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創造都市の零落者  作者: 黒雪
新章・機工派の零落者
7/20

契約者(二か月遅れの、一周年

もう一年が経ちますね。小説家の端くれとして端くれ少しは成長しているのだろうか・・・。

 入学してからは初めての休日。休日だから、と言って起床が遅くなる事はほとんどない。

 むしろ今日は普段より少し早いくらいで、龍は目を覚ました。

 気怠さも見せずに龍は外出用の服に着替える。

 カーテンは開けずに、ショルダーバッグを持つとそのまま部屋を出て、階段を下りた。

 まだ外はほの暗く、東の空からは朝日が少し顔を見せている。

 「・・・早過ぎたか?」

 時計を見て、龍は一人呟く。

 直後、二階から扉の開く音が聞こえる。

 「ん・・・お兄ちゃん、おはよ」

 そして寝具姿の鈴音が、寝ぼけまなこを擦りながら一階に下りてきた。

 「鈴音・・・すまない、起こしてしまったか?」

 龍はソファから立ち鈴音に歩み寄って頭を撫でた。

 「はぅ・・・大丈夫だよ。少し眼が冴えちゃっただけだから」

 鈴音は優しく微笑んだ。

 「そうか。・・・お茶でも淹れようか」

 「ありがとう、お兄ちゃん。あ、私着替えてくるね」

 「ああ」

 鈴音は洗面所に向かう。龍はその間に湯を沸かす。

 南の窓から、ほのかに光が差し込んでいる。

 「・・・」

 湯が沸くまでのほんの数分。龍は何処に焦点を合わせる訳でもなく、ぼうっと窓の方を向いていた。

 そうしていると、鈴音が着替えを終え戻ってきた。ほぼ同時に給湯器から微弱な音が鳴る。

 二人分の紅茶を淹れると、龍はリビングに座っている鈴音に一つを渡した。

 「鈴音、俺は早めに出ようと思っているんだが、いいか?」

 二人で紅茶を飲みながら、龍は鈴音に問う。

 龍がそう言うと、鈴音は手を止め、ふふ、と小さく笑った。

 「やっぱりお兄ちゃん、「お義姉ちゃん」に早く会いたいんだね。ふふ・・・私は平気だよ」

 「ありがとう。朝食を済ませたら出るとしようか」

 

 朝食を終わらせてから、龍と鈴音は備品を揃え、出かける準備を済ませる。

 二人は玄関を出て、街路に出た。

 すると。

 「おっすおっす。やっぱお早いねぇ」

 街路の脇で隼人が外壁にもたれかかった状態のまま、二人に手を振っていた。

 「あ、隼人お兄ちゃん」

 「よー鈴音ちゃん。元気そうだな」

 「・・・現地集合、じゃなかったのか?」

 「んー。まあ確かにそうだけどさ」

 龍が半ば呆れた眼を向けると、隼人は少し視線を上に逸らし、考えている様な仕草をした。

 「俺ソロゲーよりスクワッドで俺TUEEEしたい人間なんだわ」

 「は?」

 「つまりそう言う事だ」

 「どういう事だ」

 早朝でも変わらぬ隼人のテンションに龍は振り回せる形になってしまっている。

 「まあ、目的地は同じだ。行こうぜ」

 「・・・そうだな」

 詮索は無駄だと察したのか、龍は先に歩き始めた隼人の後を追った。


 道中、フィリアや閃、大輔と会う事はなく、そのまま三人で電車に乗り込んだ。

 向かう先は龍達の通う特高前の駅、ではなく、その奥。

 現代における工学、魔術学の最先端。相容れぬ双極の技術が「本当の意味」で混同する場所。

 創造都市の第一区。通称「中央区」と、そう呼ばれている区画。

 ・・・でもなく。

 こんな早朝でも人の多い第一区を通り過ぎ、龍達は第二区の駅で降りた。

 海が近い、港湾エリア。だが、第二区の本当の姿は「此処」には無い。

 龍達は今度は港湾の施設の一つに入る。

 海底下鉄道、「アクアアンダーライン」。主に島の間を移動するのに用いられる海底に造られた鉄道だ。

 船というシステムも健在しているが、長距離でない限りは、こちらを利用した方が早い。

 アクアアンダーライン(以後AULと呼称)を使い、三人は一つの島へ向かった。

 AULには三人以外誰も乗っていない。当然である。

 早朝だからでは無く、第二区のAULはその全てがプライベート・・・というよりは、「二区に指定されている」島は、そのほとんどが、機工派テクノミスタ、及び魔術派マギカの有力な家が個人的に所有している人工島。

