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最終話

二話連続投稿その2です。

 さて、ついにドラゴンの成人の儀式当日となった。

 俺は会場の設営に全く関わっていなかったから、どのようになっているのか今日初めて見る。

 で、見た感想はこうだ。

 結婚式の会場か、と。

 エルフの集落で見たような丸テーブルに椅子がいくつも並べられ、一番前にはちょっと段差があるステージが設けられている。で、そのステージの中央にはよく校長先生が話をする際にマイクを置く壇? が設置されていて、きちんとマイクのような拡声器も置かれている。

 ステージの後ろに吊り下げられている横断幕は『祝・成人』と書かれていて、更には祝いの花輪までも置かれている。

 ……結婚式+成人式の変な会場にいいる俺は、今プログラムを配っている。

 誰にかって? 無事に成人の儀式が終わり人の姿になれて成人したドラゴン達と来場した大人のドラゴンにまだまだ幼いドラゴン、そして来賓してくれたエルフ達や同級生、熊さんや狼達、ベエルさんと夫のデモさんと二人の息子ゼブにだよ。

 エルフ達とベエルさん達には昨日の段階で招待をしたそうだ。前日の急な招待だったにもかかわらず、快く受け入れて貰いこうして出席して貰った次第だ。

 今日の朝にドラゴンが蓬莱に訪れ、今回成人の儀式を受ける若いドラゴン達が一ヶ所に集められ、そこでホウロウ達四人の仙人によって仙薬を飲まされ、無事に人の姿を取る事に成功。即座に服を着せられた。

 で、何か朝から来ていた同級生達が男子が性別オスのドラゴンの、女子が性別メスのドラゴンを別室に連れてって色々と人間の衣服に対する常識をレクチャーしつつ、似合いそうな服装を見繕う作業を行った。

 何でも、琴音達女子三人が予めドラングルドに成人の儀式をする際には必ず読んで欲しい。人間の服装に対する正しい知識を教えるから、と必死にお願いしたらしい。

 で、ドラゴン達が飛来するよりも早い段階で、ドラングルドに連れられて同級生一同が蓬莱に到着した次第だ。

 因みに、ドラングルドは今回と前回―――エルフの結婚式に同級生達を連れて行く際には細心の注意を払っている。

 何せ、町人に見付かったらはやし立てられ、写真を撮られまくってしまうからだ。しかも、マニアックな衣装をドラゴン状態で着るようにも言われる。

 それがちょっとばかしトラウマとなっているので、町人に会う事がない夜が明けない時間帯に漁師も赴かない海岸の隅っこで同級生と合流し、一気に蓬莱へと向かってたりする。前回の帰りは同様に一目のつかない海岸に皆を置いて一目散に去ったそうな。今回もそうなるんだろうなぁ。

 そんなこんなで早くに着いて、ドラゴンの成人の儀式に参加。

 そう、成人の儀式は既に終わっているのだ。

 この儀式場はいわば二次会の場所だ。一次会たる仙薬を飲ませた場所は屋敷の大広間だ。

 こつこつとこの数日で二次会の場所を設営し、一昨日に無事完成したそうだ。

 人の姿に慣れるドラゴンは椅子に座るけど、まだなれないドラゴン達はコウライに狼達のいる広めのスペースに誘導される。

 席順は決まってなく、来た順番に座っている。なので、中にはエルフや同級生達、熊さんと一緒の席に着くドラゴンもいる。彼等は談笑して仲を深めている。

 全員が席に着き、プログラムを配り終えた俺は今度は給仕の手伝いをする。酒をじゃんじゃか運んで、ソフトドリンクも運んで、料理も運ぶ。この仕事はホウロウとシンヨウ、それにドラングルドと昨日夢の世界に侵入してきたルシルと大鷲野郎ことチャラ竜がしている。

 どうやら、ルシルは昨日の段階で蓬莱に来ていたようで「美味しいお酒、飲める」との事でキントウに誘われてここに来たそうな。因みに、滞在中はずっと筋斗雲の傍にいて甲斐甲斐しく葡萄を一粒一粒与えていた。

 料理については、チャラ竜、狼達、熊さん、俺等仙人については動物系の食材を全く使っていないものを、他の皆には特に制限を設けていない料理を持っていく。あと、子供用には辛い料理は持っていかないように細心の注意を払う。

 そして、この料理はキントウが作ったものだけど、藤林も手伝ってくれた。御陰様で予定よりも早く調理が完了した。

 料理を配り終え、俺達も席に着くと壇上に初老の男性が登って行く。この人がドラゴンの族長ドラグネル。今回の二次会の司会担当となっている。

 プログラムの順序は二次会開会の言葉、来賓からの祝辞、族長からの有り難いお言葉、人の姿になった際の諸注意、乾杯となっている。

 閉会の言葉? そんなのはありません。

 まぁ、ない理由って言うのが……朝まで騒いで飲み続けるからだそうで。

 因みに、酒の飲めない人に無理に勧めるのもNG。なので、酒の弱い同級生や子供のエルフ達、ゼブも安心して楽しめるようになってる。

 途中退席もOKなので、明日の仕事に支障をきたしそうになる前に抜ける事が出来る。その際はどれだけ飲んでも意識を保てる仙人に一声かける事になる。

 その途中退席の際は【転移】のスキルを持ってる子に送って貰うように頭を下げてお願い済みだ。その子はもともと酒が飲めない体質なので、酔って意識不明な状態になる事はない。

