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レベルアップ

 はあ、はあ。

 駄目だ。

 一向に倒せる様子がない。


 あれから何度も攻撃しているが、ダメージらしきものが蓄積されている様子がない。

 そこから一つの結論に辿り着いた。


 こいつ、エネルギー吸収できるスキルを持っている。


 発動するのは接触したとき。

 つまり、私が攻撃したときにだ。

 引っ掻いたあとにエネルギーが減っているのは、そのスキルが発動したからだろう。


 そして、発動しないのか必要がないからかは知らないが、この寄生虫のエネルギーが満タンであろうときに、私が触れてもエネルギーは減らないのだ。

 そこから、こんなスキルがあるのではないかという結論に至った。


 私がダメージを与えても、そのすぐ後に吸収される。

 私の与えたダメージぶん、私から吸収するのだ。


 今の私には一撃でこいつを倒すことも、吸収量を超えるダメージを叩き出すことも不可能。

 絶対に倒せないというわけだ。


 もちろん、これは仮定の話で私は諦めずに攻撃を続けている。

 諦めてたまるものか。


 ――ひゃっ!?


 そろそろ、いいかげんにうざったくなってきたのか、寄生虫からの攻撃がくる。

 なにかの液体を吐き出してきた。


 咄嗟のことで反応ができずにダイレクトに直撃してしまった。

 少しおかしい表現になってしまったが、今はどうだっていい。

 寄生虫の吐き出した液体。

 それは強い粘着性のあるものだった。


 寄生虫にもう何度目になる突撃をする最中だった私は、絡まって転んだ。

 それはもう見事に。


 コロコロと転がって、ちょうど寄生虫の眼前で止まった。

 じっと見つめられる。


 ネバネバしてうまく動けない。

 上手く立ち上がれずに、意味もなくもがくハメになる。

 私をこんな状態にするなんて。


 あ、目を背けられた。

 何かわからないがものすごい屈辱を受けた気がする。

 くっ、殺してやる!


 粘り気が取れずに身体は自由に動かない。

 駄目だ! あいつだけは殺さなきゃ駄目なんだ!

 動け! 私の身体!


〔一定の経験を得たことにより、レベルアップが起こりました〕


 えっ? レベルアップ?

 唐突に聞こえた声により、私のおかしなテンションが元に戻る。


 声の質から、女性だろうか?

 上品な感じのソプラノボイスだ。


 この声が聞こえたのも初めてじゃない。

 胃液に浸ったとき、意識を失う直前に聞こえてきた気がした。


 そのときは確か、進化とスキルだったっけ?

 よく覚えていない。

 とても意識が朧げで、幻聴のようにも聞こえたからだ。


 まあ、いいか。

 確認しよう。善は急げだ。



〈ステータス〉

 龍種Lv:2

 パラサイト・アンデットドラゴン

 ENE:12/12

 STA:06/10

 MAG:5/5

 SAN:043/127

 DRA:20/20

 KAR:056/100



 よくわからんパラメーターはさて置くとして、軒並み数値が上がっている。

 一番上がっているのはエネルギーだ。

 よし、これでこのにっくき寄生虫野郎に十一回連続攻撃が可能だ。やったぜ。


 でも、なんでこのタイミングで上がったのだろう。

 普通は敵を倒したタイミングとかではないのか?

 あっ、そういえば戦っただけで経験値が入るゲームもあったような気がする。


 さて、レベルが上がった。

 だけど、この状況を脱するにはいまいち決め手が足りない。


 確かに、さっきよりは力がみなぎってる気もしないでもないが、ネバネバが取れない。

 頑張っても動けない。

 一定の距離まで引っ張ると、抗いがたい力でゴムのように勢いよく元に戻ってしまう。


 これはもはや物理的な法則が関係ない気がしてきた。

 はっ!? もしやなにかのスキルだろうか。


 私の中でスキルとは超常的な何かだ。

 もう、物理的にありえないようなことが起こったら、スキルのせいにしてしまおう。

 そう、みんなスキルのせい。


 というわけで、努力虚しく動けないまま。

 悲しい。悲しすぎる。

 私はもう動けずにスタミナが尽きて一生を終えてしまうのだろうか。


 うん、そんなんじゃ、死んでも死に切れない。

 死因、ネバネバ。


 駄目だ! 絶対に嫌だ。

 なんとか抜け出さなくちゃならない。


 うう、でも動けない……。


 泣くなっ、泣くな私。

 堪えるんだ。


 幸いにレベルが上がったことで、まだスタミナの余裕はある。

 考えろ、考えるんだ。

 動くことでネバネバを無理やりとることは不可能に近い。


 じゃあ、どうすればいい?

 ああ、いっそのこと解決できるスキルでもとれないかな……。


〔龍種権限発動。プログラムを取得中……〕


 えっ、龍種権限ってなによ。

 というかそんな簡単に良いの?


〔スキル『拘束効果無効』の取得に失敗しました〕


 って、失敗したのかよ!

 期待して損したじゃん。

 なに? そんなに甘い話はないってわけ?


〔取得した断片データを再構成……〕


 おや、なにか様子がおかしい……。


〔スキル『拘束効果緩和』を取得しました〕


 やればできるじゃないか。

 やったのが誰か知らんがな。


 あれ。でも、これってスキル取り放題じゃない?

 反則な気もするんだが。


 よし、試しに。物理攻撃無効とかないかな。


〔現在、スキル『物理攻撃無効』には龍種権限を発動できません〕


 は、じ、か、れ、た……?

 じゃ、じゃあ。再生みたいなスキルは?


〔現在、スキル『瞬間再生』には龍種権限を発動できません〕


 『瞬間再生』!? なにそれこわい。

 うーん。他に思いつくようなスキルは……あっ、電撃攻撃の耐性とかは?


〔げん……スキル『燃焼攻撃無効』は取得済みです〕


 電気も燃焼に入るの!?

 万能すぎじゃね? 『燃焼攻撃無効』。

 ていうか、間違えて言い直した気がするけど気のせい?

 いや、正確にはプツンと切れたような感じか。


 でも、思いつくのがなくなってきたなあ。

 せっかくだから一個くらいは取りたいんだけど……。

 そうだ。いま、私を苦しめているネバネバはどうだ?


〔龍種権限発動。プログラムを取得中……〕


 お、いった。

 どんなスキルになるのかな?

 粘着攻撃。みたいな感じだろうか。


〔ザ……ザザッ……。干渉によりデータが混入〕


 耳障りなノイズ音。

 その後の干渉されたというメッセージ。

 干渉? 一体なんで?


〔スキル『永久封印』取得失敗。断片データ、および混入データを複合し再構成〕


 『永久封印』って、あれが強化されたらこうなるのか……。

 ネバネバ恐るべし。


 というか、混入してきたやつを混ぜちゃって大丈夫なのか?

 一抹の不安を感じるんだが。


〔スキル『虚時間幽閉』を取得しました〕


 ……え? なにそれ?


 虚時間って、あの時間軸と直角に交わってるてきなあれ?

 混入してきたやつって、なんだったのよ。


 こんな大層な名前のスキル。

 使ったら不味そうな気がするんだけど……。


 そうだ!? 思い立ったら実験だあ!

 この寄生虫野郎にぶちかましてやる。

 話の展開が無茶苦茶すぎて楽しい。

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