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14 まさかの真実と女神降臨

俺はクレアに理由を話すと決めたがコイツがどういう立場なのかをまだ知らない。

そのため、こちらから先にいくつかの確認を行った。


「クレア、お前は誰から魔王の事を聞いたんだ?」

「そんなのギルドマスターからに決まってるでしょ。Sランクの冒険者はギルドの最高戦力なのよ。もしもの時に備えて他の人には伝えられない事も事前に通達されるわ。まあ、知って逃げたらランク剥奪だから余程の事が無い限り逃げないけどね。」


最初の質問の答えには辻褄が合っているので今の話を信じることにした。

そして幾つかの追加の事を聞いて最後に俺が最も危惧している事を聞く。


「Sランクは国からの推薦を受けないといけないんだろ?国は何も言ってこないのか?」


するとクレアは渋面を作って話し出した。

どうやらこの質問には答えにくい内容が含まれているようだ。


「言っちゃなんだけど、この国は私達のような人種以外の者には住みにくい国なの。町を歩いてて分からなかった?この国は人間至上主義寄りの国なの。だから私たちの事を亜人種と言ってあまりいい顔をしないわ。だから私は別の国でSランクになったの。この国には用事があって来たんだけど、ギルドに立ち寄った時に依頼されてこうして試験官をしてるのよ。」

「それでずっとフードを被ってるのか。」


俺と冬花はやっと納得した顔になる。

そしてこれならクレアがこの国に味方する心配も少ないだろうと感じた。

しかし、クレアの話は終わらず、意外な方向へと進み始める。


「そうよ。下手したら襲われて奴隷にされるかもしれないから街中でも安心できないの。私はSランクって言っても魔導士だから不意を突かれて接近されたらどうなるか分からないわ。」


「そうなのか?でもそんなこと俺たちに話してもいいのか?今夜にでもお前を縛って奴隷商に売るかもしれないぞ。」


俺はワザと悪い笑みを浮かべると煽るように言ってみる。


「いいのよ。あなた達の事は今日見てて十分に分かったから。もし蒼士がその気になれば私の魔法の射程距離外から歩いて近づいて来てもこちらに止める手段は無いわ。その時は諦めるだけよ。」


そう言ってクレアは俺に向かって寂しそうな笑顔を向けた。

どうやら俺と話したり喧嘩したりした事で多少なりとも人となりを知る事で信じ始めているようだ。

それ故の表情だろうと冬花も気付いて俺の手を握る。

それにより俺は冬花の思いを感じ、クレアに自分たちの事も話す事にした。


「分かった。クレアにも俺たちの事を話そう。」

「そんな言い回しをするって事は教えてもらえない可能性もあったのね。」


しかしその事には答えず俺はニヤリと笑うと本題に入る。


「俺達の正体、と言うよりも冬花の正体だな。冬花は魔王を倒すために神から選ばれた勇者なんだ。」


すると俺の冗談とも言える言葉にクレアは一瞬止まるが次には声を上げて笑い出した。


「・・・ぷ、ははははは。何それ。本気で言ってんの。本気ならかなり痛い冗談だけど魔王が現れた今だとシャレにならないわよ。」


そして、とうとうその場で腹を抱えてその場に蹲ると騎竜の体をバシバシ叩き始めた。

どうやらクレアの笑いのツボにハマったらしいが騎竜は凄い迷惑そうだ。

痛がっていないので俺の時と同様に大した力は入っていないと言う事だろう。


その様子を俺達は温かい目で見守りクレアの笑いが収まるのを待つ。

そしてしばらくして笑いが収まったのか体に付いた埃を払って再び騎竜に寄っかかって座った。


「いやー、久しぶりに大笑いしたわ。それで自称勇者様はこれからどうするの?」


どうやら笑いは収まったが今の言い方からして信じてはいないようだ。

そんなクレアに追従する様に騎竜まで半眼を向けて来る。

ただこちらは眠かっただけの様でクレアの顔を一舐めすると再び頭を下ろして眠り始めた。

まあ、騎竜にとっては冬花が何者でも関係ないよな。


「まあ、勇者なんだがちょっと田舎でひっそり暮らすのも良いと思ってな。二人でのんびり子供でも育てながら暮らそうかってさっき話してたんだ。」


しかし、そんな俺達にクレアが冗談半分な感じで爆弾を落とした。


「あなた達もしかして知らないの?勇者は子供を作れないのよ。」


そして、その突然の言葉に俺も冬花も固まってしまい言葉を失う。


「エルフって凄い寿命が長いのよ。だから昔に現れた勇者の事もちゃんと記録が残ってるし直接あった人もまだ生きてるわ。それでその人たちから聞いた話だと勇者はどの種族の者と交わっても子供が出来た事がないらしいの。だからこの世界で勇者の子孫は誰もいないし言っても誰も信じないのよ。」