 全員が壇上に登った族長に視線を向ける。会場が静かになったのを確認した族長が開会の言葉を述べる。

 祝辞ではエルフの族長、デモさん、ルシル、実はクラス委員をしていたりする園崎、王者な熊さん、狼達のリーダー、大鷲野郎ことチャラ竜、そして俺達仙人の順に述べた。

 因みに、チャラ竜は未だに鷲の姿をしている。理由は訊いてない。訊く必要が無いので。

 その後は族長が祝いの言葉を述べる。

 ただ、その祝いの言葉は次第に別の話に逸れていき、校長先生の有り難いお話状態と化した。相手が族長なので、誰もが打ち切る事が出来ず、族長補佐のドラングルドがちょいちょいと軌道修正をするくらいに留まった。

 族長からのありがたいお言葉は三十分以上続き、あと何分喋るのだろう? と誰もが思った時に閉めの言葉に入って皆が安堵に胸を撫で下ろした。

 で、次の人の姿になった際の諸注意については園崎が述べる。一応、別室でも述べていたがこれは新成人だけでなく、既に人の姿に慣れる他のドラゴンやまだ人の姿になれない幼いドラゴン達にも向けられている。

 ドラゴン達は皆耳を傾け、真摯に聞き入っている。何かエルフ達も興味深げに訊いていてちょっとアダルティな話になった途端エルフの夫婦とデモさんベエルさん夫妻は子供の耳を塞いだりする。

 初注意も終わって、漸く乾杯の合図である。料理は最初から熱々のものじゃなかったから問題はないし、炭酸を使った飲み物もまだ出されていないから気が抜けてしまった、なんて悲しい事態に陥る事も無い。

 全員がコップを持ち(狼達と幼いドラゴン達は持てないので床に置いたまま)、族長を見る。族長は全員の視線を受け、コップを高々と掲げる。

「さて、それでは皆様の成人を祝いまして、乾杯」

「「「「「乾杯っ」」」」」

 ひとしきりコップ同士をぶつけ合い、一気に中身を飲み干す。そして歓声と拍手が木霊する。

「では、皆思い思いに食べて飲んで楽しんでくだされ」

 と言い終えて族長も壇上から降りて自分の席に戻り、酒を注いで料理を貪っていく。

 最初は椅子に座っていたが、次第に席を離れて立食パーティーのように皿を持って他種族との交流を深めていく。

 最初の料理はテーブルごとに運んだけど、後は好きな時に食べられるようにバイキング形式にしている。サラダにスープは勿論、ローストビーフにローストチキン、お好み焼きや寿司、てんぷら、揚げ物もきちんと用意し、デザートに果物、ゼリー、プリンにケーキと沢山の種類を用意している。

 それら料理は全て宝貝オンホウコウにより温かいものは温かい状態を、冷たいものは冷たい状態を維持している。

 子供は揚げ物やデザートに手が伸びていき、大人は酒が飲める者なら肴になる料理を選んで皿に乗っけている。

「おい園崎! そろそろ一発芸やれよ!」

「そうだそうだ! お前今日もUNOで負けたんだからよ!」

「当然、罰ゲームありってルールだっての覚えてるよな⁉」

「今更言い逃れできると思ってねぇだろうな⁉」

「ばっか、思ってる訳ねぇだろ!」

 いい感じに酒がまわってきたらしい同級生達が園崎を囲んでやんややんやと騒いでいる。どうやら、皆は事前にまたUNOをしていたようで、最早必然レベルと言っても過言ではないらしく、今日も園崎は最下位を喫したようだ。

「「「「「一発芸! 一発芸! 一発芸!」」」」」

 一発芸コールが響き渡ると、皆が何事かと同級生達のいる方へと目をやる。そして同級生達が囲んでいる園崎に自然と視線が移っていく。

「「「「「一発芸! 一発芸! 一発芸!」」」」」

「よっし! じゃあ一発芸やります!」

「「「「「「イェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ‼‼‼」」」」」

「見て驚け! 代々園崎家に伝わる秘儀を!」

「「「「「「イェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ‼‼‼」」」」」

「行くぞ! 人間スーパーボール!」

 と、園崎は高くジャンプすると直ぐに身体を丸めて球体に似せる。そして地面に背中から落ちるとまるでスーパーボールのように跳ねる。それを何度かして、むくりと起き上がる。

