1章 逃げ水と君の夏 8
ドリンクバーで二人分の飲み物を取って席に戻ると、まだ少し顔を赤くしたままの小日向が小さくなって待っていた。
昼飯に誘ってきた彼女についてこのファミレスまで来たが、ここまでほとんど会話は無く、彼女の意図はつかめないままだ。
「はい、オレンジジュース。氷入れたけど良かった?」
「う、うん。ありがとう」
ビクッと体を揺らして飲み物を受け取る小日向。俺が向かいの席に座ると、こっちの顔を伺いながらモジモジしている。
やりにくいなおい。誘ったはいいけどどうしよう、感がMAXだわ。でも、こういうときは先手必勝だ。うだうだしている時間は長いほど無駄ってやつだ。……とは言っても、時間をかけてやりたい事があるわけではないんだけどな。
「献血の呼びかけってのは、結構頻繁にやってるの? 夏休みの最初の頃にもやってたの見かけたけど」
気になっていたことをこれを機に聞いてみると、小日向は少し驚いたように答えた。
「藤沢くんあの日もパークにいたんだね。うん、月に何回かはここみたいな施設に献血バスが来てるよ。呼びかけは毎回やってるけど、私たちが参加するのは基本月1位だよ。夏休みとか長期休暇は参加する機会が増えるけどね」
毎週呼びかけをしているわけではないらしい。それより1つ気になる事があるな。
「『私たち』ってのは、さっきのお兄さんとかのこと?」
「ううん、高橋さんは赤十字の職員さんだよ。私たちっていうのは『学推協』っていう団体に所属している人のことだよ」
赤十字? 学推協? なんだかよくわからないけど、小日向は笑顔になり続きを話し始めた。