 つまりは、今龍達が使っているのは一般人が利用するAULではない。

 「・・・もうすぐ着くな」

 龍達の家から目的の島まで総じて三十分と少し。

 島に着くと三人は下車し、地下から地上への階段を上る。

 駅から出るゲートの所で龍は持っていたカードをスキャンする。

 すると、駅のゲートとは思えない重厚な扉が開いた。

 「・・・うん。何度来ても思うわ。ここほんとに私有地?」

 「まあ、研究施設も含めて、だが。それでもこの規模は流石狭間さんと言ったところか・・・」

 島の入口で、三人は目の前の光景に感嘆を漏らす。

 「すごいよね。・・・零士、元気かな?」

 鈴音も同調する。だが何故か鈴音は狭間の事を下の名で、そして呼び捨てで呼んだ。

 「とりあえず、研究所の方に行くとしよう」

 島内を移動するための電車は用意されているが、三人はそのまま歩いて一つの建物へ向かった。

 早朝だというのに、その建物のエントランスにはもう数人の人間が行き交いしている。

 「あ、龍さんじゃないですか。朝早くからご苦労様です」

 三人が中に入ると、近くにいた事務員の一人が龍に頭を下げる。

 「いえ、こちらこそ。・・・狭間さんは今何処に?」

 「オーナーですか?今日は邸宅にいらっしゃるかと」

 「ありがとうございます。それでは」

 龍は一礼すると、施設を離れた。

 そこから徒歩で十数分。龍達は一つの邸宅の前まで来ていた。

 ただその邸宅は他と一線を画すような豪奢なものではなく、規模と外見は異彩を放っている、というようではなかった。

 それでも豪邸と呼ぶに差し障りないほどではあるのだが。あまり家にこだわりは持っていないのかもしれない。

 龍は端末で、後続の三人に所在を伝えると、端末をしまい、邸宅の門に付けられたパネルにカードをかざす。

 すると、数秒後に門が開き、邸宅の方から、従者の服を着た女性が歩いてきた。

 「咲月さん。ご無沙汰しております」

 「龍様、こちらこそ。ご足労感謝いたします。では、どうぞ、ご主人様は執務室におられます」

 咲月と呼ばれた従者らしき女性は三人に丁寧にお辞儀をすると三人を邸宅の中へ誘導した。

 邸宅の中は、無駄に飾ったものなどは無く、生活感のある造りをしていた。どうやら派手さよりも住みやすさを意識しているらしい。

 三階の一室で咲月を含めた四人は止まる。

 「ご主人様、龍様方がお見えになられました」

 「お。来たか?入っていいぞ」

 扉の向こうから、数日前に聞いた声に似た声が聞こえてくる。

 中に入ると、部屋の奥の机に、一人の男性・・・まだ青年と言い表しても差し支えないような若い男が座っていた。この人物が龍達と通信をしていた狭間、という人物だろう。

 「実際に会うのは二週間ぶり、くらいか?・・・鈴音も。元気そうで何よりだ」

 「うん。零士も、元気そうだね」

 「ああ。・・・さて、本題、と行きたいが、まだ全員集まっていないのか」

 狭間は三人を見ると、龍に問う。

 「ええ。各自集合、としたので。依頼の物なら隼人が持っていますし、進めても構いませんが」

 それを聞いた後、狭間は少し考えた後、いや、と首を横に振った。

 「どうせだ。結果は総員揃ってから聞くことにする。その前に時間があるんだ。龍、瑠菜ちゃんの所にでも行ってやればどうだ?」

 狭間がそう提案すると、龍は目線を少し上げ、狭間の眼を見た。

 「・・・いいのですか?」

 「当然。お前さんの事だから、心配なんだろう?それに、瑠菜ちゃん自身も会いたがってたぜ?」

 「おー行ってこい行ってこい。俺らはこの辺でのんびりさせてもらっとくぜ。「お嬢」には後で挨拶しとくからよ」

 狭間に便乗する形で龍に勧める。

 「ん・・・隼人は行かないのか?」

 龍が不思議そうな顔をすると、隼人は空虚な笑みを浮かべて

 「まあ、後で邪魔させてもらうから、今は「龍だけで」行って来いよ」

 「・・・断る事でもないしな。では、俺は席を外させてもらいます」

 「おう。まあ戻る時に連絡してくれ」

 「了解です」

 龍は執務室を出ると、一人で狭間の邸宅を後にした。

 そして今度は邸宅からすぐの施設に向かった。そこもまた狭間の邸宅ほどでは無いが大きい規模で、宿舎様にも見えた。

 龍は一人で中に入る。窓から外をみれば狭間の邸宅がすぐそこにある。近辺に幾つか施設がある所を見ると、龍達が先に寄った研究所の様な施設とは、また別の役割を持っているのかもしれない。

