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鬼の作戦会議

 少女の家に来るとそこにも石のテーブルに石のイスがあった。

 何一つ女の子らしいところが全く見られたなかった。

 テーブルをよく見ると真ん中に粘土で作られたような人形のようなものが二つ置かれていた。

 この少女の家は洞窟の中なので外も暗かったが中はそれ以上の暗さだったたね、少女はろうそくを取り出し火をつけてくれた。


 少女は石のイスに座ると俺に「座れば?」と言ってきたから俺は地面に座り込んだ。

 しばらく沈黙が続いた。

 俺はなぜか話す気にならなかったので女の子らしくない部屋を見渡してみた。

 ここは石器時代かって突っ込みたくなったが少女には理解されないと思いやめといた。

 すると、


「人の家で何興奮しているの」


 ヤバいばれてる俺は思い身構えたがそれは無駄に終わった。

 少女は「冗談」と無表情で言い本題に入ろうとした。

 俺の一番聞きたいことはこの地獄からどうやって出ていくかという方法だ。

 この少女にそんな事できるのだろうかという疑問が出てくる。


地獄(ここ)から出たい?」


 と改めて訪ねてくる。

 俺は迷わず答えた。


「ああ、出たいね」


 少女は俺の返答を聞くとどこか安心したような表情だった。

 俺は本当ならもっと自分から積極的に聞かなくてはならないのかもしれない。だか、見た感じ少女はずけずけと聞かれることに慣れていないようだった。だから、俺は少女のペースに合わせることにした。


 少女はどこからか地図を取り出すとテーブルの上に広げ始めた。

 地図のとある場所に指をさし言った。


「この地図の南西にある門のような形の場所を見て」


「ああ」


「ここは、鬼専用の地獄から出るための門」


 俺は少女のこの言葉で悟った。

 この門から俺が地獄から出るということなのだろう。


「この門から出るのか?」


 少女は頷き言った。


「そう」


「でもさぁ、漫画とかだと鬼専用の門から出るためには色々な条件が必要になってくんだけどやっぱりそうなのか?」


「なに言っているのか分からないけど普通は鬼専用の門から”地獄の死者”と”私みたいな奴隷”はまず出ることが出来ない」


 なんとなく予想はしていたことだ。

 簡単に出ることが出来ないから地獄は人々に恐れられているのだ。それがいとも容易く地獄から出ることが出来れば地獄の付加価値は下がってしまう。


「じゃあ、どうすんだよ」


「私の話ちゃんと聞いていなかったの?”地獄の死者” はって言ったんだけど」


「それがなんだよ?俺は地獄の死者だぞ?」


「そうだから、極楽にいる死者に地獄(ここ)にきてもらう」


「どういうことだ?」


 という少女はもう一度地図に手を伸ばしある場所に目を向けた。


「ここは実は極楽と地獄を区切ってある結界装置があるんだけど、そこの結界装置を壊せば極楽から死者が迷い混んで来るはずそれにのって柊も極楽の死者と紛れて地獄(ここ)を出るっていう作戦」


「まてまて、なんで極楽からこっちにこれてこっちから極楽はいけないんだ?」


「それは神の加護で守られているから」


 極楽の死者を守るために神も力をかしているのか。

 それではどうして結界装置というものの力を借りているんだ?

 神の加護で地獄に落ちないようにすればいいのではないだろうか?

 という俺の疑問に少女は気づいたようにまだなにも聞いてもいないのに答えてきた。


「神も絶対じゃないと言うこと。神が地獄から死者が抜け出せないように加護をつけているせいで極楽から死者が地獄に入れないような加護をつけることができない。だから結界装置に頼っている」


「へっー」


 と俺の頭はもうごちゃごちゃだった。

 昨日もで普通に生きていた俺がすぐに地獄だの、神の加護などについていけるはずがない。

 少女は不安げに聞いてくる。


「難しかった?」


「ああ」


 俺は簡単に頷いた。


 それから少女は地図でもう一度場所の確認をした。

 地図には俺が知らない文字で書かれていて読むことが出来なかった。

 地図に書いてあるのはたぶんその場の名称だと予測は出来るが後で間違っていたら怖いので一様聞いてみることにした。


「なぁ、この地図に書いてある文字は名称の名前か?」


「うん」


 やっぱり予想どうりだ。

 名前なども知っておいたほうがいいだろと俺は聞いた。


「じゃあ名前を教えてくれよ」


「この門が”羅生門”、この結界装置がある場所が”本能寺”って名前」


 色々と名前に突っ込みを覚えたが少女の様子を察するにして名前の意味を知っているようにはまるで見えなかったことから、突っ込んでも無意味のように思えた。下手をすれば少女の俺に対する印象が更に悪くなる可能性がある。

