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龍種って、なんだろう

 とある洞窟――

 一つの球体が蠢く。

 否、一つの卵が孵ろうとする。


 殻に覆われない膜のような卵で、虫のそれを髣髴とさせるが、決して数は多くない。いや、たったの一つだ。


 簡単に殻を破り、姿を見せたそれは、やはり幼虫のよう。

 だが、黒い艶のある、何をしようと傷つくことがないと思わせるような外骨格に守られており、生まれたばかりにしては、酷く歪に感じる。


 それも、そのはず。

 これは、虫のようだが虫ではない。

 姿形こそそのようだが、歴とした龍種なのだ。


 だからだろう。

 まず、龍種としてやるべきことがある。


〔龍種権限発動。プログラムを取得中……〕


 龍種権限。

 龍種のみに許された権限であり、生まれたばかりにこれを使うには意味がある。


〔完了。スキル『急速成長』を獲得します〕


 いくら龍種権限といえど、スキルにはある程度の適性がある。

 ものによっては完全に獲得できないこともあるのだ。


 度重なる転生を繰り返した龍種。

 彼らは自身の獲得しきれるスキルを熟知しており、それ以外を得ようという無様な真似はしないのだ。


〔龍種権限発動。プログラムを取得中……〕


 さらに龍はスキルを得続ける。

 今回こそは、自身が頂点に立つために。


〔完了。スキル『物理攻撃無効』を獲得します〕


 ただでさえ硬いと思える守り。

 それが強化されてゆく。

 果たしてそんな必要はあるのだろうか。いや、あるのだ。

 規格外の攻撃が入り乱れる。龍種の闘いとはそのようなものだ。


〔現在、スキル『瞬間再生』には龍種権限を発動できません〕


 龍種権限が発動できない。

 それもこの龍は見越していたようだ。

 大して気にする様子もなく違うスキルをまた獲得しようとする。


〔龍種権限発動。プログラムを取得中……〕


 次はどのスキルをとるのだろう。

 それはこの龍の中では決まっていることだ。


〔完了。スキル『衝撃波』を獲得します〕


 攻撃手段を得た龍は、獲物を求めて、成長するため、洞窟の闇に消えていった。



 ***


 「ネバネバー」よし! いけた。

 クク、フハハ、アーッハッハッハ。



 倒した! ようやく倒したぞ。

 どうやって倒したか?

 スタミナを吸い切った。以上だ。


 水分がなくなったかのようにカサカサになった寄生虫の死骸をゲシゲシと踏みつける。

 ずいぶんと私をコケにしやがって……!

 相応の報いは受けてもらったぞ。


〔一定の経験を経たことにより、レベルアップが起こりました〕


 ん? ちょうどレベルが上がったようだ。



〈ステータス〉

 龍種Lv:3

 パラサイト・アンデットドラゴン

 ENE:15/15

 STA:15/15

 SAN:044/128

 MAG:7/7

 DRA:26/26

 KAR:072/100


〈スキル〉

 『不死身』『魂魄攻撃無効』『燃焼攻撃無効』『体内寄生』『拘束効果緩和』『虚時間幽閉』『生体吸収』



 うん。なんか充実してきた気がする。

 それでも、他と比べなければ自分がどのくらい強いのか分からない。

 そうだ、ステータスを覗き見れるスキルとかないのか?

 教えて、龍種権限さーん!


〔龍種権限発動。プログラムを取得中……〕


 おお、って、あるのか。

 というか、弾かれなかった。


〔スキル『能力鑑定』の取得に失敗しました〕


 うん。そうだろうと思った。

 今まで一回も成功してないよね。

 まあ、劣化版でもあるに越したことはないと思うんだけど。


〔断片データを再構成。スキル『判別分析』を獲得します〕


 というわけで、手に入れました『判別分析』。

 早速、腸壁に向かって使ってみたいと思います。

 とう!



〈ステータス〉

 高位竜Lv:87

 グレート・ロングドラゴン

 ENE:1053/1125

 STA:482/738



 ま、マジか……。

 ここまでしかわからなかったけど、親方様が途方もない感じに強いってことがわかった。

 私の何倍だ?


 レベルは二十九倍。

 スタミナは約四十九倍。

 エネルギーは七十五倍。

 本当に面と向かって戦ったら勝てない。


 生きてる年季が違うのか。

 数値にしてみると、本当にどうしようもできなかったと思えてくる。

 高位竜ってあるし。なんでこんな怪物と私が睨み合いになったんだ?


 龍種やばい。こんなやつと向かい合って恐怖とか感じないとか……。

 生物として破綻してるんじゃないか?


 まあ、いいや。考えたってしかたがない。

 とりあえず、私は目的を果たそう。


 ん? でも、スタミナはもう補給できるんだよなあ。

 それなら、ある意味ここは快適なんじゃないか?


 いや、御館様の体内で一生過ごすなんて論外。

 絶対に外にでるのだ。


 とりあえず、レベルを上げたい。

 歩いてれば上がるかな?

 そんなわけないか。

 無意味に腸壁を攻撃するとか?

 ガンになれー! って。


 とにかく腸内探索でもしてみようか。

 もしかしたらあの寄生虫がまだたくさんいるかもしれない。

 フッ、今の私ならレベル上げにもってこいだ。


 てきとーな方向に進んでいく。

 しばらく進むとまた寄生虫がいた。

 早すぎ!?

 御館様、虫飼い過ぎだぞ?

 寄生虫は怖いんだぞ?


 心中で絶対に生肉は食べないと心に誓う。

 体内に虫がいると思うと……。

 卒倒してしまいそうだ。


 え? 焼く方法がない?

 なら食事なんてせずにスキルに頼りきろう。

 そういえば、栄養素とかどうなってるんだろう?

 まあ、生きられればいいか。


 寄生虫にペタッと触る。

 この程度なら気にされることはない。

 ガシッと掴む、これでようやく私を振り払おうとしてくる。


 今だ! スキル発動! 『生体吸収』。

 触れている間だけ、相手のエネルギー、スタミナ、その他もろもろを奪うことができるのだ。


 振り払われまいとしがみつく。

 エネルギーはいくら奪っても奪い返される。

 けれどそこは重要ではない。

 さっきの寄生虫もそうだったが、こいつはスタミナを吸収するスキルは持っていない。そのはずだ。


 証拠は私のスタミナが奪われないこと。

 あ、忘れていた。

 スキル『判別分析』を使用。



〈ステータス〉

 昆虫Lv:25

 パラサイト・リペンドワーム

 ENE:127/127

 STA:012/118



 私よりも遥かに高い。が、あの御館様を見たあとではインパクトに欠ける。

 それに、もう少しで吸い尽くせるはずだ。

 もう私にとって脅威足り得る存在ではないのだ。


 徐々にだが、寄生虫の動きが弱まってくる。

 だけど、最後まで気を抜いたりはしない。


 案の定と言うべきか、最後の力を振り絞ったように、私を今までにない力で振り払おうとしてくる。

 そんなのに動じる私ではない!


 最初のあいつには、ふえっ!? って感じにこれで吹き飛ばされたから……。


 ええい! そんなこともうどうだっていい。


 寄生虫のスタミナがなくなっていく。

 値が下がりゼロへと変わる。

 さっきのあいつと同じ感じで、水分がなくったようにシワシワにしぼんでいく。


 完全勝利っ――!

 パラサイト・リペンドワーム

 信頼の片利共生生物。

 ただちょっとお腹が空くだけ。

 そのはず。

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