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1章 逃げ水と君の夏 7

夏休みに入り2週間が経過した。

8月に入りうだるような暑さが続いている。


日々の生活に特筆することはなく、夏期講習に通いながら週3程度フットサル部の練習に参加しているだけ。

聡に執拗に誘われなければフットサル部には顔を出さなかっただろうから、家族以外とまともに会話すらしてなかっただろう。


中学時代の友人数名から遊びに誘われることはあったが、結局行かずじまいだった。



今日も朝から夏期講習に参加し、昼食を適当に済ませようとパークをうろついていた。

予想していた夏休みそのもの、という感じだが小日向の姿をこのパークで見てからモヤモヤともイライラともつかない感情が胸の中に渦巻いている。


あぁ、むしゃくしゃする。

こんな時は辛ものを食べよう、とフードコートに向かって歩いていると不意に軽薄そうな声が耳に届いた。


「献血に協力したら君が俺たちと遊んでくれるわけ?」


注視すると、そこには大学生のように見える男2人に絡まれている小日向 咲がいた。


以前見かけた時と全く同じ格好で、献血の呼び掛けをしていたようだった。


「い、いえ、まだ呼び掛けをするので遊べません!」


急な出来事に焦ったのか、顔を赤くしながら大きな声で小日向が返事をしていた。


「でもさ、献血って痛いんでしょ? 血を抜かれるの怖いし、 メリットが無いとやる気にならなくない?」


大学生の1人が言うと小日向はちょっとバツが悪いような顔になった。

なんですぐに否定しないんだよ。


「だからさ、今日じゃなくて暇な時でいいから遊ぼうよ。 だめ? 」


大学生が畳み掛けるように言う。


小日向は真面目な顔で悩み、決心したように口を開いて


「わかりました、真面目に献血をしてくれるならー

「いいわけねえだろ、アホか」


何を言い出すかと思えばOKした小日向に向かって駆け寄り、気がつけば俺は小日向の肩を掴みながら罵倒していた。


大学生2人組は小日向がOKしたことに驚き、更によくわからい男が出てきたことで訳が分からなくなったのか呆けた様な顔をしていた。


「こいつ、見ての通り真面目で、変に融通がきいちゃうんで、からかうのもこの辺にしてくれませんか? 」



さも知り合いのように俺が言うと、大学生2人組は毒気を抜かれたように少し笑い


「そうだね、ふざけすぎたみたいだ。 ごめんね」


「献血ってよくわからないけど、お詫びに行ってこようかな」


と言ってくれた。

思ったより大人だった、適当にナンパしてただけで悪気はそこまでなかったみたいだ。


すると、騒ぎを聞きつけたのか赤十字のポロシャツを着た以前見かけた男性が駆け寄ってきた。


「咲ちゃん! 大丈夫? 」


「は、はい。」


「この人たちが献血してくれるみたいですよ」


大事にならないうちに俺が言うと、


「この子に献血の呼び掛けされたんでやろうと思ってるんですけど、どこに行けばいいんですかね? 」


大学生の1人が乗っかってくれた。


「あぁ、そうなんだ! ありがとう! 咲ちゃんが絡まれてるって聞いたから何事かと思ったよ。 こっちについて来て! 」


男性は嬉しそうに言うと大学生2人組を先導して歩いていく。大学生2人組が振り向いて、


「じゃーねー、もしよかったら今度遊ぼうねー」


「男の子の方もね、仲良くしなよ! 」


と声をかけてきた。


そこで男性は俺の存在をちゃんと認識したのか、


「咲ちゃんの友達? ちょうどお昼だから咲ちゃんも休憩入っておいで。 時間はあるから一緒にご飯でも行って来るといいよ! 」


と大きな声をかけてきた。



……残された俺と小日向。

小日向はやっと感情が追いついてきたのか赤い顔をして恥ずかしそうにしている。

気まずいな、おい。


訳の分からないイライラが再発してきた。

なんで俺は声をかけちゃったんだ、ナンパするのもされるのも勝手のはずなのに、


小日向に聞きたいことがあった気がするけど、変な雰囲気だし逃げるに限るなこれは。

うん、そうしよう。


「それじゃあ俺は行くわ。 騒ぎを大きくしたなら悪かった」


それだけ言うと振り返りフードコートへ再び歩き始める。

辛いものの気分じゃ無くなってきー

「藤沢くん! 」


何を食べるかの思考を止め振り向くと、少し落ち着いたがまだ顔が赤い小日向がこっちを見ていた。


「ご飯食べに行きましょう! 」



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