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143 蓮華は初めての家族を守るため牙を剥く

蓮華は決戦の日、ある決意を胸に向かえた。


(私の家族は私が守る。)


そんな事を考えていると蓮華の携帯に蒼士から電話がかかって来た。


「どうかしましたか?」

「いや、空から念話が届いてな。お前が妙に意気込んでるって。」


すると蓮華は空に視線を向ける。

しかし、空はニコリと笑うと月子の手伝いに行ってしまった。

今日は冬花の両親と百花がここに来ることになっている。

特に百花はお金持ちとあって粗相は許されないと月子も大地も気合を入れているのだ。


すると電話の向こうから蒼士が再び話しかけた。


「お前はどうしたいんだ?」


蓮華は蒼士の問い掛けに答えようと口を開いた。

しかし、自信が持てない蓮華の口からは空気ばかりが通り過ぎるのみで喉を振るわせてくれない。

しかし、そんな蓮華に蒼士は提案を投げかける。


「もし、自信が持てないならどんな手段でもいい。一度戦ってみろ。もし倒せたら空たちにお前をリーダーとしたパーティーを組むように言っておく。いいか、必ず敵を倒せよ。」


それだけ言うと蒼士は電話を切った。

とても一方的ではあるが蒼士はこの時、空に魔物を一匹必ず蓮華に倒させることを厳命した。

これには蒼士の希望も含まれているがそれが分かるのはもう少し先の事である。


そして時は経ち、カティスエナはとうとう魔物の転移に大成功する。

魔物は源家の目前に現れそのまま敷地内に雪崩込んだ。

庭はたちどころに魔物に荒らされてしまい美しい花も芝生も踏み潰された。

しかし、魔物たちは別に庭を荒らしに来たのではない。

この家に居る人間を襲いに来たのだ。

当然、100を超える魔物に襲われてしまえばこの世界の人間ではひとたまりもない。

男は食料にされ女は性のはけ口にされる。

子供を孕ませる事が出来るならその運命は更に悲惨な事になるだろう。

そして魔物達は目の前にあるガラスの窓を割ろうと手に持つ棍棒を振り下ろした。

その一撃は例え防弾ガラスだったとしても一撃で粉砕するほどの威力を帯びている。

しかし、その一撃は窓ガラスを割るどころか揺るがす事すらできなかった。


「ギャギャギャギャギャ!」


その途端、周りの者達が殴り付けた魔物を一斉に笑い始める。

殴り付けた魔物は頭に血が上り何度も同じように窓ガラスを叩きつけた。

しかし、結果は変わらず周りからの笑いは更に大きくなる。

すると不意に閉まっていたカーテンが開き窓の向こうに可愛らしい少女、蓮華が顔を出した。

しかし、蓮華は笑顔を浮かべるとサッと再びカーテンを閉めてしまう。

だがその効果は絶大だった。

外の魔物たちは蓮華を見て性欲を爆発させると周りで笑っていた魔物たちは一斉に家の側面を殴り始めた。

しかし、何処を殴ろうともビクともしない。

そんな時である、魔物が不意に扉の取っ手を掴み手前へと引いた。

すると鍵を掛け忘れたのか扉は抵抗なく開いて行く。

そして、それを見た魔物たちはそこに殺到する様に押し掛けた。

しかし、扉を開いたゴブリン型の魔物は先ほどの少女を独り占めしようと入ると同時に扉を閉めた。

そして外でそれを見た魔物たちは声を張り上げながら叫び声を上げ扉を殴り蹴りを繰り返す。

しかし、そこで彼らの知らない異常が起きていた。

先程のゴブリンは取っ手を引いて扉を開けて入った。

しかし、今は何をしても扉が開かず外の魔物たちは立ち往生をしている。

だが中に入った魔物は鍵など知るはずはなく扉を閉めるなり欲望に突き動かされて家の奥へと走り出していた。

すなわち、この魔物は蓮華の為だけにこの家に誘い込まれたのだ。

魔物は家に入るとただ真直ぐに走った。

人を求め、通路の分岐を求め、扉を求め。

しかし、何処まで走ろうともそれらは無く、ただ真直ぐな廊下が続くのみ。


「キギ?」


ここに来て魔物はやっとその異常に気が付いた。

そして後ろを振り返った魔物はその光景に驚愕する。

それは魔物が今まだ走って来た廊下。

しかし、後ろに道はなくただ闇が広がっていた。

そのためもう戻る事は不可能である事を理解すると再び前に視線を戻した。

すると前から「ペタペタ」と何者かが近づいて来る足音が聞こえる。

魔物は警戒を強め棍棒を構えた。

しかし、視界に移ったのは先ほど見た少女蓮華。

しかも同じような少女がもう一人いる。

魔物はそれを見て涎を垂らし棍棒を地面に叩きつけた。


「ヒィーー。」


すると歩いて来た二人は対照的な表情に変わる。

蓮華は恐怖に涙目になりもう一人の少女、空は動揺する事無く笑みを浮かべた。

魔物は空の顔には苛つきを感じたが蓮華の顔を見て厭らしく口元を歪め舌なめずりをする。

魔物の頭にはすでに背後の道が消えていた事など、どうでもいい事の様だ。

今の魔物の頭にはカティスエナの命令と自分の欲望が完全に一致している。

すなわち、襲い、犯し、殺す。

そして魔物が一歩前に出ようとした時、その足が動かなくなっているのに初めて気づいた。

魔物は目を見開き自分の足元を確認する。

するとその足は沼に沈むように床に飲み込まれていく。

魔物は危機感を感じ手に持つ棍棒で床を全力で叩きつけた。

しかし足は沈むのに床自体は家の外と同様に途轍もない強度である。

それを示す様に先ほど蓮華を恐れさせた一撃も床に掠り傷さえ付けていない。

そして暴れまわっていた魔物も頭まで飲まれ、少しすると突き出した手も最後には動かなくなった。

