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119 援軍到着

戦争も中盤に差し掛かってきたころ、再び魔物の種類に変化があらっわれた。

その相手とは人の体に牛の頭を持つミノタウロスと、岩の肌を持つ一つ目の魔物サイクロプスである。

どちらもオーガよりも強力な種族ではあるが先ほど現れた暴走オーガに比べれば倒すのは容易であった。

しかし、どちらの魔物も魔法に対する防御力が高く、どの個体も巨大な斧で武装している。

もし、その一撃を生身に受けようものなら即死は免れないだろう。

たとえ百合子の強力なアイテムがあったとしても限界はあるのだ。

たとえ治癒の腕輪があったとしても死んだ者は治らないし生き返らない。

伝説ではエルフが昔、蘇生薬の調合に成功したとあるがその時の者達は神の怒りに触れ、全員が魂も残さず消滅したと伝えられている。

そして、その蘇生薬のデータと記憶は全てこの世界から消されたと言われている。

それではなぜそのような話が残っているのか?

それは神が戒めとしてそういう事があったという事実だけを残したからだ。

そしてこれはこの世界でも数少ない、神罰の執行された実例として世界中に浸透している。


そして今日この時、新たな実例がこの世界に刻まれることになる。


それは突然現れた。

最初はただ白い物が迫っているように見えるだけだった。

しかし、それは次第に王都へと迫り巨大な津波へと変貌する。

それを見た人々はその数に絶望を感じた。

それは大量のスケルトンだったからだ。

その数は魔物たちの数を大きく上回り数十万は下らないだろう。

人々は最初、人型の魔物と言う事で敵の援軍ではないかと考えた。

しかし、スケルトンたちがひと塊の津波となり魔物を飲み込んだ時。

王都中へと声が響き渡った。


「我は冥王ハーデス。勇者と同じ世界から来た神である。あのスケルトンはお前たちの味方だ。彼らは聖王国に虐げられた者達に私が戦うための体を与えた存在。人間たちよ、ここまでよく頑張った。負傷した者、限界の者は休め。戦える者は隣人を護れ。誰も死なず失わず、この戦争を終結させるのだ。」


