26-重たい。
軽いスキンシップなら、数えきれないほどしてる。でも、さすがに、……さっきのは、そんな私の心のほうが、保たない。
友達とか、家族とか、そういう関係でやれることじゃない。少なくとも、……それを理由には、私はできない。その感情の名前は、もう知ってる。でも、それを認められるわけじゃない。
離れる理由ができてよかった。多分、どうすればいいかわからないまま、その先に進もうとしてたかも。高まったままの鼓動を抑えるように、ゆっくりと下着から着けていく。
「最初、私も届かなくってさ、……無理やりつけようとしたけど、肩が取れちゃうんじゃないかって思ったな」
「……おねぇちゃんも、そんなことあったんだ」
ひかりちゃんの声、まだ尖ったまま。拗ねてるとこもかわいい、……けど、そんなこと言ったr、余計につんけんするんだろうな。それに、そんなことを言える余裕が、私にない。
言葉を重ねたら、すぐ『好き』にまで繋がって、私の大きな体にも、収まらないほどの気持ち。零れたら、どう思うんだろう。
「……全部一人でこなすのだけが、大人じゃないの」
「……わかってるよ、でも」
「辛いことも全部、私に教えてほしいな、……私の、ただのわがままだけど」
頼ってほしい。甘えてほしい。ひかりちゃんはかわいいし優しいから、誰にでも好かれるし。……私が、特別な存在であってほしい。こんな風にお泊まりしたりするのは、私くらいだろうけど、どこか、まだ、足りない。
「……ずるいよ、そんな優しいの」
「優しくなんてないよ、私。……ひかりちゃんが思ってるよりも」
いつもの私だったら、簡単に流せるけれど。……今日は、とてもじゃないけど無理。揺らいだ心は、まだ落ち着いてない。それ以上に、気づかされた気持ちが、大きくて、重すぎる。一気に吐き出したら空っぽになっちゃうかも
「……そうかな?」
「そうね、……あんまり、言いたくないかな」
「……わたしには、教えてほしいって言うくせに」
「……こういうとこ」
ごまかして、どうにかなるものじゃないのに。ちょっとだけ、一人になりたい、かな。何故だろう、今のひかりちゃんのこと見てると、私までつらくなる。
「……おねぇちゃんも、言えないことあるんだ」
「いいでしょ?別に。……あ、そうだ、先に部屋戻って、ストーブつけてくれない?」
「うん、わかった」
二つ結びを弾ませながら階段を上るのを見送ると、ドライヤーを点ける。こぼれそうになったため息が我慢できなくなりそうで、それを少しでも隠せるように。
私の気持ちをさらけ出したら、ひかりちゃんも多分、胸の中に隠してるもの、言ってくれるかな。楽になってくれるだろうけど、きっと私がこらえられない。それ以外の方法が、見つかればいいのに。探しても、まだ浮かんでくれない。たった一つ見つかった方法は、ぽんっと選ぶには重すぎる。わがままで、重たい、特別な気持ちを抱えて、普通でなんかいられないのに。