6-決意。
私の、ひかりちゃんへの気持ち。
『好き』なのも、特別な存在なのもわかってるけど、肝心のどういう『好き』かは、まだ分からない。だけど、この胸の奥の高鳴りも、まるで、恋してるみたいな。ズキンって痛む胸も、それを表してるようで。
私のことを慕ってくれる子も、仲がいい友達もいっぱいいるけれど、……ひかりちゃんといるだけで、時間の感覚が変になって、一緒の時間が、あっという間にも、永遠にも思える。
胸の奥が、不思議とざわつく。きっと、一瞬思い浮かんだ、屈託のない笑顔のせい。思い浮かべるだけで、胸がきゅんってして、ちくりと痛むような。
教室でかすかに聞こえた噂話にすらすがってしまうほどに、……私は、ひかりちゃんのことを求めてるんだ。まだ知らない気持ちのこと、まだ私は全然知らない。頼るとしたら、周りの噂話や友達との会話くらい。その中の一つが、やけに耳に残る。
……やっぱり、見えないおしゃれが一番大事だって!恋愛相談を受けてたらしい子が言った声に、そうそう、なんて賛同する周りのざわつきも。
そんなのにすがりたくなるくらいに、私の中に芽生えた気持ちは大きくなっちゃってるんだ。痛いくらいの心の叫びを、聞かないふりなんてできそうになかった。
……駅前のショッピングモールで、思わず立ちすくむ。目の先には「ピーチフィール」の看板。お手頃な値段で幅広いものが買えるって、部活や教室でも名前が挙がるくらいには人気のランジェリーショップだ。私もよくここで買い物をしてるけど、……今回の目的は、いつもと違う。足がなかなか動かないのも、きっとそのせい。
意を決して、足を踏み入れる。私のサイズのところにある棚まで行って、……どれなら、ひかりちゃんは気に入ってくれるのかな。
そんな状況を想像して、思わず熱くなる顔を抑える。どうしよう、ピンク色の妄想で、もう何も考えられない。
「本日はどのようなものをお探しですか?」
「ひゃあっ!?」
店員さんの声に、思わず飛びずさってしまう。私くらいに背が高い人なんてめったにいないから、顔ももう覚えられてしまってる。
「その、……クリスマスにお泊まりしに行くので……」
つい出てしまった本音と、気づいたようににっこり笑う店員さん。ここには星花の子だってよく来るし、私もこんなんだから……きっと気づかれちゃってるんだろうな、私の心の中も、そこにあるもやもやも。
「それなら、……こういうのはいかがでしょうか?」
渡されたのは、ワインレッドのシンプルなブラとショーツのセット。なんだか、見てるだけでえっちな気分になるような。
もしそれを付けたら、……またピンク色に染まりそうになる頭を、必死で止める。
「お客様はスタイルがよろしいですから、こういうシンプルなのが映えると思いますよ?」
「ありがとうございます、……試着してから考えます」
そう言って一旦その場を落ち着かせて、受け取ったものにどうしても目がいってしまう。
どうしよう、まだ何もしてないのに、ドキドキしてる鼓動を抑えられない。
しばらく悩んで、深呼吸して、……ようやくレジに向かう。
気づいてくれるかな、私の気持ち。胸の中にあるのは、それだけだった。