二日目
サブタイトルのネタが無いです。もう一章・第何話的なノリでいいかな・・・
駅から出る。昨日も見た大通りを、周りの店には目もくれずに通り過ぎる。
ただフィリアはキョロキョロ周りの店を見ていて、それは前を歩く龍にもひしひしと伝わってきていた。
龍が横にいる隼人に視線を送る。
隼人はその意図を察したのか、苦笑で答えてきた。
二人が立ち止まる。
「わわ・・・どうしたの?」
周りを見ていたフィリアは二人が立ち止まったのに気付くのが遅れる。そもそもここで足を止めると思っていなかったのか、不思議そうに二人の顔を覗き込む。
二人は道の脇に避けるように移動しながら、フィリアの方に向く。
「・・・何か気になる店でもあったか?」
「え・・・え!?あ、まあ色々あるけど・・・」
予想だにしない龍の問いに、フィリアは目を丸くしている。
「まあ偶には物色も悪くねーんじゃねーの。フィリアもこの辺はよく知らねぇだろ?」
補足するように、横から隼人が言う。
「二人共・・・」
「今日はまだ学校早く終わるし、放課後、昼あいつらも誘って飯兼ぶらぶらするか?よぉ龍よ」
「・・・まあ、そうだな。付き合おう」
流石の龍でも、空気を読んで隼人の提案をのんだ。
「でも、いいの?気にかけてくれるのは嬉しいけど、無理に合わせてもらうのは悪いし・・・」
「や、ぶっちゃけ俺ら現状やる事ねぇし。龍も少しは街の事覚えておくのにいい機会だろ?だろ?」
「・・・」
隼人に詰め寄られた龍はスッと距離を置いた。
「まーどうせだから閃と大輔も・・・と、どうやら誘いに行く手間は省けそうだぞ」
隼人が駅側の道を見て言った。
「おーっす。お前らはやっぱり早いな」
鞄を持った手を龍逹に振ってくる大輔、その横で淡々と歩く閃が、止まっていた三人に合流した。
「お前がこんなところで立ち話とは珍しいな。どうした」
閃は龍の前まで来ると、抑揚のない声で問いかけた。
「少し、放課後の話をな。昼はその辺りで済ませようということになったんだが、大丈夫か?」
龍がそう言うと、大輔は快諾した。
「・・・お前にも気紛れな所はあるんだな」
どこか怪訝そうな顔で、閃も頷いた。
「さーて、いつもの面子も集まったし、とりあえず学校行こうぜ」
辺りに登校中の生徒は全くいないというわけでもないが、まだ早いのかかなり少ない。
「時間は余裕そうだな」
「まあ俺らが早すぎたのか。もう少し寝てていいのかねぇ」
そう言いながら大輔は欠伸を漏らす。
「別に構わないが、俺は待たないぞ」
「へいへい。ちゃんと起きますよ・・・」
「・・・行くぞ、お前ら」
「「「応」」」
「・・・さて、と。まさか俺らが一番とはなー」
職員室へ行って、教室の施錠を解除してもらった後、三人は教室に戻っていた。
部屋には三人以外誰もいない。
そして当然のように隼人とフィリアは龍の席の周りに集まっている。
「かといって校内探索なんて暇も無いか・・・あ、そういえば部活動見学は来週からだよね」
「・・・ま、俺は部活をやる気は無いが」
「は、龍はそこんとこブレねぇなぁ」
三人で他愛のない話を交わす。
「えっと、隼人は部活とか興味あるの?」
「いやー?俺は他にやることあるしなぁ。ま、見学くらいはしてもいいが」
隼人が視線を龍に移す。妙に含みのありそうな眼だ。
「・・・フィー、俺達に合わせる必要は無い。気になるなら入ってもいいんだからな」
「あっ、こいつしれっと見学拒みやがった」
自分は行かない、と遠回しに言う龍に隼人はケラケラと笑う。
「・・・おや、もう登校していた人がいるとは。おはようございます」
教室の扉が開くと同時に三人に対して男性が声をかけてきた。
「あ、九十九先生、おはようございます」
その男性・・・龍逹のクラスの教師である九十九 和弥に、フィリアは頭を下げる。