「おいおい、何が代々伝わる秘儀だ」

「この間テキトーに考えてた奴じゃねぇかよ」

「しかも丸くなって風魔法で跳んでるだけじゃねぇか」

「つまんねぇもん見せんなよ」

「んなもん俺でも出来るわ」

「「「「「「期待して損したぜ」」」」」」

「んだとぉ⁉」

 同級生からの酷評の嵐をその身に受け、園崎は掴みかかる。

「だったらお前等も何か一発芸やってみろよ!」

「おぅ! やってやんぜ!」

「お前よりも面白いのをやって会場を沸かせてやんよ!」

「よっし! 二番串岡! パントマイムやります!」

 と、わいのわいのと会場を盛り上げていく同級生達。会場にいる皆も同級生の熱気に当てられたのか、自分の特技や隠し芸を披露していく。

 途中で仙人達が野球拳を開催しそうになると、子供連れの親御さん達は団結して阻止したり、早飲み対決で負けたら一枚服を脱ぐ脱衣早飲み競争を宣言した瞬間に魔法を撃たれて中止させられたりした。

 そりゃ、子供がいるから教育によろしくない催しは駄目だろ。そこの所を分かってないのか、敢えて行おうとして妨害されるのを利用して会場を沸かせているのか判断つかないな。

 で、子供達は熊さんや狼達、幼いドラゴン達の所に行って一緒に遊んでた。絶え間なく笑顔で楽しんで貰えて何よりだ。

 ルシルは酒を飲みつつ近くに降りてきた筋斗雲に葡萄を与え続けている。その様子をチャラ竜が大鷲の姿のまま苦笑いを浮かべ、林檎をつまんでいる。

「皆楽しそうだな」

「そうだね」

 と、俺は酒を飲みながら隣りでオレンジジュースを飲む琴音に語り掛ける。

「琴音は皆の所に行かなくていいのか?」

「私はいい。雅の近くにいる」

 琴音は微笑みながら俺の肩に頭を預ける。

 同級生に見付かったら制裁ものだけど、幸いな事にあいつらは今馬鹿騒ぎをしていてこちらに目を向けていないので気付いていない。

「……雅」

「何だ?」

「飲み過ぎないように」

「はいはい」

 俺が醜態を晒さないように注意する琴音の頭をポンポンと叩く。

「にしても」

 改めて、こうして皆と馬鹿騒ぎ出来るのが幸運だと思う。

 本来なら、一年と三ヶ月くらい前に俺達は死んでいた。でも、運命の神様と召喚の神様の計らいで、こうして異世界に転移する形で生き延びる事が出来た。

 御蔭で、今も元気に日々を過ごしていける。

 ただ、と俺はちょっと苦笑いを浮かべる。

 運命の神様よ、俺に八つ当たりは勘弁してくれ。

 大鷲野郎ことチャラ竜が他の仙人以上にハードな鍛錬を俺に課していた理由は、運命の神様に頼まれたからだそうだ。

 何でも、運命の神様とチャラ竜は旧知の仲らしく、結構な頻度で連絡を取り合っているそうな。

 で、運命の神様はチャラ竜にこう頼んだそうだ。お気に入りの子の好意に全く気付いてない鈍感野郎にお灸をすえてくれ、と。

 運命の神様のお気に入りの子は琴音だったと、チャラ竜の言葉から推測出来た。その事は、誰にも伝えていない。

 そして、チャラ竜は神の世界にある極上の酒――神酒を毎月貰う事を条件にハード鍛錬を俺に行ったと言う訳だ。ただ、それでも死なす気はなかったので、死にそうになったら全力で守ってくれたんだが、ぶっちゃけ夢の世界で真相を知った今となってもチャラ竜に対する心象はよくならない。だって、酒欲しさに実行したんだぞ? 許せるかよ。

 まぁ、もうハードな鍛錬を課せられる事も無いんだけどな。きちんと琴音の好意に向き合い、無碍にしなかったからもういいだろ、と昨日運命の神様に言われたらしい。

「どうしたの?」

 琴音が苦笑いを浮かべた俺を不思議そうに見てくる。

「何でもないよ」

「そう」

 俺の言葉に納得はしていないが、深く詮索する事無く琴音は俺の手を握ってくる。俺は琴音の手を優しく握り返す。馬鹿騒ぎしてる仙人達、ドラゴン達、エルフ達、そして同級生達を眺めながら。

 兎にも角にも、これからもこうやって馬鹿騒ぎしながら、楽しみながら生きていける事に感謝する。

 けど、運命の神様よ。感謝はしてますけど会う機会があればちょっと物申したい事がありますからね?



  了




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「おいおい蓮杖よぉ」

「俺等が目を離してる隙にいちゃいちゃしてるたぁ、いい御身分だなぁ」

「そうだなぁ、羨ましよなぁ」

「全く……そう言うのは俺等がいない場所でやってくれないかな?」

「まぁ、俺等がいなくても、後に知った場合は結局の所さ」

「「「「「制裁するんだけどね」」」」」

「さらばだっ!」

「「「「「逃がすかよ裏切り者がぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼」」」」」



 今度こそ、了。


読んでいただきありがとうございました。


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