するとクレアの説明を聞いて冬花は顔が真っ青に変えてしまう。

そして俺は体から殺気を溢れさせ、それに気付いた騎竜が目を覚まして震え出した。

それを同じ様に感じたクレアは騎竜を宥めながら声を荒げる。


「ちょっとどうしたの。その殺気を押さえなさいよ。この子が怯えてるでしょ!」


俺はクレアの抗議を聞いて何とか殺気を押さえると大きく息を吐き出し深呼吸を行う。

しかし殺気は抑えても心の中の怒りまで収まった訳では無い。

そして冬花を抱きしめると俺の腕の中で泣き始めてしまった。


「ごめんね蒼君。私、蒼君の子供産んであげられない。」


冬花のその言葉に俺は渋面を作りながらその頭を撫でてやる。

別に俺は子供が産めないとしても気にはしないが、それは俺の個人的な意見に過ぎない。

重要なのはそれを悲しみ涙を流している冬花の気持ちだ。


「別にそれで俺たちの気持ちに変化が起きるわけじゃない。それに何か方法があるかもしれないだろ。だから気にせずに解決方法を探っていこう。」


そしてしばらくすると冬花は泣き止んでくれたが顔色は悪いままだ。

するとクレアはそんな俺達の反応を見て先ほどの冗談の様な話が真実だと感じた様だ


「もしかして、冬花・・・本当に勇者なの?」

「・・・うん。」


そして恐る恐るクレアが問いかけると冬花はコクリと頷きを返した。

すると今度はクレアがアワアワと慌て始め視線が左右へと泳ぎ始める。


「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったのよ。でも、その・・・。」


クレアは謝ったもののどうすればいいのか分からず、言葉は尻すぼみになっていく。

俺はそんなクレアに視線を向けると一瞬ビクッと肩を跳ねさせて叱られる子供の様に俯いて肩を落とした。

しかし、俺が書けた言葉は叱責でも罵声でもなく感謝の言葉だ。。


「クレア、貴重な情報をありがとな。これは早めに知れてよかったよ。もし、今知れなかったら理由を探して俺たちは世界を彷徨い歩いたかもしれない。」


その言葉にクレアは顔を上げると俺たちに視線を戻した。

俺はそんなクレアに笑顔を向け、冬花は顔は青いが何とか笑顔と言える表情で頷いた。

そして俺は一瞬で思考をまとめると冬花に真面目な顔を向ける。


「冬花。これは早急にあのバカ女と話す必要があると思わないか。」


すると冬花は今生では珍しく背中に黒いオーラを出しながら頷いた。

ハッキリ言ってこうなった冬花は俺では抑える事が出来ない。


「そうだね。彼女には私もちょっとお話がしたいと思ってたんだ。蒼君お願いできるかな?」

「ああ。ちょっと待っててくれ今準備する。」


俺はその場から立ち上がると少し離れた所に移動し作業を始める。

そして、突然動き出した俺達に付いて行けずクレアは首を傾げながらその様子を眺めている。


俺はまず、ベルの時のように像を作るためにスキルで材料を集める。

しかも今回は石ではなく砂の中から砂鉄を集めてそれを魔法で溶かし、土魔法で不純物を失くした後に形成して周りから圧力を掛けながら冷却する。

そして10分としない内に立派な女神像が出来上がり俺はその女神像に話しかけた。


「おい、聞きたい事がある。ちょっと顔かせ。」


俺はどこぞのチンピラのような事を言うが残念な事に像に変化はない。

すると背後で見ていたクレアが騎竜の傍からこちらを覗き込み困ったような顔を浮かべる。


「ねえ、凄い素敵な神像だけど神様はそんな簡単に地上には下りてこないのよ。こちらからの呼び掛けてもあちらがこちらとの間に道を作らないといけないらしいから。」

「そうか。それは良い事を聞いた。さすがクレアだ。頼りになる。」


そしていつまで経っても変化が見られない象にイライラし始めた俺にスキルを獲得した感覚が訪れる。

俺はステータスを開き何を獲得したのかを確認してみる。