龍と隼人も、フィリア程ではないが会釈を返した。
「あまり固くしなくていいですよ。・・・三人は、前からの仲なので?」
「あ、はい。そうです」
「そうですか。良いですね旧知の仲というのは」
九十九は朗らかな笑顔で頷いている。
「・・・と、一度自分は戻らねば。では、まだ日は浅いですがこれから宜しくお願いしますね」
そう言って、九十九は幾つかの機材を教卓に置いた後、ホームルームを後にした。
「・・・なーんか、新しい教師って感じじゃねーな」
九十九がいなくなると、隼人は小さく呟いた。
「確かに。特高の教師だ、兼職している可能性はある」
「軍人だったりしてなー」
第一特高の教師に限らず、創造都市内の職にいわゆる公務員というものはほとんど無い。
都市自体が一つの勢力であって、その力は肥大化していると言っても過言ではない程になっている。
教師であれ何であれ表の顔だけという方が珍しい。
「軍人、かぁ。でも、雰囲気はこう、柔らかい気もするけど?」
「・・・別に、深く関わる事は無いだろう」
龍は隼人とフィリアの話を、髪の本を読みながら横で聞いている。
特高に龍達が登校して数十分。まだ多くないがぽつぽつと他の生徒達も登校し始めている。
それからさらに数十分で、朝のHRが始まった。
始業式から二日。次の日が休日であることも要因なのか、簡単な教材の説明と挨拶程度で、ほとんどの課題が終わる。
昼には放課となり、龍達は特高の前で集まっていた。
「案外早く終わるもんだな。まあ長ったらしくなくていいぜ」
隼人は肩や首を回しながら、龍の横を歩く。新入早々新しい友人が、などという昔のベタな展開はもちろん無く、というよりあったとして早々に帰路を共にする仲にはならないだろうが・・・龍達は昨日と同じ五人で大通りを歩いている。
「さて、昼はどうする?」
「その辺にファミレスかなんかあるだろ。別に買って龍の家に行くのも」
「ファミレスに寄るか」
「ですよねー」
半分元から決まっていた判断に四人は異議無く頷いた。
平日の昼。中央で働く者達は中央に設置されている飲食店を利用するためか、ファミレスの中にいるのは同じく学生や、女性が多い。
五人適当なものを注文する。
「どうせだし、明日の予定でも確認するか」
「明日は各自集合でいいな。情報の方は?」
「十分掴めてるよ。今もレインに探ってもらってるから、俺が個人的に気になってる事も分かるかもな」
「ふむ・・・?」
食事を手早く口に運ぶ。
「龍は報告だけじゃないんだったか?いつもの事だが」
「まあ、な。最近会えていなかったから・・・」
隼人が笑いながら龍に言う。龍が隼人に返すと、横にいたフィリアが何故か表情を暗くした。
「・・・まあこの話は後だな。落ち着いたらまあ今日はその辺物色しようぜー」
隼人はフィリアの顔を横目で見た後、話を切った。
「その前に一旦帰ろうぜ。着替えてからだ着替えてから」
「そうだな・・・なら一度解散だ。フィー、それでいいか?」
「え?あ、うん。全然大丈夫だよ」
「よし。それじゃあ行くとしよう」
そう言って龍が席を立つ。それに続いて、四人も席を立った。
夜。大通りの散策から戻った龍は家に戻っていた。
夕食を終え、風呂に入った後、明かりの無い自室で、窓越しに空を見ていた。
「明日、か」
空に星は見えず、月がぽつりと輝いている。
「・・・きっとお前も同じ月を見ているんだろうな。
・・・瑠菜」
例の如く遅れて投稿。繋ぎの話の方が書くの難しいなって、思うんですよ。
とまあ言い訳しつつ、なんだかんだ小説始めて一年とちょっと。少しキャラの設定画を載せたいと思ってますので、次回位に二三人、設定画入れられたら入れたいと思います。また遅れるかもですが、どうかこれからもよろしくお願いします。