すると最初は理解できた者達の間から次第に声が上がり始める。


「マジかよこれ。これは奇跡か!」

「俺達生き残ったのか?」

「やった、やったぞ俺達!」


そして、多くの者たち。

特に後方で直接戦闘に参加しない者達は互いに称え合い喜び合った。

しかし、その中で指揮官の任に着く者はいまだに油断する事無く、いつでも不測の事態に対応できるように城壁の上から戦場を見つめていた。

そして、魔物たちがスケルトンたちの波にのまれていく中、とうとう後方にいたドラゴン達が動き出した。


「ギャーーーーー!」


そして仲間の魔物を完全に無視する様にスケルトンたちに向け一斉にブレスを放つ。

するとスケルトン達は襲っている魔物もろとも跡形もなく消滅して行った。

それを見て城壁の上の魔術師や兵士たちは危機感をその胸に抱く。


「おい、あれヤバくないか。」

「ああ、このままじゃいくらあの数のスケルトンでも・・・。」


そして、空のドラゴン達もスケルトンの殲滅に動き出そうとした時、城壁の内側から二つの影が戦場へと飛び立った。

すると人々は空を見上げ驚きに言葉をこぼす。


「あれってもしかして最近街中で目撃情報のあるドラゴンじゃないか。」

「でもあんなにデカかったか?どう見ても30メートルはあるぞ。」

「ああ、横の15メートル級が子供に見える。しかも見ろ、背中に誰か乗ってるぞ。」

「おい、あの30メートル級に乗ってるのはSランク冒険者のクレアじゃないか。」

「それじゃ横のもう一人は誰だ。エルフであるのは分かるが・・・。」


そして城壁の上では歓声と憶測が飛び交いその雄姿を見ようと多くの人々が城壁へと登って来た。

その頃クレア達は・・・。


「カルラ。あなたいつの間にこんなに大きくなったの?」


クレアはカルラの急成長を見て困惑しているようだ。

それもそのはず。

カルラは数日前まで横を飛ぶセラフィムと同じサイズで15メートル級だったのだ。

しかも、クレアが少し見ない間にセラフィムまで倍近いサイズへと成長している。

普段の生活しているのは人の姿で魔力を極限まで抑えているのでクレアはその変化に気付く事が出来なかった。


「フフフ、驚いたかクレア。少し仕事をしたら、報酬に蒼士たちの世界の神から良い物を貰ってな。そのおかげでこの通りだ。」


そう言ってカルラは嬉しそうに羽ばたき体を横に旋回させた。


「ちょっと何してんの。落ちる落ちる落ちるーーーー!」


そしてクレアはそんなカルラの背中で鱗を掴んだり風を操作して体をカルラに押さえ付けたりして落ちない様に必死な形相でしがみ付いた。


「オ~、すまんな。」

「ゼエーゼエー。もうカルラには鞍が無いんだからね。せっかく準備してたのにアナタ様のはセラフィムとお婆ちゃんに取られちゃったのよ。もう~」


そしてクレアは頬を膨らませカルラを睨んだ。

クレアも別に落ちるのが怖いのではない。

怖いのはその先である。

現在、下は敵であるモンスターで溢れ返っているのだ。

今の実力ならば簡単に死ぬことはまず無いが何が起きるか分からないのが戦争である。

しかもこの下にある戦場は尋常の物ではない。

わざわざ危険を冒す必要は無いのだ。


「それではクレア。こちらは空の敵を落とすぞ。」

「分かってるわ。このままじゃせっかくの援軍が全滅しちゃうわ。」


そして二人は頷きあって敵へと向かって行った。

その頃隣で飛ぶセラフィムとパメラは・・・。


「どうしたセラフィム。私では不満か。」


そう問いかけたパメラにセラフィムは即答で頷いた。

セラフィムは明確な自我を持ってまだ日が浅く、その精神はまだ子供に近い。

そのためパメラの問いに素直に答える事になった。


「フフ、素直な奴だ。ならばお前にこれをやろう。」


そう言ってパメラは手元にローストされた肉を取り出しセラフィムの口に放り込んだ。

そして突然口に入った肉を咀嚼するとその目を輝かせた。


「おいっしーーー!何このお肉。食べた事ない味。柔らかくて肉汁も満点。」


その様子を見てパメラは心の中でニヤリと笑う。

そして表面上では普通の笑顔を浮かべると新しい肉を取り出した。


「これは先日アリス達にユグドラシルの枝を渡した時、対価としてもらったお肉じゃ。蒼士たちの住んでる国はお肉がとても美味しいらしくてな。その肉を使ってノエルが作ってくれたのだ。今回頑張ってくれるならもっと食べさせてやるぞ。」


するとセラフィムの体に先ほどまでは無かった漲る闘志がが溢れ出す。

そしてそれ以上にその口からは涎も溢れ出していた。


「分かった。セラフィム頑張る。」


そして、パメラとセラフィムも戦闘を開始した。


ちなみに今回のこの組み合わせにもちゃんとした訳がある。

パメラは経験豊富で魔力の量もクレアの数十倍はある。

その為まだ幼く、心配が多大にあるセラフィムの乗り手をパメラが。

そして成長して巨大な体と力を手に入れ、自分以外も守ることが出来るカルラが今回はクレアと組んでいるのだ。

その結果、上空では先日の黄の龍王戦と同じ様な一方的な光景が繰り広げられていた。

いや、今回はカルラもセラフィムも大きく成長している。

その為、前回よりも悲惨な光景ともいえた。

敵のドラゴン達はカルラを見た途端、恐怖の声を上げた。


「お、おいあれ。もしかして白の龍王じゃないのか。」

「馬鹿な。アイツは龍王で一番体が小さいはずだ。あんな巨体なわけないだろう。」

「そんな事はどうでもいいんだよどうやってあんなのに勝つんだ。勝負にならないぞ。」


そしてドラゴン達は恐怖で半狂乱になり統制もなく逃げ惑い始めた。

しかし、ここに集まったのは主神カティスエナの招集によるものである。

黒の龍王ならともかく、それ以外の物がそれに逆らう事は不可能と言えた。


そしてどんな中にも恐怖に支配されず、攻撃に転じる者がいる。


「慌てるな。奴らは所詮は少数。一斉にかかれば勝機はある。」


そう叫んだドラゴンはブレスを放とうと口に魔力を収束する。

そしてそれに続く様に他のドラゴンが幾匹かブレスの態勢に入った。


(よし、ここで俺達が攻撃すれば俺達に続く者が増えていくはずだ。)