 「んぅ・・・あら、龍じゃないですか。久しぶり」

 エントランスに設置された受付らしきところから声をかけられる。おっとりとしていながら、良く通る女性の声だ。

 龍はその声の方向に近付く。

 「お勤めご苦労様ですカリンさん。相変わらずのようで」

 龍が返事をすると、その女性はうつぶせだった身体を起こした。

 「その相変わらず、は誉め言葉と取っておこうかしら。・・・うん、龍も良好そうね」

 カリンという女性は龍の顔を見つめると、満足そうに頷いた。

 美しいプラチナブロンドの長髪に、碧い眼。ローブの様な服にヴェールをつけており、何処か聖女のような雰囲気と容姿を、カリンは持っていた。

 施設のエントランスにはカリンと龍以外に人の気配は無い。

 「・・・今日はカリンさんだけなのですか?」

 「今日は、というより、今日も、ね。正直ここは療養所って言っても、普通の人は下の医療施設使っているから」

 どうやらここは療養所らしい。とはいっても、病院のようなシステムを取っている様ではなかった。

 「それに私は瑠菜ちゃんの体調管理もしないといけないから。・・・龍、あの娘に会いに来たんでしょう?彼女ならいつもの場所に多分いるわ」

 「いつもの・・・ああ、了解です」

 「・・・あ、それと」

 龍が施設の奥へ進もうとすると、カリンがそれを制止した。

 「今日はまだ、「恒例のあれ」はやっていないの?」

 「恒例、と言われると何処か違う気もしますが、まだ。先に会ってきていいと言われまして」

 「そう。・・・まあ、大丈夫だとは思うけど怪我したら、診せに来なさいね。・・・腕一本程度ならすぐくっつけてあげるわ」

 聖女、という表のイメージを崩させるような不敵な笑みをカリンは龍に向ける。

 「そこまで派手にすることは無いと思いますが。・・・いえ、否定できませんね。これからもよろしくお願いします」

 「ええ。それじゃあ、ごゆっくり」

 カリンは表情を優しいものへと戻すと、龍に手を軽く振る。

 カリンのいるエントランスを後にして、龍が向かったのは、中庭らしき場所だった。

 そこは噴水や木々に囲まれ、まるで中庭というより庭園のようだった。

 「・・・~♪」

 龍が庭園に入ると、微かに少女の声が聞こえてくる。その声は、何かの歌らしかった。

 少し行くと、噴水を中心にして広場が形成されている所に、一人の少女が車椅子に座って、空を見上げていた。

 カリンとはまた違った、美しく透き通った声だ。

 「・・・瑠菜」

 龍は少女の後ろから、優しい口調でその少女の名を呼んだ。

 少女は一瞬ぴくっと身体を動かした後、後ろを振り向いた。

 「・・・!・・・りょ、う・・・?」

 白銀の髪と、何処か光の失せたような瑠璃色の瞳を持っている少女・・・瑠菜は、龍を見ると、その目を見開いた。

 「・・・龍・・・!」

 と同時に、瑠菜は車椅子から離れ、龍に近付こうとした。が、車椅子を使っていることから察する通り、足が上手く動かないのか、瑠菜は立ち上がった時点でバランスを崩す。

 「瑠菜!」

 それを視認するより先に、龍は体を動かしていた。

 龍は瑠菜の身体を衝撃を与えないように抱き留めた。

 「あ・・・ごめんなさい」

 「いや、いい。・・・まだ、足は不自由なのか」

 「ふふ・・・自然に治すには時間がかかってしまうから。でも、もうほとんど自由に利くようになってきたわ。まだ、痺れはあるけれど・・・」

 そういう瑠菜の手は、細かく震えている様に見えた。

 ゆっくりと、龍は瑠菜を車椅子に戻す。

 「・・・龍。会えてうれしい・・・」

 「俺もだよ。すまない、最近会いにこれなくて」

 「気にしないで。変わりないようで良かった」

 瑠菜は純粋な明るい笑顔を龍に向けた。その容姿はまるで人形のようで、その笑顔は天使のようだ。

 「少ししたら、また狭間さんの所に戻らないといけないんだが、また後であいつらも連れて」

 「・・・また、依頼?」

 龍の言葉を聞くと、瑠菜は表情を暗くした。

 「ごめんなさい、私の、所為ね・・・」

 「俺の意志でやっていることだ。狭間さんにはお世話になってるしな」

 「・・・そう」

 何処か物憂げな表情で瑠菜は龍に返答する。

 「・・・」

 それを見た龍は、瑠菜になるべく負荷がかからないようにそっと抱き上げた。

 「龍・・・?」

 「暫く、こうしていていいか」

 「・・・ええ」

 瑠菜は小さく微笑んで、そのまま龍に身を委ねた。

 

