1-おべんとう。
今回も星花女子プロジェクトに参加することになりました。
うちの大空ひかりさんと、阪淳志様が作ってくださった如月由佳里さんのカップリングです。
学園百合、おねロリ、身長差、擬似親子百合とかいう萌え要素てんこ盛りスタイルでお送りいたします。
お弁当と水筒を持って、二階分の階段を駆け下りる、高等部側の校舎に入るのはまだちょっと勇気がいるけど、目をつぶって思いっきり走ろうとして、誰かにぶつかる。
「うわぁぁっ、ごめんなさいっ!」
「ふふ、もう、ひかりちゃん?ちゃんと周り見ないとだめでしょ?」
そう言って抱きしめてくれると胸が顔に当たるのも、たしなめる優しい声も、そんな人はたった一人しか知らない。
「あ、由佳里おねぇちゃん!ごめんごめん」
「どうしたの、そんな急いで」
「ねえねえ、一緒にご飯食べよ?」
「私も、そうしようと呼びにきたとこよ」
そういうおねぇちゃんの腕には、お弁当を入れている巾着が提げられていて、その言葉が本当だってわかる。
「へへ、おねぇちゃん大好き!」
「もー、このままじゃ動けないよ?」
「はーい……」
そう言われて、慌てて腕を離す。誰かのことをぎゅってするのは好きだけど、おねぇちゃんのことをぎゅってするのが一番好き。顔におっぱいのあたるぷにぷにした感触も、お母さんに昔されてたみたいに優しく抱き返してくれるのも。
「今日はどこにする?」
「外寒いもんね、……ひかりちゃんの教室にお邪魔しようかな」
「えっ、いいの!?やったー!」
おねぇちゃんも実家暮らしで、毎日お弁当を持ってくるのも一緒。仲良くなってから、よく一緒にお昼を食べるようになって、その時から胸の奥があったかくなって。
「去年ここにいたなんて、信じられないや」
ドアの梁に当たらないように身をかがめながら、おそるおそる教室に入ってくる。放課後だし、学食で食べる人がほとんどだから、教室の中は二人きり。
「おねぇちゃん、去年四組だったんだねー」
「そうだよ、……一緒だね」
「……へへっ、じゃあ、一緒にご飯食べよっか」
背も全然違うし、学年だって違うし、部活も、家だって違うのに。
『一緒』のところを見つけるだけで、胸の奥がドキってなって、それなのにほっとする。
小学校のときみたいに、机を動かして向き合うように座って。
「それじゃあ、いただきますっ」
「いただきます」
そう言ってお弁当に箸をつける。わたしのより一回り大きいおねぇちゃんのお弁当は、色とりどりの具材が詰まっていて。
「いっつも自分でお弁当作ってるんでしょ?すごいねぇー」
「慣れればけっこう楽なのよ、学食で食べるより安いし」
「えー?それでもすごいよ、おいしそうだもん」
「ふふふ、ありがとね、ひかりちゃん」
机二つ分離れてても簡単に届くくらい長い手を伸ばして、優しく頭をぽふぽふと撫でてくれる。その顔が、いつもよりもずっと優しくて。
……ずっと、こんな風に二人でいられたらな。ふと頭に浮かんでしまう気持ちも、おねぇちゃんの大きな体に包まれて溶かしてくれるような気がした。