しかし、そうドラゴンが思考した瞬間、ブレスの準備をしていたドラゴン達の頭が白い球体に包まれ消えていった。

その異常性に周りで攻撃態勢に入っていたドラゴン達は一斉にカルラへと視線を向ける。

するとその口には既にブレスの為の魔力が集まり、まるで点滅する様に光っていた。

そしてカルラの口内が光るたびにドラゴン達の首から上が消滅して行った。


(馬鹿な。こんな速度でブレスを連射だと。そんな事が・・・。)


するとカルラはそのドラゴンの思考を読んだのか突然念話を送って来た。


(思考が偏りすぎなのだ。ブレスも所詮はドラゴンの固有魔法なのだから必要な所に必要な威力で発生させればよいのだ。お前たちみたいに人間を見下すだけの奴らには分からないだろうがな)


そしてそのドラゴンもカルラの攻撃を受け首から上を消滅させて落ちて行った。

するとその落ちていくドラゴン達はまるで強風に煽られた様に不自然な軌道でスケルトン達の方向に落ちて行く。

するとスケルトン達はそのドラゴン達を波に飲み込むと、そこから再びスケルトン達が大量に増殖した。

どうやら材料があれば体を新たに作りスケルトン達は復活するようだ。

そしてスケルトンは再び勢力を取り戻し、魔物を飲み込んでいった。

しかし、地上ではいまだにブレスを散発的に放つドラゴン達がいる。

そしてそれらのドラゴンはいくらハーデスが生み出しスケルトンだとしても倒す事は難しい存在であった。

すると、スケルトン達の後ろから数名の人の姿をした戦士達が現れた。


「やっと出番か。待ちくたびれたぜ。」

「そうね相手がドラゴンなのが不満だけどしょうがないわね。」

「まあな、貧乏くじは引いたがあいつらもカティスエナの軍勢なんだろ。なら俺は不満なんてないぜ。俺達がこうなったのもあのカスが原因だからな。」


そして10人を超える戦士たちは剣や杖を構える。


「しかし、あの3人は何やってんだ。サボってんのか。」

「何言ってんの。あいつ等ならあそこにいるわよ。」


そう言って戦士の一人は城壁を指差した。

すると城壁の上では上手そうに何かを食べながら3人組が手を振っている。

どうやら当てずっぽうで言った言葉が正解していたようだ。


「アイツ等~何飯食ってんだよ。しかもあの顔。絶対美味いもん食ってるぞ!」


すると周りにいる戦士たちは一斉に城壁へと途轍もなく殺気の籠った視線を向けた。

その途端3人は城壁に顔を隠し見えなくなってしまう。

しかし、少しするとその3人は城門から飛び出し、もの凄い勢いで敵を切り裂きながら走り寄ってくる。

そして戦士たちの前に到着するとすぐに美味しそうな匂いを放つ料理を取り出した。


「みんなよく来てくれた。これさ仕入れだ。」


そう言って3人は剣で敵を切り殺しながら周りに肉串を配って行く。

すると殺気は収まり全員周りの敵を片手間に葬りながら串に齧り着いた。


「うっめーーー。数百年ぶりの飯は最高だな。」

「そうね。あなた達こんなに美味しい物いつも食べてないわよね?」


そして笑顔で食べる戦士達からの質問に3人は一瞬言いよどみ視線を逸らした。

彼らは居候していた数日の間、暇があれば暴食の限りを尽くしていたのだ。

それは当然戦士たちが生前食べたくても食べられなかった料理が大量に含まれている。

そして、その一瞬の間を見過ごす程ここに揃う者達は甘くなかった。


「おい、まさかお前ら・・・。後でちょっと面貸せよ。」

「そうね。あなた達には聞きたい事が沢山出来たわ。後で話せるのを楽しみにしてるからね。」

「まあまあ、皆さん落ち着いて。」


そう言って彼らを宥める者が現れた事に3人は胸を撫で下ろしそちらへと視線を向ける。

しかし、それは3人の勘違いであった。


「ハーデス様の話では彼らは少女と契約しているのでしょ。我々と違い勝手に成仏できないのですから逃げられる心配はありません。後で捕まえてゆっくりお話をしましょう。」


そして、庇ってくれる仲間がいない事を知った3人は額から冷や汗を流し、逃げる様にドラゴンへと向かって行った。


「あ、アイツ等逃げやがった。」

「でもそろそろ行かないと。きっとあの様子だと町の中にはもっと美味しいものが溢れてるわ。とっとと片づけて町に行くわよ。」


「「「「「おーーーーう」」」」」


そして、召喚者達と元勇者達の蹂躙が開始された。

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