頑張る私、健気だよね
私は倒れている白い人を抱える。
私の力を舐めちゃいけない。人の姿をしていようが、龍は龍なんだ。
白い人の一人や二人くらい軽々抱えられるさ。
まあ、黒いドロドロにサポートしてもらってるんだけどね。
抱えたはいいが、どこに運んでいけばいいかわからない私。
そして結局、いつもいるあのベッドのある部屋に向かった。
ベッドに白い人に下ろす。
そこから急いでお風呂に向かう。タオルとオケ、お湯を汲んで運ぶ。
『流体操作』で水をこぼれないようにしながら全力で急ぐ。
部屋に着いた。
オケを置いた私は、そこから白い人の服を剥く。白い人の着ていた服は、全体的にボロボロだが、背中の部分が主だっている。というか、大穴が開いていた。
そこで白い人の背中を見るのだが、血が全身についているだけで、特に傷はない。
私はお湯に浸したタオルで、白い人の身体を綺麗にする。
綺麗な肌だよ。私と同じく人間味のない。スタイルもなんか抜群だし。
改めて見るとすごいね。前は必死すぎたからこんなまじまじは見れなかった。まあ、今も私は必死なんだけど。
とりあえずこれで完璧だ。
私は部屋の収納スペースから着せやすそうな服を選んで白い人に着せる。
これでまあ、なんとかだね。
気を失っている白い人だが、外傷は見当たらなかった。
私は全身をくまなく見たんだけど、一つも怪我なんてありやしなかった。傷跡もだ。
本当に人間味がない。
服に付いていた血がそれなりに固まっていたことは運んでいるときにわかるだろう。
新しく血が流れてる様子もなかったしね。
素人の私だ。治療の真似事なんてするわけにはいかない。
ただ、そのままでもいけないと思った結果、こんな行動に出たわけだ。
それで、傷を負った痕跡は服と全身の血。肝心の傷はどこにもなかった。
おそらく負ったであろう傷は問題ないのだろう。けれど、私は白い人のことをとても心配している。
そっと、額に手を当てて、その後にオロオロする。
熱が出ているようだ。
頰に朱が差し色っぽい。いつもは血が通っていないんじゃないかと思うほどの白なのに、今回ばかりは火照って色が出てしまっている。
風邪、なのだろうか?
そもそも、龍って風邪をひくのか?
私にも移ってしまうのか?
あっ、でも、風邪は菌だ。ウイルスだ。触れなきゃだろうし、【搾取】を使えばなんとかなるかな?
思うや否や【搾取】を使って体内の生物やらなんやらから吸収する私。
手応えもあったっぽいし、これで当分は大丈夫か。
それでも私がオロオロしてるのは変わらない。だって、風邪の処置方法なんてわからないし。
薬とかはあるのかとか、あってもどれがどれとか、無理だね。
私は今度は食堂みたいな場所に向かう。
冷たいおしぼりを作りたいからだ。
熱を出すのは体内の菌やらウイルスやらを倒すためだけど、それは諸刃の剣だ。
死んだ原因がその熱だったってこともある。頭ぐらいは冷やさないと。
氷は……ないっぽい。どうしようか。飲み水は……常温みたいだ。というか、この水ってどこから汲んでるんだろう?
今はそんな重要じゃないか。
〔龍種権限発動。プログラムを取得中……〕
ん? 龍種権限?
これはスキルを取得するときのやつだ。
久しぶりに聞いた気がする。そんなでもないか。
〔スキル『熱吸排』の取得に失敗しました〕
あ、うん。やっぱり失敗するよね。
まあ、あるだけましか。発動できません、って言われるよりは希望があるよ。
こうなったら、スキルに頼るしかない。
氷、見つからないだけで探せがあるのかもしれないけど、やっぱりスキルが取れればそっちの方が早いというのが事実。
〔取得した断片データを再構成……〕
果たしてどこまでできるのか。これで温度を上げるだけだったら私は悲しい限りだ。
きっと、そうじゃないことを願う。
決死の大捜索とか私はやりたくない。
あ、『空間把握』とか使えば早く終わる気がしないでもないが、あれって、形がわかるだけで材質とかわからないからなあ。
『空間把握』、痒いところに手が届かないスキルだ。
まあ、あるだけましか。これがあっても大冒険を繰り広げたのは苦い思い出だ。
〔スキル『温度調節』を取得しました〕
これはいけるのか?
まあ、いけそうだな。タオルとか、そういうのを放り投げて私は白い人のもとに向かう。
『温度調節』の練習をしながらだ。まあ、そんな変わんないけど、冷やすくらいならこれでいいか。
どうするかって?
部屋にたどり着いた私は黒いドロドロを切り離した。そして白い人の頭の上に置く。
これで永久に冷える保冷剤の完成だ。
ついでにそれなりな吸着力があるから絶対に落ちたりしない。
なんかこれだと、黒いドロドロじゃなくて黒いプルプルだ。これならスライムの面影がある。
いや、あいつは断じてスライムなんかじゃないんだからなあ。
私にできることはこのくらいだけかな。
これ以上のことは私にはできない。それこそ、医者でもいない限り無理だ。
あれ? 龍を診察できるような医者っているんだろうか? いないよなあ。
自然回復を待つしかないってことなのか。
じれったい。私はフラフラと食堂に向かう。
他にできることと言ったら、ねえ。
白い人に作ってもらったおかゆみたいなアレを思い出したんだ。
私にだって料理はできるはず。
前世では兄妹が寝込んだときに、親の手伝いをしたことだってあるんだ。足引っ張っただけだったかもしれないけど。
ほら、あれだ。
彼女の方に期待するんだ。
きっと、前世みたいに駄目なやつではないはずだ。はずだ。
なんかものすごく自信がなくなってきてしまったよ。
おもえば、この世界の食材は私のわからないものなんだよなあ。
えっ、ハードル上がってるんじゃないかこれ? いや、もともと食材の知識なんか皆無に等しいから変わんないか。
きっと、記憶の片隅にあるそれっぽいのを探せばなんとかなるかな。
いろいろ問題がある気もするが、私は食堂へと向かっていった。
いや、本当に大丈夫か?
私を信じよう。きっと大丈夫なはず。
そんな調子で食堂に向かった私だが、そこから、なにかの気配が感じられる。
さっきはなかった。この短時間に何が?
意を決っして、私はその食堂に潜入した。
「やあ、光穂ちゃん。お久しぶりですねぇ」
そいつは湯のみでお茶をすすりながら、椅子に座って寛いでいた。
……誰だこいつ?
とりあえずあらすじ変えてみました。
そろそろ物語も後半です。頑張って畳みたい。