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102 竜狩り ③

ユノはハーデスとノエルの前で犯してしまった失態を挽回するために全力で走っていた。

向かう先はこの周辺で最も強い魔力を放つ場所。

即ち龍王がいる場所である。


(匂う、匂うぞ。こちらから強い魔力の匂いが。そしてこれは神気。神から強い加護を受けた者の匂いが漂って来る。)


そしてユノは山脈を上り、この周辺で最も高い山の頂上に到着した。

そこは蒼士がカルラと出会った場所のように山頂が平らに均されている。

しかし、中央だけは1段高くなっており、まるで玉座の様な印象を受けた。


「龍王、いるのは分かっている。隠れてないで出て来い。」


すると、返事の代わりに突然上空の雲の中からブレスが放たれユノを襲う。

しかし、既にその予兆を感じ取っていたユノは素早く横に走りブレスを交わした。

そして、ブレスが止むと上空から20メートルに達しようかと言う巨大なドラゴンが雲を払って現れた。


「この偉大なる黄の龍王に話しかけるとは愚かな犬め。その罪は万死に値する。貴様の飼い主共々八つ裂きいして晒してくれる。」


そう言って龍王はユノへと再びブレスを放つ。

しかし、それをユノは再び躱し足を止めると平然と胸を張って龍王を睨み付けた。


「蜥蜴が良く吠える。所詮は相手の強さも測れん愚か者か。」


すると龍王は声を上げて笑いユノを見下ろした。

その目には侮りと侮蔑の色がハッキリと浮かんでおり、知能は高いが理性が低い事を容易に感じ取れる。


「もしや下にいるどこぞの神の事を言っておるのか。それなら愚かなのは貴様の方だ。我は主神カティスエナ様の僕にして地上執行代行者。いかに強力な神でも手を出さなければあちらも我らに手を出せん。この程度の頭しかない者の主人などたかが知れておるわ。」


するとその瞬間、ユノの雰囲気が激変する。

そして体から死の気配を立ち上らせ、次第に大きく変化させていった。

ユノにとっては主を馬鹿にされるのは至上の屈辱。

そのため、龍王の挑発は見事にユノの逆鱗に触れ、その体が次第に巨大化して行く。


「愚かな蜥蜴よ。我の事ならまだしも我が主を愚弄するとは・・・。」


そしてユノの大きさは今までで最大の15メートル程まで大きくなり、龍王を見上げる。

しかし、いかに大きくなろうと翼の無い者をこの龍王は恐れることは無かった


「ははは、負け犬の遠吠えがここまで聞こえて来るぞ。それでどうやって貴様は攻撃するのだ?」

「愚か者め、空を行く手段が翼だけだと思うなよ。」


そう言ってユノは一歩前に踏み出した。

するとユノの足は地上から離れ、階段を上る様に上昇して行く。


「馬鹿な、貴様何をした!?」


そして次第に自分に迫るユノを見て龍王は驚愕の叫び声を上げる。

するとユノは急激に速度を上げ、それはロケットの様な勢いで龍王へと迫った。

ユノは鋭い視線に相手を捉え、大きな口を開けてそこに並ぶ凶悪な白い牙を見せつける。


「我が牙を喰らえ!」


そして、ユノは動揺して動きの鈍った龍王の首に牙を突き立てる。

その一撃は鉄より遥かに硬い龍王の鱗を易々と貫き、その下に肉へと深々と沈んでいく。


「ギャアアアーーー。このゴミがーーー。我の体に傷を付けた愚かさを悔いるがいい。」


すると侮りを怒りに変えた龍王は首に噛みつくユノへとその鋭い爪を振り下ろした。

しかし、それを見ていた他の首が合図を送りユノは牙を離して飛びのいて躱す。

そして、再び空を蹴って距離を開けると空中に立ち止まった。

そこは龍王よりも高い位置であり、その視線を更に見下す形へと変わる。


「やはりこの程度か。最初から感じていたが貴様は体はデカいがそれだけだな。どうせ先ほどの様な不意打ちや仲間を犠牲にした戦法ばかり使っているのだろう。貴様・・・それで王のつもりか!」


