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【MKS FOX EATER】 僕らの油揚げ戦争 -前編-

挿絵(By みてみん)

 壁に押しやられて顔の横に手を置かれる。いわゆる壁ドンの体勢だ。


「さぁ。私に任せて」


 スナコさん的にはゆっくりと顔とが迫ってくる。さすがチベスナ! 顔のサイズで距離感が掴めない。――って駄目だよ。僕にはまだ速いよ!


「いたか!?」

「いや、こっちにはいないぞ!」


 足音がバラバラと床に響いて離れていく。


「行ったな。さぁ進もう」


 初めての壁ドンが潜入作戦中。しかも、僕からじゃなくてスナコさんからなんて。それよりも、何故僕が潜入ミッションに…。――どうしてこうなった!!




   **********




 朝、まだ外も暗い状態で目が覚めると、ベッド脇のコタツに狐の方々が集結していた。


「起きたか。お茶なら入れてある」


 そういって、隙間を空けてくれるスナコさん。――あの、何故こんな時間に皆様が。


「では、改めてミッションを説明する」


 スナコ兄の言葉にスナコさんギンコさんキタさんの三人が頷く。2月6日は初午(はつうま)祭。狐はいつも以上に油揚げを食べる日であるそうだ。それに合わせるように遂に油揚げギャング達の、油揚げ製造工場の場所を突き止めたこの()たちは、工場を乗っ取り美味しい油揚げに改造して、それをたらふく食べようという壮大な計画を立てたのだった。――色々ツッコミどころ満載だ!


 しかし、スナコ兄の言葉に、スナコさんは勿論、ギンコさんにキタさんまでもが、見たこともない真面目な表情で頷く。


――どれだけ油揚げに飢えてるの、この()達!


「やるしか……ないな」

「あぁ。僕たちの力を見せてやろうじゃないか!」

「分け前は等分にね。それでいいわよね」


 気合漲る面々。そしてまだ新聞配達も来ない早朝にミッションは開始されてしまった……。




 潜水服からコンクリートに落ちた水がわずかな音を立てる。――大丈夫まだここは安全圏内だ。しっかりと確認して水路から完全に体を上げる。僕とスナコさんは手早く外側に着ていた潜水服を脱ぐと畳んだそれは随分とコンパクトになる。今、僕とスナコさんは身体にピッタリとした音を立てにくい服に装備だけだ。すると見計らったかのように耳元に装着した機械が振動し、無線が来た事を知らせてくれる。


「……無事に内部に潜入した様だな。内部の詳細な地図、並びに細かな武器等は現地で調達してくれ……OVER」


 僕とスナコさんに同時に聞こえていた無線は静かになった。骨伝導で伝えてくれるので、外部には聞こえないという便利品だ。スナコさんと目線を合わせ同時に頷くと、僕らは施設内部への潜入を開始したのだった。




 監視カメラの眼を盗み、壁に張り付きダクトを潜り、僕らは奥へと進む。スナコさんが気配を察知し、巡回の人間から回避し続ける。安定してバレないでいる。一安心だ。しかし、とある通路に差し掛かった時に無線入る。


「二人ともちょっと止まって。その先は赤外線のレーザーが迷路みたいに張り巡らされる。スナコなら大体見えるだろうから、後をついてってくれ……OVER」


――赤外線もなんとなく見えるってスナコさんが凄すぎでしょ! しかもなんとなくなの!? 野生の感とかなの!?

 

 心の中でひとしきり叫んだ後、慎重にスナコさんの後をついていく。なんだけど――え!? ここで前転してすぐに壁にくっついて……ちょっそんなの無理だー!


\ピュイーン!!/


 警報音が鳴り響く。――マズイばれた!


 スナコさんが僕を引っ張ろうとするけれど、僕は焦ってこけてしまう。近付いてくる足音。――スナコさん隠れて! とっさに隠れ蓑ダンボールも間に合わない。僕は慌ててその場に伏せる。


「なんだ! ……誰もいない。別の場所か」


 警備は去っていった。僕は何もしていない。


「流石だ。脅威のカモフラージュ率。これならチベットでナキウサギも容易に狩れるぞ」


 僕は何もしていない。()()()()()()()()()。――それって僕の存在感が無いという事なんだろうか……。あれ? 僕この物語の主役じゃないの!? ねぇ誰か教えてよ!

