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28 ティファの家族

俺の話に冬花を除いたメンバーは言葉を失っている。

日ごろ掴み所のないカルラでさえも表情を曇らせ苛ついているのが伝わってくる。

ちなみに話を始める前にマルクスはローザが回復させて起こしているのでこの話はしっかり聞いている。

そして誰もが渋い顔をしている中で俺はパメラに告げた。


「俺達は別にエルフがあの国に攻め入っても別に構わないと思っている。」


その言葉を聞いて彼らは意識を俺に集めその真意を探ってくる。

しかし、先ほどの話を聞いたため彼らの中では簡単に次の言葉が想像できた。


「それはすなわち、失敗してもやり直しがきくと言う事かい?」


しかし、パメラの言葉を俺は鼻で笑い飛ばした。


「いや、少し違う。」


そして俺は先ほどとは違い冷酷な顔となり本気である事を理解させるように殺気を漲らせた。

目の前の3人はその豹変ぶりに息をのみ額から冷や汗を垂らす。


「邪魔者は全て消して進む。ハッキリ言ってこの世界の奴らは危機感が足らない。冬花を助ける立場の者が冬花の足を引っ張り、あまつさえ命を狙ってくる。」


そして、俺は更に目の前に居る3人を指さした。


「今のお前たちもそうだ。こうして勇者である冬花の時間を無駄に浪費させている。この間にも魔王は世界を滅ぼすために動いていると言うのにだ。それにこの短期間にこんなに時間を操作してこの世界は大丈夫なのか?あの女神は馬鹿だからそんな事まで頭は回さないぞ。」


