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鬼に恋して

 恋をしってしまった。

 何でなのかなんて関係ない。

 ただ好きになったんだ。

 どうしようのないくらいに。


「俺の名前は(ひいらぎ) (はじめ)。あんたの事が好きになったんだ」


 目の前にいる少女に思いを伝えるがたぶん無駄になってしまう。

 なぜなら、少女は敵なのだから。

 少女は俺の告白を聞いても眉一つ動かさずに無表情だった。

 まるで冷たい氷のような感じだった。


「あなたがどんなに私を好きであろうと私には関係ない」


「ああ。知っているよ。でも、俺もあんたがどう思っていようが関係ない」


「やっぱり地獄に来るだけはある、あなたの言い分は勝手すぎる」


「それに俺が地獄に来たのはなんかの間違いだ」


 まっすぐな瞳で少女を見て答えた。

 ここで初めて少女の眉毛がピクリと動いたのがわかった。


「それはどういうこと?」


「俺は閻魔に人殺しの罪で地獄に落とされたんだか、そんなことはしていないだ」


「つまり、あなたは人殺しをしていないのにも関わらず閻魔様に地獄に落とされたと?」


「ああ。でも、俺には人殺しをやっていないっていう証拠がないからあんたに信用されるための手がないのが今の現状だよ」


 少女は口に手を当てて難しいそうな表情をすると何か考えがまとまったのか俺の方をまっすぐ見て言った。


「確かにあなたの言うことを全て信用することは出来ない。でも、嘘をついていないという可能性もあるというのも事実」


「少しでも俺を信じてくれんのか?」


「……」


 口では答えてくれなかったがゆっくりと首を縦にふり頷いてくれた。

 俺はもっともな疑問を口にした。


「けど、何でなんだ?」


「閻魔ならやりそうだからって言う簡単な理由」


「それはどういうことだ?」


「簡単に言うと私は閻魔が嫌いってこと」


 俺はいつの間にか少女が閻魔から”様”をとっているのに気がついたがどうでもよかったからそのまま何も言わなかった。

 さらに疑問が生まれてしまった。

 鬼が閻魔を嫌う理由が分からなかった。


「話がみえねぇなぁー」


「……」


 一瞬少女は間を開けた。

 話すことを躊躇っているように俺には思えた。


「柊っていったけ?」


「あん!」


「柊、ここにいる鬼達のほとんどがあなた達の所で言う”奴隷”なんだ」


「えっ?」


「えっ?って言うのは地獄にも奴隷があることに驚いたの?」


 その口調は皮肉にも聞こえた。少女は続ける。


「奴隷ができたのは今から二億年前、今の閻魔が閻魔の座に就いた時から始まったの、私の一族とその他もろもろの一族は強制的に奴隷にされたらしい」


「らしいって?」


 少女はまるで誰かに聞いたような感じだった。


「というのも私が生まれたのはつい最近の千年前だから」


 千年前って最近って言ったけ?という疑問は置いといた。


「……」


 俺には黙って聞くことしか出来ない。


「それに地獄にいると鬼は死者の負の魂で死んでしまう。だから、私もこのまま地獄にいればあと百年の命」


 少女はうつむきどこか悲しげに言った。

 俺は少女があと命の灯火徐々に減っていることへの悲しみではなくもっと違う何かだと思った。もちろん根拠の欠片なんてない。


 それに閻魔を嫌う理由がわかった。

 閻魔のせいで奴隷となりこの地獄で永遠にすごしていかなればない。地獄の死者と何ら変わらないじゃないかと。

 それに百年を多い少ないと見るのではなく地獄にるだけで命がなくなっていなど絶対にあってはならいことだ。

 この事を聞いてみて自分と同じ鬼に対してこの仕打ちを考えれば閻魔がろくでもないことなんて簡単に分かってしまう。

 それに閻魔が俺達、人間をちっぽけな存在と思っているのかもしれない。そうでもなければ俺を地獄に落とすなんてことは決してしないはずだと思った。

 少女の話を聞く限りあの閻魔ならあり得るが最終的な俺の考えだった。

 俺と地獄いる鬼少なくともこの少女は閻魔に恨みがあることは明白だった。

 だけど、恨み云々の前に俺にはそれよりも大事なことがあった。色々と脱線してしまったが。


「あんたにも色々と事情があるのは分かったけど俺はそれよりも大事なことがある」


 少女は俺の言葉を聞くと身構えた。


「俺と付き合ってください」


 少女は俺の言葉聞くと呆れてものも言えないようだった。

「はぁー」と嘆息すると少女は渋々口を開いた。


「名前も知らないのに告るっておかしくない?」


「じゃあ、名前をおしえ……」


 言葉を言い終わる前に少女は言った。


「無理。あなたみたいな人とは付き合えない」


 きっぱりと言われてしまった。

 ショックで立っている足に力がはいらなくなりそのまま地面に座り込んでしまった。

 よく考えると分かるが閻魔を俺と少女が嫌おうが俺達は敵同士なのだ。

 敵と付き合うなんて言語道断だなのだ普通。


 ふられてショックで立ち直れない俺だが今からこの状況を何とかしなくてはならない。

 この状況とは、まず一つ告ってふられてしまったこの場の雰囲気の改善。

 二つ目は敵同士である俺達の関係の改善だ。

 どうしたものか。


 俺が身構えていると少女は右手の手刀を顔に向けてきて言った。


「柊、地獄(ここ)から出たくない?」












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