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陸地を目指せ

 ザッバーンと海から上がる。

 いける! いけるぞっ!

 でも、まだ地上じゃないんだよね。


 ならどんな状態か?

 聞いて驚け、いま、私は空を飛んでいるなのだ。

 やったー。

 ついに念願果たせたわけだ。


 どうやって飛んでいるのか?

 そりゃ、もちろん。

 翼を黒いドロドロに変形させて大きくして、崩れないように《龍纏・甲》を使って覆い、『流体掌握』で風を操りながら飛んでる。

 めっちゃ集中力がいる。しかも遅い。

 でも、ここまでしないと私は飛べないようだ。

 さっきだって海に落ちたし。


 ようやく安定してきた。

 だけどやっぱり、泳いだ方が速い。走った方がもっと速い。

 飛んだら速いなんて迷信なんだ。


 さて、じゃあ《龍纏・鱗》の実験をしてみよう。

 私の新しい力!!

 へ? ふぇ!? ほわわ!!

 翼の形が崩れてザッバァーン海に落ちる。

 《龍纏・甲》が切れてしまったのだ。


 同時使用ができない?

 いや、これは感触的に私の集中力が足りなかっただけだ。

 飛んでるだけでも苦労してたのに、調子に乗りすぎたかなあ。


 改めまして、《龍纏・鱗》を発動。

 うん、どんなスキルか全くわからん。


 《龍纏・甲》のときもそうだったけど、攻撃を受けたときにリアクションがあるやつは、発動しただけじゃ効果わからんよな。

 きっとこれもそんなスキルなのだろう。


 でもどんな効果なのだろうか?

 《龍纏・甲》は単純に硬くなるスキルだった。

 効果が被るなんてことはないと思うが、いまいち想像がつかない。


 竜力の纏い方からすれば、《龍纏・甲》の方はなんか高密度のが覆い被さってる感じだけど、《龍纏・鱗》はなんかこうフワッとしてる。

 これで敵の攻撃を弾けそうにはない。


 まあ、これも《龍纏・甲》と同じく、薄く常時展開しておこう。

 《龍纏・甲》は、けっこう慣れてきたものだし、竜力との折り合いも大丈夫だ。


 そういえば、私って『不死身』だけど、なにか予想もつかない方法で倒されたらどうなるんだろう?

 相手には龍纏・妖、みたいなスキルがつくのだろうか。

 効果はなんだ?

 黒いドロドロ風な竜力を纏う、かな?

 なんか嫌だ。


 うん。これはいいか。

 私は負ける気なんてさらさらない。

 どんな敵がこようとも、あらゆる手を使って倒していく所存だ。

 だったら、こんなこと考えたってどうにもならない。


 そういえば、『精神干渉』。

 こんなスキルがあったんだ。

 これを上手く使って、私の龍種への殺意が沸かないようにする。

 できるのだろうか?


 むむ。

 やってはみたが、これも目の前にいない限り効果があるかわからない。

 というか、予想以上に不快感が煽られるものだ。

 ここぞというときに使うべきかな。


 そろそろかなー、まだかなー。

 なにげに、陸地に行くのが楽しみだ。

 私は水棲生物ではないのだ。

 海とか知らん。

 思い出してみれば、前世ではプールでしか泳いだことはなかった。

 いまだに、海水は浮きやすいというのが信じられない。


 関係ない話だが、今の私には問題が一つあった。

 スイ、スイーと泳ぐ。

 そんな私の周りには、小魚一匹たりともいないのだ。

 私、恐れられてる。


 『空間把握』で私自身の反応を確認してみれば、だいたいあの龍二頭と同じくらいの大きさだった。

 確かにあんなやつらの目の前に進んで現れたいやつはいないと思う。


 ああ、【搾取】が使いたいーっ!

 スタミナとか、まだ半分以上残ってるけど、どうしても使いたい。

 こ、これが禁断症状なのか……。

 【搾取】。ダメ、絶対。

 なんて私が守れるわけないし、どうしたものか。


 ん? お?

 浅瀬にたどり着いた。

 もう陸も近いかなあ?

 日の光が海底に差し込み、海藻も生えている。

 ……海藻、いけるか?


 私は海藻に向かって【搾取】を使用した。

 海藻は枯れた。いや、枯れるより酷いことになって散っていった。

 憐れなり。


 うーん、いまひとつだな。

 なんか満足いかない。

 それでもまあ、いいか。


 気の赴くままに海藻刈りをしていく。

 質がともわなくては、量が必要になってくるのが道理なのだあ。

 気がついたら辺りがなんか更地になってた。

 なんとか満足もいったし、気にしないことにしようか。


 ふふ、ふふ、進行だー。

 陸が近いだけでこうもテンションが高くなるとは。

 私が進む度に、波が引くように生物の反応が私を避けていくのが『空間把握』でわかる。

 すでに『空間把握』の端の方では陸地が引っかかっているのに、この反応は変わらないままだ。


 どうなんだろう?

 陸にいる生き物たちは、海から得体の知れないものが上がってくるとでもおもっているところだろうか。

 なら、謙虚に草食をしているしかないかもしれないなあ。


 うん? なんだ?

 小さめなくせに全然引かないやつらがいる。

 全部で十七個くらい。

 なんか、嫌な予感がする。


 これって、私に気づきながらも留まっている阿呆か、私に気づかずに留まっている馬鹿か、そのどちらかしかないよな?

 本能でみんな逃げるっていうのに、こんなことする意味不明な生物。残念なことに私はよく知っている。


 はあ、興醒めだよ。

 これ、どうしようか?


 一、上陸して蹂躙する。

 二、上陸せずにいないところを探す。

 三、いなくなるのを待つ。

 四、寄生してみる。


 やっぱり、接触しないのが一番だよなあ。

 じゃあ、一と四はなしか。

 待つのも、なんか時間がかかりそうだし。なら、三のいないところを探すしかないか。


 あーあ、生き物がみんな避難してるんだぞ?

 気づけよ異変に……。

 死んだって、同情もできないぞ?


 『空間把握』。

 いなくて見られなさそうなところ……あった。

 崖だけど、今の私なら飛べるから大丈夫だ。


 ……あっ。

 そこへ向かう途中に、海底にあったものに目をとられた。

 『空間把握』って、貝とかの反応をとらえたことないんだけど、どうなってんだろ?

 欺く方法があるのだろうか。


 無論、その貝に向かって【搾取】。

 問題なく発動、一瞬で吸い尽くす。

 か、殻ごと崩れていった!?

 殻からも何か吸い取ったのかな。


 そして崖まで辿り着いた。

 こんな崖、今の私の敵じゃない。

 海面から飛び立つ。


 とりゃー、バサバサ、うおーりゃあ。

 はあ、はあ。

 辛かった。

 なんとか崖の上まで登りきった。

 ちょっと休憩とらないとかも。

 上昇するのがこんなにもキツいとは。


 さあ、早速、進んでいこう。

 私の目の前にはなによりも、手付かずの自然が広がっていた。

 私は気分を高揚させる。

 つ、ついに陸地に着いてしまった。

 海藻がなかったら、あの十七個くらいの反応はヤバかったかもしれない。

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