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油断をすると

 ふふっ。

 あれから、私は寄生虫を殺してまわっている。

 まずい、テンションがおかしい。


 でも、これを笑わずしてどうしろというんだ。

 いや、度重なる虐殺で、精神がおかしくなってしまったのかもしれない。

 それともなんだ? もともと私はこういうやつだったのか?


 ないな。それはない。

 それじゃあ、私を大切にしてくれた家族に申し訳が立たないじゃないか。

 まあ、前世の話なんだが。


 きっとそうだ。

 これは私が龍種なせいだ。

 少なからず、精神が引きずられているのか。


 今なら人間を、たいりょうぎゃくさつー! とか、してみても何も感じない自信がある。

 する予定もないし、実力的にできないと思うけど。


〔一定の経験を経たことにより、レベルアップが起こりました〕


 なんでいつもこんな微妙なタイミングて起こるんだ?

 とにかく、ステータスを開こう。



〈ステータス〉

 龍種Lv:6

 パラサイト・アンデットドラゴン

 ENE:25/25

 STA:25/25

 SAN:056/140

 MAG:17/17

 DRA:39/39

 KAR:077/100


〈スキル〉

 『不死身』『魂魄攻撃無効』『燃焼攻撃無効』『体内寄生』『拘束効果緩和』『虚時間幽閉』『生体吸収』『判別分析』



 レベル六。

 もう、結構な上がり具合だ。

 あの寄生虫、レベルだけは高いからな。

 でもそれなら、もう少し上がってもいいんじゃないかと思ってしまう。


 だが、しかたない。

 だって、今まで遭ってきた寄生虫。

 全員が最初からスタミナのかなり少ない状態だったことが判明しているのだ。

 私が倒せているのもそれが理由だろう。


 御館様の体内は、飢餓状態にある。

 いま、確信を持ってそう言える。


 御館様はきっと、スタミナ的にも、相当な期間食べていなくたって活動できる。

 だけど御館様が限界を迎える前に、消化されたものから栄養を横取りするやつは死んでしまうのか。


 そう言えば、御館様って、あの何もない荒野の向こうから飛んできたよな?

 それじゃあ、あっちに行ったって、何も食料なんてなかったってこと?

 意図せずして御館様に助けられたというわけか。


 さあ、腸内探索を進めよう。

 寄生虫バスターだ。

 もっと私を強くするのだ。


 御館様に正面から戦えるくらい強く、なんてことは無理だろうが、それでも世の中弱肉強食。

 弱いものは食べられるしかない。

 草食動物は強くても他の動物を食べたりしない? 知らんがな。


 とにかく、理不尽なくらい強い敵にも抗えるようにしないと。

 そして、私の本能が強くなれと告げている。龍種とはそういうものなのだろう。


 ふふふ、いたいた。

 早速また寄生虫を見つける。こんなにいてよく宿主は生きている。

 御館様のスキルに飢餓耐性みたいなものがあるのかと疑ってしまうほどだ。


 うん、スタミナの値も低い。

 私に警戒を払わないのが楽でいいなあ。

 じゃあ、いただきまーす。


 あはは、スタミナを奪う。

 最初の頃に比べて早く奪えるようになった気がする。

 慣れたからか、レベルが上がったからか。理由はいろいろ考えられる。


 今回も無事に吸い尽くすことができた。

 相変わらず搾りかすみたいなものが残る。

 ゲシゲシと踏みつけると私の機嫌がまた一段と上がっていく。

 次だつぎ。もっといっぱい倒すぞお!


 調子に乗った私は、気を緩ませながら腸内を歩いていく。

 だけど、それがいけなかった。いや、そうじゃなくても遭っていたことは確かなんだが。


 私が腸を道なりに曲がったとき、そいつが目に入った。


 姿かたちは他の寄生虫どもと変わらない。けれど、決定的に何かがちがうそれ。



〈ステータス〉

 虫王Lv:4

 パラサイト・ライフドレインワーム

 ENE:257/257

 STA:113/268



 虫王って、何よ。

 なんかつよそう。


 でっぷりとしているが、どこか威厳を感じさせているのか?

 どうしようこいつ。

 スタミナもあまりまくってるし、私じゃ倒しきれないかなあ?


 というか、レベルが低いのにステータスが高いって、クラスアップみたいなものをしたのだろうか。

 レベルが上がればいけるのかな。


 無視しよう。

 それがいい、それがいい。


 だいたい、なんてものを御館様は体内に飼っているんだ?

 ステータス的には御館様とかなりの開きがあるが、私からしてみればものすごく脅威。


 人間がいるならどのくらいよ?

 この虫に蹂躙されるくらいの強さなんじゃないだろう。

 兵器とかでドッカーンとやらないとこの虫は死ななそうだし。


 うーん、そういえば、この世界の人間の文明レベルが知りたいな。

 他の生物に追いやられてる人間じゃない! とか言いながら発展してるか、それとも何もできずに世界の片隅に追いやられてるか、そもそもそんな生物はいないのか。


 私としては、知的生命体とかいてほしくない。

 だって嫌じゃん。核兵器みたいな威力のものが飛んでくるなんて。

 魔力なんてものがあるんだ。それより強い何かが飛んでくるかもしれない。


 そう考えると、人間虐殺とかは考えない方がいいかもしれない。


 さて、現在、私は寄生虫をスルーするべく脇を通ろうとしている。

 するとだ、寄生虫がこっちを向いた。


 なんかまずい。

 今までのやつらだったら、私からちょっかいをかけない限り私の存在を完全に無視していたはずだ。

 なのになんで。


 ……当たり前か。

 こいつは今までのやつらとは違うんだ。でも、あいつらと同じように私に興味は持たないはず。


 そう決めつけて歩みを止めない。

 寄生虫の脇を歩く。


 ずっと寄生虫は私のことを見つめている。

 極力、気にしないように努める。

 でも、これが間違いだった。


 私の身体から急激に力が抜ける。

 急いでステータスを確認。

 エネルギーがいっきに削られる、スタミナも削られる。


 とっさに『生体吸収』。

 御館様から頂戴する。

 速度こそ緩くなったものの、いまだ減り続ける。


 勿論、私は寄生虫には触れていない。

 なのになぜ?


 今、考えている余裕はない。

 とにかく、この虫から離れなくては――だというのに、身体が鉛のように重い。


 これはなんだ?

 頭が働き、解答が導き出される。今までの情報で思い当たるもの……。あのネバネバの強化版?

 くそお……! 働けぇええ……『拘束効果緩和』!


 願いは虚しく一向に身体は動かない。

 なにか他の手は?

 あった、『虚時間幽閉』。


 頼む、効いてくれぇええええ!!


 ただがむしゃらにスキルを発動した。

 それが成功したかはわからない。

 ただ一つだけわかったこと。


 ――そのとき、私のスタミナはゼロになった。それと共に私の意識は闇へと沈んでいく。

 主人公の自業自得です。

 笑ってやってください。

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