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西に向かって

 やったー!

 完全破壊だ。

 ノルマ達成。

 あとは狼ちゃんだけでも森を守りきれるはずだ。

 この森周辺に、きっと人間が栄えることなんてない。


 さて、じゃあ私は用が済んだ。

 さっさとお暇させてもらおう。

 私は夕日に向かって歩くぞ!

 実際は朝日が昇ってるところなんだけど。


 ……そう。

 狼ちゃんに西を訊いたら、夕日に向かって歩くけばいいと言われてしまったのだ。

 目から鱗だったわ。

 この世界でも、夕日って西に沈むんだね。


 というわけで私は朝日に背を向けて歩く。

 目を凝らせば、ぼんやりと霞みがかってはいるが、確かに山脈が見えた。

 この山脈のどこかに獣龍はいるらしい。

 探すのが面倒そうだ。


 狼ちゃんが言うに、正確にはわからないが、山脈にいる気がするのだとのこと。

 なんとも不明瞭な情報だ。

 でも、山脈との距離がかなりあるというのに、狼ちゃんは気が気でないらしい。

 なんとも神経質なことだ。


 狼ちゃん。

 私を引き止めるあたり、内心ではガクガクブルブルな状態だったみたい。

 それでも森で一番強いのは自分。

 森を守れるのは自分しかいないと頑張ったらしい。

 嫌いじゃないよ、そういうの。


 あの森に、聖獣は狼ちゃん一体しかいないらしい。

 なんか頑張ってたら聖獣になったんだって。

 狼ちゃんは他より頑張りすぎたようだ。

 難儀な生き方だ。

 狼ちゃんに自由はない、か……。

 そのおかげで人間はまだ森をどうにかできていないのは確かだったけど。


 人間、私の思ってたのより強かった。

 というか、どうやって撤退したのよ?

 いや、転移できる道具かスキルだろうけど、そんな簡単に人間が使えるものなのかねえ。


 次は絶対に倒してやろう。

 転移防げる方法とかないかな。

 範囲転移みたいな感じだったから、私が近づいたら私も巻き込まなきゃいけなくなる。そうすれば、使われないですむかも。


 でも、どうやったら近づける。

 私が近づいたら悟られるし、どうしたらいいんだろ。

 やっぱり先人に見習って超遠距離攻撃を磨こうか。


 だけどなあ。そんな遠くから攻撃したら殺した実感がわかないんかもしれないんだよね。

 まあ、私ならその死体のあった痕跡をみるだけでいい気もしなくはないけど。


 うん、そうだねえ、一人くらいは動けないようにして私自身で手を下そう。

 【搾取】も禁止にしたほうが無難だ。

 私が殺したと実感するように、私の逃げ道を塞いで行こうか。


 逃げてるのに、逃げ道を塞ぐなんて不思議なものだな……。

 まさに自分で自分を追い詰めている。

 そんな表現しかできない。


 傍目から見たら馬鹿なことなのだろう。

 私から見ても馬鹿なことだ。

 だけど、もう私はこうするしかない。

 こうしなくちゃいけない。


 楽に生きるにはそうするしかない。

 そうでなくては、変わっていく私を前に、きっと私は後悔をし続けるのだろう。


 人間なんかこの世界にいなきゃよかった。

 そうすれば、あとどれくらいかはわからないが、この感情も無視できていたはずだ。

 あーあ、もう少し違う場所に上陸できればよかった。


 とにかく、どこかに人間はいないかな?

 いや、それよりも今は熱中することを探すべきかな。

 そうすれば問題から目を背けることができる。


 ふふ。

 『空間把握』を全力で展開する。

 さてと、黒いドロドロを生物の反応に向けて飛ばそうじゃないか。

 極力上に向けて放った方が殺傷力は強くなるかな?


 『流体掌握』発動!

 尖らせて、先端を作る。それから密度を調節して、そこが重くなるようにする。

 これで形は固定かな。

 ついでに回転も加えてみようか。

 試しに全力で飛ばしてみよう。


 ビュっと上に向かって黒いドロドロが飛んで行った。

 空高くまで舞い上がり、私でも頑張らなきゃ見えないくらい高く上がる。

 前世だったらもう見えない距離だなあ。

 おっ、ついに今の私でも見えなくなった。


 当ったるかなー、当ったるかなー。

 しかしなにも起こらなかった。

 ……ダメだったっぽい。

 いくら待っても私の狙った反応が消える気配はない。

 ちょっと高く上げすぎてるみたいだ。

 目標の動きとかも計算に入れなきゃなのが厳しいか。


 今なら余裕もあるし練習しようか。

 危機感の薄いやつらから吸い取り尽くした結果だ。

 私の目で見える範囲に姿を表すとは。

 愚かな。


 さあ、第二射よーい……て、えっ!?

 遠くでドーンという音が聞こえたことにより、中断を余儀なくされる。

 な、なにごとっ!?


 急いで音がした方向を確認してみる。

 ……私がさっき攻撃を放った方向だった。

 なんでよ!?

 遅っ! っていうか、なにがあったらそんな威力でるのよ!


 いろいろやったけど、空気抵抗とかそういうのがあって、威力そんな出ないもんだと思ってたわ。

 ……それなら、今私が地面に向けて直接黒いドロドロ飛ばしたらどんな威力なんだろ?

 いや、やんないけど。


 『空間把握』で当たった場所を探す。

 あった、地形が少しだけ窪んでるや。

 だけど、私が狙った場所とは完全に違う。

 やっぱりそんな高く上げちゃダメだね。


 気を取り直して第二射だ。

 今度は飛ばす力を抑えるぞおー。

 代わりにさっきよりは地面と平行に近い角度にして。

 いけっ!


 ……どうだ?

 ああっ!!

 反応が動いた。

 これじゃ当たらないよ……。

 ぐぬぬ。


 私に超遠距離攻撃はまだ早いっていうのか?

 はっ!?

 場所が……悪い?

 ここは御館様を見習って上空から……。

 せっかく飛べるんだからいいんじゃないか?


 黒いドロドロで翼を大きくする。

 《龍纏・甲》を使って保護。

 『流体掌握』で空気を操って飛ぶ。


 バサッ、バサッ。

 バサバサバサバサバサ。

 バサ……バサ……。

 トテッ。


 全然上がれなかった。

 必死になった。

 だんだん疲れてきた。

 落ちた。


 なんということだ。

 そういえば、飛べるというだけで、そんな得意じゃなかったんだった。

 なんで上空から攻撃とか思ったし。


 はあ、私には超遠距離攻撃とか無理なんだな。

 とりあえず、これからは飛行の訓練でもしてみよう。

 このままでいいはずがないのだ。

 もっと飛びたい。


 黒いドロドロ飛ばす練習はもういいかな。

 空を自由に飛べるようになれば超遠距離攻撃もいけそうだし。

 まあ、超遠距離攻撃が必ずしもいるわけじゃないし、気楽にいこうかな。


 ふふ、そうだねえ。

 私は遠目に見えた生き物たちに【搾取】を使う。

 今回使ったエネルギーやスタミナを補給した。

 これはなかなか順調にいってると思える。

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