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15 女神の行いとドラゴン探索

私は主神カティスエナ。

主神になってもう何千年にもなるこの世界では古株と言ってもいい神の1人。

ちなみに主神はその時代の信者の数によって変わりそれは比例して力の強さを表す。

そして多くの場合は魔王が原因で主神の立場から転落し、その時に一番信仰を集めた神がその後の主神となるのが定番だった。

それも私の代で変わり、私が主神となってからは一度も交代をした事が無い。


それには理由があり主神には他の神と違い大きなアドバンテージがあるからだ。

それは魔王を倒す事が出来る人材を勇者として派遣できること。

私は今回もその権限を行使して周囲にある異世界から魔王を倒す事の出来る勇者を探す。

しかしなかなか見つからないためイライラしていると一人の少女を見つける事が出来た。

そして、私は傍にいた彼女の友達?を神からの啓示で唆し、その少女の魂を手に入れた。

方法はちょっと強引だったけど魂を連れて行くなら生きていない方が都合がいい。


その後その世界の神にお願いして少女の魂を譲ってもらい、私の世界で勇者として転生させた。

あちらの神からはこっぴどく叱られたけどそんなの世界の主神の座に比べたら大した事じゃない。


しかしこの子は見込み違いだったのか全然センス無かった。

いろんな所から狙われる事が多く、ちょっとの事で自殺する。

挙句の果てには無茶して死ぬしで全く使えない。

私に何度時間を巻き戻させれば気が済むのよ。

仕方ないから記憶継承のスキルをあげたけど結局死んじゃって魔王の前まで辿り着けない。

でも、そろそろ力の使い過ぎで辛くなってきたわ。

他の仕事と重なって寝る時間も休む暇もないから髪と肌が荒れて最悪。


そしてある日、好奇心からその子の思考を覗いてみたらとんでもない事が分かった。


「この子やる気がないじゃない!」


でも1人の男の事は心の奥底に刻みついていてそれが僅かな希望となっている。

こいつを利用すれば魔王討伐が可能かもしれない。


私は早速その男を連れてくるために勇者を回収した世界へと再びやって来た。

そして私がそいつを迎えに行くと可笑しな事に男はあの子を探し続けてる。


笑っちゃうわよね。

この世界のあの子はもう死んでて、自分が住んでる家の裏山に埋まってるんだから。

もしかして本当の事を教えてあげたら泣いて喜んで私に協力するかしら。


そして私はこいつを私の世界に招待する為、前回と同様に死んでもらう事にした。

また怒られるだろうけどこの世界の神は甘ちゃんが多いからちょっと反省したフリをすれば大丈夫。


ちょうどこちらに向かって来てる鉄の乗り物があるから事故に見せかけて殺せそうね。

私は男が死ぬように鉄の箱に乗ってる人間の意識をほんの一瞬だけ操って操作を誤らせ、男にぶつけて上手い具合に崖から落としてやったわ。

最近はストレスも溜まっててちょっとスッキリしたわね。


さて、前回と同じようにここの神にお願いしようかしら。

ひょろい奴だったからきっと力のない神なのね。


しかし、今回現れた神は筋骨隆々なマッチョメン。

眼力が凄くて今にも殺されそうな気配をぶつけてくる。

そして私が話しかけようとすると口よりも先に拳が飛んできた。

私は相手のいきなりな行動に対応できなくて頭頂部に見事な拳骨をくらったわ。


「前回は舐めた事をしてくれたな。しかも一度だけでなく二度までも。だが今はそれで勘弁してやる。後の事はそいつに決めさせるからまずは世界の狭間に空間を作るぞ。」


そして部屋を作って色々話した結果、彼は私の世界に来る事になったわ。

でもそいつ直ぐに死んじゃって勇者も自殺してしまった。


ゴミがーーー!簡単に死なない様にお前を送ったんだぞ。

クソーーー人選を誤ったわ。


・・・でもさすがに3人目は無理。

あの男神なら確実に私を滅ぼす事が出来る。

手加減された拳でも凄く痛かったからこれ以上あの神の怒りを買うのはごめんね。

仕方なくあの男神に相談して来てもらい私は時間を巻き戻すことにした。


・・・あれ、勇者の表情が昔みたいに戻ってる。

もしかしてあんな役立たずでも意味があったの?


でも私はその後すぐに男神と共にさっき死んだ男の許に向かった。

男は私を無視して男神と話してるけどすぐに私に勇者の記憶を見せてほしいと言って来た。

よ~し見せてやろうじゃない。

あの勇者が今までしてきた情けない姿をね!


そして時間が足りないから部屋の時間を操作して全部見れるようにしてやったわ。

感謝なさい!