すると俺の言葉を理解したパメラの顔色が途端に悪くなった。

その理由はこの世界では時間に関する魔法は禁忌とされているからだ。

転移などは問題ないが時間の操作は失敗すれば空間を歪め世界を滅ぼしてしまう。

その事を俺はベルから聞き、パメラは長い生の中で知識として持っているのだろう。

そしてパメラは立ち上がると突然アイテムボックスからベルを取り出して鳴らした。

すると外からも同じように鐘が鳴り始め、それは次第に大きくなっていく。


「マルクス、ローゼ、急いで向かうよ!」


その声に反応してマルクスとローゼは立ち上がり走り出した。

そしてその後ろをパメラは歩いて追いかけ部屋から出て行こうとする。

俺はそれを見てクレアへと視線を向けるが知らないと首を横に振られた。

仕方なく歩いているパメラへと声をかける。


「ちょっと待て。これはどういう事だ?」


するとパメラは俺の傍で足を止め二人を先に行かせた。


「今のは緊急議会を開催する合図だよ。今の話を早く伝えないといけないからね。今は人種なんかと揉めてる状況じゃなさそうだよ。」


すると俺はここでアイテムボックスから親書を出すと一応ローザへと差し出す。

ローザはそれを受け取り封蝋を確認すると苦笑を浮かべた。


「こういうのは出来ればもう少し早く出してほしいね。」

「仕方ないだろ。そっちの話をする前にこうなったんだから。」

「それもそうだね。まあ、これは貰っておくよ。それであんたらはこれからどうするんだい。」


ローザは時間が欲しいのかその場で封蝋を開け親書を読みながら俺たちへと確認をしてくる。


「その親書次第だ。俺達は中身を知らないからな。出来ればアルタ王国に急いで帰りたいと思っている。今、あそこの首都には魔族が魔物の群れを引き連れて進攻中だ。」


するとパメラは親書を読み終えたのか再び丸めて溜息を吐いた。


「忙しないねえ。出来ればもしもの時のために残っていてほしかったけどそう言う事なら仕方ない。こっちは私がどうにかするからあんた達はアルタに戻りな。」


俺もあの町には守りたいと思える者が何人かいるため彼女の申し出はとても有り難く感じた。

そのためパメラに礼を言って冬花の元へと戻る。

すると、今度はクレアがパメラに近寄り話しかけた。


「お婆ちゃん、あの町にはララ姉さんとエルフがまだ何人も残ってるの彼らを救わないといけないわ。」


そう言ったクレアの表情には緊張が見え、ララが心配なためか余裕がない。

するとパメラは笑顔で力強く頷くとクレアの頭を撫でた。


「よく言ったよ。私達は同胞を見捨てない。あんたも蒼士たちに付いて急いで戻りな。決して死ぬんじゃないよ。」


するとクレアは次第に落ち着いてきたのか、肩の力が緩むのが見て取れる

そしてそこまで言うと今度はパメラの耳元まで顔を近づけて小声で話しかけた。

どうやら周りには聞かれたくない話のようだ。


「実はカルラと契約して困った時は助けてくれることになったの。それと彼女とは別のドラゴンだけど仲良くなってドラゴンライダーの職業が付いたわ。」


するとパメラは咄嗟にカルラを見て何かを言おうと口を動かした。

しかし、言葉は放たれる事は無く彼女は口を閉じた。

その間、カルラは笑顔でパメラを見つめていたが、結局言葉を交わす事は無かった。


俺たちはパメラが部屋から出て行くと4人で再び町の出入り口へと向かい走り出した。

今回は緊急招集の鐘がなっているため俺たちを気にする者はほとんどいない。

そして町から出ると即座にカルラに乗って空へと飛び立ちアルタへと向かって行った。

帰りも来た時と同様の方法を使い魔法でカルラを補助しながら進む。

しかし、それでも到着には12時間はかかるため、3人は焦る思いを胸に空を進んで行った。


蒼士たちがアルタへと飛び立った頃、既に魔物の群れは王都へと迫ろうとしていた。

魔族たちは王都へと奇襲を行うため途中の村や町を無視して進み、人目に付かない様に可能な限り街道から外れた森の中を進んでいる。

そのためここまでの移動では人間に発見されることもなく侵攻することが出来ていた。

アルタ王国側もそのおかげで目立った被害が出ていないため運よく被害を出さずに済んでいる。

通常このまま進めば王都へと完璧な奇襲を仕掛けられた事だろう。

そうなればアルタ王国を滅ぼすか、悪くても機能を麻痺させる事は出来たはずであった。

しかし、彼らは知らない。

先行して町に送り込んだ工作員が最後に魔物の群れの接近を蒼士たちに話している事を。

そうとは知らず、魔族たちは森を進み王都へと進んで行る。

しかし、ここまで順調な行軍もあと少しと言う所で突然停止した。


「どうしたのだ。前に進まんぞ?」


突然の停止に苛立った魔族の一人が横にいる仲間へと言った。

すると、その男は「急いで調べてきます」と言って魔物の群れを掻き分け先頭へと向かう。

そして、男が先頭に到着すると周りを見回し顔をしかめた。

魔物たちはある位置から線を引かれているように横へ真直ぐ広がりそれ以上進むことを恐れているように体を震わせている。

そして、それを見た男にはこの状況に心当たりがあった。

つい先日、ここから少し離れた山の近くを進んでいる最中にも同じ事があり大きく迂回するはめになったからだ。

その時にも今と同じようにドラゴンの魔が感じ取れたため魔物たちは足を止めてしまった。

しかも、今ここで感じ取れる魔力はあの時の物と酷似している。

それが男を更に苛つかせた。

しかし、確認してくると言った以上、上司に報告しない訳にもいかない。

男は苛ついた心を溜息と共に吐き出し、報告のために戻って行った。


そして、男は戻ると上司の元へと向かい先ほど感じだ魔力について報告を行う。


「カリアン隊長、この先にドラゴンの魔力があり、魔物たちは怯えて足を止めたようです。」

「またか!あと少しで目的地だと言うのに忌々しい。しかし、ここまで来れば王都もすぐそこだ。焦って発見されるよりも慎重に進む。」


するとカリアンと言われた男は進行方向を睨みつけながら顔を歪めたが、すぐに冷静な判断を下し進路の変更を指示した。

そして部下の男は隊長に八つ当たりをされなかったことに胸を撫で下ろし、数人の仲間を引き連れ進路を変えるために再び先頭へと向かって行った。


そして彼らは再び大きく迂回し王都を目指して進み始める

それでも数時間の後には王都へと到着するため苛立ちはあるが焦りはない。

