けた。


そんなある日、もう一人の召喚者であるアリスが隙を見て手に入れた素材を渡してくれた。


「このままだとあなたは生贄にされて殺されてしまう。だから逃げなさい。」


その言葉に百合子は目を見開き言葉を口にしようとするが痛みが走り何も言えない。

彼女は奴隷紋の効果により無駄な会話が封じられているのだ。

百合子は必死に口を開くがそこから声が出る事は最後まで無かった。


そして百合子は死んだような目になりながらも一つのアイテムを作り出した。

それは封印の腕輪。

それにより奴隷紋を封印し百合子は更に手元に転がっていた素材から隠密の指輪を作り出し助けを探すために城を抜け出した。


抜け出す途中に素材庫で持てるだけの物をアイテムボックスへと入れて。


そして何日もかけて隣国のアルタ王国へとたどり着いた。

実は勇者のいるこの国に来たのはまったくの偶然である。

土地勘の無い彼女は時々見える半透明の精神体の様な者達に勧められるままにこの国に訪れたのだ。


もし、知識ある物がいればそれが精霊の一種であると教えてくれただろう。

彼女の神が見える目は意外な所で役に立っていた。

しかし、彼らに明確な意思は無く、方向を示すだけであるため、その先に何があるのかは分からなかった。


そして長い旅の間にも、何も知らない彼女は騙されてアイテムを安く買い叩かれていた。


「なんだこの屑鉄は。こんなの1000Gにしかならんぞ。」


その商人は当然鑑定を持っている。

しかし、知識のない百合子は簡単に騙されてしまい安くアイテムを売り払った。

おそらく彼女の売ったアイテムは安くても数十万はしただろ。

彼女の不幸はこの時、ジョセフの様なまっとうな商人に出会わなかった事だ。

そうすれば彼女の生活は少しはマシになっていた可能性は十分にあった。


そして貧しい生活を続けて百合子は精霊の導きのままに勇者のいる町までやって来た。


そしてそこで夢から目が覚めると外がとても騒がしい。

声を聞くとどうやら魔物の群れが押し寄せてくると言っている。

数日前には国の兵士が店を荒らしに来た。

しかし、百合子の見た目と店の雰囲気から取るだけ無駄だと判断されて何も取られなかった。

もし、ここでバレていれば大変な事になっていただろう。

百合子はこの世界で話す相手もいないため、店も開けずボーとして過ごしていた。

そんな時に思い出すのはいつもアリスの事である。

すると百合子は力もなく、助けも呼べず、そんな自分が情けなくて目から涙がこぼれる。


そんな中、町を歩いていると何故か人の波が出来ており、神社に向かう人々に紛れる感じで、つい同じ方向へと歩いて行ってしまった。

そしてその先には何かステージがありそこで何かの準備がされていた。

すると突然誰かの声が耳に飛び込んでくる。

それによりここで何が行われるのかを知り百合子は逆に興味を失い移動をしようとした。


自分はこんな事している場合ではない。

そう思ったが周りは一面人の壁。

子供である彼女には抜け出す事は不可能だった。

しかし、歌が始まりこの世界で初めて見る煌びやかなステージに百合子の目は釘付けとなる。

初めて見る生のライブ。

そして元の世界の様なステージにそれを凌駕するパフォーマンス。

百合子はこの世界に来て初めて楽しいという思いを感じた。

そして百合子もこの時、魔法のスキルを手に入れたが彼女がこれに気付くのはずっと先の事である。


そして少し後に彼女は蒼士と出会う。

彼女はこの時の思いからもう地獄に戻るのは嫌だと強く思った。

するととても自然に体が動き、自分をナイフで刺す事が出来た。

そして、この瞬間から彼女は本当の意味で地獄からの生還を果たす。

彼女は多くの者の助けを借りて蜘蛛の糸を登りきる事に成功したのだ。


そしてこの時、多くの者が逆に地獄に落ちる事も決定された。

しかし、それを知る者は少数であり、救われた百合子すらその事を知らない。

そして彼女は蒼士と出会った事で大きな決意を胸に抱く事になった。

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