ユノは敢えて王と言う部分を強調し冥王である自分の主の方が上だと暗に告げる。

すると龍王はユノの言葉に激昂し言葉にならない声で咆哮を上げた。

だが、実際にユノの言った事は正しい。

この龍王は周りの者と結託し、先代の龍王を罠に嵌めて殺すとその魔石と心臓を食べて龍王となっている。

しかもその時、共に先代を嵌めた者達もその場で殺して自分の糧とした事で不動の王の地位を手に入れたのだ。

更にその事を知ったカティスエナは咎めるどころかその行いを称賛し、強い加護をこの龍王に与えた。

その後もこの龍王は殆ど表に出ることは無く、下僕と見下す同族たちに全てを押し付けている。

だが、そんな事をしていれば力は増すが技術は付いてこない。

そのためこの龍王は力も大きさもユノを凌いでいるにもかかわらず劣勢に立たされているのだ。


「黙れ獣風情がー。我は神に認められた存在だ!貴様如きに負けるはずはない。」


すると龍王はアイテムボックスから大量の魔石を取り出しそれを口へと放り込んだ。

そして、それを何度も続けて行い体は更に大きく肥大化させて行く。

しかし、この愚かな龍王は自身の限界を超えて魔石を取り込んあだめにその目に先程まで在った知性が消え始める。

そのため魔力が暴走し理性は薄れ、急激な成長による空腹に意識は塗りつぶされていく。


「ギャアアーー!!ニクーー、ニクヲクワセロー!」


そして暴走する龍王は目の前のユノを餌と判断して牙を剥き襲い掛かった。

しかし、そんな単純な攻撃はユノにとって躱すのは容易い。

そのため噛みつきを躱すとと同時にその体を爪で切り裂きダメージを与えて距離を取った。

しかし、その傷は瞬く間に回復し何も無かったかのようにユノへと体を向ける。


「愚かな、理性無き攻撃が我に当たると思うな。しかし、あの再生力は厄介だな。やるならば一撃で首を落とす他に手段は無いか。」


そう考えたユノは奥の手を使うためハーデスへと念話を送る。


(ハーデス様。少しお願いがございます。)

(どうしたケルベロス。何かあったのか?)

(ハ、愚かにも龍王が暴走してしまい今の私では勝つのに時間がかかってしまいます。そのため一時的な封印の解除を申請します。)


するとハーデスから悩む様な思念が伝わってくる。

しかし、ハーデスは短い沈黙の後に許可を出した。


(・・・・。よかろう。今回は特別に許可を出す。急がねばオーディンが何をするか分らんからな。)

(畏まりました。すぐに勝負を付けて見せます。)


