7-どきどき。
まだ封を切れてない紙袋をちらりと見て、わたしの胸の中は熱くて、痛いくらいにバクバクと心臓が動いている。
明日は星花のクリスマスイベントの日で、由佳里おねぇちゃんがわたしの家に泊まりに来てくれる日。泊まりに来てくれるときも、逆に泊まりに行くときも結構あるけれど、こんなに胸の奥がドキドキして、眠れなくなったことは初めて。
そうなる理由なんて、もう分かってる。明日がクリスマスイブっていう特別な日で、おねぇちゃんに『特別』な気持ちを抱いているって気づいた後だと初めてのお泊まりだから。
由佳里おねぇちゃんのほうがよっぽど緊張してるはずなのに普通に寝てるんだから、こんなんじゃ子供みたいって笑われちゃうよ。
わたしだって、もうオトナなんだから。おねぇちゃんが『特別』だから、悩んでるんだから。
時計を見ると、もう日付は二十四日になっちゃっていた。こんな時間だと、もうおねぇちゃんは寝ちゃってるよね。コンクールとか発表会とかの前の日は、早く寝るって言ってたし。
……そういえば。
わたしがお店のお手伝いをしてから、駅前のショッピングモールで買い物をしてたとき、……わたしが行こうとしたお店から、由佳里おねぇちゃんがちょうど出てくるとこだった。わたしが今持ってるのと同じ紙袋を、左手に持って、なぜか、顔が赤くなってるように見えた。店の中にいたから、寒かったわけでもないはずなのに。
もしかして、おねぇちゃんもおんなじ理由で……?なんて、考えすぎだよね。あんなに背も高くて、まるでモデルさんみたいだから、そういうオトナな下着だって、普通に似合いそうだし、普通にたまたま同じタイミングだったとかでもおかしくないわけだし。
こんなの考えたって、答えなんて分からないし、答えを訊く勇気もない。だけど、知りたくなっちゃうって、おかしいのかな。
もう、これ以上考えても、何も浮かばないや。早く寝なきゃなって、布団を頭からかぶって無理やり寝かせようとするけど、……体は、心は、そんなに簡単に切り替わってくれない。
由佳里おねぇちゃんのことも、クリスマスイベントのことも。気になって、気になってどうしようもなくなっている。遠足の前の小学生だって、こんなにはならないんじゃないかって思うくらい。
楽しみだけど、それと同じくらい不安で、……もやもやとドキドキが入り混じって、頭の中がぐるぐるする。
わたし、どうなっちゃってるんだろう。由佳里おねぇちゃんなら、わかってもらえるのかな。
もやもやに引っ張られた心は、いつの間にかあの大きな体と優しい声を思い浮かべてる。