 同時刻、狭間邸宅。

 「・・・全く、これだから行けねぇんだよなぁあの二人の空間には」

 応接間で隼人は左の眼を金色に輝かせながら、ぼやくように言った。

 「おーい覗きは関心しないぞー」

 「感情がこもってないっすよ狭間さん」

 隼人は左目を数秒閉じる。そして目を開くと光は無くなっていた。

 「隼人、覗き云々の前に「それ」を乱用するな」

 横で既に合流していた閃が鋭く叱咤する。

 「すいませんでした」

 「狭間さん、大輔とフィーももうすぐ到着するらしい」

 隼人の謝罪を聞き流すと、閃は狭間に伝える。

 「おーけー把握。龍もそろそろ戻ってくるだろ」

 「あ、その前に一ついいっすか?」

 「ん、なんだ隼人?」

 「・・・狭間さんの依頼。まだ「続きがある」よな?」

 隼人は目を細めて、狭間を見る。

 「・・・あー」

 「そもそも報告だけなら俺がさっさと片付けられるしな。・・・ま、龍をお嬢のとこに行かせる意図もあるんでしょーけど」

 「まあな」

 「流石に情報渡してはいご苦労様・・・って終わらせる気じゃないっすよね?」

 隼人の言葉に、狭間はやれやれと言った表情を浮かべた。

 「お前らほんと無駄に勘がいいよなぁ・・・ま、そうだ。詳しい事は後で話す」

 「了解です」

 「零士。あまり無茶な事お兄ちゃん達に頼まないでよ・・・?」

 狭間の膝の上に座っている鈴音が珍しく鋭い視線で狭間を見た。

 「あー・・・うん、はい・・・」

 鈴音に睨まれて、狭間はバツの悪そうな顔をしながら、歯切れの悪い返事を返した。

 「・・・狭間さんは、鈴音には弱いんだな」

 「うぐ」


 数十分後。

 「どーもっす狭間さん。俺らが最後ですかね?」

 大輔とフィリアが、狭間の邸宅に合流した。

 「う・・・私最後かぁ」

 「俺達が早いだけだ。気にするな」

 既に戻ってきていた龍がフィリアにフォローを入れる。

 「龍、そういえばお嬢は元気そうだったか?」

 大輔が問うと、龍は頷いて返した。

 「そーか。そりゃ何よりだ」

 「・・・さて、集まったぜ狭間さん」

 「ん。そうだな」

 挨拶をし終えた所で、隼人は真っ先に狭間を見る。その眼はどこか嬉々としている様にも見えた。

 「とりあえず・・・まあ情報なら実はレイン経由で受け取ってるんだが」

 「「「「は?」」」」

 龍、閃、隼人、大輔は声を揃えて言った。

 「いやなんで隼人が疑問形なんだよ」

 「いや、普通に知らねぇんだけど」

 「・・・自分の相棒制御出来ていないのか」

 『マスター。ご自分の発言には責任を持って下さい。音声データも残っていますよ』

 隼人が端末を取り出すと、レインが抑揚の無い声で言った。

 「「「おい」」」

 「・・・ふっ」

 「笑って誤魔化したぞこいつ」

 「・・・ま、どのみち今日の本題は結果報告じゃない」

 狭間は表情を戻すと、椅子に座り直した。

 すると龍達は流れるように狭間の前に休めの姿勢で整列する。

 「受け取った情報を整理している途中だが・・・お前らには引き続きあの連中の「監視」をして欲しい」

 それを聞くと、大輔が先に口を開いた。

 「・・・やっぱ、何かあるんすか?その組織」

 「狭間さんに渡すデータをまとめた後、もうちょい調べてたらどこぞの創造都市内の人間と連絡とってる形跡があった。何らかの形で創造都市ここにコンタクトを取ってくる可能性は高いって事だろ」