その直後、ユノの中にある封印が解け、それと同時に彼の体が急激に変化して行く。

三つ首のケルベロスの首は一つに統合され、体は更に巨大化して行く。

すると今度は太陽が欠け始め日食が開始された。


「ははは、久しぶりに解放されたぞ!」


そして、変化を終えたユノはいつもと違う口調となり体の大きさは50メートルを超えていた。

しかしその直後、龍王はユノに向かい特大のブレスを吐き出した。

だがユノはそれを躱す事なく口を開けるとブレスを飲み込んでいく。


「愚かな蜥蜴だ。神すら飲み込むフェンリルである我に、このような攻撃が通用すると思うな!」


そして、そのままブレスを飲み込みながら接近しその頭を齧り取った。


「愚かな蜥蜴よ、貴様は我が食うに値せん。そのまま落ちるがいい。」


そしてユノは前足を振り上げ爪で龍王の体を大きく切り裂いた。

すると胴体はその反動で急激に加速し隕石の様に落下して行く。

そして口に咥えた龍王の首を吐きつけるとそのままハーデスの元へと走って行った。

その速度は早く、数秒後にはハーデスの前に降り立ちユノはハーデスを睨みつけながら話しかける。


「ようハーデス。久しぶりだな。貴様を食い殺すこのチャンスを待ってたぜ。」


しかし、ハーデスは余裕を崩す事なくユノへと顔を向ける。

その口元にはいつもの笑みが浮かび、見上げているのに見下している様にすら見える。


「久しいな、フェンリル。やはり考えは変わらんか?」

「当然だ、貴様を喰った次はあのオーディンを喰らう。それが俺の存在理由の全てだからな。」


するとハーデスは溜息を吐いて肩を落とした。

その様子はヤレヤレと言う感じである。


「仕方ない。ならば再び封印しなくてはな。」

「愚かな。我がそう簡単に封印されると思うなよ!」


そう言って足に力を入れて飛び掛かろうとした時、ハーデスの後ろから声が響いた。


「ユノ伏せ。」


するとフェンリルは条件反射の様にその巨体を伏せて尻尾を振った。

それはまさに家を守る忠実な番犬の姿そのものだ。


「・・・!?な・・何だこれはーーー!なぜ体が勝手に反応するのだーーー!!」


そして、その声に答える様にハーデスの後ろからアリスが現れた。

するとハーデスは笑いながらアリスを紹介する。


「ああ、お前は初めてだったな。これはお前たちと契約したアリスだ。主人の言う事を聞くのは従魔として当然だろう。」

「これって言うな。それに私は何も聞いてないわよ。何この大きいの。可愛くないんだけど。」


するとハーデスはとうとう大笑いを始めアリスの頭をポンポン叩いた。

するとアリスは不機嫌そうに頬を膨らませてハーデスを睨むがその顔は若干嬉しそうにも見える。


「まあ、簡単な事だ。こいつはフェンリル。ケルベロスはこいつを体に封印しているのだが体を共有しているのでどうやらアリスの命令には逆らえないようだな試しに何かさせてみてはどうだ。」


するとアリスは少し嫌そうな顔をしながらいつもユノにさせている芸を指示する。

指をクルクル回せばフェンリルは横にクルクル回り、上に上げればジャンプを行い、バンと銃で撃ったように手を動かせば死んだふりをした。

しかし、それをこの巨体で行えば大量の砂埃が舞い上がるためアリスは顔をしかめる。


「やっぱり駄目ね。大きいから迷惑だし可愛くないわ。」


するとフェンリルは死んだ魚の様な目になりハーデスに懇願した。

それはまるで疲れ切って椅子に座る何処かの格闘家のようだ。


「た、頼む。こんな屈辱は耐えられん。早く封印してくれ~。」


するとハーデスは止めに大笑いをフェンリルに送り笑いが収まってから封印を行った。

その際フェンリルは歯を食いしばって涙を流していたがこれでは次の封印解除の時にも一悶着有りそうである。


そして、いつものケルベロスのユノに戻ると何も言っていないのにアリスの前で先程フェンリルが行った芸を披露し、キラキラした目をアリスへと向けた。


「う~ん。やっぱこっちの方が可愛いわね。ヨシヨシ。これはさっき回収したドラゴン肉よ。三頭で仲良く食べるのようにね。」


するとユノは尻尾をブンブン振ってアリスに近寄り仲良く肉に嚙り付いた。

その姿を見てハーデスは苦笑を浮かべる。


「それでケルベロスよ。龍王はどうした。まさかフェンリルが食い尽くしていないだろうな。」


するとケルベロスは肉を食いきるとハーデスにキリリとした顔を向けて答えた。


「大丈夫です。全て揃っております。ただ空中戦だったため、ここより少し離れた所にありますが。」

「分かった。ここは何もしていない我に任せて休んでいろ。すぐに戻る。」


ハーデスはアリス達にそう言って転移で回収に向かう。

そして宣言通りハーデスは龍王の死体を回収してすぐに戻って来た。


「協力に感謝する。私だけでは無理があったからな。」


俺はその言葉に首を横に振って答えた。


「気にしなくていい。どうせしないといけなかった事だ。それにそっちには冬花の事で世話になったからな。もし、アテナに会う事があれば何か要望が無いか聞いておいてくれ。あの女神には冬花の事で個人的に礼がしたい。こっちだと色々準備出来るから少しの無理くらいは聞けそうだとな。」


