表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/80

私は私のために

 この世界に龍はいた……えっ? もうやっただろって?

 いや、様式美は尊重するべきものだとは思わないのかい?

 じゃあ、改めて。


 この世界に龍はいた。

 強大であり、食物連鎖からも外れた、もはや生物と言って良いかもわからない存在。


 龍は基本。人間なんか気にしたりしないはずだ。

 だけど、何事にも例外はありうるものだ。

 そう、今回は人間に執着する龍がいたんだ。


 ああ、執着って言うと聞こえが悪いかもしれない。 固着? 執心? 拘泥?

 うん。どう足掻いても聞こえが良くはならないみたいだ。


 何故そうなったか。それはそれぞれに、似たようで違う。

 もちろん、そんな龍たちは極一部だった。


 これは、その龍たちの物語かな。



 ******************



 私は目を覚ましたようだ。

 そしてめっちゃ驚いた。


 なんと言ったって、目の前に白い人がスヤスヤと眠っているんだ。

 同じベッドの上で。


 整理してみよう。

 なんで、こんな状況になったかというと、私はこの人と戦ったのだ。

 激闘だったよ。

 でも、なんか正体不明の攻撃受けて気絶して、そのまま誘拐された。


 現在、私は驚きのままに目をパチパチとさせている。


「んぅ……」


 わっ、動いた。

 ちなみに私はまぶたしか動かせていない。


 白い人が目を開ける。

 バッチリと目が合った。

 私は更に動揺する。


「寒くない……? 大丈夫……?」


 心配するように笑いかけ、安心させるように右手で私の頬をなでる。


 私の服を見てみよう。

 背中が全開になっている。

 黒いドロドロを翼みたいな感じに展開したからだ。


 まあ、なんだろう。

 露出度多くなってるけど、大丈夫でしょ。

 私、龍だし。

 彼女の身体と融合したから、見た目だけは人間だけどね。

 その気になれば戻れるんじゃない?


 私は頷く。

 寒くないという意思表示だ。

 喋らない。

 そこまで精神面が安定していないっぽい。


「そう……だよね。なら、名前を訊いてもいいかな?」


 どこか悲しそうにこの人は納得するように呟いた。

 その後に、私の名前を尋ねてくる。

 いきなり高難易度なっ……!?


 くっ、いける!

 頑張れ私。

 私ならできる!!


「ミ、ツ……ホ」


 言ったぞ!

 言い切ったぞ!!

 私、偉い。

 やればできる子。

 ……彼女の名前だけど。


 ここは、そう名乗るのが適切。

 そう思ったからかな。


「そう、ミツホちゃんね」


 この人はそう言いながら、笑顔を見せて私の頭をなでてくる。

 ゆっくりとした優しい手つきだ。


 私は心地よさから目を閉じる。

 要するに二度寝ってやつ。

 まあ、気絶でもしない限り完全に意識がなくなるってことはないはずだ。


 白い人はベッドから抜け出たようだ。

 そして衣擦れの音が聞こえる。

 ここで着替えるのかよ!

 いや、別にいいけど。


 落ち着いたところで、改めて整理しよう。

 私はいま、彼女の姿をしている。

 小さい女の子だ。


 黒眼で、長い黒髪。

 そして何故か、私が中に入ったときから、肌が少しだけ浅黒くなってる。

 本来色素がないはずの掌までだ。

 まあ、注意して見ない限り気づくわけないし、大丈夫かな?


 そして容姿の方なんだけど、無駄に綺麗。

 彼女も最初から綺麗だったんだけど、私と融合させたせいか、肌荒れとかそういうのが完全に修復された。

 なんか現実的じゃない。


 現実的じゃないと言えば、あの白い人もそうだ。

 私とは対極に、色素が抜けた髪や肌をしているが、やはり綺麗すぎる。


 最初に会ったとき、私は狂いながらあの人に攻撃をした。

 持てる力すべてで。

 それをあの人は苦もなくに攻略して、私をお持ち帰りしたのだ。

 その際に、何かされたらしく、私はあの人に殺意を抱いたりはしていない。


 あ、言いそびれていたが、あの人は龍だ。

 霊龍っていうのだった。

 だからなんで、あの人が人間の姿をしていて、私を連れ去ったのか分からない。


 これからどうしようかな?

 逃げようかな。

 まだ早いか。


 でも、ここにいたって、できることなんか無いに等しい。

 せいぜい、あの人の攻撃方法を研究するくらいか。


「ご飯できたよ? 食べるでしょ?」


 うわっ! びっくりした。

 いきなり耳もとで囁かれた。

 完全に油断してた。


 作るの早くないか?

 まさか温めただけとか。

 まあ、どれにせよ私の回答は決まっている。


 私は首を横に振った。


「えっ、なんで……?」


 白い人は驚愕しながら私に理由を訊いてくる。

 そんなに驚くことだったかな?


「し、ぬ……」


 私は簡潔に理由を言った。

 いや、だってそうじゃん。

 私は生まれてこのかた食べ物を胃に入れていない。

 彼女の方はどうか知らんが、まあ、狂ってからはなんも食べてないんじゃないか?

 剣の力になにかを吸収してスタミナに変換する力があったとかで。


 長い間、胃に食べ物を入れていないで、急に食べ物を入れると死ぬらしい。

 どっかで聞いた。

 私は『不死身』なんてスキルをもってるから、気絶だけで済むかもしれないが、正気が削られそうだ。

 だから食べるなら手順を踏まなければ。


 この人はなんかとても困惑している。

 絶対伝わってない。

 こんな、私自身でさえ一生使わないと思っていた知識を持っているはずないし、持っていたとしても今の会話だけでは伝わらないと思う。


 どうしたものか。

 どうしようもできないね。

 どうにでもなるんだ。


 私は食堂まで連行された。

 そして水を飲んでいる。

 カップに注がれだものだった。

 そう言えば、水も飲まないで生きてきたんだなあ。


 私が水を飲んでいる横。

 白い人もまた水を飲んでる。

 なんかすごい優雅な感じに。


 私が食事を摂らないなら、自分も摂らないと言っていた。

 ちょっと意味がわからない。


 そうなんだけどさ。

 どうしたら食べ物を胃に入れて大丈夫になるのかの手順。

 私、覚えていないんだよね。

 これ、食べれるようになるには、一回死ぬしかないかもしれない。


 そう思った瞬間、私は動く。

 白い人は少し驚いているようだが、関係なく私は食堂を歩く。


 ガサゴソと、あ、食べ物を発見した。

 私は迷いなくそれを口に入れた。

 ゴクリと飲み込む。

 バタリと倒れた。


 我ながら、迷いなさすぎだよ。

 食べられないことが嫌だったんだ。

 こればかりは仕方ないのかな。


「だ、大丈夫……っ!?」


 白い人の鬼気迫ったような声が聞こえる。

 大丈夫と言えば、『不死身』だから大丈夫だけどね。

 まあ、一回死ぬみたいなもんだから、大丈夫じゃないと言えば、大丈夫じゃないんじゃないかね。


 こうしてまた、私はベッドへと送られて行ってしまうのであった。

 ブックマークが思ったより減っていなかったので続けることにしました。

 ここに来て、文章を作る難易度が上がってしまって辛いですが、なんとかやっていきたいです。

 ああ……ネタ切れが迫る……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