 「・・・なるほど」

 隼人が補足する。その言葉に龍は納得するように頷き、狭間は感心の色を示した。

 「はは、そこまで調べてんのか。仕事が早いねぇ」

 「・・・私は、詳しい事はよく分からないけど、力になれるかな」

 「フィーには時が来れば手を借りるかもしれない。その時は、頼む」

 「!うん・・・!」

 龍の言葉に、フィリアは嬉しそうに小さく拳を握りしめた。

 「・・・それはそうとして、要約するに、俺達は引き続きこの連中の動向を探ればいいんだな?」

 閃は変わらぬ調子で、淡々と話を進める。

 「ああ、頼む。・・・とりあえず今日の要件は以上だ。どうせ来たんだし、ゆっくりしていけよ」

 「そうですね。まだ時間はありますし」

 「あ、もうラボに人いますかね?」

 少し張り詰めていた空気が解ける。

 隼人が問うと、狭間は軽く笑った。

 「大丈夫だ。あいつら下手すりゃラボから一週間出てこないような奴らだし」

 狭間の答えに、隼人や大輔は笑って返した。

 「・・・また、モルモットにされそうだな」

 閃は一人呟く。

 「身も蓋もない言い方すんな?別にどのみち身体は動かさねぇと鈍るし」

 「・・・ま、とりあえず行こうぜ」

 「了解。・・・それでは、俺達は少し外します」

 「おー。頑張ってこい」

 「あ、私も行くよ」

 龍達が部屋から出ていこうとすると、鈴音も立ち上がった。

 「おう。あ、俺も後から行くとするよ」

 最後に出ようとした龍に、狭間が一言告げる。

 「了解です・・・ああ、それと」

 龍は足を止めると、鈴音とフィリアが先に行ったのを確認してから、狭間の方に視線だけを向けた。

 「組織の動向を探る・・・「その後」は、いつも通りでいいですね?」

 それを聞くと、狭間は少し目を細めて、口の端を吊り上げた。

 「・・・ああ」

 「了解。それでは、また」

 そして龍は、今度こそ部屋を出た。


 話に出たラボ、と呼ばれた施設は、狭間の邸宅からは少し離れていた。

 島の入口から、狭間の邸宅に着くまで位の時間をかけて、六人は巨大な施設へ入った。

 二重のゲートの二段階目で、ゲートは少し開くまでにタイムラグがあった。

 島の入口付近にあった施設と、外観はさして変わらず、おそらく機能も根本は同じなのだろうが、少し違っているのは、中に入ると、異様なほどに静寂に包まれている所だ。

 中に入って少しすると、廊下の奥から一人の男性が現れた。

 「龍さん、それに機械派の方は全員いますね。どうぞ奥に」

 その男性に促され、奥にある部屋へ入る。

 すると。

 先程までの静寂が嘘のように、広い工房では激しい喧騒や、得体の知れない物音が響いている。

 「・・・ここは、前来た時もこうだったね・・・」

 その光景と騒音に、鈴音は苦笑いを浮かべている。

 「・・・ん。ちょっと中断だ」

 工房の端で話をしていた女性が龍達に気付くと、工房全体に号令をかけた。