ハーデスはそれに頷くと目的の物も手に入れたので全員を連れて転移を行い家へと帰る。

しかし、当然この事は天界よりカティスエナは覗いており、巨大な戦力の一角が落とされた事を知った彼女は激怒する事になる。


そして、家に着いた俺たちはその日は休みにする事にした。

それは全員がここ数日かなりの緊張感の中で過ごしていた事が原因である。


そうなると当然、冬花とカグツチは自分たちの居なかった間に蒼士と何があったかを知るためにベルの両脇を抱え連れて行った。

この後ベルは二人からかなりの羞恥プレイを受けるだろう。

そして、ノエルたちは先程の事でユノから詳しい話を聞くために家に帰って行った。

ハーデスも一旦あちらに帰ると消えていき、カルラはセラフィムに人化を教えると裏へと向かった。

そのためここにいるのはパメラとクレアだが二人は真剣な顔で魔法で作った水を浮かせそれを操作する訓練をしている。

どうやらこの世界の魔法は一度打ち出すと真直ぐにしか進まないと言うのが常識だったようだ。

または発展しすぎる事を恐れたカティスエナによる思考誘導か。


実際この世界に来ている勇者たちは蒼士たちと同じような世界から来た者たちもいた。

それなのに多くの事で発展が不十分すぎる。

それにパメラの場合、やり方を覚えると言うよりも思い出している風な感じを受けた。

そのためクレアよりも早く魔法の誘導操作を自分の物とし、すぐにクレアにコツを教えている。

そして出来るようになると二人で水の球を投げ合って仲良く喜んでいる。

見た目からして二人は同い年の様に見えるのでまるで姉妹のようだ。


「それにしても二人とも覚えるのが早いな。」

「まあ、言われただけじゃなく実際に見ているからね。魔法はイメージだからそれだけでも違うもんだよ。」

「そうね。でも魔法の圧縮はここですると危ないわね。これは外に言って特訓しないと失敗した時にここを吹き飛ばしちゃうかも。」

「ははは、気を付けてくれよ。」


そして、そんな取り留めのない話をしていると冬花たちが戻って来て夕食の準備を始めた。

今ではベルも完全に落ち着きを取り戻し、普通に生活を送れるようになっている。

そして、夕食が開始寸前、裏からカルラと、クレアによく似た少女が入って来た。


「なんとか夕食には間に合ったな。こいつが朝に言ったセラフィムの人化した姿よ。どうも人のイメージがクレアに依存したみたいなのよ。このような姿だが許してやってちょうだい。」


そう言われてクレアと見比べると双子とまではいかないがかなり似ている。

髪型を同じにすれば判別は難しいだろう。

そして、その間にも俺は魔法で新しい椅子を作りそれを机に並べる。

するとセラフィムは大喜びで椅子に座りテーブルの上の料理を見て目を輝かせた。


「これ食べてもいいの!?」


そう言って人の言葉を話せる様になったセラフィムは見た目よりも幼く見える。

すると、その問いに笑顔を浮かべた冬花が答えた。


「そうね。食べるのは良いけどみんなでちゃんと分け合わないとね。独り占めしちゃダメよ。」


するとセラフィムは少し考えた後に「うん」と元気に答え笑顔を浮かべた。

そして、この日からこの食卓に元気な少女が加わり、更に賑やかになる。


そしてその夜、俺が一人で部屋にいるといつものように扉がノックされる。

そして扉を開けるとそこには3人の女性が潤んだ瞳を向けていた。


「蒼君、今日はこれでいいよね。」

「私も親睦を深めるために必要だと思うのだ。」

「あ、あの。私は止めたのですが二人が私の為だと言うので・・・。」


そう言って扉の前にいたのは冬花、カグツチ、ベルの3人である。

どうやら先ほどの話し合いでこのように決まったようだ。

しかし、夜になると俺に拒否権は無く、また拒否するつもりもない。

俺は笑顔で3人を部屋に招き入れると親睦を深めるために存分に励んだのであった。

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