 華麗にスナコさんは僕の葛藤をスルーすると、さっきの警備兵が落としていったレーションを食べながら進み始めた。


「うまいあまい」

「スナコさぁん……!」


 その後も、幾つものピンチを何となく乗り越え一度建物の屋上へ。手に入れた地図によると、ここから中庭に一度飛び降りて進むらしい。パラシュートも無事に入手し、後はさぁ飛び降りるぞというタイミングで辺りにローター音が鳴り響いた。巡回のヘリコプターだ! なんてタイミングの悪さなんだ。

 旋回するヘリコプターのライトが僕ら照らす。バレバレの様だ。直ぐに滝のように銃弾が降ってくる。


「こっちへ」


 スナコさんに引かれてコンテナの影へ。と、無線が。


「あろーあろー。アパッチとはやるわね~ギャング達。RPGロケットでも無いと撃ち落とすのは辛そうね……OVER」


 僕らの手元にあるのは、手榴弾と消音機能が付いた銃程度。他には何故か僕しか使う事が出来ないと言われて渡された【超絶緊急事態以外は使用禁止】の札が貼ってある謎過ぎるカプセルだ。これはまだ早いとスナコさんに止められる。他に使えそうな物は……あれだ!


 銃弾の雨の中、徐々に近付く戦闘用のヘリコプター。屋上の水タンクのすぐ横までやって来た。スナコさんは僕の意図を察したらしく、目線の合図と共に手榴弾を投げてくれる。5秒待って激しい閃光。その中をタンクまで走る。がむしゃらに撃ちまくるヘリはまだ僕たちがさっきまでいたコンテナを攻撃中だ。水の開放弁を開け放ち、その場を離れるとスナコさんが水タンクに狙い定めて手榴弾を投げ込む。大爆発と共に吹き出した大量の水にはヘリコプターに一気にぶち当たる、ヘリは姿勢を崩すとそのまま墜落していった。




 映画のワンシーンみたいなアクションを終えて、中庭に着地。さらに建物へ。――僕も活躍してるよ! よしよし主役っぽいぞ!


 建物の中には、何故か大量に戦車が置いてある。恐るべし油揚げギャングの戦力。――こんな所にお金使わないで油揚げを美味しくすればいいのに。見ていると、上の方から人の気配がして、戦車の下に匍匐前進で隠れる。


「おーい、賄いの時間だぎゃ」

「俺……もう、あんな油揚げ食べたくないよ……。ツライ、ツライだぎゃ」


 深い溜め息が聞こえて来る。油揚げギャングの士気は低そうだ。


「とりあえず、例のアレが出来たらまともになるんじゃないのか?」

「MKかー。この奥の直通エレベーターを降りていかんきゃいけないし、整備も大変なんだぎゃ……」


 声は離れていった。MKとは何なのだろう。ともかく目的地が判明した様だ。驚く程に警戒が薄い中を潜り抜け、僕らは地下へと向かった。




「この酷い匂い。油揚げのコンテナに間違いないわ」


 辺りには大量のコンテナが並んでいる。油揚げギャングの工場のメインの製造はここのみたいだ。次々と自動で油揚げがベルトコンベアで運ばれコンテナに積み込まれる。相変わらず全然美味しくなさそうだ。


 これの大元を調整し、工場を制圧すればミッション成功だ。二人して慎重にベルトコンベアの川の源流へと向かう。ドアを開けて、その先にあったのは!


メタルコャ(M K)。もう完成していたの……」


 無線からも慌てた声が混線している。


 三階建ての小さな家程もある四足歩行のロボットが、ただっ広い空間の真ん中に鎮座していた。尻尾が3本あるそれはまさに機械の狐。爪だけで大人の身長位はある。と、眼に赤い光が灯る。――起動した!


「ハーッハッハー! ダギャー!ここまで来たからにはこのメタルコャで死んでもらうダギャー!」


 伏せていた機械の狐は、僕たちを倒す為にその力を解き放ったのだ。



   ――To be continued――

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