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20-甘えて。

 普段だったら、もっと元気なはずなのに。今日はちょっとおとなしい。違和感が、頭の中をぐるぐる回る。さっきだって、結局4つに分けたケーキは全部食べてて、具合が悪そうにもしてないから、お腹が痛いわけでもなさそうだし。そのときも、普段より大人しかったかも。どうしてって訊けるタイミングは、まだ見つからない。でも、ちょっとだけ、考え込んでるようにも見える、……かも?


「あ、そろそろお風呂洗ってくるね?」

「うん、言ってらっしゃい」


 九時前くらい、お気に入りの番組が終わったタイミングで、ひかりちゃんがぴょんって膝の上から立つ。その時も、何となく静か。時々危なっかしく思えるくらいに元気なとこばかり見てるから、変な感じ。それが、抱いてしまった気持ちと混ざって、心臓を突き刺すような不安になる。私、何かしたかなぁ、私から、離れたくなるような何か。思い返しても、……そんなこと、した覚えがない。待ち合わせに遅れたくらいで失望するような人じゃないことも、もうわかってる。遠くで聞こえる足音が、胸の中で大きく響く。

 そっか、……私、ずっとひかりちゃんのこと、甘やかしてるだけだと思ってた。でも、そうじゃなくて。……私が、ひかりちゃんに甘えてた。かわいらしい仕草を、いつまでも見せてくれるって、私を頼ってくれるって、疑いもなく信じてた。

 でも、そんなわけ、ないもんね。ひかりちゃんだって、来年になれば、私と同じ高校生。年だって、同い年でいる時間のほうがずっと長い。少しずつ、オトナになってくんだもんね。少なくとも、いつまでも子供じゃいられない。そんなことは分かってる、分かってるはずだけど、まだ、今はそのときじゃなかったらいいのに。そんなわがままを思い浮かべるくらいには、私だってオトナにはなれない。

 

「今日、先入ってもいい?」

「ええ、いいわ。由佳里ちゃんも一緒に入る?」

「じゃあ、そうさせてもらいます」


 そう言って、いつも通りに二人でお風呂に入ることにしてしまう。まだ、夜は長い。二人でいられる時間は、長いほうがいい。抱え込んでるもの、教えて。私に、いっぱい甘えて。……なんて私のわがまま、聞いてくれるかな。一緒に入ることが決まって、少しだけ、嫌そうな顔をしてるひかりちゃんは。また、私の膝の上に座ってくれるけど、まだ、ほっぺを膨らましたままで。いつもみたく、後ろから手を回して支えてあげることはできなかった。

 ひかりちゃんの心の中、知りたい。教えてって言って、素直に教えてくれるくらいに、甘えてくれればいいのにな。


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