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創造都市の零落者  作者: 黒雪
新章・機工派の零落者
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二日目の朝

 ・・・あらすじというあらすじは、いらないかなって話です。まあ話の繋ぎ目みたいな感じで、どうぞ。



 翌朝。ほぼ日の出と同時に、龍は眼を覚ました。

 昨日はあの後特に鈴音も引っ張る様子無く一日を終えた。が、やはり龍にとっては少し気に残る部分があった。

 服を着替え、鈴音にも何かしてあげるべきかと考えながら朝の習慣をこなしていく。

 といってもまだ夜明け。鈴音はまだ眠っているし、通勤の混雑が極端に減少し、そもそも電車での移動が都市内ではおおよそ十数分未満の創造都市で、夜明けから活動する人間などほとんどおらず(そもそも都市部の方でもそうだろうが)外は静かな朝を迎えていた。

 そんな風景を自室に戻った龍は窓越しに眺めていた。

 白い吐息が窓を濁す。春と言ってもまだ朝は相変わらず寒い。空調機の使用を好まない龍の部屋も、同じく寒かった。

 早起きだからと言って、龍にランニングといった日課は無い。ただ寝過ぎるのが体に悪いという事しか、早起きの理由は無く、暇な時間は大抵端末を使っている。

 そうこうする事数時間。陽がようやく明るさを強めてきた頃に龍が下の階に降りると、鈴音も降りてきた。

 「あ、お兄ちゃんおはよ・・・」

 まだ少し眠たげな眼で、鈴音は龍に挨拶をする。

 「ああ、おはよう鈴音」

 龍も穏やかに挨拶をする。

 「朝食の支度は始めておくから、顔を洗ってくるといい」

 「あ、ありがと。そうするね」

 龍に促され、鈴音はトテトテと軽い足取りで洗面所の方へ向かった。

 それを見送ると、龍はキッチンに立ち、朝食を作り始める。

 最近では簡易的な家事をこなす汎用性の高い補助ロボットなども産み出されてはいるが、それに頼らなければいけない程、龍達の生活は切羽詰まってはいないため、ほとんど自らの手で行っている。

 「お兄ちゃん、手伝うよ」

 戻ってきていた鈴音が龍の横に寄ってきた。

 「助かる。それじゃあ俺はコーヒーを淹れるから、パンの方は頼むよ」

 「はーい」

 血が繋がっていないとはいえ、日常風景は本当の兄妹のようだ。

 やけに広い家に、二人以外の人がいる気配も、痕跡も無い。

 基本的には二人で暮らしているという事になるのだろうが、広い一件家に血の繋がっていない兄妹が二人暮らし。昨日の件もあって訳ありであるのは明白だが、二人は何の差し障りなくテーブルで向かい合い朝食を食べている。

 そもそも違和感があったとしてそれを咎める者はいないだろう。

 余裕のある朝、朝食を急く必要もないので、龍はゆっくりとコーヒーを飲み、鈴音と談話する。

 「そうだ鈴音。明日は狭間さんの所に行くわけだが、鈴音はついてくるかい?」

 「ん・・・そうだね、私も行くよ。狭間さんにも・・・お姉ちゃんにも会いたいし」

 少し間を置いて、鈴音は龍の提案に賛成を示した。

 「瑠菜か?・・・はは、そうだな。暫く会えていないから・・・」

 その時龍は珍しく表情を緩めた。

 「やっぱり心配?」

 「心配・・・いや、そうでは無いが、やはり何処か虚しさを感じる時があるからな」

 朝食が終わり、瑠菜という少女の名を龍は口にする。

 龍の口振りから察するに、二人の友人の名だろうか。だが龍の態度を見るに、何か龍にとっては特別な人なのかもしれない。

 「狭間さんは元気そうだったね」

 「ああ、そうだな・・・」

 それから龍が高校へ行く時間まで、兄妹二人で穏やかな朝を過ごした。

 

