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不死身の効果

 目が醒める。

 私はどうしたんだろう。


 ああ、そうだ。

 龍になって――


 ――食べられた。


 思い出した。

 確かな溶かされて、そこで意識を失ったんだ。


 肛門から排出されたか?

 いいや、足もとはヌメッとしてて柔らかい。そしてとても気持ち悪い。


 まだあのドラゴンの体内にいるようだ。

 順当にいって腸であっているだろうか。


 そうだ。

 死にかけたことだし、どうなっているかステータスを確認してみよう。



〈ステータス〉

 龍種Lv:1

 パラサイト・アンデットドラゴン

 ENE:6/6

 STA:4/7

 MAG:3/3

 SAN:041/125

 DRA:19/19

 KAR:053/100


〈スキル〉

 『不死身』『魂魄攻撃無効』『燃焼攻撃無効』『体内寄生』



 おい、ちょっと待て!?

 種族名的なものが変わってる。

 パラサイトってついてるし。

 スキルにも『体内寄生』ってのが追加されてる。

 そういえば確か、意識を失う直前に進化するみたいな声が聞こえたような……。


 エネルギーが全快してるのも気になる。

 痛いと感じるところもないし、怪我もしていないようだ。

 まさか、これが『不死身』というやつなのだろうか?


 それにしても、サニティーがごっそり減ってる。

 あれだけの経験をすれば減るのは当然と言えば当然なのだが……。

 よく発狂しなかったな、私。

 ゼロにならなきゃ大丈夫と考えていいだろうか。


 ああ、よかった。

 本当に良かった。

 私は生きているんだ。


 なんとも言えない感慨が心の底から溢れ出てくる。


 だけど、安堵している場合じゃない。

 ここから脱出しなければならない。


 なんだろう。

 肛門から出て行けばいいのだろうか?

 いや、でも、そうなると糞を突っ切らなきゃいけない。

 なんか、いやだ。


 じゃあ、どうやって脱出する?

 『燃焼攻撃無効』なるスキルを得た私なら胃液を突っ切ることもできるかもしれない。

 だが、口から出るとなると気付かれるだろうし。


 うーん。


 というか、酸攻撃とかじゃなくて燃焼攻撃なんだ。

 同じ化学変化系だから?

 燃焼の定義は完全に無視されてるわけだが。

 まあいいか、こっちの方が便利だし。


 スキルについては、今のところは大した代償を払わなくていいんじゃないかと思う。

 存分に使っていこう。

 できれば使いたくはないものばかりだが。


 さあ、気を取り直して体内探索といこう。

 このドラゴン――何かいい呼び名ないか……お館様でいこう。

 改めて、お館様からの脱出といこうじゃないか。


 そういえば、私の目はこんな暗闇の中、あたりをしっかりと捉えることができている。

 光のない完全な暗闇だというのに、おかしなものだ。

 目が慣れるとか、そういった次元のものじゃないと思う。


 壁が頻繁に蠢いている。

 本当なら胃で消化された食事を送るためのものなのだが、いかんせん私以外の食べられたものが見つからない。

 そして私は流されないように踏ん張る。


 小腸に相当する部分なのか、くねくねと何回も曲がっているようだ。

 曲りくねた通路を歩いていく。


 よく考えると、私ってなにも食べてないんだよな?

 少し歩いていたらお腹が空いてきた。

 だからといって、食べるものもない。


 寄生虫って、栄養を横取りしているとか言われてるけど、ドロドロに溶かされたやつを食べているのか?

 私は寄生虫の生態なんかには詳しくはないから、大体の予想をつける。

 それでも、私は胃で消化されたのなんて口に含みたくない。

 食べようとしても、嘔吐中枢が刺激されて、大変だと思う。


 ならば、一刻でも早くここから出なくてはいけない。


 角を曲がったとき、そいつは現れた。

 私の数倍はあるサイズの虫で、白く、ウネウネしてる。

 ザ・寄生虫って感じのするやつだ。


 どうしよう。

 ここは先住の方に敬意を払うべきか。

 だけど、道が塞がれている。


 よし、殺そう。


 もとより、龍になる前も虫を殺したことなんていくらでもある。

 そう考えると他愛もないことだ。


 となると、私の持っている武器は……牙と爪、それだけだ。

 少なすぎやしませんか?

 私の知っている龍はもっと超常的な力を使うものなんだが。


 たぶん、眠っている力があるに違いない。うん、きっと。


 この少ない手段でどうやって倒そう?

 噛み付くなんて論外だから、引っ掻くくらいしかできない。


 ヌルッとしてそうだけど、上手くいくだろうか。

 幸い、あちらからの敵意は感じられない。

 今がチャンスだ。


 覚悟を決めて、近づいて、引っ掻く。

 予想通り、体液で湿っていて――


 ――ななっ!?


 ふ、触れた瞬間になんかが抜けた。

 なんだっ?

 急いでステータスを確認する。


 そうすると、エネルギーの数値が一減っていた。

 たかが一、されど一だ。

 そもそも、総量の少ない私からすれば、それはけっこうな割合だ。


 しばらく、ステータスを開いたままあたふたしていたら、数値が元の全快した状態に戻った。

 じ、自分の回復力が恐ろしい。

 『不死身』のお陰だろうか。

 そうじゃないと、この短期間で総量の七分の一を回復するなんて信じられない。


 肝心の寄生虫野郎なのだが、私が攻撃したというのに、見向きもしない。

 私など、興味を示す必要もない存在だというのか。


 実に腹立たしいことだ。

 龍種としてのプライドが傷つけられた気がする。

 いいだろう。

 目にものを見せてやる。


 そう決意してもう一度、寄生虫に攻撃する。

 今度は五回連続で引っ掻く。

 大した抵抗も、避けるそぶりもない。


 私のエネルギーが残り一になった。

 零にまでするのはやはり抵抗がある。

 そうなると、ここでいったん休むしかなくなるのだ。


 やつは、依然として私を意に介さず、攻撃がなかったかのように佇んでいる。

 あれだけやってもまだ平然としているというのか!?


 相手が私を気にしていない分、ここは私も無視をして通り過ぎるのが無難だろう。

 道を塞いでいると言っても、私くらい頑張れば通れるスペースは存在するからだ。


 だけど、そんなことはしたくない。

 いいや、できない。

 こんなやつに負けを認めてすごすごと退散なんてできるわけがない。


 エネルギーの回復を待つ間もしっかりと睨みつけておく。

 何回だって攻撃して、絶対にたおしてみせる。

 私の覚悟はより強いものとなった。


 今度こそは……。

 エネルギーが満タンになった。

 我ながら異常な程の速度だと思う。


 全力で、持てる力を全てこめて、引っ掻く。

 今までにない威力だろう。

 同じように後四回繰り返す。


 さあ、どうだ?

 寄生虫がこちらの方を向いた、が、すぐにまた元の向きに戻る。


 くっ……。

 いいさ、私は決して諦めない。

 私の攻撃はこのあとも、何度も続いた。

 ちなみに、噛み付いた方が攻撃力が高いです。

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