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一度も負けない男  作者: 木村智
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第3話、無駄な時間

ランドドラゴンを討伐したアクスとローシュはとりあえずクレリスとモロヌスを探しながらメルキドの町に向かった。


「記憶を無くす前の俺ってどんな奴だったんだ?」


「一言で言えば臆病者、だから初級冒険者試験のゴブリン討伐が怖くて、ずっと薬草取りの見習い冒険者をやってたわ」


ローシュは遠慮なく真実を告げる。


「でも今は災害級のランドドラゴンを討伐する規格外の凄腕、どうなってるのか此方が聞きたい」


「うーん・・・ぶっちゃけ俺もよくわからない、記憶を無くす前の俺は何かの理由があって実力を隠してたんだろうな」


「そんな感じじゃ無かったぞ、真底臆病でモロヌスなんかとは目も合わせられなかったようだ」


「いや、だから俺はたぶん何処かの王子なんだよ、それで悪い魔女アクメスを退治しに森に入り不意討ちで魔女に記憶が無くなる魔法をかけられた、そして魔女は俺の愛剣ドラゴンバスターを持って逃げたんだろう」


アクスは妄想を恥ずかしげもなくローシュに話す。


「貴方ドラゴンバスターなんて持って無かったぞ、それに私とは幼なじみだし残念だけど王子では無い」


「それはローシュの思い込みではないのか?因みにローシュが思う幼い頃の俺ってニャアニャアなく四足歩行の動物ではなかったか?」


「なぜ記憶喪失のお前が私の思い出を否定する?どうしても王子が良いのか?残念だな、現実のお前はメルキド12鬼の一人アックスの息子アクスだ」


「ちょっと待て!なに重大な事をさらっと言ってくれちゃってんの?俺の親がメルキド12鬼の一人?まぁそれは良いとしてアックスのアクスってどんだけ適当に名前付けちゃってんの!」


「知らん、それは血染めのアックスさんに直接聞け!」


「ハイハイハイまたさらっと言ってくれちゃったね、血染めのアックス?それが俺の親父の2つ名?物騒すぎるだろっ!!」


いろいろとアクスの生活環境は複雑なようである。

その他にも些細な雑談をしながら進み結果的にはクレリス、モロヌスに合流できぬままメルキドに着いた。

メルキドは比較的大きな町で約2万の人口を誇る。

始まりの大地という大陸の北部を領土とするソーレーン帝国第2の町と言われ、帝都ドムドラの次に人口が多いのだ。

農業も工業も盛んで町自体の収益はドムドラを上回る。

村長はソチョーンという名で10年前に父親から役職を引き継いだ時は40歳という若さであった。

このソチョーンは優秀な男でメルキドの収益は彼の代から年々うなぎ登りで町内においての発言権は絶大である。

しかし、軍事に関しては帝都ドムドラから派遣されている銀鷲騎士団、女騎士長ソフィーネに全権が委ねられ権力の集中を防いでいる。

メルキドにおいてこの2人と同等の発言権を持つのがメルキドギルドマスターのマスタングという男だ。

ギルドとは冒険者(なんでも屋)達の管理をしている組織で、国の支配下から外れた存在である。

そして今、ギルドマスター室には町長ソチョーンと女騎士長ソフィーネ、ギルドマスターマスタングが集まり会議をしている。

同室にはクレリスとモロヌスも呼ばれていた。


「一刻も争うの!ランドドラゴンですよ、いくらメルキド12鬼、赤舞のローシュでも足止めすら無理!アクスは行方不明だし・・・」


クレリスは普段の間延びした話し方からは想像出来ないほどの早口でマスタングに訴える。


「わかってる!だか相手がランドドラゴンとなると今動かせるギルドの戦力ではやぶ蛇だ!」


中年ではあるが鍛え抜かれた肉体を持つマスタングが腹立たしげにクレリスに答える。


「しかしランドドラゴンが目撃されたとなると森自体が危険で立ち入り禁止の処置をとらざるを得ない、メルキドにとってバクラの森の資源は重要な資金源、早急に討伐はせねば」


ソチョーンは苦悩の表情を見せる。


「町長!今はお金の事よりアクスやローシュの命の事を優先してください!」


クレリスはソチョーンにくってかかる。


「落ち着けクレリス!討伐では無く救出という考え方もあるが、それでは被害者を増やすだけの可能性が高い、騎士長ソフィーネ、銀鷲騎士団を動かしては頂けぬか?ー」


ソフィーネは30代後半、騎士学校生時代の高い成績と隣国であるベガ王国との戦線で数々の活躍により若くして銀鷲騎士団を任されたキャリアウーマンである。


「ランドドラゴン討伐となると銀鷲騎士団の半数50の騎士を動かす事になろう、陽動や足止めの物資や消耗品の装備の費用もかかる、もっとギルドの方で正確な位置や行動パターンを調査して頂かないと無駄足は踏めぬのだよ」


「じゃあローシュは見捨てるってわけかい?」


今まで黙っていたモロヌスがソフィーネを睨む。


「ふんっ、騎士団とは感情で動かせるものでは無いのだ、メルキド12鬼、赤舞のローシュ、なかなか見所のある女剣士だと思っていたが自力で逃げられぬならそれも運命」


ソフィーネは悪びれもせずに答える。


「ソフィーネは私達を助けるために足止めをかってでたのよ、自分1人なら逃げられた筈、おそらくアクスを守りたかったのよ!!」


クレリスは怒りをあらわにソフィーネに怒鳴る。


ガチャ!!


その時、勢いよくギルドマスター室のドアが空いた。


「すみません会議中に!ギルドマスター緊急の報告よろしいでしょうか!!」


ギルドの女職員ハーデはドアから入るなり大声を上げる。


「かまわん、言え!」


「はい!ランドドラゴンに襲われた2名、ローシュとアクスが今、帰ってまいりました!」


ハーデはそう報告するのだった。

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