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23.とどかない。

 思わず胸から零れ落ちた言葉、聞かれてないかな。……わたしが背伸びしようとした分だけ、おねぇちゃんはずっと上に上がってく。

 対等の立場でいたい、そう思えないでいられたくらいに、大きくて、優しくて、あったかい。いつまでも甘やかしてくれそうって、思わされるくらいに。

 

「今日は、わたしが先でいい?」

「……、いいけど、どうしたの?」

「うん、ちょっとね」


 顔も見れないまま、シャワーに向かう。いつもは、髪の長いおねぇちゃんが先に洗い始めて、それからわたしが洗うと、大体同じくらいの時間に終わる。でも、今日はそうもいかない。持ってきちゃった、オトナな下着。まだ付ける練習もしてないや。いつも背中合わせだし、髪で隠れるから、着けてるとこもよく見てない。買ったときにお店の人にちゃんとした付け方は教えてもらったけど、それもちゃんと覚えてるかは正直怪しい。頼っちゃえば楽だけど、そのままじゃ変われない。変わりたい、もっと、近くにいたい。見守られるだけじゃなくて、……その先が何があるのかなんて、全然分からないけど。

 髪を洗ってる時に、湯舟のとこから妙に視線を感じる。そっちを向くと、わたしのこと、じぃって見てるおねぇちゃんがいる。……あ、そっか。いつもは、わたしが髪を洗ってるときは、シャワーがかからないとこで体を洗ってるから。……でも、何で何も言わないの。突き放したのはわたしのくせに、そのまま引き下がられるのは、それはそれで不思議な感じ。これじゃ、また、わたしが子供みたいで。

 

「いいよ、使って」

「うん、わかった」


 髪と顔と、あと、立ったままじゃできない足のとこだけ洗って、おねぇちゃんに椅子を譲る。ヘアクリップで髪を止めてるせいで、いつもよりほんわかしたイメージが無い。立ち上がると、相変わらず高い。顔を見上げると笑ってるからいいけど、真顔だったりしたら、ちょっと怖く思っちゃうかも。嫌われた、……わけじゃないと思うけど、今日は、やましいことがあるから。本当は、早く出ちゃいたいけど、そうも言ってられないし。手早く体を洗って、シャワーを浴びさせてもらう。


「今日は、早く寝ちゃおうか、ちょっと食べすぎちゃった」

「おねぇちゃんも、食べ過ぎちゃうなんてあるんだ、わたしもお腹ぱんぱんだよぉ」

「なんかさ、嬉しかったの、今日は上手く歌えたし、ひかりちゃんと一緒にいれて」

「うん、わたしも」


  わたしも、嬉しい、けど、その気持ち、自分のわがままで台無しにして。そう返すだけで、頭の中で、どうやって先に出ようか考えてばっかり。……ごめんね。まだ、おねぇちゃんみたいにオトナになれないよ。

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