 というこの名前にしたやつは誰だよ。


 少女はイスから立ち上がると地図を丁寧に丸めてしまった。

 俺はふっと気になってしまった。

 俺は死んでから何時間たったのだろうかと。


「なぁ、死者の時間感覚って」


「ない。なぜなら、死んでいるのだから」


 少女の回答はちゃんとしたものではなかった。

 たぶん少女もそれほど詳しくはないのだろう。

 まあ、少女達”鬼”からしたら死者の時間なんてどうでもいいものなのだろ。

 俺も普段はあんまり時間は気にしない方だ。


「脱線もここまで、今から結界装置を壊しに行くけど何か反論てきな物はある?」


「随分、急だな?まあいいけど」


 俺もイスから立ち上がると俺達は洞窟から出た。

 洞窟から出て見るが辺りに変わりはない。

 俺は不自然に思っていた、なぜ死者や鬼にあまり会わないのかと。

 少女に聞いておこうと思ったが考えてみると俺は少女に聞いてばかりだ。聞いてばかりは駄目だと思い自分で考えてみようと思った。

 やはり思いつかない。

 まぁいっかと俺は思い聞いてみることをやめた。


 そんな下らないことばかり考えていると不意に少女に腕を掴まれてしまった。

 俺はドキドキした。

 だけどすぐにドキドキは消えてしまった。


「こらから結界装置の場所まで行くから全速力でいくよ」


「安全歩行で……」


 最後まで言葉を言うことは叶わなかった。

 少女は一方的に言うと走り出した。

 人の常識を無視した速度だった。

 この速度に俺の体は耐えられなく風圧を受け体のあちこちがちぎれていた。

 ちぎれては治りの繰り返しだった。

 それは苦痛だった。

 頭が可笑しくなりそうだった。


 結果装置の場所”本能寺まですぐに着いた。

 感覚的には家から近くのコンビニまで行くような感じだった。


 そこには赤い寺のような建物が建っていた。その建物はとにかく大きく、そして美しいものだった。地獄にこんな場所があってもいいのかと思ってしまう。

 この本能寺には大きな門があった。大きさはだいたい二階建ての家くらいだろうか。


 俺と少女で門の所まで行くと、どうやら門には鍵がかかっていなかったらしく片手ですんなり開いた。

 中を覗いてみると中心に冷蔵庫のような長方形の銀色のものがあった。

 少々想像していたものとは違うがあれで間違いないだろう。

 少女も指をさして「あれが結界装置」と言った。


 俺達は目の前までやって来た。

 こんなものが地獄に結界を張っているとはまだ俺には信じることができないのだが少女は結界装置と言っている以上認めるしかない。

 さっさと壊してここを出たいものだ。


「さぁ、早く結界装置を壊してくれよ。でも、こんなところに置いておくなんて無用心過ぎるんじゃないか」


「たしかに」


 そこは少女も同感だったらしい。

 少女は拳を握りしめて結界装置を殴る。

 が、殴ることは出来なかった。

 いつの間にか少女の拳を止めている男が立っていた。


 男、いや少年は紫色の髪に黒目に目の下にある隈が特徴的だった。

 服装は軍服のようなあまり派手出はないような格好をしていた。

 少年は静かに口を開いた。


「俺の気配に気付けないなんて無用心なのはどっちだよ」


 という少女を思いきっり赤い壁へ投げ飛ばした。

 少女は壁にぶつかると壁は粉々に壊れ少女は一瞬立ち上がろうとするがすぐに力が抜け地面に膝をついて倒れてしまった。

 少女はニヤリと笑う。


「弱すぎるだろ」


 俺は思い切り睨み付け、少女の所に行こうとすると首を掴まれて持ち上げられた。

 首は締まり呼吸が全く出来なかった。

 俺は声をしぼりだして言った。


「お前は……ゲコッ…………ゲコッ…なん…なんだよ……」


「俺かー」


 少年は殺気を放っていた。

 その殺気は気持ち悪いもので、まるで体にまとわりついでくるかのような感じだった。

 今すぐにこの少年の元から離れたかった。

 少年は言った。


「俺は、地獄の管理人、(とびら) (こう)


 そう名乗るとそのまま俺の首を握りつぶすと、その瞬間俺の視界は真っ白になった。

 なにも見えなくなった。

 俺に残されたのは闇だけだった。







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