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世界を知ること

 私はいま、紙と向き合ってる。

 なんの紙かというと、悪戯書きの絵ようなものが描いてある紙だ。


 無論これは、本当に悪戯書きの絵なわけではない。

 白い人曰く、最新の地図なんだとか。

 だから、地名らしき文字も書いてあるのだが、前世で使っていたものとは違うために、そこを踏まえても悪戯書きの絵のようにしか見えない。


 島の形をみても、それが島の形だとは到底に思えなかった。

 やはり悪戯書きの絵だ。

 この世界には人工衛星はないらしい。

 ついでに江戸時代にほぼ正確に測量した社会の授業で習うあの人のこの世界版はいなかったらしい。


 二度寝をした私は朝になって目を覚ました。

 白い人が私に抱きついたままだったが、今回はさっきとは違い、白い人は私の動きを察知して目を覚ましたのだ。


 そこから、着替えさせてもらったりなんだりをしたあと、お勉強の時間になったのだ。

 お勉強といっても、ほとんど、というか全部社会だ。


 朝ごはん?

 食べたよ。

 青かったとだけ言っておこう。

 青と言っても、緑じゃないよ。完全なるブルー、塩水の海が広がっている星みたいな色だ。


 それはともかくとして、私は手元にある悪戯書きを眺める。

 私、この世界の字、読めるんだぜ?

 すごいだろ!?


 例えば、ここがおおよそ上陸した海岸。

 直訳で、神聖な森、ていうのが近くにあるから間違いない。


 ……あれ?

 よく見てみると神聖な森がいっぱいある。

 地図中をまばらにいくつか……。

 というか、森のほとんどが神聖な森な気がするんだけど。


 一応、神聖じゃない森もいくつか。

 なんか森のかなり近くに人間の居住地があるから、森というより、農地?

 うわ、この地図、森、荒地、町の三択じゃん。

 等高線もないし、ちょっと投げたくなった。


 海岸近くの神聖な森。

 全体でを見渡してもここしかない。

 じゃあ、私の上陸した場所は、やっぱりここで合っていたわけだ。

 私は海岸を指でなぞる。

 ……うん……。


「え、ちょっと……!?」


 投げた。

 私はあの悪戯書きをグシャグシャに丸めて投げた。

 白い人は驚いてしまったようだが、関係はない。

 全てはあんな悪戯書きを描いたやつがわるいんだ。


 海岸をなぞってわかったこと。

 私が『空間把握』で捉えたものと全然違う。

 もちろん、完璧に覚えてるわけじゃないけど、それでも明らかに違うって分かるくらいひどい。

 なんであんなものが世に出回っているんだ!!


「いくら全然合ってないからって……。もっと大切に扱おうよ」


 私の放り出した紙を脅威の瞬発力でキャッチした白い人は私に対してそう怒る。

 ついでにコツンとグーで私のおでこを叩く。

 本当に軽い感じで痛くはなかったのだが、私は反射的にひたいへ手を当てる。


「これならどう?」


 そうしていると、白い人がもう一枚紙を出してきた。今度もよく見てみる。

 海岸線はだいたい合っている。

 等高線もどのくらいごとか分からないがしっかりと書き入れられている。


「私が描いたんだよ?」


 白い人はそう言って胸を張った。

 私はそれに対して、なんかよくわからないが拍手を送った。


 いや、合ってないって分かってるのになんで最初の出したのよ!? あるなら最初からこれ出そうよ!


 そ、そうか。人間の無能さを最初に見せつけることで、自身の荘厳さをアピールしようとしてるのか。

 さすが龍。自尊心の高いことだ。


「すごーいっ!」


 褒める私。

 白い人はなんか見なくてもわかるくらいに嬉しそうにしてる。

 具体的に言えば、魔力的な何かや竜力的な何かが部屋中を満たしていく感じに溢れ出してる。

 危なくないだろうか。


 それはそうと、この白い人お手製の地図、早いうちに頭に入れておこう。

 国とか町の名前とか、そういうのはいい。どこに人間の手が及んでいるのか。どんな地形なのかを重点的にだ。


 よく見たら名前にバツのついた町が二つ。その近くには海沿いの神聖な森があった。滅ぼしたところか。

 その近くには小さな町が一つ。東側にだ。

 その町を最後に西へとはもう町がない。

 ちなみに海岸線は南にある。


 この地図の最西端。山脈で終わっている。

 それ以降にはなにも描かれていないようだ。

 じゃあ、それより西には白い人は行ったことがないのだろうか?