これだけ見れば家の中にいればかなりの力があるように見えるが外に出れば子供同然である

そして魔物を倒した蓮華にも無事にステータスが与えられた。


「ステータス。」


蓮華は早速レベルを確認するためにステータスを表示する。

しかしそのレベルは絶望的までに低い。

現在のレベルはたったの6。

これはハッキリ言って10歳程度の強さである。

その数値を見て蓮華はがっかりした様に表情を曇らせた。

するとそんな蓮華に空は笑顔で肩に手を乗せると声を上げた。


「雪、ルナ、アース。外に出てまずは一匹ずつ魔物を殺して私達もステータスを得ます。蓮華は約束通りに魔物を倒してステータスを得ました。」


すると天井に穴が開きそこから雪が現れた。


「そう言うと思って私はもう行って来たよ。ステータス。」


そう言って雪はステータスを表示する。

すると天井に再び穴が開きそこから新たに二人が現れた。


1人はガイア、緑の髪と青い瞳の少女である。

そしてもう一人がルナ。

こちらはプラチナブロンドの髪に金眼の少女である。

この二人は蒼士の命令により空が生み出した新たな蒼士の管狐である。

ガイアは大地を護りルナは月子を護る。

名前が安直に思えるが二人は大変気にいっているのだ。

そして蒼士のロリコン疑惑を回避するためにあえて言えばこの3人は生まれてまだ1年とたっていない。

姿が子供であっても仕方ないのだ。


ルナとガイアも床に下りると同時に「「ステータス」」と声に出した。

そして空に自慢する様にステータス画面を見せつける。

それにより現在この中でステータスを得ていないのは空一人。

その為、空は焦る様に飛び出そうとする。

しかし、それを蓮華は急いで呼び止め目の前にある闇の空間を通常に戻した。

すると目の前には家の玄関が現れ外には魔物たちが暴れる影が見える。


「これですぐに行けるよね。」


「すまない。恩に着る。」


そう言って空は扉を勢いよく開け、その反動で外の魔物を放射状に弾き飛ばす。

そして手ごろな魔物にキツネ火を放って灰にすると何食わぬ顔で再び扉を閉めた。

その直後、再び外で魔物たちが暴れ始めるがそんな事は知った事ではない。

空は縮地のような速さで蓮華に駆け寄るとステータスを表示させた。

そしてこのステータスプレートにはまだまだ知られていない機能がある。


その一つがパーティ機能。

そしてもう一つがレイド機能である。

パーティーは基本6人以内で一組の時に使う。

しかし、レイドはそれ以上の時に使われ機能的大差はないがパーティーではリーダーが一人だがレイドはサブリーダーを含む2人以上のグループを複数作ることが出来る。

そしてパーティとレイドを組めばそのメンバー内で常時発動型などのスキルを所持している者がいればその恩恵を受けることが出来るのだ。

しかも組んでいる間はメンバーで得た経験値は当分に分割される仕組みである。

すなわち空たちが今から倒す魔物の経験値の5分の1が自動的に蓮華へと入って来る事になるのだ。


「よし、これでパーティの編成完了。それと蓮華。今主に念話送っといたからしばらくしたらレイド申請が来ると思うんだ。来たらすぐに受けるんだよ。」


それだけ言うと空たちは二階の階段を上がって消えていった。

そして窓を開けると管狐の姿に戻りモンスターの群れへと突撃して行く。

元の姿に戻った彼らには主たちからのフィードバックを受け以前とは比べ物にならない程の力を手に入れている。

爪の一薙ぎで魔物を両断し、その牙は敵の剣さえも砕く。

逆に相手の攻撃は体表で弾かれその体に毛ほどの傷さえも残す事は出来なかった。

そして一人当たり25匹のノルマを1分もかけずに完遂した空たちはお使いから帰った子供の様に再び源家に入っていった。

そこでは丁度蓮華がステータスパネルを操作し蒼士をレイド登録している所であった。

そしてそこに書かれているレベルは急激に跳ね上がり今では既に80を突破している。

その事からどうやら一匹目はステータスを得るにあたり経験値の入りが悪いようだ。


「これで良し。お兄ちゃんと組んでレイドに登録したよ。これで少しはお役に立てるかな。」


しかし、レイドを組んだ瞬間。蓮華たちのレベルが驚異的な速度で上がり始めた。


その速度は目にも止まらないという表現が適切で今や300台まで上がってしまった。

それは即ちそれだけの敵と蒼士たちは戦っていると言う事である。

そして、ここで蒼士が蓮華に賭けた真の意味。

それは強くなった蓮華の能力の向上。

すなわち座敷童としての常時発動型の能力である。

それは家の者に幸運をもたらし不幸を退ける。

そして、蒼士は現在その賭けに勝利を収めた。

蓮華は気付かない内に能力が上昇し、今アリスが持つ轟運並みの恩恵を与えるに至っている。

そして現在、月読の未来視では冬花の生き残る可能性3パーセントが40パーセントまで跳ね上がった。

この確率は月読が見る幾つもの未来。

その内、冬花が生き残ることが出来る未来の映像の割合を示している。

当然、未来は確定された物ばかりではない。

そのため月読はそれらを見て割合を出しているのだ。

当然、明美の時に言った100パーセントは見える未来の全てが同じ結果に集束する事をさす。

その未来の映像を見て月読は人知れず笑みを浮かべた。

そして蓮華のレベルが上がるにるにつれ、そのパーセンテージも次第に上がっていく事になる。

しかし、それにも限界があった。

これだけで冬花を救えるほど、彼女の死の運命は優しくはないのだから。

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