そして追加されているスキルを確認し俺は口が裂けそうな程に口角を吊り上げる。

ちなみにそこには降霊術(神)の文字があり神を呼び出す事が可能とするスキルだ。

しかも効果は先程クレアが言った事に近く、神を呼び出すための道を作る事が出来る。

しかし、効果はそれだけではなく、指定した神を無理やり呼び寄せる事も可能な様だ。


そのため俺は即座にスキルを発動し、あの女神を呼びに掛かった。

すると途轍もない魔力消費が始まり流石の俺も少し眩暈を覚える。

しかし消費しながらも魔力を回復させ尽きる寸前に女神を呼びだす事に成功した。


そして神が宿った神像は激しい光を放ち始め、それが収まるとまるで本物の女神の様に色のついた姿で俺の前に現れる。

しかし、現れた女神は今までに無く不機嫌そうで俺の顔を見るなり声を荒げて怒りを露わにした。


「ちょっとあんな達。高貴な私を勝手に呼び出さないでよ。私を降臨させるならもっと場所を選んでよね!こんなみすぼらしい草原のど真ん中に呼び出すなんて前代未聞よ。」


そして、その姿に俺は相変わらずの馬鹿だなと思い、クレアは神の威厳を感じられないその言葉使いに顔をしかめる。

ただし冬花は黒いオーラを背中から噴き出して背後から静かに近づいて行くと呪い殺しそうな顔をして手を伸ばした。


「次に呼ぶときはもっと考えて呼び出しなさい。それじゃ帰るから早く魔王を倒すのよ。」


そして帰ろうとして背中を向けた時、女神の顔を鷲掴みする者が現れた。


「ちょっと待ってください。女神様。私はあなたに重大なお話があるの。」


その言葉に女神は冷や汗が噴き出しピタリと動きが止まる。

どうやら女神は先ほどの会話を聞いており、話しの流れをちゃんと理解しているようだ。

その直後、俺から強制的に呼び出されるのを感じ力の限りそれに抗ていたということか。

俺が大量の魔力を消費したのはそのせいだろう。

だから呼び出されてしまった女神は急いで話を切り上げ天界に逃げようとしたみたいだ。

しかしコイツは俺との激しい綱引きで消耗している為あまり力が残っていない。

そんな状態で今の怒れる冬花を振り払う事は不可能だ。


「な、何かしら勇者冬花。私に何か用?」


女神は冬花の鬼迫を感じ必死に震えるのを押さえている。

しかし、そんな強がりが今の冬花に通用するはずはない。

下手な事を言えば神とは言えただでは済まないだろう。

そして、冬花からは聞く者が例外なく恐怖するような暗く思い言霊が発せられ、女神に襲い掛かった。


「先程ある情報が私達にもたらされました。私に子供が作れないとは本当でしょうか?」


冬花も俺同様に今にも爆発しそうな感情を必死に抑えているのだろう。

まずは実力行使ではなく会話を持って相手に接しているのでまだ自制が効いていると言える。

そうでなければ今頃アイツの顔は冬花の手の形に抉れているだろう。


「そうよ、勇者にはいらない機能でしょ。だから子供が出来て弱みにならない様に封印してるのよ。」

「そうですか。しかしそれならおかしいですね。魔王を討伐した後にも子供を残せた勇者は存在しないそうじゃないですが?そのあたり、どう説明されるのですか?」


女神は冷や汗の量を増やして答えに詰まるっている。

恐らく封印を解くのを毎回怠っていたのだろうが、今の冬花の様子だとその答えでは許してくれないだろう。


そして冬花は女神の顔を掴んだまま宙に持ち上げさらに力を籠める。

今回は金属で作っているためそう簡単には壊れない。

しかし、その強度を無視して女神からはミシミシと言う哀れな音が聞こえ始める。


「ぎゃあーー。痛い痛い痛い。ギブギブ。話すから下ろして。」


すると冬花は力を緩めるが女神が逃げない様に顔を掴んだまま地面におろした。

女神は痛みが消えてホッとするが次の瞬間再び力が入り始める。


