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森に着いたぞ

 地面を一歩一歩ふみしめていく。

 ああ、軽い。

 水の抵抗とかないのが懐かしい。

 そもそも、日の光の下で歩くのなんて物凄く久しぶりではないか?


 いやー、にしても植物だ。

 陸に生える植物だ。

 こんなに真近でみるのは、生まれて初めてではなかろうか。

 なんか感動する。


 木の実とかないかなあ?

 でも寄生虫、いるんだよね。

 やっぱり、熱するための方法が欲しい。

 えっと……【搾取】を使えば問題ない?

 いや、木の実が崩壊するかもしれない。

 まあ、今度試してみよう。


 食べ物については置いておこうか。

 私は森の中に侵入する。

 海近いけど、こんなところに木って生えるものだろうか?

 ……そんな木もあったかな。


 私はズンズンと奥に進む。

 大した目標もないんだけど進む。

 自然破壊を行いながら。


 私の通ったあとの植物はドンドンと崩壊していくのだ。

 【搾取】マジパネェですぜ。

 これなら同じ場所を二回通る必要もないってものだ。


 ドロドロしながら進んでみる。

 ドロドロに当たって効率良く植物が崩れていく。

 絵面的にはけっこう危ないものがあるけど。


 そんな私だが、本当に目標がないんだ。

 今まで、自身の周囲の環境改善のために頑張ってきたけど、今はそんな必要ない。

 あとは遊んで暮らせばいいだけだ。


 でもなあ。

 とりあえず、他の龍でも探そうかな。

 そう都合よく三匹目に遭えるはずはないと思うけど。

 そこで、『精神干渉』の実験をしてみたいんだ。


 龍種権限に干渉してきたやつに対してもそろそろ探り始めたい。

 だけど方法がないんだよなあ。

 手がかりらしい手がかりは、あの男たちくらいか。

 苦労性の人ならいいんだけど、あの私に何かしようとしたやつとはもう二度と接触したくないと思う。

 まあ、前提としてできるかどうかしらんが。


 おやおや?

 『空間把握』が私に近づいてくる反応を捉えた。

 海岸にいたような小さなものじゃない。

 もっと大きな反応だ。

 それでも、龍ほどの大きさはない。

 王クラスかな?


 のっそりと私の前に姿を現した。

 毛並みが木漏れ日を反射し、白銀に、幻想的に輝く。

 森の情景とも相成って、その姿は生という概念を力強く印象付けるものだった。

 一匹の巨大な狼。

 その目には理性の光が宿されている。


 ほほう。

 私の目の前に現れた愚かな者。

 私の進む道を遮った勇ある者。

 さて、じゃあ【搾取】を使って倒しちゃおうかな?


「失礼を承知で申し上げる。これ以上、森を壊さずにいただけないだろうか?」


 うわっ!?

 しゃ、喋っただとお?

 なんだこいつ。

 私だって喋ったことないのに。

 狼のくせに。


 ギラギラとした目で私を見据えてくる。

 うわぁ。

 言葉使い自体は下手に出てるみたいだけど、行動が全然ともなってない。

 臨戦態勢だよ。



〈ステータス〉

 聖獣Lv:99

 フレウルワイズ

 ENE:717/717

 STA:721/723



 あれ、つよっ!?

 えっと……ちょっと待って。

 改めて『空間把握』を発動させる。

 反応が小さい。

 なにこれ、詐欺?

 ここまでくると自身の反応を抑えられるのか。

 なら、私も努力してみよおーう。


 このレベル九十九狼。

 ここでレベルは打ち止めなのか?

 なんかこれ以上成長しないところまで来ているのかな。

 種族が昇格されない限り、もう数値は上がらないのかもしれない。


 統合される前の黒いドロドロは百にならずに昇格していたと思うが、こいつはどうなんだろう。

 偶然にも、私がレベル九十九で遭遇した可能性はあるけど。


 ともかく、私じゃ勝てるか非常に微妙だ。

 それでも【搾取】や黒いドロドロ、龍纏を全力で使っていけばなんとかなるかな?

 こんな誠意のこもらないお願い、ききたくないし。


「龍には敵わないと充分に存じている。どうかご再考を願う」


 居住まいを正し、うやうやしくこうべを垂れてきた。

 私の考えがほとんど完璧に読まれてたし。

 怖っ!?

 これは頭がいいからという問題じゃないよな。


 にしても、この言語。

 音とかじゃなくて、こうなんか頭に直接意味を叩き込んでるみたいな感じだ。

 おもえば、あの男二人組の会話もこんな感じだったかもしれない。


 どうしようかな?

 最初の臨戦態勢の印象がいまだになくならないし、礼儀を正されたって今更なんだよなあ。

 というか、この狼の強いところが、また面倒だし。長期戦は免れないんだよ。


 あっ……こいつ、龍についてなんか知ってるんじゃないか?

 今の私にはそういう情報が不足しているんだった。

 ならそれを教えてもらいたいな。

 主に生息地。


「恥ずかしながら昔、龍に挑み歯牙にもかけられずに死にかけたことがあったのだ」


 よく生きてたなおい。

 私の経験からは信じられない。

 平氏とか、年貢とか……あれ? あいつらって、基本は雑魚を無視してた気がする。

 じゃあ、わざわざ目に付くもの全てを殺してきたのは私だけか。

 ……私って、酷くね?


「失礼した。今はその話をするべきではなかったか」


 そうだね。

 私が聞きたいことと違うし。

 少しはその話も気にならなくはないが、少なくとも今は私の知りたいことではない。

 どう? 知ってるかな。


「申し訳ないが、知っているのは一体のみだ」


 おおー。

 知ってんじゃん。

 だったら早くどこにいるか吐くんだ。

 そしたら私がそこに向かうから。


「獣龍。今はここから西の山脈にいらっしゃるはずだ」


 西の山脈。

 ずいぶんとアバウトな。

 そして妙に尊敬語なところが気になるのだが。

 龍全てを尊敬しているというなら、問題ないのだが。

 もっと私を敬うのだ。


 次の目的地は決まった。

 もう無闇にここの植物を破壊しないようにしようかな。

 だけど、こいつどうしたらいい。

 素直に見逃すのもなんか違う気がする。


 ヒュッと黒いドロドロを伸ばす。

 危ない危ない。

 考えが読まれてたんだ。

 捕まえながらどうするか決めよう。


 ん? これは。

 狼から恐れのようなものが感じられる。

 トラウマでもよみがえってるのだろうか?

 確かにこれなら私には勝てないかも知れない。


 【苛虐】を起動する。

 いけるかな? お、いけたいけた。

 別にエネルギーとかは減ってないけど、弱まっているんだ、精神が。

 それで【苛虐】が効いてしまうのが恐ろしい。

 むしろ、こっちの方が真価であるのかも知れない。


 さてと、狼ちゃん。

 操られるのはどんな気持ちかな?


「……」


 喋ってくれない。

 無視されたから少し泣きたくなる。

 もういいや、【苛虐】解除で。


 狼は憔悴しきったようにうなだれる。

 その気持ちは分からなくもない。

 私だって、一回だけ【苛虐】を受けたときがあるんだ。

 なんなら一緒に【苛虐】被害者の会を立ち上げてもいいんだぞ?


 私はとっとと去ることにしようかな。

 ……西ってどこだ?

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