先行している者からの連絡が無いのが気がかりではあるが、ここまで来てしまえば作戦の変更は不可能なため彼らは進むしかなかった。




時間は少し巻き戻りここはジョセフの店。

そこではジョセフ、ティファ、ララが顔を突き合わせていた。

ちなみに他の二人のエルフは国からの謝礼金を受け取りギルドへと向かっている。

彼女たちも町に残り防衛に参加すると言っていたのでその準備に向かったのだろう。。


そして、問題は戦闘力のないティファをどうするかである。

今の状況ならどこにいても死ぬ可能性が高い。

しかし、今では王都中で兵士たちが魔物の進攻を伝え、可能な者たちが避難を開始している。

これに加われば、もしかしたら逃げ切る事は可能かもしれない。

そのためジョセフとララが判断に迷っていると一人の女性が大声を上げ、ボロボロの店内へとて駆け込んできた。


「ジョセフ、ティファ!無事なの!?」


3人はその女性と目を合わせると驚きに目を見開いた。

その女性はジョセフの妻であり、ティファの母であるミランダだ。

顔立ちはティファによく似ておりとても美人で髪は燃えるような赤い。

腰に剣を装備し体には蒼士たちと同じようにオリハルコン装備を身に付けている。

しかし、かなり使い込まれており、さらに材質が分からない様に偽装も施されている。

彼女は高ランクの冒険者だが長旅に出ていたため、目立たない様に工夫がされているのだ。

そして、ジョセフは立ち上がってミランダの許へと駆け寄って行った。


「どうしてここにいるんだ!?お前は隣国へ買い付けに行ってるはずだろう。」


ジョセフはここに居ないはずの人物に驚いてつい声を荒げてしまう。

しかし、そんな事はお構いなしとミランダはティファの許へ向かうと強くその身を抱きしめた。

そして、慌てていた表情が消え去り、安堵の笑みと共に溜息が零れる。


「良かったわ。途中で王都の噂を聞いた時は心配で仕方なかったけど無事でホッとしたわ。」


そして、目から涙を零すミランダを見てジョセフは仕方ないかと諦めて心を鎮めた。

もともと死ぬ前にもう一度会いたいと思っていた相手なのでそれが叶い、不謹慎ではあるが嬉しさで涙が出そうなのは秘密である。


「それでどうしてミランダがここにいるんだ。」


少しするとジョセフはミランダが落ち着いたのを見計らい話しかけた。

その間にララはお茶の準備を行いティファはアイテムボックスからお菓子を取り出す。

するとミランダはティファがアイテムボックスを得た事に驚きと喜びの表情を浮かべるがその事は後回しにして質問に答える事にした。


「女の勘と母の勘って言えば良いの?旅の途中で王都の方向から気になる風が吹いたのを感じて途中で引き返して来たのよ。」


すると途端に納得した顔になると3人は顔を合わせて頷き合った。

ミランダは昔からとても勘のいい女性でその勘に従う事で多くの危機を回避し、時に家族を守って来た。

今回は蒼士たちがいなければジョセフは助からなかったが確実にティファを救う事は出来ただろう。


「でも良かったわ。3人が無事で。」


そして、彼女は良い方に勘が外れたのだと胸を撫で下ろし安堵の息を吐く。

しかし、そうではなかった事を3人から聞かされると途端に彼女の雰囲気が変わった。


「すなわち、その蒼士君がいなければララは奴隷のままでジョセフは死んでいたのね。」


話を聞いたミランダは今にも城へ突撃して行きそうな程の闘気を体から漲らせている。

そして、不意に立ち上がると笑顔を浮かべた。


「ちょっと出かけて来るわ。」


すると、その言葉を聞いてジョセフは慌てて彼女に抱き着いた。

これは愛とかそう言う物ではなく、単純に彼女を止めるためである。

ジョセフは彼女が今からどういう行動をするのかを先読みしてその行動を止めるために飛び付いたのだ。


「ジョセフ離しなさい。これじゃあ第二王子を殺しに行けないわ。」


ミランダは笑顔でジョセフに声を掛けているが目がまったく笑っていない。

しかも、すでに第二王子を殺す気満々である。

そして、その様子にララが立ち上がりミランダへと歩み寄った。

こうなった時のミランダを止めるのはいつもララの役目である。

そのためジョセフは期待を込めた目をララへと向けた。


(お前が頼みの綱だからな!)

「ミランダ様。」


そしてララに呼ばれたミランダはそちらへと視線を向ける。

しかしその顔には今回は誰にも止めさせないと書いてあるようで動じた様子は何処にもない。


「何、もしかして止めるつもり?」

「いいえ、この度はお供します。奴を八つ裂きにしましょう。」


するとミランダは目を細めて黒い笑みを浮かべララも同じ様な笑みを浮かべる。

そしてジョセフを引き摺って歩き出そうとする二人へティファは声をかけた。


「お母さん。今それどころじゃないの。ゴミの処分は後回しにして話を聞いて。」


すると3人は立ち止まり、呆気に取られた顔をティファに向ける。

彼らの中でティファは心優しく幼さが残る娘だったはずだが、いつの間にか大きな成長をしていたようだ。

しかし、そう思っているのはミランダとララであって、良識人であるジョセフは今にも膝を付いて泣き出したい程のショックを受けている。


そんな中でミランダは大きな声を出して笑い上機嫌に頷いた。

その様子にティファは首を傾げるがミランダは娘の隣へと座り頭を撫でて満面の笑みを浮かべる。


「少し見ない間に成長したみたいね。アイテムボックスもだけど内面も磨かれたみたいで良かったわ。それで、まだ話す事があるのよね。」


そしてティファは今の状況についてミランダへと説明を行った。

魔物が迫っている事や魔族の事。

今回起きた事件についてなど被害者としてだけではなく客観的な意見も踏まえて伝えていく。

きっと蒼士の世界で勉強しすれば良いプレゼンターへと成長していただろう。

そして、ミランダは娘の成長を見る事が出来たため、心の中で大喝采を上げた。

しかし、親バカを見せて大喜びできる話の内容ではないのでミランダは真面目な顔で頷きを返す。


「分かったわ。少し話を声るするから待っていなさい。」

「はい。」


そしてミランダは聞いた話から状況を整理し始め、周りは沈黙と共に待ち続けた。

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