5-もやもや。
二人でお泊まりなんて、今までだっていっぱいしてたのに。
なんで、今はこんなにドキドキしちゃってるんだろう。クリスマスイブっていう、特別な日だからだとしても、わたしと由佳里おねぇちゃんはまだ恋人でもなんでもないのに。仲良しだし、大好きだし、しょっちゅう一緒のベッドで寝たりだってするのに。
今の私と由佳里ちゃんは、どういう関係なんだろう。『友達』というには、わたし達の関係は深すぎるし、『姉妹』でも、『家族』でも、近いような気もするけど、何か違う気がする。それに、……もっと近くにいたい、そう思ってしまう気持ちは、膨らみすぎて、胸の中から飛び出しちゃいそうなのに。
「『好き』って、むずかしいよぉ……っ」
思わず、こぼれた言葉。一人でいるのは好きじゃないけど、今は一人で考えてたい。お父さんにもお母さんにも恥ずかしくて言えないし、由佳里おねぇちゃんに訊くのはもっと。
もっと近づきたい。その気持ちが、溢れそうなのは分かってる。でも、どうしたいんだろう。
――ソファーで隣に座って、見上げた顔が優しくて、体が、自然にお互いを求めてる。
好きだよ、ひかりちゃん。その言葉と一緒にかがんでくる顔に、顔を上げて視線を合わせて、……今、何考えてたんだろう。思い返して……、わたしと由佳里おねぇちゃんが、ちゅーしようとしてたとこなんだ。
考えただけなのに、胸の奥が痛くなるくらいドキドキしちゃって、……でも、嫌じゃなかったし、すっごく幸せな気持ちになれるような気がして。もし本当にそうしたら、どうなっちゃうのかな。ちょっと怖いけど、それ以上に知りたいって気持ちが膨らむ。わたしの中で行き場を失ってた何かが芽生えて、心の中を突き破っていきそうな。
『好き』だけじゃ、わたしの気持ちはどんなのか分からない。でも、ちゅーするような関係は、『恋人同士』しか知らない。わたしは、由佳里おねぇちゃんに、『恋』してるのかな。考えようとして、頭の中がぐるぐるして何も分からなくなる。
さっきおねぇちゃんと電話したとき、聞いておけばよかったかな。「『恋』って、どんな感じなの」って。
わたしが持ってる気持ちは、本当にそれなのかな。独り占めしたいような、恋人同士でしかできないことをしたいような、そんな不思議な気持ちは。
……そういえば今日、部室で見た明音ちゃん、なんかすっごくふりふりの下着だったな。今日はすっごくテンション高かったし、恋人のとこに行くってうきうきしてたし。
そういうことって、やっぱりそういうの準備しないといけないのかな。そういうこと、わたしは、……おねぇちゃんは、そういうことしたいって、もっと進みたいって思ってるのかな。
わたしにはその気持ちのことなんてなんも分からないけど、でも、そうしたら、近づきたいって気持ち、伝わるのかな。
わたしの中に浮かんだものを、止めるものはここにはなかった。