そして映像を見終わった時に一週間ほど時間が空いてしまったから男神が急に連れてきた小さい神に修行を付けさせると言い出したので了承した。

あんなに弱いんじゃあ役に立たないしね。

でもあの男は神である私から見ても異常な速度で成長している。

このままだといずれ怒りに任せて私を殺しに来るかもしれない。


なので私も自分の保身のために人材を貸し出したけど上手くいったみたいね。

あの子はお人よしだから私の事を良いように言ってくれてるはず。

そして男を送り出して数日。

彼らを見ているとベルファストの教会に行ったみたい。

でもなに、この教会・・・汚くてみっともない。

神像もボロボロでただの岩みたいになってるじゃない。

マジ笑えるんですけど!


私はそのみすぼらしい教会を見て腹を抱えて笑い危うく酸欠で死ぬところだった。

まあ神は酸欠では死なないけどそれぐらい苦しかったって事ね。

意外な所で良いストレス発散になったわ。

するとちょうど笑いが収まった所でベルファストが部屋に入って来たから声をかけて一緒に映像を見ていると男が何かを始めた。


「あら。ここ私の教会ですか。すみませんこんな汚い所を見せてしまって。」


ベルファストは苦笑して言ってるけど、実は主神である私以外の教会なんてどこもこんな感じよね。

特に100年も生きられない人間にとっては生まれて死ぬまで私の恩恵を受ける事になる。

それにその親も、その親も、そのずっと前の先祖からそれが変わらなければ神によっては完全に忘れられている奴も居るくらいだからね。

私は軽い優越感と感じながら彼女を許して映像に視線を戻す。


「いいのよ。でもコイツは何しようとしてるのかしら。」


見ているとどうやら魔法で教会を修復し始めたみたい。

それにしても上手いわね。

さすが魔術師が崇拝しているベルファストに魔法を教わっただけはあるわ。

あら、神像も直すの。

ププ、どんなのが出来るのか楽しみだわ。

もし、面白いのを作れたら私の力でベルファストを地上に降ろしてあげましょう。

きっと楽しい再会が出来ると思うわ。


でも私の予想とは大きく異なり、とても美しくて素晴らしい神像が出来上がった。

それをちょっとだけ羨ましそうに見ていると突然ベルファストが地上へ下りて行ってしまう。


そして私の神像についてもお願いしてるみたいでアイツに了承させている。


流石ねあの子。

放っといても私のために動いてくれるから利用しやすくて助かるわ。

そしてしばらくするとベルファストが天界に戻って来て笑顔で部屋を出て行った。


それから次の日の夜になると男と勇者はどうやらあの事を知ってしまったみたい。

私はヤバいと思ったけど「まあ、会わなければいいか」と軽い気持ちで映像を見続けていた。

でも私の考えは甘かったみたいだわ。

男は突然神像を作って私を呼び始めた。


馬鹿じゃない。

あんたがそんな所で何を叫んでも主導権はこちらにあるのよ。


でも突然、男が何かのスキルを発動すると私は地上へ凄い力で引っ張られ始めた。

私は意地でも行かないと残っている力を使い切る勢いで本気で抗ったわ。

どうせ、主神である私には大量の信者から力を供給されていてすぐに回復できるしね。


でも結局、力比べで負けて無理やり引きずり降ろされ勇者に捕まってしまった。

しかも魔力はもう帰る分しか残っていない。

コイツ、あの短い時間でどれだけ強くなってるのよ!


