表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/80

山脈にて

 ふう、疲れたー。

 全力疾走とか、長らくやってなかった。

 バテなかった私、偉い。


 やってきました、山のふもと。

 さあ、登山を始めようか。

 といってもこの山、岩肌が全体的に露出している。

 植物といっても、ところどころに背の低い草が生えているだけだ。

 なんでこうなってんだろ?


 思い出してみれば、狼ちゃんの森以外ではホントに植物が少なかった。

 これって普通に有り得ることなのかな?


 なんというか、荒れ果てた大地が多い。

 よくあんなところに人間は住もうとする。

 いや、森が目当てだったから、対狼ちゃん用の拠点だったりしたのかな?

 豊かな土地を求めてといったところか。


 植物少ないと思うんだけど、温暖化とか大丈夫かね?

 海がせり上がって……狼ちゃんの森とか沈みそうな場所にあるなあ。

 まあ、私が気にすることではないか。

 なんと言ったって、海水中でも活動ができるからなあ!


 ということで、登山しなきゃかな。

 『空間把握』でテッペンを探る。

 途中に生き物がちらほらといる。

 こんな過酷な環境でも、たくましく生きているんだなあ。


 うーん。

 私が望む反応は見つからないかな。

 そう上手くはいかないか。

 狼ちゃんみたいに反応を抑えてるとかだったら厄介だけどねえ。

 でも、狼ちゃんがビクビクするくらいダダ漏れだったんだから、それはないか。


 じゃあ予定通り、今生初のお山登りといきましょうか。

 頂上から山全体に『空間把握』を使おうというわけ。

 なんで頂上か?

 気分だよ、気分。

 特に理由なんてない!

 強いて言えば、そこに山があるから、かな?


 登山だ、登山。

 海で泳いだことのなかった前世の私でも、山に登ったことくらいはあるよ。

 ……車で、しかも移動中は後部座席で熟睡してたけど。

 頂上なんて行ったときないね!

 五合目行ってそこから帰った。


 ええ、本格的な登山経験は皆無ですよ。

 どんな装備していけばいいかとか知らん。

 だけど、今は龍だからそんなのは関係ないね。


 頂上に向けて一歩一歩進んでいく。

 足場が不安定だ。

 ゴツゴツしてるなあ。

 そんな歩きにくいってほどではないけど。


 それも私のバランス感覚がいいからじゃないかな。

 前世だったら、足挫いて転んでる自信がある。

 今の私って、足挫いたりとかするのかな?

 挫いても、すぐに治りそう。


 怪我とかもそうだけど、病気になったりするのだろうか?

 風邪とかそういう細菌、ウイルス性のやつとか、ガンみたいな感じの細胞が異変を起こしたやつ。


 私の場合、栄養失調になりそうな気がするんだけど、どうなんだろう。

 【搾取】で私に必要な栄養は全部摂れていたりするのか。

 すごいなスキル。

 どんな仕組みか私には全く想像もつかないや。


 現在、山の中腹あたり。

 障害物とか全部無視して直線的に進んでいるのだ。

 どうやってるか?

 跳んでる。飛んでるんじゃなくて、跳んでる。

 跳び越えている。

 あとは黒いドロドロを岩壁の上の方にひっかけてスルスルと登っていく感じのことをやってる。

 《龍纏・甲》を使えば、かなり頑丈になるみたいだ。


 順調、順調。

 このままいけば、けっこう早くにたどり着けるんじゃないかな。

 黒いドロドロに汎用性があってよかった。


 これなら、飛ばす以外に黒いドロドロを戦闘に役立てることだってできるのではないだろうか。

 ほら、【搾取】を使う条件。

 触ってれば姿がわからなくてもよかったはずだ。


 こう、なんか、バッて広げて、触手みたいに一本一本を操作して……うん、なんかものすごく悪役でありそうな攻撃方法だなあ。

 まあ、いいやそんなの。


 いま私は翼くらいしか黒いドロドロに変えていない。

 やっぱりほら、見た目って重要じゃん。

 見た目を犠牲に性能を追求したとか、私は認めんぞ!


 私が黒いドロドロを自由に操れる限界。

 十メートルもないよ?

 それ以降はヒュッ、ってやんないと届かない。


 まあ実際、地面ずるずる進むならけっこういけるんだ。

 自由に操れなくなるのは、自重の問題だったみたいなんだよ。

 だいたい、下に落ちていってた。


 『流体掌握』が届く範囲なら、この問題も無視できるらしく、それが十メートルもないくらいと。

 『流体掌握』の範囲が私の思ってたより広かった。


 竜力を流せばこれ以上、範囲を広げられる気がするんだ。

 龍纏とか、龍纏とかのせいで龍力が常に増減を繰り返しているから、今はやらないけど。


 考えてみるんだ。

 今は敵地潜入中。

 いつ襲撃がくるかわからないんだから、防御は外さない方がいい。

 この世界は、油断してるとピンポイントで超遠距離攻撃が飛んで来るんだ。

 私はまだ不意打ちでされたことはないけど、いつ犠牲者にカウントされることになるかわからないし。


 ということで、やって来ました山の山頂。

 うん。表現がおかしくて頭痛が痛くなる。

 はっ!? これが高山病?

 そんなわけはないか。


 これから私がどうするか?

 そんなの決まってるだろ。

 『空間把握』最大出力ぅう!!

 反応を確認できるか?


 竜力がゴリゴリ減っていく。

 このときのために、とっておきたかったんだよね。


 お、逃げてく逃げてく。

 私の龍力に怖気づいてたくましい生き物たちが逃げていくぞ。

 うーん。

 でっかい反応が見つからないなあ。


 ここは外れだったかなあ。

 山脈も広い。

 流石に一回じゃ見つけられなかったかな。


 よし、じゃあ次行ってみようか。

 ここから上昇して、そこからグライダーみたいにすれば早く着けるかもしれないなあ。


 ん?

 一つだけ逃げない反応がある。

 なんでだろう?

 人間……のわけはないはずだ。

 こんなところに一人でいるはずがない。

 もしや、狼ちゃんみたいに反応を抑えてたとかかな。


 あまり速くはない。

 だが、確実に私の方向へと進んでくる。

 気づかれたらしい。


 こいつが、獣龍を倒した張本人でいいのかな?

 だったら、私が倒すべきはこいつなのだろう。


 『空間把握』に竜力を流すのをやめる。

 そこから私は回復に努めることにする。

 向かってくることがわかったんだから、これ以上使うことは無駄だ。


 しばらくすれば、デフォルトの『空間把握』の中に反応が一つ入ってきた。

 私に向かって一直線で来ていることから、これがその反応だということがわかる。

 ちなみに一直線と言うのは比喩で、障害物をかわしながら向かってきている。

 普通はそうするだろう。


 ようやく、そいつが私の目の前に現れた。

 現れたのだが、私の予想の大半が躊躇なく裏切られる形でだった。


 心が切りさかれたような気がする。

 まさに、裏切り。

 まさに、うら切り。

 そして、うら切りたくなる思いだ。


 あぁ、この世界は、余りにも残酷なのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