「早く話さないと潰しますよ。」


そして女神はとっさに助けを求める様にこちらへと視線を向けてくる。

だが、俺も女神を快く思っていないため鬼のような形相で睨み返した。

女神はその眼力に負けてそっと視線を冬花に戻す。


「わ、分かったわ。魔王さえ倒せば子供を作れるようにするから。だからいいでしょ。」


すると俺の鬼の顔は消え去り、それと同時に冬花も女神の顔から手を離した。

女神は涙目になり距離を取ると俺達を睨みつけてくる。

しかしコイツは自業自得と言う言葉を知らないのだろうか。

今までの怠慢な行動が今に繋がり、自分勝手な思考が冬花を怒らせたと言うのに。


「あんた達、私にこんな事してタダ済むと思ってるの?」


しかし俺は黒い笑顔を浮かべると女神に答えてやる。

逃げ場が無いのは俺達じゃなくお前の方だ。


「状況を分かってないのはお前だ。俺達はいつでもお前を呼べる。その意味が分かるだろ。」

「う!」


すると女神は顔色がだんだん悪くなり始め逃げる様に体が下がって行く。

どうやら、もし今後も問題があれば強制的に呼び出され拷問まがいの尋問を受ける羽目になると理解できているようだ。


「だが今はもうアンタに恨みや怒りがあるわけじゃない。魔王を倒してごく当たり前の生活がしたいだけだ。さっき迄はそれさえ困難な状況だったからああいう対応になったがな。」


そしてその言葉が真実であると示す様に冬花からも黒いオーラが消え去り、笑顔を取り戻して俺に笑顔を向けている。

ただし俺は鋭い視線を女神に向けると最後に一つだけ付け加えた。


「お前が封印を解き忘れたらまた呼ぶから覚悟しろよ。その時は今の事が優しかったと思えるくらいのお仕置きを準備してるから楽しみにしてろ。」


すると女神は俺が気付いている事に気付いたようでその目が急に泳ぎ始める。

ハッキリ言って良い女神か悪い女神かで言えば明らかに悪い女神なんだが嘘は苦手のようだ。


(ヤバイ、絶対にバレてる・・・。後で冬花の呪いを変更して魔王を倒したらあいつとだけ子供を作れるように調整しとかないと。こいつら頭のネジが何本も飛んでそうだからやると言ったら本気でやるわ!)


女神は自分の事を棚に上げて二人の事を再評価した。


そして女神が天界に戻ると神像は元通りのただの鉄の像になった。

俺は念のためにその神像を回収しアイテムボックスに収納しておく事にした。

アイツもああは言っていたが奴を信用する根拠は何も無いからな。


そしてそれを見ていたクレアは呆れた顔のままにこちらを見詰めている。


「どうしたのクレア。そんな顔して?」

「なんでそんなに普通なのよ。ていうか相手は神様なのに強く出すぎでしょ。しかも、あんな対応して後で罰が当たったらどうするの!?」


どうやらクレアは冬花の身を心配しているようだ。

まあそこに俺が含まれてなさそうな気はするけどそれに関してはスルーしておこう。

すると冬花は口元に指を当て首を傾げながら考え込む様な仕草を見せる。

しかしパッと閃いたという風に手を叩いたかと思うとその顔には満面の笑顔が浮かび上がる。


「その時は本気で磨り潰せば良いかな。蒼君と一緒なら怖いモノなんてないんだよ。」


その堂々とした宣言にクレアは呆気にとられ苦笑いと共に溜息をついた。

こう見ると姿は少女でも何処かの婆さんを見ているようだ。

どうやら大人であるのは間違いでないらしい。


「ほどほどにね。それと出来れば私が傍にいない時に頼むわ。巻き添えはごめんだよ。」


そして俺達は再び焚火を囲むと他愛ない話に時間を潰し、適当な所で眠りについた。

周りは俺の結界で守られているため見張りの必要はない。

俺達は朝までゆっくりと眠り、朝が来ると次の依頼のために出発して行った。

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