それに、たとえ神でも魔力が無ければ人間より少し強い程度。

そのため鬼の形相で睨む男も、背中に鬼女の様な幻影を浮べている勇者も怖くてたまらない。

・・・覚えてなさい、後で絶対復讐してやるんだから。

でも、男が私をいつでも呼べると言って現実に気付いた私は、結局勇者の呪いを変更するために逃げるように天界に帰った。


・・・酷い目にあった。

でも呪いを変更しておかないと次に呼ばれる時が命日になってしまう。

は~・・・早くやる事をやって今日は寝ましょ。




冬花は今日も蒼士の温もりに包まれて目を覚ませた事を幸せに感じ安堵していた。

それに今もまだこれが唯の妄想で夢ではないかと疑う時もある。

しかし、今の冬花の五感には愛する存在が現実で傍に居る事を教えてくれる。

既に死すらも二人にとっては永遠の別れではなくなっており、この世界で恐れる存在は何もなくなっている。


そして冬花は蒼士を優しく起こすと目覚めのキスをする。

今日も起きる時に不安を感じたのでいつもより長めのキスだ。

そろそろ慣れないといずれは何時間も離れられなくなってしまう。

冬花はそんな別の心配をしながら一緒にテントを出ると朝食の準備に取り掛かった。


今日は焼いたパンと鍋には野菜の屑とベーコンを入れたスープを作る。

それを食べて騎竜にも肉を食わせると次の目的地へと向かい道具を片付ける。

次はここから半日の距離にある山の麓らしいのでまた走れば良いだろう。

そこでドラゴンの目撃情報があるらしく調査、又は討伐をする事になる。


「よし、それじゃ行くか。」


俺は周りを見回し二人が準備を終えた事を確認する。

周りは青々とした草原が広がっているので火事の心配は少ないが念のために火の始末だけはしっかりと行っておく。

すると騎竜を連れたクレアが俺を見ながら不機嫌そうな表情を浮かべていた。


「今日は昨日みたいに無茶させないでよ。あんなに速く走ったらこの子が死んじゃうんだからね。」


クレアは昨日の事を言っている様で俺も言われてから昨日の事を思い出す。

なので昨日は俺も大人気なかったと苦笑してから頷いた。


「大丈夫だ。今日は昨日の半分の速度で行く予定だ。それともし休憩が必要な時は言ってくれ。それほど急いでいるわけではないから休憩を挟んで目的地に向かう。」


するとクレアはポカンと口を開けてこちらの顔を覗き込んでくる。

どうやら昨日とのあまりの対応の違いに驚いているのようだ。

流石に俺でも信用できる仲間の提案で、妥当性があるなら受け入れるぞ。

そしてクレアも出会った頃の他人行儀な口調が消え、素の口調に戻っている。


「ど、どうしたの蒼士!ちょっと・・・いえ、かなり気持ち悪いわよ。」


しかし、俺もここまで言われれば顔を引き攣らせてしまっても仕方ないだろう。

それでも大きく息を吐き出して心を鎮めると表情筋を巧みに操りながら理由を述べた。


「お前にはいい情報をたくさん貰ったからな。それに今後も何かを教えてもらう機会があるかもしれない。だから仲良くしようと昨日冬花と話したんだ。」


そして何処となく納得できたクレアはニコリと笑顔を作った。

それに今はフードを被っていないため緑の髪と鮮やかな赤い瞳が朝日を美しく反射し笑顔が輝いて見える。

少し幼く見えるが魔法の実力から言って見た目通りの歳ではないだろう。

俺は頭の中でロリ婆と言う言葉が浮かんだがこの笑顔をわざわざ壊す事も無いので心の中だけに止めた。

しかし、さすがSランク冒険者と言う事か、それとも年の功なのか何も言っていないのにこちらの心を読んで来た。


「あんた、今変なこと考えなかった?」

「いや、気のせいだろ。俺は友好的な目をしていただけだ。」


そしてクレアは意外な鋭い洞察力を見せると騎竜に跨り、再び頭からフードを被った。

これは拒絶ではなく、単に移動の為にと言った所だろう。

それを示す様に今日はその口元に笑みが浮かび、率先して前を走り出した。

きっと俺達に背中を見せても大丈夫と言う確信を得たからだろう。

昨日の夜にも同じような事を言っていたからな。

そして今日は俺が言っていたように到着には2時間ほど掛け、間で休憩を一度挟んだ。


今は山が目の前にそびえ立ちそこに繋がる森には多くの気配を感じる。

その事からクレアはある推測をたてた。


「これだけ気配があるとすると今回は茶色か青か白のどれかかもしれないわね。」

その推測に蒼士は首を傾げる。

力はあっても経験のない蒼士にはどうしてそう言えるのかが分からないからだ。

するとそれを補足する形で冬花が説明してくれた。


「もし黒か赤か黄色だと周りの動物は怖くて逃げ出してしまうの。逆にクレアの言った色なら共存を望むタイプだから周りの動物もあまり逃げ出さないのよ。」


蒼士は納得して頷くとやはり力があっても知識が不足している事を実感する。

冬花も長く冒険者そしているので知識は豊富だろうがSランクのクレアの知識も重要だと再認識した。

そして蒼士は既にドラゴンの存在をある程度掴んでいた。

どうやらこの山は標高は500メートル程とそれほど高くなく。

断崖絶壁でもないため歩いて登れそうだ。

そして頂上からはこちらを警戒するような気配と視線を感じる。

その気配の大きさは自分たちには届かないが決して小さい物ではない。

警戒は不要だが油断は禁物なので二人と情報を共有することにした。


「クレア、どうやらドラゴンはこの山の頂上にいて既に俺達を確認しているようだ。Sランクであるお前の意見を聞かせてくれないか?」

するとクレアは頼られるのが嬉しいのか得意な顔になり蒼士たちに意見を述べた。


「私も視線を感じているからそうだと思っていたわ。だからここは相手にあまり警戒されない様に歩いて行くべきだとおもう。それに、もし攻撃的なドラゴンなら、気付かれた時点で攻撃を受けてるはずだから今はこのまま向かいましょう。」


そして、冬花もその意見に賛成したため蒼士たちは歩いて山頂を目指した。

今回は今のところ騎竜も緊張していないようなのでクレアは騎竜に乗って進んでいる。

蒼士たちはドラゴンを刺激しない様になるべく戦闘は避けて頂上をめざした。

そして頂上に到着するとそこに探していたドラゴンはゆっくりと寝そべり俺達を待っていた。

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