 「・・・と、そろそろ俺は出るよ」

 「分かった。気を付けてねお兄ちゃん」

 「ああ。まだ始まったばかりだから遅くなることは無いだろうけど、鈴音も留守は頼むよ」

 そう龍が言うと、鈴音は微笑みを浮かべた。

 「うん。なるべく早く帰ってきてね、お兄ちゃん」

 「尽力するよ・・・それじゃあな」

 鈴音の髪をそっと撫でてから、龍は家を出た。

 「ちーっす龍。昨夜は鈴音ちゃんとけんかしてねぇよな?」

 家を出ると、龍の家の塀にもたれかかっていた隼人が体勢を直し、声をかけてきた。

 「余計なお世話だ。喧嘩にまでなるほど俺も鈴音も愚かじゃない」

 隼人がいたことに何の驚きも無く、龍は隼人に挨拶(?)を返し、歩き始める。

 「でもまあ、その言い方だとやっぱ鈴音ちゃんは不安なんだろうな」

 「・・・」

 龍の後を追いながら隼人は言う。

 「皮肉じゃないぜ。というか俺らも当人だ、致し方ない事なのは分かっているさ」

 「ああ・・・」

 「・・・んでまあ、こんな空気だが先に報告だ」

 そう言って隼人は龍の横まで来て、頭を龍の方へ少し傾ける。

 「昨日のデータの件、粗方調べておいたぜ。狭間さんに渡す分には問題ない」

 「そうか」

 「ただ・・・通信履歴に気になる部分があってだな。少し個人的に調べておきたいんだが」

 「・・・了解だ。とりあえずデータがあれば問題は無いか」

 隼人の報告に龍は静かに頷く。

 「応よ。まあ漁れたら報告するぜ」

 「頼む」

 そこまで言い終えると、その話題を終わらせるかの様に、後ろから聞きなれた少女の声が聞こえた。

 「ま、待ってぇー!」

 「・・・お?」

 その声に、二人は立ち止まる。

 「は、は・・・良かった、追いついたぁ・・・」

 息を弾ませながら走ってきたのはフィリアだった。

 「はよっす。随分走ったんだな」

 「ま、まぁ・・・二人共歩くの速いからさ・・・」

 二人に追いついたフィリアは、乱れた髪を整えながら言う。

 「おはよう、フィリア」

 「あ、うん。おはよう龍」

 龍もフィリアに挨拶をする。フィリアの息が安定するのを確認して、三人で道を進む。

 といっても駅はすぐそこで、数分で駅に着いた。

 駅に入り、定期券を使って電車に乗る。

 特に混雑はなく、人のあまりいない場所に三人座る事が出来た。

 「ふう・・・追いつけて良かったよ。一人で登校してもなんか寂しいし」

 電車の中で、フィリアは安心したように言った。

 「そうか?ならこれからは何処かで待ち合わせるか」

 「俺らの家とは離れてるもんな」

 「ううー・・・それはありがたいけど・・・私が早起き、します」

 待たせるのは申し訳ないと思ったのか、若干フィリアは悩んだ後、結局それを断った。

 「あまり無理はするなよ?幾ら龍といたいからって―――」

 「・・・(キッ)」

 「なんでもないです」

 フィリアの強い視線に、隼人は急にトーンを下げた。

 「・・・そういえば、昨日の話、どうなったの?」

 話を逸らす様に、フィリアは龍の方を向いて言った。

 「・・・ああ、それか。とりあえず最低限の情報は隼人が集めた」

 「もう?流石だなぁ・・・まだ一日も経ってないのに」

 「まあ俺は情報屋みたいな役だからな。このくらいお手のもんだ」

 そう言いつつ、隼人は得意げに笑っている。

 「あのさ、私に手伝える事って、ある?」

 全く関わらないのも申し訳ない、または寂しいと感じたのか、フィリアは隼人のそれを聞いた後でおずおずと言った。

 「んー、どうだろな。これで終わりー、の可能性もあるし」

 「それで終わるなら俺達もほぼ役目は無い、が。もしもの時は協力してくれ」

 自分もあまり関わっていないという事を伝えつつ、龍はフィリアに応える。

 「うん、まあそっか。ごめん、変なこと言ったかな」

 「いや、問題ない。詳しい事が分かればフィリアにも伝えるよ」

 丁度話がまとまった辺りで、駅のアナウンスが流れる。

 「あ、そろそろだね。それじゃあ準備しよっか」

 龍と隼人は身振りで了解を示す。

 そうして電車が駅に着くと、三人は高校へ向かった。


 久しぶりに週一投稿した黒雪です。コード・ゼロも大事ですがそろそろ最近すっぽかしているクリブラ進めていこうかなって思っています。

 ようやく調子が戻ってきた・・・気がするのでこの調子で頑張ります。

 それでは今回もありがとうございました。

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