 いや、そうとは限らない。

 思い出せば、さっきの地図もやはりこの山脈までしか描いてなかった。白い人はそれに習っただけかもしれない。


 山脈の向こう側。

 あの平氏のやつと死闘を繰り広げたのはそこだろう。

 ちょうど山脈も見えたし、なによりその反対側が私が産まれたであろう荒野だったんだ。


 なんか山脈の向こう側じゃあ、やばい野生生物が飛揚跋扈跳梁してるんじゃないかと思う。

 そこからまた荒野を越えたら御館様レベルが……嫌すぎるぅ!!


 地図を憶え終わってからも、勉強は続いた。

 その際には昼食も挟んだ。普通にパンだった。コッペパンのようなもの。

 嬉しいような、期待が裏切られたような気分になったことをここに記しておこう。

 

 お昼過ぎ、今度は歴史みたいな感じ。

 この世界では少し前くらいから、天変地異が頻発した。

 何年も前に中でも強大な龍の戦いがあって、そこからいろいろおかしくなったんだって。


 その中でも影響が大きかったもの。聖獣を主としたような森以外が滅び、不毛な大地が広がった。

 なんでも、植物の多くが急激に枯れ果てていったとか。


 人間たちは聖獣の慈悲で生き延びることができた。

 聖獣は代わりに供物を要求したと。

 けれども、人間は傲慢なものだ。狡猾なものだ。不義なものだ。

 どこまでも恩知らずに聖獣へと刃向かい始めた。


 曰く、聖獣は我々を虐げている。自由のために戦っている。正当な権利だと。

 そしてそれは成功する。

 今あるいくつかの大きな街。それこそがそんな森の成れの果てらしい。

 白い人はそう語った。


 今は神聖な森以外も、なんとか植物が育っているらしい。

 それでも新しく育てるのは一苦労らしく、今でも聖獣からの森の解放をもくろんでいるらしい。奪取ではなく解放をだ。

 どうせ使い潰すくせに。


 聖獣、そんなに強くないっぽいな。

 狼ちゃんを思い出してみよう。あれでレベル九十九だ。

 低レベルだったら、あの兵器でひとたまりもないのかもしれない。


 まあ、そんなことはどうでもいい。

 一番気になったことは、聖獣の森を繁栄させる力だ。

 どうやって他の植物が枯れ果てていく中、聖獣は植物を維持させることができたのか。


「しょくぶつ、わー、なんで?」


「え? ……聖獣の魔力には生命力を活性化させる力があるからだよ」


 私は全身を使ったジャスチャーを使うことで白い人へと質問をした。

 白い人は私の意を汲み取ってくれ、的確に答えてくれた。

 これがジャスチャーの力か……!?


 スキルじゃないのか……。龍種権限さんに頼んでも意味ないね。

 どうせなら生け捕りにすればいいものを。もったいないなあ。

 そういえば、前世でもペット飼ったときないなあ。

 飼うなら犬がいいかなあ。


 その他にも、人類の歴史やらなんやらを教わったが、特に記憶に残ることがないのだろう。


 でもその中で印象に残ったもの。

 王都やらなんやらは昔から変わらない場所にあるらしい。

 そこでは農業をやっていずに、送られてくるものにばかり頼っている。

 ただ、なにもしていないわけではなく、武器はここで作られているのだとか。

 だから聖獣に刃向かえたのだろうか。


 こんな感じで歴史は終わった。

 少し賢くなった気がする。でも、すぐに忘れそうだ。

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