 ショートカットの髪に、特徴的なのは右目に眼帯をしている事か。

 その女性の号令で、辺りは騒音を除いて一度弱まる。

 「や、あんた達。久しぶりじゃないか」

 「雅さん、ご無沙汰しております」

 「師匠!お久しぶりです!」

 雅と呼ばれた女性が龍達に近寄ると、フィリアが眼を輝かせて挨拶をした。

 「あー・・・うん、フィリアも相変わらずか」

 雅は若干フィリアの勢いに気圧されている。

 「でも丁度いいところに来た。「いつもの」やるんだろう?ちょっと試製品の動作テストをしたくてね」

 「なるほど。ではすぐ始めても?」

 「ああ少し待ってな、すぐセッティングしよう。・・・フィー、手伝ってくれるかい」

 「任せてください!」

 そう言うとフィリアと雅は工房を後にした。

 「それでは皆さんはいつもの場所へ。鈴音さんはモニタールームにでもどうぞ」

 「了解です」

 「お兄ちゃん、無茶は駄目だからね?」

 「ああ。分かっているよ」

 龍は鈴音の頭を軽く撫でると、三人に目を向ける。

 それに気付くと、三人は無言で応えた。

 

 数分後、龍は小さな部屋に一人待機していた。辺りには少しのライトと小さな監視カメラ。それと龍の後ろに巨大な箱があるだけだ。それ以外には鋼鉄の壁しかない。

 『あんた達、準備は出来たかい?』

 耳に着けた無線機から、雅の声が聞こえる。

 「ええ。黒鉄 龍、準備完了です。」

 『こちら天城 隼人ー大丈夫っすよー』

 『雨宮 閃、いつでも』

 『霊山 大輔、おけです』

 それぞれ別の場所で待機しているであろう三人の声が聞こえる。

 『よし、大丈夫そうだね。それじゃ始める前に龍には試製品を渡しておく。他の三人とは無線切るよ、ネタは実際にやってからだ』

 雅がそう言った後、三人の声が消える。

 そしてブレードとハンドガンが、左右から取り出される。

 「・・・?いつも通りですね?」

 『ああ、そっちじゃない、アーマーの方に付属しておいた』

 「なるほど」

 『あ、ちなみにあんたのアーマーの調整はフィーがやってるからね。無駄にしなさんな』

 「・・・?了解です」

 『・・・まあいいか。始めるよ!』

 無線が切れると、正面のハッチが開き始める。

 と同時に、その箱に入っていた武装の様なものが龍のアーマーに取り付けられていく。

 『スリー。ツー』

 そして、カウントダウンが開始される。

 『ワン。レディ』

 龍は構えを取った。

 『スタート』

 

なんだか最近小説を音楽聴きながら書く事しかしていないような気がしている黒雪です。

かといって新しいゲーム買うとそればっかりになりますからねぇ。こんな調子で出せていけたらいいのですが。

こんな雑な小説ではありますが、これからも見て頂ければ幸いです。

それでは今回も最後までありがとうございました。

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